もう前書きでしゃべることがないので本編行きます。
「ふわぁあ~」
朝目が覚めた遥はあくびを噛み殺しながらベランダにでる。今日はいつもより早く目が覚めたなぁなんて思っていると、もう制服姿の人影が外へ走っていくのが見える。
「先輩今日は早いなぁ…」
その正体は千歌だった。もっとも千歌と梨子以外に他に浦の星の生徒はいない訳だし、当然と言えば当然なのだが。
そんな時、遥の携帯に一通のメールが届く。この前の説明会の延期といい、朝一で入る連絡にいい思い出がないので今度は何事かと思いながらメールを開く。
「そっか、できたんだ…」
そう呟いて携帯を置いたのだった。
「ふんふふ~ん♪」
「随分ご機嫌ですわね…」
放課後部室でそうダイヤが呟く、全員の視線の先には鼻歌交じりに部室の窓を拭いている千歌の姿があった。
「こんな時に…」
「もしかして忘れてるのかも」
「その可能性が高い気がする…」
そう善子と梨子、そして曜も口々に言う。
「千歌ちゃん、今日何の日か覚えてる?」
そう曜が確認するように声をかけると千歌は振り返ると。
「予備予選の結果発表の日でしょ?」
と不思議そうに答える。「おぉ」と声を上げる面々の隣で「覚えていたずら」なんて花丸の驚きの声を上げる。
「き、緊張しないの…?」
「ぜーんぜん」
ルビィに聞かれると、そう千歌は即答した。
「だってあんなにうまくいって、あんな素敵な歌を歌えたんだもん。絶対突破してる。昨日聖良さんにも言われたんだよ『私が見る限りなら、恐らくトップ通過ね』って」
「いつの間にそんな仲良く」
思えば9人で東京に行った時に彼女達と会う約束を取り付けたのも千歌だった。恐らく東京のイベント以降連絡を取っていたのだろうと遥は納得する。
そんな時、パソコンからメールが届いたことを知らせる通知音が鳴る。「きた!」とパソコンの前に座っていたルビィが嬉しそうに声を上げるとそのメールを開く。
そのメールの中身は、予選結果を記載したサイトへのURLだった。
「い、行きます!」
そう言ってルビィがサイトを開く、その後ろで全員が固唾を飲んでその結果に注目する。
エントリー№24 Aqours 予選通過
サイトを開いて最初にこの文字列が目に飛び込んできた。
「おお!」
「もしかしてトップってこと?」
そう千歌と梨子から喜びの声が上がる。
「やったずら~」
「うむ、よきにはからえ」
「鞠莉!」
「オーイエス!」
花丸が果南に抱き着き、善子と鞠莉はなんか堕天使ぽい?ポーズをとっている。
「ダイヤさんも!」
「は、はぁ…」
千歌に声をかけられたダイヤは、ハイタッチに応じるがどこかぎこちない様子だった。
「前途多難だよ~」
折角予備予選を突破したのに、千歌は机に突っ伏していた。
「今度は何?」
「ほら、予備予選と説明会とふたつもあったでしょ?だからお金が…」
今度は一体何事かと梨子が聞くと、千歌はそう答える。
「この前千円ずつ入れたのに…」
「もうなくなっちゃったの?」
そう果南と花丸が聞く。確かにラブライブへ参加するために移動費や参加費だけでなく。衣装などの準備にもお金がかかるので、学校から割り振られる部費以外にも自分たちで出し合って何とかしてきたのだが、やはりそれでも追いつかなくなってきている。
「このままだと、予算が無くなって仮に決勝に出場したとしても…アヒルさんボートで移動…なんてことに」
「沈むわい!」
なんてやり取りを花丸と善子が始めるが、ただの笑い話では済まなくなりつつあるのも事実だ。
「いくら残ってるの?」
そう言って梨子が机の中央に置かれていた、うちっちーを模した貯金箱をひっくり返すと。「ちゃりん」といった音を立てて五円玉が一枚転がり出てくる。
「オウ!綺麗な五円玉デース」
「ご、ごごごご五円!?」
何が珍しいのか喜ぶ鞠莉と反対に、残額がこれだけだという事実に驚くルビィ。
「ご縁がありますように」
「ソーハッピー!」
「言ってる場合か!!
能天気な曜と鞠莉に善子がツッコミを入れる。正直ちょっと珍しい光景だななんて思っていると千歌が「どうしたんです?」とダイヤの顔を覗き込む。
「え?…いや、果南さんも鞠莉さんも随分皆さんと打ち解けたと思いまして…」
そう答えるダイヤだったが、心なしかあまり嬉しそうには見えなかった。
「果南ちゃんはどう思うずら?」
「そうだねぇ…」
「果南…ちゃん?」
花丸の果南に対する呼び方が気になったのか、そう小声で反芻するダイヤの様子に何人かは気が付いていた。
「なにとぞ5円を10倍…いや100倍に…」
「100倍は500円だよ」
そう曜が指摘する。全員で淡島に移動したのはいいのだが、千歌にあてがあるのかと思えば神頼みだった。「いきなり神頼み?」と梨子も不満げだったが。
「それに神頼みするくらいだったら…」
そう言うと全員の視線が鞠莉に集中する。
「鞠莉ちゃん!」
皆が口をそろえて彼女へそう訴えかける。
「小原家の力は借りられまセーン!」
「ですよね…」
当然の如く突っぱねられてしまう。まぁ借りられるのなら今現在資金難に陥ったりしていない。
「鞠莉…ちゃん?」
再びそう反芻するダイヤの声は、談笑している他のメンバーの耳には今度は届いていなかった。
「バイト…ですか?」
翌日沼津で練習を行っていた際、練習場所の施設の屋上の庭園で休憩していた際曜にアルバイトを提案された遥が、そう聞き返す。
「しかたないわよ…」
そう返したのは梨子だったが、確かにそうなのだ。もう自分たちのお小遣いでは間に合わない、なら稼ぐしかない。
「あら、今度は何ですの?」
そんな時だった。体をくねらせながらダイヤがわざとらしく聞いてくる。
「お腹痛いんですか?」
「違いますわ!」
千歌にはそう見えていたらしい。ダイヤはすかさず否定の言葉を叫ぶが、すぐ咳払いをして取り繕うと。
「い、いえ…何か見てらしたような…」
「はい、内浦でバイト探してて。コンビニか新聞配達かなぁって」
そう言って曜が、先程まで読んでいたタウン誌を見せる。
「なら、沼津の方が良いかもしれませんわね」
そう笑顔でダイヤは告げる。機嫌がいいのか悪いのか判断しかねる彼女の様子に、遥は少し不気味に思っていたが二年生3人は感じていないようだった。
「沼津かぁ…」
「沼津なら色々あるよ」
そう考え始める千歌に、曜はタウン誌をパラパラと捲ると沼津でのバイト求人を見せてくれる。
喫茶店や花屋、変わりどころでは写真のモデルなど内浦と比較すれば様々な選択肢がある。それを見て千歌は目を輝かせる。
「おぉ、何か楽しそう!バイト先は沼津に決定!」
「ぶっぶーですわ!」
千歌の安直な決定に思わず大声をだすダイヤに、4人はびっくりして視線を彼女へ向ける。
「安直すぎですわ!バイトはそんな簡単なものじゃありません。大抵週4日からのシフトですので、9人揃って練習というのも難しくなります。大体、何でも簡単に決め過ぎてはいけません、ちゃんとなさい!」
そう捲し立てるダイヤに気圧されるが、ダイヤは「しまった」といった表情を浮かべるが。
「確かに、ダイヤさんの言うとおりね」
「さすがダイヤさん」
そう梨子と千歌が反応すると、「でもじゃあどうするの?」と曜がアドバイスを求める。
「フリーマーケットというのはどうでしょう?それなら短時間でお金も集まりますわ」
「なるほど…確かにそうですね」
結局その日は何時フリーマーケットがあるから、その日に持ち寄って出品するかという相談で休憩時間を使い切ってしまった。
その日の夜の出来事だった。遥は夕食後、母に「ちょっといい?」と呼び止められた。
「どうしたの?母さん」
「お母さんずっと心配してたの、本当に遥はこれでいいの?って」
そう神妙な表情で母親に告げられ、遥は疑問符を浮かべる。
「ここに引っ越したのも、今遥がやってることも…」
引っ越したのは梨子のスランプと、親の仕事の都合が重なったからだった。遥はリパルサーリフトの件から正式にアルケミースターズのメンバー公表された。その活動も、東京にいた方が都合がよかったのも間違いない。
それに今やっていることのもう一つは、Aqoursのマネージャーの事だろう。
「僕は今幸せだよ?だってここに来て出会った人が、僕を変えてくれたから。だからここに来てよかった、本気でそう思ってる」
そう遥は静かに答えた。内浦に引っ越してきて、浦の星に入学して、ガイアの光を手にした。それだけじゃない、Aqoursとの出会い。そしてもう一人のウルトラマンであるアグル―博樹との出会いが、今の自分を創り上げてくれた。
だから今自分は幸せだって、そう今なら胸を張って言える。
「そう、なら良いの。」
そう言って、それ以上何かを聞くことはしなかった。
「でも、ありがとう。僕のやりたいことやらせてくれて」
「遥がやりたいこと、お母さんは応援してるから」
「うん、ありがとう。ホントに」
そうほほ笑んだ。でも、自分がウルトラマンだとは言えなかった。
「やっぱり、お母さんには言えない?」
自分の部屋に入ろうとした時、梨子にそう声をかけられた。恐らく聞かれていたのだろう。
「うん…アルケミースターズの事は言ってるしこの事も言ったらきっと反対されるから…」
「そう…でもいつか自分で伝えるのよ?」
「うん、わかってる…」
そう答えると、梨子の返事を待たずに自室に入る。
その週末、フリーマーケットが沼津の公園で行われるのでみんなで出店することになったのだが、遥は堤に呼ばれジオベースに訪れていた。
「悪いな、折角の休日に」
やってきた遥に、開口一番そう告げた。
「大丈夫ですよ、話はダニエルから聞いてます。出来たんですね」
「そうだ、君はリパルサーリフトの件もあるし。一度君にも実物を見て欲しくてね」
そう言うと、ジオベース内ですでに発進態勢だった大型輸送機『ピースキャリー』に乗せられる。これから案内される場所を、遥は知っていた。
「これから行くのは―「エリアル・ベースですよね?」
堤が行き先を教えようとすると、遥がそう食い気味に答える。よほど興奮しているらしい。そんな遥に苦笑いを浮かべるが、堤は話をつづけた。
「そうだ、この前のファイターへのアドバイスのお礼もかねてコマンダーが是非君にも一度見てもらいたいと言っていてな」
「ありがとうございます、でも本当に完成するなんて…」
そう遥は感慨深げに呟くが、この大型輸送機もファイターを戦闘空域まで搭載して飛行することが出来る等、かなり高性能な期待となっている。
赤道軌道上の成層圏まで飛ぶと、全長600mの空中要塞『エリアル・ベース』が浮いていた。
ここから、有事の際は世界中どこにでも素早く出撃できるようになっている。浮遊している仕組みはファイターと同様のリパルサーリフトによって浮力を得ているのだ。
「ご足労感謝する、XIGコマンダーの石室だ」
指令室に案内された遥を迎えたのは、コマンダーを名乗る遥の親より少し若いくらいの男性だった。ベージュの制服に身を包んだ彼は、そう名乗って手を差し伸べる。
「初めまして、桜内遥です」
遥も名乗ると、その手を握る。その後、艦内を一通り案内された後最後にファイターの格納庫に通される。
「ここが格納庫だ、といってもファイターはジオベースでも見たな」
そういって格納庫を案内されるのだが、ファイターSS一機とファイターSG二機の三機編成で出撃する。そしてファイターはチームライトニング、チームファルコン、そして女性のみのチームクロウの3チームある。
つまり全部で9機必要なわけだが、SSともSGとも違うシルエットを持つ黒いファイターが一機存在していた。
「あの黒いファイターは?」
「あれはファイターEX。一応私の専用機なんだが、ここかピースキャリーで指揮を執る事が多いからな実践に出したことがないんだ」
遥に聞かれ、堤はそう答えるが遥は「でも拡張性は他の二種よりあるんですね」などと整備中の機体をじろじろ観察していた。
「流石アルケミースターズといったところだな、高校一年生とは思えない」
「よく言われます、歳不相応だって」
そう言って遥は笑って見せると、「乗ってみるか?」と言われたので「いいんですか!?」と目を輝かせてEXのコックピットに座らせてもらったりしたのだが、終始ご満悦だった。
そしてその後、前回できなかったファルコンとクロウの隊員とのファイターについての話などを行った。その時またシュミレーターのスコアを更新して「もう隊員になる?」などと冗談を言われた。
一方でAqoursの9人は撤収作業を行い、その日の売り上げを確認していた。
「アヒルボート決定ずら…」
そうそろばんを叩いていた花丸が呟く。最初に値段をきちんと設定していなかったせいで、女の子に根負けしてぬいぐるみを5円で売ってしまったり、今度はダイヤが今度は強気すぎて客に引かれてしまったりで芳しくなかった。
結局その日の売り上げは500円、確かに百倍にはできたわけだがこれでは全く解決にはなっていない。
「鞠莉はそんなの持ってくるし」
そう言って果南が鞠莉の方へ視線を向けると、彼女は自身をモチーフにした像を軽トラの荷台に積みこんでいた。正直こんなところで売るような代物ではない。
「これ売る気だったの?」
そう車を出してくれた千歌の姉である美渡も呆れ気味だった。しかしそれが気に入らなかったのか当の本人は。
「それを言ったら善子も売り上げナッシングでーす!」
なんて言って善子の方を指さす。善子が持ってきたのは段ボールいっぱいに詰められた黒い羽根だった。数は解らないが一つも売れなかった。
そんな時突風が吹き、段ボール内の羽が巻き上げられる。
「ふふふ…まるで傷ついた私の心を癒してくれるかのよう、美しい…」
「バカな事言ってないでさっさと拾いな!」
そう美渡の怒声が飛ぶと、慌てて拾い集めるのだった。
「果南ちゃん」
「ん?」
ふと千歌に声をかけられた果南は彼女に向き直る。
「ダイヤさん何かあった?」
「どうして?」
「なんとなく」
そう思ったのは、最近の彼女の様子がどこかおかしいと感じていたからだ。でもどうおかしいのかうまく言い表せない。だからそう曖昧な答え方になってしまう。
「千歌はそういうところ、不思議と鼻が利くよね」
「それほめてる?」
「褒めてるよ。心配しないで、わたしと鞠莉でちゃんとやっとくから」
三年生三人で解決させる、そう言うと千歌はそれ以上追及することは無かった。
「話ってなんです?今しなければならないのですか?」
そうダイヤが果南と鞠莉に対して不満げに言う。果南と鞠莉が「三人は用事があるから」といって下級生6人には先に帰ってもらったのだ。
「やっぱりダイヤ、何か隠してるでしょ?」
「下級生と仲良くしたいなら、そう言えばいいのに~」
そう果南と鞠莉がたたみかける。
「違いますわ、私は別に…」
そう言って口元を人差し指でかきながら顔をそむける。
「どう?」
「ブランクデ~ス!」
「ダイヤはごまかす時、必ずほくろのとこをかくんだよ」
そう果南と鞠莉に言われその動作を止める。
「も~う逃げられないよォ」
「さあ、話すがよい!」
「いえ、私はただ…」
「ただ?」
そう言って中々話そうとしないダイヤに対して口をそろえて聞き返すと。
「ただ…、笑いませんか?」
「笑う?」
「そんな事するハズありまセーン!」
「でも…」
中々言おうとしないダイヤに段々イライラしはじめる。
「あーもう」
「何年の付き合いだと思ってるの!?」
そう果南と鞠莉に強く言われ観念したのか、ダイヤはやっとその重い口を開いた。
「じゃあ、言いますけど…」
今はいないが万が一通行人に聞かれるのも嫌なのか、顔を近づけて小声で話すダイヤに鞠莉と果南は顔を近づけて続きを聞く。
「笑わない」そういう約束でダイヤは白状したわけだが、それは無理な相談だった。その場には果南と鞠莉の笑い声と、ダイヤの怒りの声が響くのだった。
すいません、今回も戦闘なしです。連載始めた頃は毎回入れるつもりだったのですがちょっと話の進行的に厳しいものを感じて途中でやめてしまったんですよね。
そして次回、気になる生徒会長の悩みとは?お楽しみに!