ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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最近文字数がどんどん増えてきた作者です。
とりあえず今まで6500字を目安にしていたのですが、今後は8000字前後になるかもしれませんので、お時間あるときに読んでいただければと…
それでは第35話、どうぞ


35話 大地裂く牙/犬を拾う。

その日は、午後からどんどん雨が強くなっていった。季節の変わり目ということもあるのかもしれないが、やはり雨の日はどうも好きになれない。

 

「また、雨強くなってきたね…」

 

窓から外を眺めながらルビィがそう呟く。今日は曜の父の知り合いが借りている沼津の練習場所なので屋内だが、この感じでは帰る頃にはもっと雨が強くなっているだろう。

 

「今日は、無理して続けない方が良さそうですわね」

 

ホワイトボードを使ってフォーメーションの相談を梨子としていたダイヤがそう告げる。帰りに雨に打たれて体調を崩しては元も子もない。

 

「もうすぐ地区予選なのに…」

 

「入学希望者も50人超えてきたんでしょ?」

 

残念そうに千歌が言うと、曜もそう言ってまだまだ頑張ろうアピールをしてくる。

 

「まぁ気持ちは解るけど安全第一、今日のところは終わりにしよう」

 

そう果南に言われてしまえば、それ以上は何も言わず。今日の練習は終わりとなった。

 

 

「果南ちゃんと梨子ちゃん遥君はうちの車ね、曜ちゃんも乗ってかない?」

 

「いいの?じゃあお言葉に甘えて」

 

千歌の家と、鞠莉の家が車で迎えに来てくれたのでお言葉に甘えて車に乗り込む。

 

「善子ちゃんは?」

 

「嵐が堕天使の魂を揺さぶる!秘めたる力がこの羽に宿る―」

 

「ふざけてる場合じゃないよー」

 

いつも通りと言えばいつも通りな善子のセリフを受け流しながら千歌も自分の家の車に乗り込む。

 

「拠点は至近距離にあります。いざとなれば瞬間で移動できます」

 

「まぁすぐ近くだしね」

 

小原家の車の後部座席に座るルビィがそう心配はしてなさげに告げる。まだこのくらいの雨なら問題ないだろう。

 

「ごきげんよう~」と後部座席に座るルビィ、ダイヤ、花丸が言うのを手を振って見送ると。十千万の車に乗った面々がその後に善子に手を振りながら走り出す。それを見送ると善子も帰路につくことにする。

 

「胸騒ぎがするこの空…最終決戦的な何かが始まろうと―」

 

そこまで言いかけて突風が吹く。想像以上に強い力に思わず傘が手から離れてしまう。

 

「あっこら!待ちなさい!」

 

この傘結構高かったのに。なんて思いながら黒地にフリルの付いた傘を追いかける。傘は風が弱まれば止まるが、また少しでも風が吹けばそれに流されて転がっていく。

 

「何その動き?まさか運命的な何かが私を導いて…」

 

などと独り言を言いつつ傘の様子をうかがうと、電柱を囲うようにそびえるブロック塀に引っかかって傘が止まる。それをそーっと近づいて傘を手に取ると、傘の陰になっていた場所に何かを見つけた。

 

善子は優し気な笑みを浮かべてそれを見つめた。この出会いはきっと運命、そう感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『静岡県沼津市の――町の地下に怪獣の生命反応をキャッチしたG.U.A.R.D.は来週、怪獣に対して地底貫通弾を使用することを明らかにしました。当日、近隣の住民はこの場所には近寄らないようにお願いします。』

 

翌朝、ニュースをつければこんな話が舞い込んできた。

 

「どんどん物騒になってきたわね…」

 

「何もしてない地底怪獣を、いきなり攻撃するなんて…」

 

そう母と遥はそれぞれ感想を呟くが、母は「この日はとりあえず外出しないほうがいいかもしれないわね」と言ったのでそれに従うことにした。

 

「遥はやっぱりよく思わない?」

 

「うん、地底怪獣だって同じ地球の命なのにいきなり攻撃するなんておかしいよ」

 

朝バスを待っているときに、梨子にそう聞かれたので答える。

 

「でも、出てきてから騒ぎになって、怪我をする人が出たり遥が戦って何かあったらって思うと、私は間違ってないと思うわ」

 

「それは…そうなんだけど…」

 

そう歯切れの悪い返事しか、遥はできなかった。でも遥の内心に合ったのは、このやり方を続ければ人類は巨大生物を地球上から抹殺しなければいけなくなるのでは?という疑念だった。

 

「梨子ちゃん遥君、おはよ~」

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

その時、十千万から千歌が出てきてそこからは他愛もない話に変わり。普段通りの日常が始まっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、絶対動かないから」

 

曜がそう言ってしいたけを抑えている。すると梨子は恐る恐るしいたけに手を伸ばすが…。

 

「わんっ!」

 

「ひっ…やっぱり無理ぃ!」

 

あと少しで触れられる、そう思ったがそこで吠えられると梨子は悲鳴を上げて離れてしまった。

 

「何騒いでんの?」

 

そう千歌の部屋から顔を出した遥に聞かれると、代わりに曜が答える。

 

「梨子ちゃんがしいたけと目が合って触れられるかもって」

 

「本当!?」

 

それを聞いて千歌が部屋から飛び出してきて「どうぞどうぞ」としいたけを梨子に近づけるが、再び吠えられてしまい更に距離を取ってしまう。

 

「ダメ!やっぱり無理!!」

 

「しいたけ、梨子ちゃんの事好きだと思うけどなぁ…」

 

「そんなことないでしょ!」

 

喚く梨子に千歌がそう言うが、あり得ないと梨子が噛み付く。こっちがこんなに怖がっているのにと。

 

「そんなことあるよ。犬は見ただけで敵と味方を見分ける不思議な力があるって」

 

そう千歌は即答する。確かに吠えることはあれど、噛み付いたりしてきたのは見たことは無いが。

 

「そろそろ始めるよ」

 

そうしていると果南が口を挟んできた。今日の目的は、梨子がしいたけを触れるようにすることじゃない。

 

 

 

「今日こそ決めないと、もう時間もないんだよ」

 

予備予選の次は地区予選だ。しかし、まだそこで披露する曲のテーマが決まらない。

 

「でもテーマって言われると…」

 

「かといって、暗黒というのはあり得ませんけどね」

 

そうルビィとダイヤが言うと、善子は「なんでよ!」と不服そうに言う。

 

「堕天使といえば漆黒。Aqoursと共に歩んできた堕天使ヨハネの軌跡を―」

 

「やっぱり輝きだよ!」

 

「聞きなさいよ!」

 

善子を遮って千歌がそう言う。「まぁ輝きって言うのは千歌がずっと追いかけてきてるものだもんね」そう果南も言うが「ですが」とそれをダイヤが遮る。

 

「Aqoursの可能性を広げるには、他にも模索が必要ですわ」

 

そう言ってダイヤが見せてきた、二つ折りのガラケーの画面には見覚えのあるスクールアイドルが映っていた。

 

「これってSaint Snowさんなの?」

 

そう千歌が聞く、以前東京のイベントで聴いた曲とは違う曲調の曲だった。

 

「一つに留まらない多くの魅力を持っていなければ、全国大会には進めませんわ」

 

「そうだね、この前突破できなかった地区大会」

 

ダイヤの言葉に曜もそう同意するが、前回突破できなかった。その事実が重く圧し掛かる、前よりもっと良いものを作らなければ突破できない。そう意識してしまうと中々思いつかない。

 

「新しい要素か…」

 

そう遥が呟くと、ふと近くから寝息が聞こえる。

 

「またこんなもので誤魔化して」

 

そう言って呆れながら梨子が、犯人である鞠莉の眼鏡を外すとその下に貼ってあった目のシールが剥がれる。

 

「待てば海路の日和ありだって」

 

そう苦笑しながらルビィが告げる。隣に座っていたし彼女には隠せずに口止めでもしたのだろうか?

 

「鞠莉ちゃん、長い話苦手だからね…ね、善子ちゃん」

 

そう言って千歌が隣にいる善子に話を振ったのだが、そちらを向くと善子の姿は無く代わりにしいたけがいた。

 

「善子ちゃんがしいたけちゃんに!」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

驚くルビィに梨子もそう言うが、やはり犬が苦手なのでその表情は険しい。そうこう騒いでいると「騒がしいですネ~」と鞠莉が伸びをする。流石に目が覚めたらしい。

 

「善子ちゃん?」

 

そんな時、ふと自身のスマホがメールの着信を振動で知らせてきたので花丸がそのメールの差出人の名を呟きながら、メールを開く。

 

「天界の勢力の波動を察知したため、現空間より離脱…?」

 

「どういうこと?」

 

メールを読み上げた花丸に千歌がそう問う、はたから聞いてても全く意味が解らない。

 

「要するに、帰る。ってことずら」

 

「普通にかけないのか…」

 

花丸に要約されて、ようやく理解する皆だったが同時に呆れてしまう。

 

「そう言えば花丸ちゃん、スマホ買ったんだ」

 

「無いといざという時に連絡が取れないからって持つように家族に言われたずら」

 

元々家に電化製品等があまりない花丸にとって、スマホも例外でなくあまり馴染みのない代物だったのだが。練習で帰るのが遅くなったり、このご時世だからと言われたらしい。恐らく後者が本音で、やはり娘が心配なのだろう。

 

「最初は使い方が解らなかったけど、遥くんこういうのの扱いに慣れてるから助かったずら」

 

「あはは…まぁ、こういう機会使うの好きだからさ?」

 

そう花丸に笑顔で言われるも、遥は若干引き攣った笑いを浮かべる。最初は善子が教えていたのだが、スクロールだのフリップだのと言った横文字を多用する善子に、花丸はただただ不思議な顔をするので「なんでわかんないのよ!」なんて言って匙を投げたので遥が教えたのだ。

 

その現場も、「年寄りにスマホの使い方を教える孫」といった光景に見えたとかなんとか…。これを当人たちに言うと怒られるので、善子やルビィを始めとしたクラスメイトの胸の内に秘められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、遥は自室でダニエルと連絡を取っていた。遥としても聞きたいことが多々あったので、久しぶりに自分から約束を取り付けたのだ。

 

「地底貫通弾で、怪獣を倒せると思うかい?」

 

『あれは戦争で使用禁止になった大量破壊兵器だ。それをまともに受けて、ただで済む生物なんていない』

 

「でも、そんな兵器を簡単に使うなんて…」

 

『残念だけど、僕たちにその決定権は無い。G.U.A.R.D.は地底怪獣が、人間に危害を加える前に排除するつもりだ』

 

「そんな事…」

 

『もう怪獣が現れてからじゃ遅いんだよ。犠牲者を出さない為に、解ってくれ…』

 

そう言われてしまえば、もう遥は何も言えなかった。そして今、根源的破滅招来体が一体どこから来ているのかを判明させるために動いていることを聞かされ、その日の話は終了した。

 

「怪獣も、同じ地球の命なのに…」

 

そう呟く遥は、自分に何かできないか?そう考えるが、答えは出なかった。

 

そんな時だった、犬の吠える声が聞こえた気がした。

 

「しいたけがうちにいる?いや姉さんの悲鳴の方が先に聞こえるか」

 

なんて笑いながら、飲み物を取ろうと廊下に出ると梨子に遭遇する。

 

「は、遥?どうしたの…?」

 

「どう?って飲み物取りに行くだけだけど…ってどうしたの?」

 

遥が部屋から出てきたのに気が付いた梨子は目に見えて動揺していたが、気になるのはその手だ。ピンク色の紐を握りしめ、その紐は梨子の自室へ伸びていく。

 

「いや、な…なんでもないわよ?」

 

「キャン!」

 

「は?」

 

そう言って何やら誤魔化そうとする梨子を余所に、室内から何かの鳴き声が聞こえる。

 

「ちょっと見せて」

 

「ダメよ!だって…」

 

「いいから!」

 

無理やり梨子の隣を通り抜け、室内で遥は信じられない物を目撃する。

 

「これは…」

 

そこにいたのは、ライトグリーンの小さいケージの開いた扉から出てきて動物用ビスケットを食べる白黒の体毛の小型犬だった。ピンクの紐はその扉を開けるのに使ったらしい。どうやって閉めるつもりだったのか…。

 

「どういうこと?」

 

「えっと…」

 

観念した梨子は、事の顛末を遥に説明する。

 

最近善子が拾ったらしいこの犬の面倒を暫く見て欲しいと言われたこと、善子のマンションは動物禁止で他に頼れる人が居なかった事。

 

「ねぇ遥…?」

 

「嫌だからね」

 

「まだ何も言ってないじゃない…」

 

「大方、僕に面倒見ろって言うんでしょ?僕の部屋パソコンとか色々あるし、この子の毛とか入り込んで壊れたら嫌だもん。そもそも、嫌なら持って帰ってこなきゃいいのに…」

 

「そうなんだけど…」

 

「ともかく、僕の部屋には入れないでね」

 

そう言って離れようとすると、その犬と目が合ってしまう。そして遥は滅茶苦茶吠えられた。犬の方も遥はお断りったらしい。

 

結局この後母親にもばれたが、梨子が面倒を見ることで落ち着いた。

 

 

 

 

 

 

それから数日が経過したある日の事、学校の屋上で練習を行っていた。沼津までの交通費を毎日払う訳にもいかないのでの措置だった。

 

「ルビィちゃんもうちょっと右がいいかな?」

 

全体のフォーメーションを確認していた遥がそう告げる。

 

「前よりだいぶ良くなった」

 

果南もこちらに移動してみて、全体のバランスを確認してそう言う。

 

「ではもう一度…と言いたいところですが…」

 

そう言いかけてダイヤが空を見る。もう季節も秋になりどんどん日が短くなってきている。そんなに練習時間はとれていないが、もうすぐ日が沈むのでもう終わらざるをえない。

 

「続きは沼津で練習するときにしよ」

 

「じゃあもう終わり?」

 

鞠莉が仕方ないといった風に言うと、そう梨子が嬉しそうに聞いてくる。

 

「どうしたの?」

 

「えっと…私、今日も先帰るね」

 

千歌に聞かれると梨子は、少し困ったような反応を見せた後そそくさと帰って行ってしまった。

 

「え?またぁ?」

 

「何かあったずら?」

 

「そういえばここの所、練習終わるとすぐ帰っちゃうよね」

 

そう千歌と花丸、ルビィが言うと全員が頷いて同意する。

 

「遥くん何か知らない?」

 

「え?いや僕は特に…」

 

あれ以降、なんだかんだ犬の事を可愛く思い始めたのかまだ触れはしないものの、家に居る間ずっと犬に構っている印象を受けた。しかしこれを言えば後々面倒な気がしたので黙っておく。

 

そして善子も察しているのか、微妙な表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

「で、ついて来るわけね」

 

自宅の前で遥はそう言って、普段降りないバス停でバスから降りた人物に声をかける。

 

その正体は善子なのだが「悪い?」と言われたので「別に」とそっけなく返してみる。

 

「あの犬を拾ったのは善子ちゃんだし、姉さんと話して自分が良いようにすればいいよ」

 

「だからヨハネよ」

 

そこじゃないだろ。とは口に出さなかったが、とりあえず善子を家に上げる。

 

「あら?善子ちゃん?」

 

「姉さんに用があるってさ」

 

「お邪魔します、梨子ちゃん少しに用があって」

 

家に帰ると、母親が出てくるがそう言うと納得し梨子の部屋へ善子を案内する。流石に親の前では堕天使は顔を見せなかった。

 

「梨子、お友達よ」

 

そう言って母親が梨子の部屋のドアを開ける。

 

「あら?まだそのワンちゃんいたの?」

 

「うん、もうちょっとだけって言われちゃって」

 

ケージの中にいる犬に気が付いてそう言う母親に対してそう答えると、ケージを持って立ち上がる。犬が先程梨子が買ってきたおもちゃで遊んでいて、ケージが多少揺れても気にしていない。

 

「でも、梨子ちゃん犬凄い苦手だから」

 

そう言って善子がケージを梨子から奪い取る。

 

「あら、善子ちゃん家はマンションだからダメだって」

 

そう言って取り返す。「少しなら大丈夫よ」と再び奪い取る。

 

「ダメっていうから預かったのよ?ご飯にしましょうね、ノクターン」

 

そう言って再びケージを取り返す梨子に「ノクターン?」と善子が訝し気な視線を向ける。

 

「まあどうぞ、ごゆっくり…」そう言って母は呆れ気味に部屋から出ていく。

 

「ちょっと、何なのよノクターンて」

 

「この子の名前よ、いつまでもワンちゃんじゃ可哀想でしょ?」

 

「この子は私が出会ったのよ?名前だってライラプスって立派なのがあるんだから」

 

そう善子が梨子に噛み付く。

 

「大体何よ?犬苦手だったんじゃないの?」

 

「苦手だけどしょうがないでしょ?面倒見て欲しいって言ったのは善子ちゃんよ」

 

「ヨハネ!」

 

そう言っていると、再びドアがノックされ母親が入ってくる。

 

「二人ともちょっといい?沼津の方で貰ってきたんだけど…」

 

そう言って母親が見せてくれたのは一枚のチラシだった。

 

それは迷子犬を探しているという内容で、写真に写っていた犬はたった今2人が取り合っている犬と全く同じで、名前は「あんこ」というらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてやってきた地底貫通弾発射予定日、遥は家を抜け出して発射基地の近くまで来ていた。

 

そこには、発射を阻止されないためか沢山の砲台や、管制基地が出来上がっていた。

 

「たまたま街の近くの地下で眠ってるだけの怪獣をいきなり攻撃するなんて…そんなこと―」

 

「許されるハズがない」

 

「博樹さん…」

 

ふと後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには湊博樹がいた。

 

「地底に眠っていた怪獣たちを呼び覚まし、地底貫通弾を使わせたのはオレだ…」

 

「でもそれは…」

 

「そうしていなければ、沢山の人間が死んでいた…オレは救われたと思っていた。けどそれは違う、地球へ向けられた刃は、やがて人類に対して跳ね返る…!オレは腕づくでも、地底貫通弾の発射を止めて見せる」

 

それは、怪獣を呼び覚まして回った事への罪の意識からくるものなのだろう。博樹はそう言うと、基地の方へ歩み去って行った。

 

「怪獣は死なんよ」

 

「え?」

 

どうしたものかと悩みながら付近を歩いていると、以前東京で出会った巫女が話しかけてきた。どうしてここにいるのかも疑問だが、あの時と全く同じ格好だったしもう触れないでおく。

 

「ここに住む怪獣は、大地の力に守られているんや。だから、ミサイルがどの程度かは解らんけど、一撃で殺しきることは無理やと思う」

 

「じゃあこの攻撃は…」

 

「ミズノエノリュウは、人間の街を見てやり直すチャンスをくれた。でも、今そのチャンスを投げ出そうとしてる。こんな事、ほんとはあってはいけないんよ…」

 

そう語る彼女の表情は、寂しげだった。

 

 

 

 

 

 

 

「何だお前?ここは関係者以外立ち入り禁止だ…ぐあッ…」

 

博樹は堂々と基地に侵入すると、警備員を不意打ちでスタンガンを押し付け気絶させ中に入っていく。

 

「あなたがここの責任者か?」

 

「柊だ、君は確か…」

 

博樹がそう声をかけた人物は、白い軍服を身に纏った。体格のいい男性だった。

 

「湊博樹、これ以上地球に傷を負わすな。こんなことを繰り返しているうちに、世界は滅ぶ」

 

「テロリストの言う事を聞く耳は持たん」

 

「自分達’だけ’が生き残る為に、他のものを滅ぼす事は人間の驕りだ!」

 

「私は沢山の人々が、怪獣によって虚しく死んでいくのを見た。怪獣は滅ぼさねばならない」

 

博樹の言い分ももっともだ。しかしこの柊という男は、以前アグルが呼び覚ましたゾンネルによって全滅させられた戦車部隊の指揮を行っていた。怪獣によって人が死ぬのを見てきた彼にとって、怪獣は滅ぼすべき敵でしかないのだ。

 

「その装置から手を離せ!」

 

そのまま装置を操作しようとするのを阻止すべく、肩を掴んで止めようとする博樹だったがすぐさま振り向かれ鳩尾に拳による重い一撃を受け、倒れこんでしまう。

 

「既に怪獣たちによって沢山の人の命が失われている。その人たちにお前はどう責任を取る?私はもうこれ以上犠牲者を出すわけにはいかない…これは、全人類の為に…」

 

そう言って最後のスイッチを押す。それによって、地底貫通弾が発射される。

 

そして激しい地響きの後、地底から激しい爆発音が鳴り響く。しかし、それで終わらなかった…。

 

地底から、四本足の犬型の怪獣が飛び出してきた。額から前方にまっすぐ伸びる二本の角は片方折れ、片目は潰れ、全身血だらけで口からもおびただしい量の地を吐きながら、基地を攻撃する。

 

「行ってあげて、あの怪獣はもうきっと長く生きられない…でも、関係のない人を巻き込まない為に君にできることをやって?」

 

「でも…」

 

「大丈夫、君もその光も本当はどうすればいいか解ってるはずや」

 

そう言って巫女は後ずさると、後ろの森に溶けるようにして消えていった。

 

「こうなってしまっても僕に、やるべきことがあるっていうの…?」

 

そう呟く遥は右手に握りしめたエスプレンダーに視線を落とす。そこには地球の光が、遥に変身を促すように激しく光を点滅させていた。

 

「うわぁぁあああ!!」

 

叫びながら遥は光を開放し、怪獣の背後にウルトラマンガイアとして現れる。

 

ガイアは、怪獣を管制室に近づけさせない為に後ろから掴みかかり距離を取らせようとするが、長い尻尾に弾き飛ばされてしまう。

 

一体あのボロボロの身体のどこにそんな力が?そう思ってしまうような力で、脚を引きずりながら基地を破壊し、自分の敵を知っているかのように管制室へまっすぐ進んでいく。

 

「防衛システム、始動」

 

柊は、それに動揺することなく砲台を起動させ怪獣に攻撃する。しかし怪獣は苦しみながらも体当たりでそれを破壊しながら進んでいく。

 

ガイアはその様子を、ただ見ているしかできなかった…砲台を破壊されても、第二、第三防衛システムを起動し応戦する。そして怪獣はそれを破壊する。まさに血を吐きながら続けるマラソンだった。

 

「お前には聴こえないのか?あの大地の叫びが!」

 

「ヤツは怪獣だ、滅ぼさなければならない…」

 

ふらふらと起き上がる博樹の訴えに、そう淡々と答えつつ柊は怪獣を攻撃する。

 

そして、重い身体を引きずりながら管制室の目の前までたどり着いた怪獣はその場で糸が切れたように倒れこみ、二度と動くことは無かった…。

 

ガイアはただ、怪獣が目の前で力尽きるのを見ているだけしかできなかった。

 

「ガイア、怪獣を地底に戻してやれ…」

 

博樹は外に出ると、そうガイアに告げた。するとガイアは、怪獣の身体を持ち上げるとその亡骸を地底の、元々眠っていた場所に戻すのだった。

 

「僕には、何も護れなかった…」

 

ただ遥には、そう呟く事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?
今回登場した怪獣はティグリス、ミズノエノリュウが青龍なら白虎に相当する怪獣です。ちなみにゾンネルは玄武に相当するらしいです、亀か?あれ?
では朱雀は?それは今後のお楽しみと言う事で…
それではまた次回お会いしましょう。
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