それでも本家通りのサブタイで行きたかったのです。
遂に彼の出番です、どうぞ
部室で二年と一年の7人はパソコンの画面に注目していた。
「来ました」
そうルビィが言うと、全員が息を呑んで画面の変化に注目する。
「見たことあるずら」
「ここは前回ラグナロクが行われた…約束の場所!」
「私達が突破できなかった、地区予選…!」
「リベンジだね、千歌ちゃん」
今日発表されたのは、ラブライブ地区予選の会場だった。前回と同じ会場で、前回突破できなかった壁を今回は絶対に越えねばならない。
「うん」
今回は、絶対に負けられない。超えて見せる…必ず。
「今日現在、入学希望者は57人」
一方三年生は、生徒会室で入学希望者の数を確認していた。
「そんな…この一か月で10人も増えていないのですか?」
鞠莉に告げられた人数は、学校存続のための人数の半分をやっと超えた程度だった。その事にダイヤは驚きのあまり座っていたパイプ椅子を立ち上がった表紙に倒してしまう。
「鞠莉のお父さんの言ってた期限まで、あと一ヶ月もないんだよね?」
ダイヤの反対側に座っている果南はそう鞠莉に確認するように聞く。
「ラブライブ地区予選の日の夜。それまでに100人に到達できなければ、今度こそナッシングです」
そう鞠莉が告げる。文字通り学校を存続させるには地区予選が最後のチャンスなのだ。
「そこに賭けるしか、無いのですね…」
そうダイヤが噛みしめるように言う。地区予選が、最後のアピールのチャンスなのだと。後輩たちの為にも。なんとしても学校を存続させたい。今口にせずとも、三人の想いは一つだ。
「オゥ!グッド!!」
沼津での練習で、鞠莉の手拍子に合わせてダンスの確認をする。
「じゃあインターバルの後で各自個人練習ね」
その号令で、各々休憩に入る。
「疲れた~」
「はい、スポーツドリンク。お疲れさま」
メンバーにそう言って遥は飲み物を手渡す。ダンスに関してはからっきしだし、曲作りとストレッチのアドバイスとこれくらいしかできないからと。遥なりの気づかいだった。
「あ、全国大会進出が有力視されてるグループだって」
曜がスマホの画面を見ながらそう呟くと、「そんなのあるの?」と千歌達も画面を見ようと近寄ってくる。
「ラブライブ人気あるから、こういうの予想する人多いみたい」
「どんなグループが居るの?」
「えっと、前年度の決勝進出グループはもちろんで…」
そこでページを切り替えると、見知ったグループが出てくる。
「前回地区大会をトップで通過し、全国大会で8位入賞を果たしたSaint Snow。姉聖良は3年生、ラストチャンスで優勝を目指す…」
「ふたりとも気合入ってるだろうなぁ…」
そう千歌が呟く。あの姉妹も、一緒にラブライブに出られるのは最後だ。絶対に最高のパフォーマンスをするための努力を続けているだろう。
「後は…Aqours!?」
思わず曜の声が上ずる。
「本当?なんて書いてあるの?」
離れた場所で水を飲んでいた鞠莉も気になったのかそう聞いてくる。
「前回は地区大会で涙を呑んだAqoursだが、今大会予備予選の内容は全国大会出場者に引けを取らないものだった。今後の活躍に期待したい。」
「こういう風に書かれてると、何かうれしいですね」
そう遥が笑顔で言うと、皆笑みを浮かべる。正直上から目線なのが鼻につくが、自分たちが沢山の人に評価されていると思うとやはりうれしいものがある。
「フフ…この堕天使ヨハネの闇能力をもってすればこの程度、造作もないことです!」
「そう、造作もないことです!」
普段なら善子が一人でポーズを決めて皆がスル―するのが半ばお約束となりつつあったやり取りだったが、今回は同調した人物がいた。
「ほぇ?」
「はっ!?」
千歌が気の抜けた表情で梨子の方を見ると、無意識だったのだろう。梨子は自分のしたことに気が付いて顔を赤らめる。
「流石!我と契約を結んだだけの事はあるぞ、リトルデーモンリリーよ!」
「無礼な!我はそのような契約、交わしておらぬわ!」
「どうしたの?」
「リリー?」
「これが堕天ずら」
「うゆ」
「うわぁ…」
残りの二年と一年に…特に遥には完全にドン引かれてしまう。
「違うの!これは違くて…」
「ウェルカムトゥーヘルゾーン!」
「まてぇい!」
なんて漫才じみたやり取りが始まり、皆笑いながらそのやり取りを見ていた。
「今回の地区予選は、会場とネットの投票で決勝進出者を決めるって」
そうスマホで、今回の大会の情報を見ていたルビィがそう切り出す。
「良かったじゃん、何日も結果出るの待つより」
そう千歌が返す。確かにそうではあるのだが、そうなると出てくる問題がある。
「そんな簡単な事ではありませんわ」
「会場には出場するグループの学校の生徒が応援に来るのよ」
そうダイヤと鞠莉に厳しく指摘されてしまう。
「つまり、生徒数が多い学校程有利…ネットもあるけど、会場にこれない学校関係者も投票できる…」
そう遥が顎に手を当てて呟く。そういうことなのだ、これは簡単な事ではない。
「そう、生徒数で言うと浦の星が不利ですわ」
そう厳しい現実をダイヤが告げる。しかしそれを言い訳に諦める者はここにはいない。
練習の後、淡島の家に帰る為に船着き場で船を待っていた果南だったが、ここで思わぬ人物に遭遇した。鞠莉は、少し用事があると言っていたので今この場には果南しかいない。
「ヒロ?」
船着き場から少し離れた砂浜に湊博樹がいた。以前あった時とは違い、ボロボロになっている服に身を包んだ彼はおぼつかない足取りで、海へと進んでいく。
「嘘、もう秋だよ?」
そして腰まで海水に漬かる深さまで進んだところで、脚を取られたのか倒れこむ。
「ヒロ?ちょっと大丈夫!」
「か、果南…」
博樹は虚ろな目で果南の顔をみて、ようやく彼女に気が付く。しかし博樹の顔を見た時、果南も息をのんだ。彼の黒髪は所々白くなっており、どう見てもやつれていたのだ。
「海が、呼んでいる…」
そう言うと、博樹は気を失ってしまう。海というのはアグルを示していたのだろうか?ふとそう思う果南だったが、自分では答えが出ない。それに博樹をこのままにしては置けないので、一先ず救急車を呼んで病院へ行く。
病院へ着くと、気を失ったままの博樹は検査を受け点滴を受けて病室のベットで眠っていた。果南は、彼の身の上を簡単に説明した後、診断結果を医師から聞いていた。
「体に異常はありません。精神的な問題だと思われます」
「精神的な、問題…」
一体何がここまで博樹を追い詰めたのか?その答えを出すことはできなかった。だが体に異常はないというし、病院にいる間は健康に異常をきたすことはない。そう判断した果南は、家に帰った。
そしてその夜、海を眺めながら一冊のノートを胸に抱えていた。
地区予選が学校存続を賭けた最後のチャンス。でもこれに頼ることは果南はしたくなかった。ダンスパフォーマンスのアイデアノートには、二年前に記したものがまだ日の目を浴びずに残っている。でもこれは…。
「やっぱり、それしかないのかもね。懐かしい、まだ持ってたんだ」
辺りは夜の静けさに包まれているというのに、鞠莉だけでなくダイヤまでこちらに歩み寄ってきた。
「まさか、やるなんて言わないよね?」
「まさか、やらないなんて言うんじゃないわよね?」
そう強めの口調で鞠莉に対して告げる果南だったが、逆にそう言い返されてしまう。
「状況は解ってるでしょ?それに賭けるしかない」
「でも…」
「私、あの頃の気持ちと変わってないよ」
「鞠莉…」
果南をまっすぐ見つめて、鞠莉はそう告げる。対して果南は、なんと言えばいいか解らない。そんな様子だった。
「今回ばかりは私も鞠莉さんに賛成ですわ。学校存続の為、やれることは全てやる…それが生徒会長としての責務だと思っておりますので」
「でも、これはできる事じゃない。これはできないこと…」
「そんなことない!」
二年前のあの時と違い、今回ダイヤは鞠莉の意見に同意らしい。しかし頑なに譲ろうとしない果南に、鞠莉はすかさずそう否定する。
「あの時だってそうだった、あと少しで…」
「でもできなかった。それどころか鞠莉の足まで…」
そう、これに記されたフォーメーションを実現させようとした結果が二年間も自分たちをすれ違わせたのだ。
「あの怪我は私がいけなかったの、果南に追いつきたいって頑張りすぎて…」
「それに今は9人。私たちだけではありませんわ」
そうダイヤも鞠莉の肩を持つ。いつもなら真っ先に止める筈の彼女がだ。ダイヤも本気で思っているのだ、もうこれに全てを賭けるしかないと。
「ダメだよ…届かないものに手を伸ばそうとして、そのせいで誰かを傷つけて、それを千歌たちに押し付けるなんて…」
千歌達には、自分たちが2年前に味わったものと同じものを背負わせたくない。だからこれは開けちゃいけない危険な扉なんだ。
「こんなもの!」
ノートを海に放り投げようとした。でもその振りかぶった手は、誰かによって阻まれた。
「待て!」
「ヒロ…」
「世話になったみたいだな、果南」
その正体は、もう病院を抜け出した博樹だった。連絡船を使わずとも淡島と内浦を行き来する手段など当然のように所有している彼でわあるが、もうこちらに戻ってきていた。
「それはお前たちにとって大切なものなんだろ?手放したら、2度と戻ってこないぞ」
そう真剣な眼差しで博樹は告げる。
「否定しないで、あの頃の事も私にとってはとても大切な思い出。だからこそやり遂げたい、私たちの夢見たAqoursを完成させたい」
鞠莉もそう果南にそう言って笑いかける。
「博樹さん、あなた今迄…?」
「オレはずっと後悔していた。オレのやった事で、多くの人を傷つけ地底貫通弾が使用され地底怪獣も多くその命を落とした」
ダイヤが、変わり果ててしまった博樹にそう聞くと、博樹はそう今迄を語るかの様にしゃべり始めた。
「オレのやった事は、アグルの脅威で世界を混乱に陥れただけなんだ。今は償いもできない…オレはアグルの力を取り戻そうとした、だが光はもう戻ってこなかった。それはオレの中に、今でもクリシスの予測と同じものが眠っているからだ!」
「違う、それは違うわ!」
「鞠莉…」
「ヒロはその予測を疑問に思っていた筈だよ?だから私や鞠莉にダイヤ…多くの人を助けたんでしょ?」
鞠莉と果南は、博樹の言葉を強く否定した。本気でそう思っているなら、以前病院をギールが襲撃した時なぜアグルとして私達を助けたのかと。
「事情は聞きましたから、知っているつもりです。あなたは、クリシスの予測が仕組まれていると知って戦う誇りを傷つけられたのです。それを取り戻せばきっと…」
「戦う、誇り…」
ダイヤの言葉を反芻する博樹だったが、ふっと笑う。
「お前たちは学校を守りたいんだろ?だったら、猶更オレに構ってる場合じゃないだろ?」
それは拒絶ともとれてしまう言葉だった。
「そのノートが何なのか知らない、それをどうするかもお前たちの自由だ。でもな果南、手放したものは後悔しても取り戻せない」
「さっきはありがとう」と付け足して博樹はその場を去る。果南は両腕でノートを抱きしめたまま何も言わなかった。
「Aqoursらしさ…ですか?」
「うん、わたし達の輝きって何だろう?それを見つけることが大切なんだって、ラブライブに出て解ったのにそれが何なのかまだ言葉にできない…まだ形になってない…だから、形にしたい。形に…」
次の日の放課後、部室で千歌はAqoursらしいとは何か?と話を切り出す。
「このタイミングでこんな話が千歌さんから出るなんて、運命ですわ。あれ、話しますわね」
「え?でもあれは…」
ダイヤが千歌の話を聞いてそう言うと、果南はやはりこの件には否定的なのか迷うような仕草を見せる。
「何?何の話?」
「二年前、私達三人がラブライブ決勝に進むために作ったフォーメーションがありますの」
「凄い、教えて!」
ダイヤからこの話を聞いて、千歌はそう身を乗り出して食いついてきた。
「でも、それをやろうとして鞠莉は足を痛めた。それに、皆の負担も大きいの。今そこまでしてやる意味があるの?」
そう厳しい口調で果南が千歌を止めようとする。また二年前の繰り返しになってしまうのが、怖かったから。
「何で?果南ちゃん、今しなくていつするの?最初に約束したよね?精一杯あがこうって。ラブライブはすぐそこなんだよ?今こそ足掻いて、やれることは全部やろうよ!」
そう千歌は果南の手を取って訴えかける。今やらないと、もうチャンスは回ってこない。
「でも、これはセンターの負担が大きいの。あの時は私だったけど、千歌にそれができる?」
「大丈夫!やるよ、私」
「決まりですわね。あのノートを渡しましょう、果南さん」
そう千歌が折れずに果南に力ずよく答えると、ダイヤがそう取り仕切る。すると果南は渋々といった様子で千歌にノートを渡す。
「今のAqoursをブレイクスルーするには、必ず超えなきゃいけないウォールがあります」
「今がその時かもしれませんわね」
殻を破って前に進む。今がそのターニングポイントなのだ。
「言っとくけど、危ないと判断したら。ラブライブを棄権してでも、千歌を止めるからね」
最後に、果南はそう千歌に宣言した。これの為に千歌や皆に怪我を負わせたくない、二年前の繰り返しにはしないための果南の優しさだった。
その日の帰り道、学校下のバス停から少し離れた位置で博樹は一人海を眺めていた。
「初めてかも、ヒロが学校の近くにいるなんて」
気が付いた果南が、そう声をかけると博樹もこちらを振り向く。
「二年前ここを去ってから、初めて来たからな」
そう切り出した博樹は、他のAqoursのメンバーもいることに気が付いていつつも続ける。
「半年も通ってなかったが、ここの景色が好きだったんだって…母さんも通っていたこの学校が、この町が…今初めて思った」
「ヒロ…」
「人類も地球の一部だ。前に遥がオレにそう言った、皮肉にもオレはアグルの力を失って初めてそれに気が付いた。これがオレと遥の差だと思った。だから遥は、クリシスの予測を二年前に知っていたとしても、オレと同じことはできない。そうオレは思う…」
「博樹さん…」
本心では博樹も本当は捨てられなかったのだ。結果として、何度もこの町の人々をアグルは救ってきた。人類を排除しなければという予測を信じていた筈なのに。
「好きなら…また一緒に行きませんか?学校、お姉ちゃんたちと!」
「ルビィ…ありがとう、でもそれはできない。今更戻るつもりはないんだ、悪いな」
そこで今まで何も言わなかったルビィが初めて、博樹に言葉をかける。しかし博樹は嬉しそうに笑うが、その申し出を断った。
「オレは今のオレにやれる事を見つける。そう思ったんだ」
そう言われると無理強いはできないと、諦めるが口にこそ出さなかったが三年生もまた博樹と個々の生徒として生活したいという気持ちも間違いなくあった。
そこで、博樹に何か言いたげだった果南が口を開こうとしたその時だった。
突如空に巨大なワームホールが開かれ、金属の粒子が降り注ぐ。
「大きい、まさかゾーリムみたいなのが…」
そう思い空に目を凝らす遥だったが、その予想は外れた。金属の粒子は一か所に降り積もり、銀色の装甲を持つずんぐりとしたロボットの形をとる。
「ロボット?」
その巨体の頭部と思わしき部分にある赤い一つ目がこちらを見据える。
「みんなは逃げて!」
遥がそう言うと、皆無言で頷き反対方向へ駆ける。そしてガイアとなるべくエスプレンダーをとり出すが
「遥くん、危ない!」
ロボットの胸部が開き、何かがこちらへ向けて放たれる。いち早くそれに気が付いた果南が遥を突き飛ばすが、発射されたぶったは果南の目前で展開し十字架のような箱に果南を閉じ込める。
「果南さん!」
「果南!」
遥と博樹が咄嗟に駆け寄るが、果南を閉じ込めた十字架はロボットの胸部に吸収され人質と言わんばかりに果南の顔だけが、その十字架から見える。
「クソッ!」
遥は今度こそガイアになろうとするが、突き飛ばされた衝撃でエスプレンダーを落としてしまい。果南と共にロボットの胸部に吸い込まれてしまっていた。
「しまった、エスプレンダーが…」
「博樹さん!」
「危険よ、あんなのに生身で勝てる訳ないじゃない!」
「離せ!果南が危ない!」
博樹はロボット目掛けて駆け出そうとするが、ダイヤと鞠莉が止めようとするが力で博樹には敵わない。振り切って走っていく博樹だったがロボットから放たれた砲弾の衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「何もできないなんて…」
そう歯噛みする遥だったが、それは皆同じだった。悔しい思いを押し殺してAqoursの皆と逃げることしかできない。
そしてロボットは、果南を連れ去るべく。出てきたワームホール目指して飛び立つ。このまま大切な人が連れ去られるのを見ていることしか出来ないなんて、全員が無力感に苛まれた。
―ヒロ…ヒロはいつも私達を助けてくれた。私たちが今生きてるのは、ヒロの…アグルのお陰なんだよ。
博樹の脳裏に、果南の声が聞こえた。気のせいなのかもしれない。だが、博樹に大切なものを思い出させるには十分だった。
「オレには、まだ護りたいものが…ある!」
砂を握りしめ、そう呟いた博樹は立ち上がり。自身を育てた町の海を見つめる。
「地球よ…もう一度、もう一度…オレに力をくれ!」
海に向かってそう叫ぶ、するとその時。時が止まった、波打ち際に押し寄せる波が、空を飛ぶ鳥が、全てが止まった。
そして轟音と共に、高さ10m程ありそうな津波が押し寄せる。そしてその波の中に、とても懐かしく感じる青い光を見つける。博樹はその光に手を伸ばす。
「アグル!俺はもう一度…戦いたい!!」
その叫びに呼応するかのように波は博樹の身体を海へと攫う。そしてここで時間が再び進み始める。
「博樹さんは?」
「嘘、消えた…?」
他の人間には、博樹が突然蒸発したようにしか見えず困惑するが。海面が青く輝き、海が割れた。
「何が起こったの!?」
皆が驚く中、奇跡の光は止まらない。海が割けるというあり得ない状況、そしてその中で青く輝く何かがいた。
それは青い巨人だった。その巨人が蹲っていたがゆっくりと前を向くと立ち上がり、空へと飛翔する。
以前より明るい青色の体に走る銀色のライン、そして胸部の金に縁取られたプロテクターにライフゲージ。額に青く輝くブライトスポットに切れ長の目。
ウルトラマンアグルが今新たな姿V2(ヴァージョンツー)として蘇ったのだ。
「アグル…」
飛び立ったアグルは、ロボットに追いつくとその巨体にしがみ付き。無理やり地上に引きずり下ろす。
「タァッ!」
そして地上に降り立ったアグルは、ロボットに対して構えるが相手は何もしてこない。先手必勝とばかりに駆け出して拳を打ち出したアグルだったが、果南を盾にされその攻撃は目の前で止まってしまう。
するとロボットは、再び飛び去ろうとする。今の状況なら、アグルが手出し出来ないのを理解しているから…
しかしアグルは再び駆け寄ると、飛び上がって浮き上がったロボットの肩部のアーマーを蹴り飛ばす。すると、そこが浮力を生み出すパーツだったのかバランスを崩して落下してくる。
それを確認するとアグルは右拳を左の手のひらに押し当てる。そしてそのまま腕を広げると右腕には以前よりも細く鋭い光剣―アグルセイバーを展開する。
すると果南はゆっくりと目を瞑る。
―信じてるよ、ヒロ…
アグルはそのままロボットの胸部に突きを一撃。捕らわれていた果南の入っている十字架だけをくり貫いて見せた。
そしてその切っ先を地面に突き刺し、果南を地上に戻す。
果南は目を開くとアグルと目が合う。するとアグルはゆっくりと頷き、アグルセイバーを解除する。
「果南さん!」
それを見た皆が、果南も元に駆け寄り助け出そうとするが9人の力ではビクともしない。
ロボットは目的を邪魔されたことに対して、アグルを排除すべき敵として認識する。肩部パーツの下から指先が銃口となっている両腕を展開する。そしてアグルに対してその銃口が火を噴いた。
何発もの銃弾が、アグルを襲い周囲は爆炎に包まれる。全員が息を呑んで見守る中、煙が晴れるとアグルの姿が露になる。
なんと無傷で耐えきったアグルは、右腕を突き出しクイクイと手を動かして挑発する。攻撃が効かないという想定外の事態に陥ったロボットは混乱したのか、身を捩じらせるばかりで何もしない。
「ハァッ!ウオォ……」
ならば今度はこちらの番だと、アグルは両腕をライフゲージの前に添えゆっくりと両腕を広げエネルギーを集中させていく。
そして右腕を上に付き上げ、両腕で胸の前に円を描くように腕を回し球形のエネルギーの塊を創り上げる。そして両腕を一度体の左後ろに持っていき、両掌で球状のエネルギーの塊を放った。
「ハァッ!…デリャァア!!」
―フォトンスクリュー―新たな力を得たアグルの新たな技、その一撃は咄嗟に反撃したロボットの砲弾を全て掻き消してその巨体に風穴を空ける。
撃ち出した後、アグルはその結果を見届けることなく構えを解き後ろを、皆が見守っている方へ振り返るとゆっくりとこちらへ歩み寄る。その背後でロボットは全身をスパークさせた後、粉々に砕け散るのだった。
ロボットが消滅すると、果南を閉じ込めていた十字架は消滅する。
「果南大丈夫?」
「大丈夫、私は平気」
鞠莉がすぐ心配そうに声をかけるが果南は本当に何ともない様子だった。
「ごめんなさい、僕のせいで…」
「みんな無事だったんだから言いっこなしだって。それよりはい、これ」
謝る遥かに、気にしないでといい。エスプレンダーを差し出す。
「ありがとうございます」
そう言って遥が受け取ると、果南はアグルを見上げる。
「ありがとう、ヒロ」
そう笑顔で告げる彼女に、アグルは頷くとそのまま飛び去って行った。
アグルの復活、それはきっと博樹の過去の呪縛から解放され。前を向くことが出来たことを意味するのだろう。
毎回読んでくださりありがとうございます!
ここまで長かった…やっと…やっとアグルを復活させられました。
全ウルトラマンの中で一番好きと言っても過言ではないアグル。今後の活躍にご期待ください笑
それではまた次回