「やめろー!」
遥が飛び出したが無情にも室内に発砲音が響く、そして崩れ落ちたのは麗華の身体だった。彼女の方に銃口を向けた博樹は、麗華に向けて発砲したのだ。
「軟弱なやつ…いつも肝心な時に…」
そう毒づくと、麗華は倒れるとその体は紫の光に包まれると消滅した。
「博樹さん…」
遥は博樹に声をかける、博樹は目を潤ませて震える声でこう告げる。
「オレには…何も救えはしなかった…何一つ…」
「ヒロ…」
果南は博樹にそっと近寄るが、かける言葉が見るからなかった。
―またお前を利用できたら面白かったのに。まぁいい、私はこれから地球上に増殖し人間どもが憎み合い、滅ぶさまを見届けてやる…フフフ…
そんな声が辺りにこだまする。すると博樹は果南の手を取って他のメンバーに駆け寄ると遥かの方を振り返る。
「ヤツを追え遥、そして必ず倒せ!」
それに遥は頷くと、先程の光が消えていった方へ駆け出す。
「お前たちはこっちだ、遥に任せて早く脱出するぞ」
そう言って博樹を先頭にこの部屋から出ると、再び外を目指す。
遥は光の行き先を追いたどり着いた先には、電波塔を制御する制御室だった。ここから電波回線にもぐりこんで、人間を洗脳する範囲を拡大させるつもりなのだ。
「僕をヤツの居場所まで導いてくれ、地球の光よ」
遥はエスプレンダーをとり出した、怪獣が待ち伏せている先はこの場所の上空にあるワームホールの中。負ければ二度と戻ってくることはできない…。
だが今の遥に『負けるかもしれない』そんな想像は無い、ここで必ず倒す。今の遥にあるのはその決意だけだった。
「ガイアー!」
光を開放すると、上空のワームホールの中へと赤い光が立ち昇るのだった。
その中で待ち受けていたのは、以前ルビィを操った怪獣によく似た怪獣だった。以前との違いは両腕のムチ、顔の複眼と、背中の襟巻上になっている部位にも石膏のような顔が複数付いており、そこから触手が生えている事。
そして背の触手から電撃を放ちガイアを牽制する。しかし体制をすぐさま立ち治すと怪獣に対して構える。
『身勝手な人間共によって殺された。地球怪獣たちの胸の叫びを、その怨念を受けて見ろ!』
ふたたび麗華の声で怪獣は吠えると、腕のムチを叩きつけるとその場所から炎が立ち昇る。そしてそこから現れたのは、ウルトラマンアグルだった。
(何ッ!?)
ガイアは幻影によって生み出されたアグルに驚くが、アグルはガイアへ襲い掛かる。ガイアもこのアグルが博樹とは関係ないという確信があったからこれに応戦した。
「こっちだ、早く!」
博樹は非常階段を見つけると、Aqoursの9人を先に下を目指させ自分もその後ろを走る。
そして階段を抜け、外への出入り口前の廊下に出ることに成功したのだが、武装したGUARDの職員たちに包囲される。
「ダメ、逃げられないずら」
「今は生き残る事だけを考えろ!」
弱気になる花丸にそう激を飛ばすと、博樹は皆を壁際に追いやると庇うように前に出る。
「オレはもう、誰も失いたくない…!」
そう呟いた博樹は、近寄ってきた隊員相手に殴りかかって行った。
一方ガイアは、アグルとの戦闘に入っていた。偽物とはいえ、博樹の戦闘センスを真似ているアグルと一進一退の攻防が続いた。
お互いの拳が、蹴りが交錯しお互いその身にダメージが蓄積していく。
だがガイアはヴァージョンアップを果たしたことによって身体能力も向上し、遥自身が経験を積んできたことによって、次第にガイアが押し始める。
次第にガイアの拳の連打によって押され始めるアグルだったが、冷静に要所要所で反撃を加えてくるが一気に押し切る作戦に出たガイアはそれに耐える。
「デリャァアア!!」
そして反撃してきたアグルの腕をつかんだガイアが、アグルの身体を投げ飛ばすが、アグルはこれを空中で態勢を立て直して着地する。そしてそのタイミングで怪獣は再びガイアへ電撃を飛ばす。
「ウワァア…」
その攻撃に完全に不意を突かれたガイアは、思わず膝をつくとその隙に距離を詰めてきたアグルの両手に首を絞められその体を持ち上げられる。
―ピコン…ピコン…
ガイアのライフゲージが赤く明滅を始める。このタイミングでガイアのエネルギーが危険域に突入したのだ。
博樹は、数人を倒す事は出来たがついに壁に押し付けられ、複数の銃口が突き付けられる。そしてAqoursのみんなも再び捕まってしまう。
「ヒロ!」
果南が無理やり拘束を解いて、博樹の元へ駆け寄ろうと足掻く。しかし銃口はそんな彼女にも突き付けられてしまう。
万事休す、この場にいる全員がそう思い諦めてしまったその時だった。逆転の一手が投じられたのは…。
『完成した特殊弾はその一発だけだ。電波撹乱を避けるため、照準はマニュアルで行え』
「了解」
ファイターSSのコックピットに堤からの指令が飛ぶ、あのワームホールを消滅させるために開発した特殊弾頭。
XIGは活動を開始したのは最近だが、以前から防衛軍としても怪獣と戦った者たちで結成されており、ずっと準備を続けてきたのだ。
そしてこの一発にミサイルを任されたのは、最もファイターの操縦技術の高い梶尾が任命された。
「頼む…消えてくれ!」
ワームホールの中心をロックオンした瞬間、ミサイルを放った。そしてその一撃は吸い込まれるようにワームホールへ消えていき炸裂。上空のワームホールを消滅させるのだった。
一撃しかないミサイルを標的に当て、対象を消滅させたことを確認すると得意気に笑い、帰投するのだった。
そしてガイアが戦っている空間に光が降り注ぐとアグルは消滅し、この空間を作っていた怪獣は空間が不安定になったことによって苦しみ始める。
『私の超空間が…なぜ!?』
どうして空間を乱されてしまったのか理解が追いつかない怪獣は、腹部の顔から涎を垂らしながらもがき苦しむ。
「デヤッ!ハァァアア…」
ここを勝機と見たガイアは、両腕を額の前でクロスした後、両腕を降ろしエネルギーを胸の前で収束させると両腕の拳をそろえ、生み出した光球を前方に打ち出す。
「ダァッ!!」
アグルのものとは違い、赤い光の玉となったリキデイターが怪獣の顔面に直撃すると怪獣の身体を粉々に吹き飛ばすのだった。
そして洗脳されていた人々は糸が切れたように倒れてしまう。
「た、助かったの…?」
自分たちを捕まえていた人たちが倒れ、自由になった梨子がそう呟く。
「なんとかね…」
そう千歌が答えて周りを見渡すが、幸い誰も怪我はしていないようだった。そして立ち上がった博樹が、果南に手を差し伸べて立ち上がらせている所だった。
「ヒロはわたしたちみんなを救ってくれた、何も救えなかった訳じゃないんだよ?」
立ち上がった果南が、そう博樹に訴えかける。博樹は何度も自分たちを救ってくれたじゃないかと。
「だがオレは、鞠莉に怪我を負わせて記憶も失わせた」
「そんなの気にしてない!私が今こうして皆といられるのはヒロのお陰なんだよ?」
「いつまで過去を気にしているつもりですの!?」
自分のしたことを悔やんでいる博樹に、その想いは届かなかった。鞠莉とダイヤもそう言うものの、博樹の心は閉ざされたままなのだ。
博樹はそれ以上何も言わず、その場を去るのだが誰もそれ以上は何もできなかった。
そして、他の人々も目を覚まし何と抽選は再開された…。
「この状況でやるの!?」
「仕方ないずら、誰も覚えてないんだもん」
「そうそう、じゃあ任せたよ?ヨハネちゃん」
この状況で自分からスタートなんてと文句を言う善子だったが、花丸と遥がそう言って行くように促すと渋々といった様子でステージに上がって行った。
正直全員もうそんな気分ではなかったが、このまま帰っては棄権になってしまうのだから全て終わらせて帰るしかない。まぁ、いざ抽選台の前まで行くと善子はノリノリだったわけだが…。
そして彼女が引き寄せた結果は…。
「24!?ど真ん中もど真ん中じゃん!」
帰り道クレープ屋で休憩していた一同だったが千歌がそう言ってはぶたれる。善子が引き寄せた数字はよりによって中盤だった。これでは説明会には間に合わない。
「仕方ない、堕天使の力がこの数字を呼び寄せたのだから…申し訳ない!」
普段の調子でそう言った善子だったが、すぐにいたたまれなくなりすぐ頭を下げる。
「別に善子ちゃん一人が悪い訳じゃないわ」
そう言って梨子が慰めの言葉をかける。他の人なら一番を弾けるとは限らないし、そもそもかなり確率の低い賭けでしかない。
「でもこうなった以上、本気で考えないとね…」
「説明会か、ラブライブか…」
果南とダイヤが神妙な表情で告げる。
「どっちか選べってこと?」
「そうするしかありません」
善子にそう聞かれるが、ダイヤは冷静にそう答える。
「だったら説明会ね」
「学校を見捨てるわけにはいかないもんね」
その言葉を受けて、鞠莉と果南は説明会を優先すべきではないかと告げる。
「でも生徒を集めるのに効果的なのは、ラブライブだと思います」
そう遥が異を唱えると、曜も「たくさんの人に見てもらえるもんね」と同意の意を告げる。「注目されるし」「それもそうずら」そうルビィと花丸も応じる。
「じゃあどうすんのよ?」
このままでは結論が出ない、そんな時善子がそう答えを求めてくる。
「学校説明会にでるべきだ、って人は?」
そこで果南が、そう多数決で決めようと挙手を求めるが誰も手を上げない。
「じゃあ、ラブライブに出るべきだ、って人は?」
やはり誰も手を上げようとはしなかった。
「はぁ…どっちかだよ?」
「解ってるけど…」
「決められないずら…」
どちらか一つだと言う果南に、鞠莉と花丸は弱々しく言い返す。
「そうだよ…どっちも大切だもん…」
千歌がそう呟く。ラブライブを選べば、学校の名前を広めることができる。説明会を選べば、説明会に来た人に入学したいという気持ちを後押しすることができるかもしれない。両方大切なのだ。
「鞠莉さん、少しいいですか?」
「一体どうしたの?ハルカ?」
解散した後、遥は鞠莉を呼び止めていた。神妙な表情の遥に鞠莉は何かを察したのか、すぐに了承してくれた。
「博樹さんの事なんですけど…」
「そんな気はしてたわ、何が聞きたいの?」
遥はまず、この前寺を抜け出していた間の事を話した。
「…そう、そんな事があったのね」
「はい、でも僕は彼が心配なんです…それにどうしてあそこまでの物を用意できるのかも、それで彼の居場所が解ったりしませんかね?」
鞠莉は顎に手を当てて少し考える仕草を見せた後、こう答えた。
「ヒロは色んな工学特許を持ってるの、だからその資金を使ってるんだと思う。多分それで拠点も転々としてるんじゃないかしら…」
「じゃあやはり、彼の居場所は解らないですね…」
「ごめんね?折角頼ってくれたのに」
「いえ、ありがとうございます」
そう謝る鞠莉に、遥は礼を言うと頭を下げた。そして「じゃあ僕も帰ります」と言って帰路につこうとした遥を、今度は鞠莉が呼び止める。
「ねえ遥?」
「何です?」
「私じゃなくてもいいから、絶対悩みとかはすぐ誰かに相談するのよ?もうヒロみたいに苦しむ人、見たくないから」
そう真剣な眼差しで遥をまっすぐ見て鞠莉はそう告げる。遥はその言葉に頷くと。
「ありがとうございます、僕にはみんなが居ます。だから大丈夫です。」
そう答えると、今度こそ遥は帰路につくのだった。
「2つに分ける?」
「うん、5人と4人二手に分かれて予備予選と説明会に出る…これしかないんじゃないかな?」
次の日の放課後、千歌から二手に分かれて両方にでるという提案がされた。
「でも、それでAqoursと言えるの?」
「それに、5人で予選を通過できるか解らないデース」
そう善子と鞠莉が言う。確かに自分たちは一人じゃない、でも9人揃ってステージに立つからこそAqoursなのだ。第一として、人数を半分に割いた状態で予備予選を通過できるとも限らない。
「嫌なのは解るけど…じゃあ他に方法ある?」
そう梨子が言った。自分たちはできる範囲で、最善の策を取るしかないのだ、と。
「遥くんはどう思うずら?」
放課後解散した後、図書室にいた遥は花丸にそう聞かれた。
「どうって言われても…」
そう言って遥は読んでいた本を閉じて暫く考える。
「本当はね、ガイアの力でみんなを両方に参加させたい…でも、ウルトラマンの力を使ってしまったら…きっとこれからこの力に頼りっきりになっちゃう。それが嫌なんだ」
「遥くん…」
「だから僕は今回の案には賛成だよ?それが僕らが自分の力でできる最善策だと思ってる」
そう前置きした後に遥はそう答えた。そもそもガイアが連れてきたなんて事態になればそれこそ大騒ぎになる。だから…と。
「遥くんぽいね、真面目ずら」
花丸はそう言ってほほ笑んだ。
「そうかもね…でもやっぱり、僕の力でやれることは全部やるよ」
そう遥は笑顔で答えるのだった。ウルトラマンに頼らずとも、できる事は全てやりきりたい。それが今の遥の望みだった。
『エントリー番号24番、Aqoursの皆さんでーす!」
そして迎えた当日、予備予選に出るのは二年生三人と黒澤姉妹の計5人。残りのメンバーと遥が、学校説明会にあたることとなっていた。
「千歌ちゃん…」
5人で立つステージ、そして学校の生徒は説明会に行っているので応援してくれているのは自分たちの保護者くらいというアウェーな状況に気圧されている様子の千歌にかける言葉は梨子にはなかった。
全く予想できていなかった訳では無かった。でもいつもの約半分の人数で立つステージは心なしか広く感じた。やはりどちらか選んで全員で立つべきだったのでは?そんな事も一瞬でも脳裏をよぎってしまう。
そんな時、会場に聞きなれた声が響いた。
「勘違いしないよーに!」
「やっぱりわたしたちは1つじゃなきゃね!」
その声の主は鞠莉と果南だった。振り返ると、自分たちと同じ曲の為に制作した衣装に身を包んだ残りの4人がいた。
「ほらほら、始めるわよ」
「ルビィちゃん、この衣装素敵ずら」
そう善子と花丸が持ち場についてそう声をかけてくる。客席の方を見ると説明会を放っぽりだしたであろう遥の姿も見えた。
「さあ行くよ」
「うん!」
皆揃うとは露程も思っていなかったので、思わず固まってしまった千歌に果南がそう声をかけると千歌も笑顔で応じ、今回のステージが幕を開ける。
MY舞☆TONIGHT
3年生と1年生で作り上げたこの楽曲、全体的に和風な曲ではあるがところどころに6人それぞれを象徴する要素を散りばめた、それぞれの個性が調和して生まれた曲だ。
パフォーマンスを終えた後、彼女達に贈られたのはステージに立った時のまばらな拍手ではなく、会場全体に響く大きなものだった。
今回の予選にも確かな手ごたえを感じていると。
「さぁ行くよ!」
「ここからが勝負よ!」
そう千歌と梨子が駆け出す。もしかしなくても説明会に間に合わせるつもりなのだ。
「千歌さん、予定通り行けます!」
遥が会場の外で待っていると、出てきた皆にそう声をかける。
「まさか遥くん、こうなるの知ってたずら?」
千歌の後に続いて走っていると、花丸にそう聞かれて遥は。
「どうだろ?でもこうなってほしいって思ってた」
そう悪戯っぽく笑って見せた。
千歌の考えはこうだ。会場から学校までを直線で引くとみかん山が間にある。その中を突っ切って最短で行こうというのだ。
「お嬢ちゃん達、乗ってくかい?」
みかん畑にたどり着くと、千歌の同級生の一人がそんなセリフをいいながら待っていた。
彼女の指しているのは、収穫したみかんを運ぶためのトロッコだ。これなら急な勾配も安全に抜けられる。本来安全性も考慮して大したスピードは出ない代物なのだが…
「みんな乗ったー?」
「全速全身!ヨーソロ~!」
千歌が全員乗ったのを確認すると、テンションが上がってきたのかそう叫ぶ曜や皆を乗せてトロッコが進む。
「冗談は善子さんずら」
「ヨハネ」
なんてやり取りが真顔で始まる。遅いのだ、歩いた方が速いのではないかというくらい。
「もっとスピード出ないの?」
なんて先頭に座っている果南も不満げだったが、それを見ていた遥が得意気に。
「みんなが怪我しないギリギリまで速く走るように改造しました、下りに入ればすぐです!」
なんて言い出すのを、皆冷めた目で見ていたのだが…
本当に下りに入ったとたんジェットコースターの如く急加速して下っていくトロッコに9人の悲鳴がみかん山に響き渡った。
「後で覚えてなさい!」なんて梨子の怒りの声も聞こえた気がするが遥は気にしない。
「もしかして乗らなかったのって…これしたせい?」
「い、いや~僕絶叫系苦手なんで…後で元通りにするから許してください…」
本来の持ち主の家の子である先輩にジト目でそう言われた遥は、そう言って土下座して皆が山を抜けた後急いで元通りにしたらしい…。
君の心は輝いてるかい?
説明会で披露した、二年生が作った楽曲だ。
学校で衣装やステージを学校のみんなが用意して待っていてくれたおかげで今回作った二曲を両方9人で披露することができた。
「遥(くん)~?」
「あの…えっと…ごめんなさ~い!!」
説明会が終わって合流した遥に、全員からお叱りの言葉を受けたのはまた別のお話。
はい、前半と後半の温度差ひどくてごめんなさい!
博樹君ずっとしんどい目に合ってるのに遥と来たら…
最初はガイアの手に乗って行くのも考えてたんですがやっぱ違うなって思ってやめました(代わりに果南ちゃんがブレーキ壊すシーンが遥がトロッコをジェットコースターに変えました)
それではまた次回お会いしましょう