ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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前回のあらすじ
怪しい露店を開いていた女性に魔導書を譲り受けてから、悪夢を見るようになった善子。
そして時を同じくして夜の沼津に現れたガンQ。その目的とは?


37話 堕天使の望み/in this unstable world

「これは…?」

 

「友達の家のお寺の書庫で発見したものです」

 

そこの職員に、そう言って事の顛末を説明しすぐに調査をすることとなった。

 

だが、まだ情報が足りず。打開策をすぐに見出す事はできなかった。

 

「すみません、折角提供してさらに手伝っていただいたのに…」

 

そう遥の話を信じてくれた職員の男性はそう告げるが遥も「これだけの情報しかないうちは仕方ないですよ」そう返すのだった。

 

気が付けば辺りは暗くなってきていた。気が付けば母親からもいつまで外をほっつき歩いているのか?という旨のメールが来ていた。本来ならすぐに下校しなければいけないのでこの指摘は当然ではあるのだが…。

 

 

 

 

「いない…どこに行ったの?」

 

「あれ?善子ちゃん?」

 

沼津駅まで戻ってきたとき、私服の善子を見かける。

 

「遥…」

 

「体調は大丈夫なの?」

 

「それは…」

 

善子の顔色は学校で見た時からよくなったようには見えなかった。

 

「ガンQの対策を、今ジオベースでやってる。もうちょっとで解決できるから、今は家で休んで?」

 

「…できないわよ」

 

「どうして?」

 

「それは…」

 

善子は気が付いていたのだ。あの本を貰ってから見るようになった悪夢、そしてその悪夢に出てきたままの姿で街に現れたガンQこれは全部つながっていると。

 

だからこの本をくれた女性にもう一度会おうと探していたのだ。遥から書物の話を聞いた善子は、その事を遥に話した。

 

「そんな事が…その本はどこに?」

 

「私の部屋よ」

 

「見せてもらってもいい?」

 

「いいけど、ベルトが外れないから中身は解らないわよ?」

 

「それでもいいから」

 

そう言って善子の家に向かうが、遥がいくら力んでもその本が開くことは無かった。

 

「くっそ…どうなってんだこれ?」

 

「だから言ったじゃない、開かなかったって…」

 

そう言って善子が遥から本を取り上げると、ベルトがはじけ飛んだ。

 

「嘘…なんで…?」

 

貰った日も、今遥がやったようにどんなに頑張っても外れなかったのに、今少し善子が触っただけで弾け飛んでしまった。

 

「…開くよ?」

 

驚いて落としてしまった本を持って遥がそう言うと、善子は無言で頷く。そして恐る恐るページを開くのだが…。

 

「これは…呪術?」

 

「魔導書よ、そう言われたわ」

 

「違う!この本は…ガンQを生み出す呪術に違いない…」

 

その本に書かれていたのは、特殊な能力を持つ人間の力を借りてガンQとして完全に復活するための呪術だと記されていた。

 

「これを持ってたらいけない!すぐ燃やそう!」

 

「ちょっと…」

 

勝手に本を燃やそうとし始める遥に、善子は怪訝な顔を浮かべるが遥はそれに構ってられない。帰宅してきた善子の母親が飛び出してきた遥に驚くが、それすら無視して近くのコンビニでライターを買うと河川敷ですぐに本を焼いた。

 

すると紫の炎に包まれ、本は完全に消滅した。

 

「何てことすんのよ!」

 

「善子ちゃん、今日はうちに泊まってって」

 

「は?」

 

「姉さんがいるし、何かあった時すぐ守れるから」

 

そう言うと、半ば強引に梨子や母親と話を付けた遥は善子と家に帰る。もちろん色々文句は言われたが、親にまで本当の事をいう訳にもいかず口裏を合わせて誤魔化しておいた。

 

「遥、女の子を家に連れ込むのはどうかと思うわよ?」

 

「へ?いやそんなんじゃないって」

 

「大人になるのは良いけど、ちょっと段階を飛ばし過ぎよ」

 

母親には勘違いされてしまったが…。

 

「遥はああいう子が好みなのね、気配りのできる礼儀正しい子だしお母さんはいいと思うわよ?」

 

「だから違うってば!善子ちゃんはただのクラスメート!!」

 

一方梨子も、突然泊まりに来た梨子に困惑していた。

 

「もともと泊まる約束してたことにして」そう遥に言われたときは本当に驚いたものだ。それに善子もあまり事情を話そうとしない。向こうの親は納得しているそうなので問題はないのはないのだがあまりピンと来ない。

 

「本当の事を教えて?」

 

「それは…」

 

「帰るときルビィちゃんに会ったけど心配してたわよ?それと関係あるんじゃないの?」

 

そう言われて善子は、事の経緯を梨子に話した。夢の事、魔導書の事…そしてガンQと魔頭鬼十郎の書物の事を。

 

「…そんな事が」

 

「私が変なもの貰わなきゃ、こんな事にはならなかったの…」

 

「善子ちゃんのせいじゃないわ、善子ちゃんも被害者よ」

 

「…」

 

「だって、まさか貰った本のせいで怪獣がでるなんて思わないじゃない?それに善子ちゃんもこうなることを望んだわけじゃないし」

 

「ヨハネよ…でも、ありがとう」

 

すこし胸のつっかえが取れた気がした。梨子は善子の話を全て聞いたうえでそれを信じて、そう笑いかけてくれた。

 

「安心したら眠くなってきたわ、おやすみ」

 

「変な夢見たら起こしてくれていいからね?じゃあおおやすみ」

 

その日はそのまま梨子の部屋に泊まるのだった。

 

遥はただ、このまま何もなく夜が明ければいい。そう思っていた。

 

 

目の前にボロボロのガンQがいる。またあの夢かと直感でそう思った。今までと違うのは、南蛮風の衣類に身を包んだ初老の男性がその前で浮いていること、こいつが魔頭鬼十郎なのだろう。

 

「我が呪術に気が付いたようだな…だがもう遅い、あの本の封印と解けるだけの力をお前は開放した」

 

「どういうこと?」

 

「お前の中に眠る力を開放させ、その力を我が貰う事で完全に復活する。そうすれば破壊制圧により我らの國を創る!」

 

魔頭の言っていることが正しければ、善子は自覚していなかっただけで特別な力を持っている。それを魔頭が開放していった。全ては自分の目的を果たす為。こんな回りくどい事をしたのは、以前ガイアに妨害されて余計に力を失ったからということを。

 

「そうすればお前の願いは全て叶う!さぁ共に我らが國を創ろうぞ!」

 

「嫌よ!私は國なんか欲しくない、今ここにある生活が大事なの!アンタの言う事なんか聞かないわ」

 

「…桜内梨子」

 

「え?」

 

「大事な友人を預かる」

 

そこで目が覚めた、隣を見ると寝ていた筈の梨子が居ない…。

 

「遥!梨子が、梨子が…」

 

「何だって」

 

何かあったら直ぐに対応できるようにと自室で寝ずに待っていた遥の部屋に飛び込む。遥も梨子が居なくなった事には気が付かず、ひとまず外へ飛び出した。

 

「姉さん!」

 

梨子は外にいた、いたのだが意識は無く。何かの力によって家の前の砂浜に浮いていた。

 

「よく来たな善子、さぁ力を我に」

 

そして魔頭も浮遊した状態で現れ、遥を無視し善子の方を見る。

 

「嫌よ!絶対あんたの言う事なんか聞かない」

 

「それは残念だ…」

 

そうにやりと笑いながら呟くと、梨子の身体が紫の炎に包まれ苦しみ始める。

 

「梨子!」

 

「卑怯だぞ!」

 

歯噛みすることしかできない遥に対し、善子の身体から光弾が放たれた。それを食らった魔頭は吹き飛ぶが、不敵な笑みを浮かべる。

 

「何これ…」

 

「それだけの力があれば完璧だ。ふんッ!」

 

自身がしたことに驚く善子に対し、そう満足げに呟くと善子へ手を向けると光を放つ。そして無理やり善子から力を吸収するのだった。

 

「ついに…ついに復活の時だぁ!」

 

そう叫ぶ魔頭の身体はガンQとなり、今までの身体が溶けたような不完全な姿から、以前戦った時の姿に血管のようなものが浮き出た異形の姿と変わる。

 

「善子ちゃん大丈夫?」

 

「ごめん遥…私のせいなのに…私のせいで梨子が…」

 

「悪いのは善子ちゃんじゃない、あいつだよ」

 

「ごめん…お願い遥、助けて…」

 

「助けるさ!いつだって、どんな時だって!」

 

倒れた善子に駆け寄る遥だったが、消え入る声でそう訴えかける善子に遥は笑みを浮かべるとそう力強く答える。

 

「卑劣な…絶対に許さないッ!ガイアー!!」

 

遥は振り返ると一転し険しい表情でそう叫ぶと、突き出したエスプレンダーから光を解き放つ。

 

一筋の光が、夜の内浦を駆け抜けガンQへと向かって行く。それはガイアの姿をとると、目にもとまらぬ速さで肉薄しに連続の回し蹴りと赤い光を纏った渾身の拳で相手を吹き飛ばす。

 

「ダアッ!タァッ!ハアァ…デュワッ!」

 

そしてガイアは梨子の方へ振り返ると、右手を突き出し光を放出し梨子を開放し彼女をそっと地面に降ろす。

 

「梨子?梨子!?」

 

梨子にすぐさま善子は駆け寄っていき、彼女の肩を揺さぶる。目は覚めなかったが、息はしている。よかったと一息つくと、視線は再びガイアへと注がれる。

 

「お願い遥、勝って…」

 

そしてその戦いを別の場所から眺める人影が一つ。シルビアだ。

 

「人間同士の醜い争い…結局昔から人類は、破壊と征服しか考えられない可哀想な生き物」

 

そう呟く彼女の声にも、表情にも感情は乗っておらず。彼女がどういう気持ちでそう言ったのか、この戦いを見ているのか。それは本人にしかわからない。

 

「このままなら人類は勝手に滅びる…でもあの男の、こっちの力を利用するって考えは気に食わない。私が潰しても良いけど、ここはあのお兄さんに任せるわ。まだ私は、力を使うべきではないから…」

 

そう言って彼女は、この戦いをただ静観することにした。

 

起き上がったガンQに対して、ファイティングポーズをとるするとガンQが光弾を発射してきたのでそれをウルトラバーリアで弾くと、飛び散った光弾が地面へ着弾しガイアの姿が消える。

 

勝ち誇るような仕草を見せるガンQだったが、ガイアが健在なのを見ると悔しそうに体をよじらせ再び光弾を放つ。

 

しかしこんどはガイアの身体は光に包まれ消滅し、対象を失った光弾は後ろの山に直撃し爆発が起こる。

 

「デヤァアッ!」

 

一瞬で空中へと飛び上がっていたガイアは急降下してその勢いのままに蹴りを放つ。その威力にガンQの身体は地に伏せるがガイアは脚を持って持ち上げると、そのままバックドロップを決める。

 

流石に堪えたのかガンQはそのまま動かなくなる、ガイアは梨子の様子が気になって一瞬視線を外すがその隙に立ち上がりガイアへ攻め立てる。

 

そして体勢の崩れたガイアへ身体にある目から、円盤のようなものを三つ飛ばしてガイアへ4方向から攻撃を繰り出す。

 

「グワァアア!?」

 

そして円盤はガイアを取り囲むと、紫色の怪しいオーラでガイアを攻撃するとガイアは頭を押さえて苦しみ始める。更にはライフゲージも明滅を始め、ガイアのエネルギーが残り少ない事を示し始める。

 

「遥!」

 

苦しむガイアを見て思わず善子は遥の名前を叫ぶ、自分を助ける為に戦っているガイアに自分は何もできない。そう自身の無力さを呪いかけるが、あることに気が付く。さっき自分は魔頭に何をした?それがガイアを助ける答えだった。

 

「大丈夫、多分できる…」

 

ガイアを取り囲む3つの円盤、あれを破壊するイメージを固める。すると再び身体が光ると光弾が三発、円盤目掛けて飛んで行った。

 

「お願い、壊れて!」

 

善子の思いが通じたのか、円盤は爆散しガイアの身は自由になる。

 

「何故ダ?何故邪魔ヲスル!?善子ォ!」

 

「私は今の仲間たちと生きていくの!アンタの言いなりにはならないわ!」

 

善子が手を出したことに驚愕し、ガンQはそう善子に吠えるが、逆に言い返される。

 

「それに私は、ヨハネだってばぁぁあああ!」

 

そう叫ぶ善子から更に光が放たれ。ガンQの姿は、最初の不完全は半分溶けたような姿に戻る。

 

「今よ!あいつに止めを!」

 

そう善子が叫ぶとガイアは頷き立ち上がる。

 

「カ…身体ガイウコトヲキカヌ…」

 

ガンQは無理やり不完全な姿に戻された反動なのか、思うように動けない。折角善子が作ってくれたチャンスを無駄にはできない。ガイアはガンQへ駆け寄るとその巨体を頭上に持ち上げ、豪快に投げ飛ばした。

 

そのまま地面でもがいているガンQに止めを刺すべく、ガイアは両腕を広げエネルギーを頭部に集中させ蹲る。

 

「デヤッ!ハァア…デリャァア!!」

 

そして放たれた必殺の一撃、フォトンエッジによって今度こそガンQと魔頭鬼十郎の野望は潰えたのだった。

 

「あれ?善子ちゃん?」

 

「梨子良かった…」

 

「何で外に?それにガイアまで…」

 

梨子は善子の後ろに映るガイアにも気が付くが、今まで何があったか覚えていない様子だった。

 

「よかった…本当によかった…」

 

「善子ちゃん…」

 

泣きながら梨子に抱き着く善子に、梨子は困ったような表情を浮かべるがさえるがままになっていた。

 

次の日は反動からか、三人纏めて寝坊し母親に慌てて起こされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ガイアの捕獲を実行しましょう…これでやっと邪魔者はいなくなる」

 

暗闇の中で少女は呟く、ウルトラマンガイアを捕獲する。そうすることで根源的な破滅をより簡単にもたらすということだ。

 

「ガンQは想定外だったけど人間同士で潰し合ってくれてよかった。どうせならそのまま共倒れしてくれればよかったのに」

 

「嫌なのですか?自分の使命が」

 

独り言をずっと言っていた少女に、急に男性の声が割って入る。

 

「そんな訳ない、私はその為に産まれた…貴方ごときに何かを言われる筋合いはない」

 

そう冷たい声で言い返す。感情を読み取りにくい彼女だが、この時だけは明確な殺意が読み取れた。

 

「これは失礼。ここであなたにやられてしまっては意味がない、私も私の出番の為に準備をさせて頂きます」

 

そう言って男性の気配は消える。

 

「あなたみたいなヤツ、私は嫌いなの」

 

そう少女はため息交じりに呟く。自分の使命は理解している。でもその前に…

 

「あの赤毛のお姉さんの踊ってるとこ、もう一回見たいな…」

 

そう憂いの混じった表情で、少女は呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃああれ以降、あの力は無くなっちゃったの?」

 

「そうね、折角堕天使ぽくなったのにもったいなかったかもね」

 

その週の休日、沼津の喫茶店で善子からあれ以降また似たような夢を見たりしなかったかなどを聞いていたのだが無事に元通りの生活に戻れたらしい。

 

「やめてよ…僕もうあの目玉の化け物と戦いたくないよ?」

 

「フフッ冗談よ、冗談。…ありがとね、助けてくれて」

 

「やめてよ、結局僕の方が助けてもらったんだから」

 

そう言って顔を背ける遥に、善子はふっと笑って立ち上がると耳打ちする。

 

「かっこよかったわよ、ウルトラマン」

 

「なっ…」

 

「じゃあまた学校でね」

 

「う、うん…」

 

そう言って善子は帰って行くが、遥は暫く顔のほてりが取れなかった。

 

「何話してたずら?」

 

「あれ?どうしたのこんなとこで」

 

善子と入れ替わるように花丸が店内に入ってきた。

 

「本を買いにきたら、遥くんが居るのが見えたから。それより善子ちゃんと何話してたずら?」

 

「いや、ちょっとね?」

 

結局あの日の事は当事者三人の中に収めておくことにしたのだが、ガンQは夜中にガイアと戦って敗北したことだけ世間に公表された。だから善子に何があったのか花丸は知らない。

 

「ふーん?そう言えばあの書物はどうしたずら?」

 

「あっ…ジオベースに預けっぱなしだ…ごめん埋め合わせは今度するから!」

 

そう言って手を合わせて謝る遥かに、花丸は笑いかける。

 

「じゃあ今してもらっていい?」

 

「え?」

 

「すいませーんイチゴパフェとココアお願いします。」

 

そう注文する花丸から逃げるように立ち上がろうとする遥だったが、肩を掴まれる。

 

「ごちそうさまずら」

 

「あぁ…これも呪いだ~!」

 

遥の悲鳴が、沼津の街に木霊した。




久しぶりにラブライブ側が進まない回になりましたがいかがでしたでしょうか?
元々前回と一話でやる予定だったからこうなってしまったんですけどね汗
まぁこういうのもたまにはいいかなと思いました。
次回は皆さん待望のアイツの登場です。お楽しみに!
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