ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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最近一話に収めたい内容が増えすぎて文字数が増え気味の筆者です。
えぇ、今回も長いです。お時間あるときに暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。
それでは第30話、どうぞ!


30話 雨の音/再会の空

「仲良くなる?」

 

さっきまでそっぽを向いていた面々が、ダイヤの言葉に目を丸くする。

 

「そうですわ、まずはそこからです」

 

そう告げるダイヤに、「曲作りは、信頼関係が大事だし」とルビイが補足を入れる。

 

「ふふっ任せて」

 

それをきいた果南がそう言って立ち上がる。「何かあるの?」と首をかしげる善子だったが、果南が自信たっぷりに告げる。

 

「小さいころから知らないこと仲良くなるには…まずは一緒に遊ぶこと!」

 

 

 

そして場所は移り変わって校庭、1年生vs3年生でドッチボールをする事に…。

 

「何…これ?」

 

果南が投げたボールが凄まじい速度で善子と花丸の間を駆け抜けると、そう言って二人は顔を見合わせる。

 

さすがに制服でやる訳にもいかず、全員体操服に着替えたのだがさすがに女子に混じってドッチボールに興じる気になれなかった遥は外で審判の名目でその光景を眺めていた。

 

「どうして…」

 

運動でコミュニケーションを取るというのはいかにも果南らしいが、インドア派の善子と花丸は完全に顔を引きつらせている。大丈夫なのだろうか?

 

「行くよ~鞠莉シャイニング―」

 

技名を言いながら振りかぶる鞠莉を、なんか善子みたいだなって思いながら眺めていると花丸はどうすればいいかおろおろしていると善子が「任せて」と前にでる。

 

「力を吸収するのが闇―光を消し、無力化して深淵の後方へ引きずり込む。それこそ―」

 

「トルネードッ!」

 

「黒地空焔-こくじくうえん-!」

 

そう叫び思いっきりボールを投げる鞠莉に対し、両腕を広げる善子だったが、当然何か出る訳でもなく。そのボールは善子の顔面に突き刺さり、跳ね上がったボールが花丸に当たり更に外野にいたルビィにもあたる。

 

「はーい、3年生の勝ちー」

 

グラウンドに遥の気の抜けた声が響いた。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここが落ち着くずら」

 

「そうだよね」

 

再び場所は移り変わり図書室へ、当然ここを提案したのは花丸で、落ち着くという彼女にルビィも同意する。

 

「光で穢された心が、闇に浄化されていきます!」

 

なんて言う善子の顔を見たふたりが、「その顔」と思わず笑ってしまう。無理もない、ボールの縫い目がくっきり跡になってしまってしたのだから。

 

「何よ!?聖痕よ、スティグマよ!」

 

などと言っているが、やはり恥ずかしいのだろう。

 

「あ~退屈~」

 

「そうだよ海行こうよ~」

 

鞠莉と果南から不満の声が聞こえる。まぁこの2人は普段読書をしたりする暇があったら外で体を動かしたいタイプであろうことは想像できていたが…。

 

「読書というのは一人でももちろん楽しいずら。でも、皆と読めば本の感想も聞けて…」

 

「寝てるね」

 

花丸がしゃべっているとこ悪いが、果南と鞠莉は既に耐えられなくなって寝ていた。これには流石に苦笑いを浮かべるしかない。

 

「すみません、ふたりは長い話が苦手ですので…」

 

そう言うダイヤの表情も何となく、呆れているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、博樹は千歌達と遭遇したのは想定外だったが自身の計画を進めていたのだった。

 

「行け、フェニックス…!」

 

フェニックスと呼んだのは、小型のステルス機だった。ただ、博樹が操縦している訳でなく機内に所狭しと設置されたコンピューターを操作することによって飛行していた。

 

そしてそのコンピューターには、それとは別に本来の用途が準備されている。

 

-対空間レーザーシステムに細工をしたのはあなたね?

 

「…ッ!?」

 

急に機内に聞こえた女性の声に、博樹は驚愕する。そんなハズはない、ここにはコンピューターを操作する自分しか居ないはず。いや、間違いなくいる筈がないのだ。

 

そしてその声の主が、博樹の目の前に浮かび上がる。

 

「そんな…そんなハズがない!」

 

その女性を見て博樹がそう狼狽える。目の前に浮かび上がるようにして現れた女性は、落ち着いた雰囲気をまとった。腰までウェーブ状の黒髪を伸ばした女性だった。

 

「久しぶりね、博樹…」

 

「ありえない…母は10年前に死んだ。お前は誰だ!」

 

女性の身体は若干透けていて、すぐにホログラムだと気が付いたが、博樹はそう叫んだ。その女性は、博樹の母親だった。

 

「蘇ったのよ、大いなる力のお陰でね…」

 

「あなたは、破滅招来体に…何故です?なぜ地球は狙われる」

 

「博樹は掃き溜めに蠢く害虫の存在意義を、考えた事がある?考える必要なんてない、だから地球もいらない」

 

博樹の母親、湊麗華はそう何でもないことの様に答える。それが博樹にはショックだった。

 

「オレの母親は、そんな事を言う人間ではなかった…」

 

「でも私はあなたのお陰でそれを取り除く方法を知ったの、きっとクリシスの答えは間違っていなかったのよ」

 

そう言って、彼女は博樹の目の前にゆっくりと歩み寄る。

 

「そしてあなたは、その答えを信じる運命にあった。会いたかったわ…博樹、ずっと…ずっと…」

 

そう言って博樹の頬に手を添えて、顔を近づける。目をつむって、されるがままだった博樹は麗華の顔が目の前に来る直前に、手元にあるスイッチを押した。すると麗華の身体に電撃が走る。

 

「何…?」

 

「このコンピューターには協力はプロテクトが施してある。クリシスの様にはいかない!」

 

そう博樹は麗華を睨みつけながら告げる。すると彼女は手の先が溶けるようにして消え始める。

 

「だが、オレは一つだけ感謝しています…あなたが崇拝する力は、オレに大切な事を思い出させてくれた-」

 

そう言いながら一度は目を伏せる博樹だったが、再び彼女を睨むとこう告げる。

 

「オレは、アグルである前に…一人の人間だったんです…!」

 

博樹が見失っていたもの、それは自分がウルトラマンとして人間を滅ぼす事が自分の成すべきこと。自分をウルトラマンアグルと定義し続けた半面、湊博樹という一人の人間だということを…。

 

「博樹…あなた私を見捨てるの…?母親である私を…」

 

そう言って彼女は博樹に手を伸ばす、しかし溶け始めていた側はもう肩のあたりに達し、もうすぐ体の半分が消えてしまいそうだった。

 

「苦しい…博樹…タス…ケ…」

 

「黙れ…消えろォ!!」

 

苦しみ助けを求める声に耐えられなくなった博樹はそう叫び今度は叩くようにしてボタンを押す。そうすると彼女の姿は完全に消滅した。

 

そして一人黙ってコンピューターの画面を見つめる博樹だけが、その場に残るのだった。そして彼を乗せたフェニックスの向かう先は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で何となく解ったのですがこのメンバー…」

 

再び場所は移って今度はバスで移動していた。その中でそう呟いたダイヤが視線を移すと、「わぁ、今日は絶好のダイビング日和だね!」「また一緒にトゥギャザーしましょ!」なんて窓から外を眺めて騒いでいる果南と鞠莉。

 

「アウトドア派な三年と…」

 

もう一方に視線を移せば、読書に夢中な花丸と、その隣で何やらぶつぶつ言っている善子にあからさまに難しい高校生が読むものか怪しい論文か参考書かよくわからないものと睨み合ってる遥。

 

「インドア派な一年に別れている…という訳ですわね…」

 

そうダイヤが呟くと、隣に座っているルビィに「どうすればいいの?」と聞かれる。ここまで好みが二分してしまうと意見がまとまらないのも仕方がない気はする。

 

ダイヤも元々そんなに活発な方ではなかったし、ルビィもダイヤと同様あの2人と関わる時間が後の三人より長いからある程度耐性があったわけだが…。

 

「仕方無いですわね…こういう時はお互いの姿をさらけ出すしかありません」

 

その会話が耳に入った遥は、ちょっと嫌な予感がした。まぁ概ね的中することになるのだが。

 

7人がバスから降りて向かった先は、温泉だった。

 

「即ち、裸の付き合いですわ」

 

なんて自信たっぷりに言うダイヤには悪いが、彼女は一つだけ見落としていた事があった。それはつまり…。

 

「あ~…じゃあ僕どっか外で待ってるんでごゆっくり…」

 

「あっ…」

 

この中に一人だけ男性が紛れ込んでいる訳で、やはり彼女はどこか抜けている、そこでようやくはっとしたような声を上げる彼女に、周りは一瞬凍りついた。

 

「流石にこの流れで一人仲間外れも…」

 

「いや、ほんとに良いんで!その辺はまた今度で良いんで…」

 

交流を深めるのが目的だったのに一人抜けるのは、と果南が言うが遥はいいから6人でと言って「あーじゃあ僕も温泉入ってきまーす」なんてわざとらしく言いながら男湯に消えていく。

 

「ダイヤさん、遥君が男の子って忘れてたずら?」

 

「ほーんとダイヤってお・ば・さん」

 

「一文字少ないですわ!」

 

そう花丸と鞠莉に言われ、顔を赤くしながら言い返すダイヤの姿を暖簾の陰から見た遥は、やれやれといった様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、温泉でひとっ風呂浴びてきただけになった一行だったが花丸はご満悦だったようだ。

 

そんな時、不意にぽつぽつと水滴がアスファルトを叩く音が聞こえ始めると、それは一気に強まっていった。

 

「雨かぁ…」

 

「どうしよう、傘持ってきてない」

 

雨が降り出したので、遥は凄い嫌そうな表情を浮かべ、ルビィも困った様子だった。

 

「どうすんのよ、さっきのトコ戻る?」

 

「それはちょっとなぁ…」

 

善子がそう提案するが、果南が嫌そうな反応を示す。確かに一度出た施設に利用するわけでもないのにもう一回行くのは気が引ける。

 

「結局、何も進んでないのかも…」

 

そうルビィが呟く、それは全員が聞こえていたが何も言えない。結局本来の目的である予備予選のための曲作りは何も進んでいないのだから。

 

「近くに知り合いのお寺があるにはあるずらが…」

 

全員がどうしたものかと頭を悩ませていたところに、そう花丸が提案すると全員がそれに賛成した。外で雨宿りだと流石に湯冷めするし、反対する理由はない。

 

 

 

 

 

 

「入っていいずら」

 

「こ、ここですの?」

 

花丸に案内されてたどり着いた神社は、確かにすぐ近くにあった。ただ入るように促されても気が引けてしまう。

 

境内を見渡してもとても住職が住んでいるようには見えないし、何より寺へ続く石畳の両サイドにお墓があって正直不気味だ。

 

「ホントにいいの?」

 

「さっき電話したら、自由に使っていいって」

 

鞠莉に聞かれて花丸はそう答える。

 

「お寺の方は、どこにいらっしゃるんですの?」

 

ここの持ち主に最初に挨拶をしておこうと思うのがなんともダイヤらしいが、それに対して花丸が、

 

「ここに住んでる訳じゃないから…」

 

そこまでいうと急に懐中電灯を持ち出して顔を下から照らし-

 

「いないずらぁ…」

 

「ヒッ!」

 

そうやって驚かすとルビィと果南はビビッてダイヤと鞠莉の後ろに隠れてしまう。

 

「となると、ここで雨宿りしていくしかないですわね」

 

「雨もまだまだやみそうにないし」

 

そうダイヤと鞠莉が言うと、やはりルビィと果南は嫌そうだった。

 

「暗黒の力を、リトルデーモンの力を感じ…」

 

「仏教ずら」

 

「知ってるわよ」

 

寺の不気味な雰囲気に喜び始める善子の肩を掴んで花丸は驚かすような口調で告げると、善子もそう口を尖らせて言い返す。

 

「ま、外にいるよりはいいんじゃないです?」

 

そう言って遥は真っ先に中に入るが…。

 

「何だよこれ?真っ暗!?」

 

本当に何も見えないレベルで真っ暗だし電気のスイッチらしきものも見当たらずにそう叫ぶ。「電機は?」そう善子が聞くが「そんなのないずら」と一蹴されてしまう。

 

とりあえずろうそくとマッチはあったのでそれを使って明かりを灯すと天井から龍がこちらを睨みつける。

 

「どどどどうする?わわわたしは平気だけど?」

 

そう強がってみせる果南だったが、何かが軋む音に驚いて柱にしがみつく。

 

「ほかにすることないし、曲作り?」

 

「でも、また喧嘩になっちゃわない?」

 

鞠莉がそう提案すると、ルビィがそう告げるが果南も「きょ、曲が必要なのは確かなんだし?やれるだけやってみようよ」そう言うが再び軋む音に驚いて今度は座っていたダイヤに抱き着く。

 

すると今度は不意に冷たいものが落ちてくる。それがたまたま首筋に当たったダイヤが「ピギャア!」と思わず悲鳴を上げてしまう。

 

「雨漏りずら」

 

「まぁ見るからに古いお寺だし仕方ないか…」

 

そう告げる花丸に対して遥はそう呟く、住んでいる訳でもないし頻繁に手入れをしているようにも見えないので無理もないのだろう。

 

「お皿あったよ」

 

果南がそう言って雨漏りしている場所にそれを置く。寺の中から皿やら桶やら使えそうなものを皆でかき集めて雨漏りに対応する。

 

そしてようやっと対応を終えると、それらに水滴が落ちる音が木霊する。木製や陶器、プラスチックと色んなものに水滴が当たる音は全部バラバラで、それでいて調和された一つの旋律になっていく。

 

「テンポも音色も大きさも」

 

「全部違ってバラバラだけど」

 

「その一つ一つが重なって」

 

「一つ一つが調和して」

 

「一つの音色になっていく」

 

「マルたちもずら」

 

そう言って6人が笑い合う、みんな違ってバラバラだけどそれが重なって一つの音色になる。自分達もそうなんだ。みんな違うからこそそれぞれの個性が光り、それが全体の良さになっていくのだ。

 

それを見ていた遥は、「ちょっとトイレ」と言って外にでると、スマホの画面を見つめる。着信相手は非通知だった。

 

「もしもし?」

 

『遥だな?』

 

「博樹さん?無事だったんですね?」

 

相手は博樹だった、遥は安心したような声を上げるが

 

『対空間レーザーシステムに学校を狙うようにジャックした、防ぎたかったらすぐにガイアになれ!』

 

「あなたはまだ僕たちと戦うつもりなんですか?」

 

『オレにはやるべきことがある』

 

それだけ告げると一方的に通話を切られてしまう。幸い、誰も今のやり取りは気が付いていない様子だったので、そのまま遥は外に出る。

 

「どうして…どうしてなんだ!!」

 

そう叫びながらエスプレンダーを掲げ、その光を開放すると赤い光がまっすぐ宇宙を目指して昇っていく。

 

宇宙まで登ると、そこでガイアの姿を取ると対空間レーザーシステムを積んだ人工衛星を見る。それは次の瞬間レーザーをガイア目掛けて照射した!

 

 

「デヤァ!」

 

ガイアは右腕を上に掲げエネルギーを頭部に収束させるとフォトンクラッシャーを放ち、相殺を狙う。

 

その様子を近くにフェニックスを飛翔させていた博樹は、スクリーン越しにそれを見ると、レーザーの出力を上げる。

 

ガイアはそれに反応すると、こちらも技の出力を上げる。

 

「まだだ遥、再びあの扉を開けるんだ!」

 

そう言ってレーザーの出力を最大にする博樹の狙いは、以前アグルとガイアによって開かれたワームホールを再び開く事だった。そんな事は全く頭にないガイアもレーザーに押し切られないようにさらに出力を上げる。

 

その時だった、激突する二つの閃光は上に立ち上るとワームホールが開く。

 

「さらばだ、遥」

 

そう言って博樹はフェニックスをワームホールの中へと飛ばすが、結界のようなものに阻まれて中に入れない。そしてガイアもフェニックスに気が付いて後を追うように飛び立つ。

 

「何…?」

 

中のシステムが警告音を鳴らし、博樹もシステムを必死に弄るが状況は変わらない、そして博樹はワームホールの中に何かを見つける。

 

それはこちらへ向かって飛んでくる一体の怪獣だった。

 

「ここまでか…」

 

そう呟いて自爆スイッチに指を持っていくが、指は震えていた。

 

そして怪獣が右腕でフェニックスを握りつぶそうとした時、巨大な爆発が起こった。最初から博樹は破滅招来体が潜んでいるであろうワームホールの向こうに、捨て身で突っ込むつもりだったのだ。そしてそのために搭載していた爆弾が、大爆発を起こした。

 

そしてワームホールは閉じるが、その直前に二つの光がその中から出てくると、地球を目指す。

 

その一つはガイアだった、ガイアは博樹の身体を光に包んで爆発から守り街から外れた場所にそっと降ろす。するとガイアの後ろに先程の怪獣が着地する。怪獣もガイアを追ってワームホールから出てきたのだ。

 

そしてガイアは怪獣に向かって振り向くと構えるが、怪獣は先程の爆発によって右腕が浮き飛ばされていたが、すぐに再生してしまう。

 

二本の脚で立ち、巨大な翼を持ちドリルになった左腕に竜のような顔を持つ怪獣はガイアへ駆け寄り肉薄するが、ガイアもそれに飛び上がって回し蹴りで対応する。

 

だが怪獣の力は強く、あまりダメージを与えることができない。そして取っ組み合いになるが、力負けして振りほどかれてしまう。そこから尻尾で薙ぎ払うように攻撃をされるが、それはしゃがみこんで回避する。

 

すると今度は右腕のドリルを回転させてガイアの身体を貫くべく攻撃を加えてくるが、これは距離を取って回避する。

 

そのままガイアスラッシュで相手を牽制しようとするが、怪獣は地面を蹴ると畳返しの様に地面が立ち上がりそれにガイアスラッシュが直撃し、爆発が起こる。

 

爆炎が晴れると、そこに怪獣の姿はなくガイアは怪獣の姿を見つけようと辺りを見渡していると、地中から怪獣がドリルを突き出したまま飛び出してくる。

 

足元からの攻撃に反応できず、その一撃によってガイアの巨体が宙を舞い背中から地面に打ち付けられる。

 

何とか起き上がったガイアだったが、怪獣はさらに三体に分身するとガイアを囲い込み、正面の一体が右手のひらから、ヒルのような小さい怪獣をガイア目掛けて放つ。両腕両肩、更に顔面と5体の小怪獣はガイアに組み付くとエネルギーを吸収し、爆発を起こす。

 

「ぐわぁ…」

 

その爆発に膝をつくガイアに対して、今度は三方向から小怪獣を放ち今度はガイアの全身に組み付くと、再びエネルギーを吸い始める。

 

ピコン―ピコン―

 

それによってガイアは再び苦しみ始めると、ライフゲージがエネルギーの限界が近付いているのを明滅して知らせる。そして再び爆発を起こしガイアにダメージを与える。

 

それを見ていた博樹は、アグレイターをとり出すがもうそこにアグルの力は宿っていない…

 

「クソッ!」

 

思わず目の前の池にアグレイターを投げ込む博樹だったが、そこで三体に分身してガイアを包囲して苦しめている怪獣が、正面の怪獣以外が水に映っていないことに気が付く。

 

「アイツが本物か…うおぉぉおおお!」

 

そう呟くと、自身の腰につけていた爆弾をとり出すと、分身にガイアを挟撃させそれを見ていた本体の怪獣目掛けて投げつける。

 

それは怪獣に届きこそしなかったが、恐ろしい威力の爆風が怪獣の背中を襲う。その想定外のダメージによって怪獣は驚き、思わず分身を消してしまう。

 

「うわぁっ!」

 

だがその爆発は博樹の身体も襲い、彼の身体を吹き飛ばしてしまう。

 

『博樹さん!?』

 

ガイアは地に倒れこみ気を失った博樹を見つけると、彼の人生を狂わせ追い詰めた破滅招来体への怒りが爆発した。

 

『僕は…許さん!!』

 

わなわなと拳を握りしめたガイアは、その身をスプリーム・ヴァージョンへと変化させる。

 

「デヤッ!」

 

怪獣へ構えたガイアはまだ爆弾のダメージで咄嗟に動けない怪獣へ駆け寄ると、飛び上がって怪獣の顔面を蹴り飛ばす。

 

更に起き上がった怪獣の頭を掴むと全体重をかけて地面へ押し付ける。

 

なんとかガイアより先に起き上がった怪獣は飛び立ち、右腕のドリルを突き出して突撃する。

 

しかし、ガイアは紙一重で躱すと、逆に尻尾を掴んでジャイアントスイングで投げ飛ばす。怪獣は地面に何度もたたきつけられ、ボロボロになり立ち上がるのも精一杯といった感じだった。

 

そしてガイアは空へ飛翔すると、右足に赤いエネルギーを収束させ渾身の蹴り―スプリームキック―を放つ。

 

そして怪獣の頭を貫くと、怪獣の身体は木っ端みじんに吹き飛ぶのだった。

 

 

 

「エネルギー分析では、完全に再現できていたハズだった…」

 

ガイアの変身を解いた遥の、池の反対側で博樹はそう告げる。

 

「じゃあそのためにわざと…」

 

「どうして…オレを助けた?」

 

そう肩で息をしたまま怒鳴るように遥に対して叫ぶ。

 

「ふざけるな!どうしてあなたは、自分を心配してくれている人の事を…解ってあげないんですか…?」

 

そう言い返す遥に対して、悔し気な表情を浮かべるが何も言わずにボロボロの身体を引きずって博樹はその場を去る。

 

「もう僕たちに、戦う理由なんてないんです…」

 

そう絞り出すように遥は言うが、その言葉は博樹に届くことは無い…。




ありがとうございます、今回登場した怪獣は宇宙忍獣X(クロス)サバーガです。博樹の咄嗟の支援が無かったら勝てたか怪しい相手ですね。
そして28話に出てきた怪獣はウルフファイヤーといいます、ビジュアルが気になる人は調べてみてください。
それでは次回お会いしましょう。
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