ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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最近文字数が以前より増えてしまって悩める作者です。
今回も長めです、ご了承ください。


40話 残された時間/嘆きの大地

「それでは皆さん!ラブライブファイナリストの発表です!!」

 

全てのグループのステージが終わった後、全グループのメンバーがステージに集合する。

 

そしてモニターにグループの名前が表示される。決勝大会に進むことが出来るのは3グループのみ、この場にいる全員に緊張が走る。

 

「お願い…」

 

そう両手を握った曜が呟く。今回の予選の順位はその場とネットでの人気投票で決まる。

 

全てのグループ名が並ぶと、そこから折れ線のグラフが伸びる。そして上位3チームに絞られる。

 

「上位3グループはこれだ!」

 

そう司会の女性が叫ぶと、千歌達と他にグループにスポットライトが当たる。

 

そして三つのグループ名がモニターに表示されると、それぞれのグループ名から棒グラフのようなものが伸び最もそれが長かったチームの名前の上に金の王冠が乗る。そしてそのグループの名は―

 

Aqours

 

「千歌ちゃん!」

 

そう曜が千歌に駆け寄って抱き着くと、千歌もそこで現状を認識した。

 

「やった……やったの…?夢じゃないよね?…はっ!ってならないよね?」

 

「ならないわ」

 

まるで夢を見ているような感覚だった千歌に、梨子がそう即答する。

 

「本当?だって決勝だよ?東京だよ?ドームだよ?」

 

「奇跡よ。奇跡を起こしたの、わたし達」

 

まだ信じられない千歌だったが、梨子がそう目に涙を溜めて告げる。

 

 

 

「やった…皆、やったんだ」

 

それを客席から観ていた遥も、気づけば目が潤んでいた。これで決勝に行ける、この先にある輝きを観に行けると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れの会場近くの公園で、半ば夢見心地のままだった面々だった。

 

「緊張で何も喉を通らなかったずら」

 

「あんたはずっと食べてたでしょ!」

 

そう言ってパンを頬張る花丸に善子がツッコミをいれる。もはやお馴染みな光景だ。

 

「それにしても、アキバドームかぁ」

 

「どんな場所なんだろ?」

 

果南がそう感慨深げにつぶやくと、そう千歌が応じる。先駆者たちが頂点を目指して輝いた舞台。そこからの景色は、今までのどのステージとも比べ物にならないだろう。

 

「いい曲を作りたい」

 

「ダンスも、もっともっと元気にしよう!」

 

そう梨子と曜も意気込む。遂に掴んだ決勝への切符、絶対に優勝したい。今まで積み上げてきたものを、最高の形で残したい。その気持ちは、みんな同じだ。

 

「見て!凄い再生数」

 

そう言ってルビィが近くの大型モニターを指さす。そこには、先程の地区予選でのAqoursのステージが映っていた。その再生数は、つい先ほどアップロードされたはずなのに凄まじいものとなっていた。

 

「本当…こんな沢山の人が…」

 

「生徒数の不利を考えたら当然ですわ。これだけの人が観て、私達を応援してくれた」

 

「じゃあ、入学希望者も?」

 

そう期待を込めて鞠莉の方を向くと、鞠莉はすでに自身のスマホで入学希望者数を確認しようとしていたらしく。すぐさま入学希望者数を確認するが、その人数は増えていなかった。画面を見つめたまま一言も発さない鞠莉を見て察してしまう。

 

「どうしたのよ?」

 

「嘘…」

 

「まさか…」

 

そんなセリフが次々と飛ぶ中、苦笑いを受けべた鞠莉は弱々しく答える。

 

「ケータイ、フリーズしてるだけだよね?昨日だって何人か増えたし全く変わってないなんて…」

 

「鞠莉ちゃんのお父さんが言ってた期限って今夜だよね?」

 

そうルビィが確認するように聞く。

 

「大丈夫、まだ時間はありますわ」

 

そうダイヤが優しく告げる。だがもう夕暮れ、そんなに時間は多くない。

 

「学校に行けば、正確な数が解りますわよね?」

 

「うん…」

 

そう確認するダイヤに鞠莉は弱々しく答える。折角一位通過だったのに、一気に空気が重くなる。

 

「よし!帰ろう」

 

そう千歌の号令で、みんなで学校を目指す事になった。

 

「一位通過おめでとう!」

 

駅に向かう途中、そう声をかけられ声の方を向くと。男性がこちらへ手を振っていた。

 

「誰…?」

 

「お父さん…」

 

そう首をかしげる千歌に、梨子はそう呆れ気味に呟く。

 

「初めまして、梨子と遥の父です。決勝進出おめでとう!」

 

そう言って頭を下げる父に、みんなも「はじめまして」と頭を下げる。

 

「で、遥は誰が好きなんだ?」

 

「んなっ!?そういう感情でここに居る訳じゃないから!純粋にマネージャーとしている訳だからね?」

 

唐突にそう話を振られた遥が慌てて否定する。

 

「そうか?ならそう言うことにしとくか」

 

そう言って笑う父に頭を抱える遥だったが、それには誰も触れなかったので助かった。

 

「父さん仕事で向こうに戻っちゃうけど、決勝も観に行くからな!」

 

「もう戻るの?」

 

そう遥が聞くと、父は頷いて続ける。

 

「ごめんな、でももう少しで仕事も落ち着くから。そうしたら一緒に内浦で暮らそうな」

 

それだけ言ってさっさと自分達とは別の電車に乗り込んでいった父に、少し恥ずかしくなる。

 

「元気な人だね」

 

「遥くんとは全然違うずら」

 

「それは…そうだねぇ…」

 

親バカで自由人で、でも仕事なら割り切って家族の為に頑張っている父は確かに自分とは似ても似つかない。本心でそう思っている遥は視線を逸らす。

 

「電車来たわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変わってない…」

 

理事長でもある鞠莉は学校の鍵を持っているので、それを使って誰もいない学校の理事長室に行き。パソコンで入学希望者数を確認するも、人数は先程から変わっていない。

 

現時点で80人、あと最低でも20人は必要なのだ。

 

「そんな…」

 

「まさか、天界の邪魔が…!」

 

肩を落とす曜とは対照的に普段通りな善子だったが、正直反応している余裕はない。

 

「再生数は?」

 

「ずっと増え続けてる」

 

そう聞く鞠莉に、すぐに動画サイトを確認したルビィがそう答える。

 

「パパに電話してくる」

 

そう言って鞠莉が外へ出る。ダイヤも一緒になって出ていくが、自分達には待つことしかできない。

 

 

 

「鞠莉ちゃん遅いね…」

 

曜がそう呟いたのは、鞠莉が出て行ってから小一時間程経過した時だった。気が付けば時刻は21時を回っていた。

 

「向こうは早朝だから、なかなか繋がらないのかも…」

 

遥がそう呟く。早朝なので、まだ寝ている可能性もあるわけで―

 

「ウェイティングだったね」

 

そう言って鞠莉とダイヤが理事長室に戻ってくる。

 

「お父さんとは?」

 

「うん、話した。決勝に進んで、PVの再生数が凄いことになってるって」

 

「それで?」

 

千歌に電話が繋がったか聞かれて、こう答えた鞠莉にじれったくなったのか、梨子が結果を聞く。だが、視線を逸らした鞠莉の代わりにダイヤが答える。

 

「何とか明日の朝まで伸ばしてもらいましたわ。ただし、日本時間で朝の5時…それまでに100人に達さなければ、募集ページを停止すると」

 

「最終勧告って訳だね…」

 

そう果南が呟くが、あまり手放しで喜べる訳もない。果たして夜中に増えるのか?と遥は思ったが、ここで水を差すような発言は避けるべきだと思い何も言わなかった。

 

「でも、残り三時間だったのが八時間に増えた」

 

それだけでも十分だと、千歌は言った。するとずっと画面とにらめっこをしていたルビィが立ち上がる。

 

「今、一人増えた!」

 

それに皆画面に注目すると、希望人数は現在86人と表示されていた。

 

「やっぱり、私たちを観た人が興味をもってくれたのよ」

 

そう梨子が言う。希望は繋がれたのだ、「このまま増えてくれれば…」そう曜も呟くと、千歌は理事長室を飛び出そうとする。

 

「ちょっどこ行くのよ!?」

 

「駅前」

 

善子が驚いてそう聞くと、千歌はそう短く答える。

 

「浦の星お願いしますってみんなにお願いして…それから…それから…」

 

「今からじゃ無理よ」

 

「じゃあ今からライブをやろう!それをネットで…」

 

梨子にそう言われるが、千歌はそれならと続けるが後ろから抱き着いたよ曜に優しく諭される。

 

「落ち着いて、大丈夫だよ」

 

「でも…」

 

千歌は納得できないようだったが、曜は離さない。

 

「何もしないなんて…」

 

「信じるしかないよ、今日のわたし達を」

 

そう果南が告げる。もうやるべき事は全てやった。それを聞いて、千歌も落ち着いたのか大人しくなる。

 

「そうだよね…あれだけたくさんの人に観てもらえたんだもん、大丈夫だよね」

 

千歌の気持ちが落ち着いたのを察した曜はここでようやく離れる。

 

「さあ、そうとなったら皆さん帰宅してください」

 

「帰るずらか?」

 

ダイヤにそう言われ、花丸が聞き返す。すると善子も

 

「何か一人でいるとイライラしそう」

 

「落ち着かないよね、気になって」

 

そう曜も同意すると果南が「だってよ」と笑いかける。

 

「仕方ないですわね」

 

そう珍しくダイヤが折れた。きっと彼女も気持ちは一緒なのだろう。

 

「じゃあ、いていいの?」

 

「皆さんの家の許可と、理事長の許可があれば…」

 

千歌にそう期待の目を向けられたダイヤがそう言って、視線を鞠莉に逸らす。

 

「勿論!みんなで見守ろう!」

 

そう即答した事と、家族からの許可が下りたので全員今夜は学校で入学希望者数の増加を見守る事となった。

 

「また一人増えた!」

 

ルビィの嬉しそうな声が聞こえる。きっと大丈夫、きっと100人に達する。そう思った遥に一通の電話がかかる。

 

「ちょっと外しますね」

 

「何?ひょっとして彼女~?」

 

「そんなんじゃないですよ、それ引きずってたんですね?」

 

鞠莉にそう茶化されるが、遥はそう返すと屋上に向かう。

 

「もしもし、博樹さん?」

 

『遥、調べた結果だが…やはり想定通りだ」

 

「そんな…」

 

先日現れた角の怪獣の持つ能力、それは生物を怪獣化させ死ぬまで傀儡として操る事。それでほぼ間違いないという知らせだった。

 

『それとな、絶滅生物をクローン再生させていた研究施設が今さっき落雷事故で崩壊した。更にその時、ワームホームと似たような反応が同じ場所で観測された』

 

「まさか…父さんの…」

 

そこで遥は頭が真っ白になった。もしかすると父親は…そう嫌な発想ばかり浮かぶ。

 

『まだ事故現場は調査中だが、今度現れる怪獣はその絶滅生物を怪獣化させたものかもしれない。だが、オレ達は必ずそれを倒さないといけない、何故か解るか?』

 

「え…?」

 

博樹にそう問われた遥は、思考をこちらに引き戻すが答えはすぐに浮かばない。

 

『倒すことを戸惑えば、奴らは他の生物も同様に怪獣にして送り込んでくる。やつらはそうすることで、人類の愚かさを見せつけてくるんだ』

 

博樹は冷静に告げる。恐らくそれは事実、躊躇う訳にはいかないのだ。

 

「解ってます。必ず…必ず倒します」

 

『あぁ、オレ達は負けられない』

 

そして電話を切ると、その時遥の表情はかつてないほど険しいものだったが、まだ父が巻き込まれたとは限らない。だから梨子や皆に余計な心配をさせたくなかった。

 

それでも暫く胸のモヤモヤが晴れなかったので30分ほど時間を置いてから理事長室に戻るのだった。

 

「遅い!」

 

「ごめんごめんちょっと新しい研究の話とかしててさ」

 

「アルケミースターズの?」

 

「そうそう、一応正式にメンバーになったし。色々手伝ったりしてるんだ、僕の勉強にもなるから」

 

入って一番、善子に遅いと言われてしまったが誤魔化そうと咄嗟に付いた嘘だったが向こうからそう思ってくれたのでそのままにした。

 

「ルビィ達三人で晩御飯買いに行くんだけど遥くんなにがいい?」

 

「じゃあ僕も行くよ、マネージャーだし。流石に全員分は持てないから一人でなんてかっこつけれないけど…」

 

気が付けばもう日付も変わろうとしていた。この時間に高校生が出歩いているのはいささかどうかと思うが、昼食以降何も食べていないのも問題だし、そもそもこんな田舎でそんなにうるさく言われないだろなんて笑いながら、最寄りのコンビニへ向かった。

 

 

 

「まったく、世話が焼けるったらありゃしない!私はリトルデーモンの事で手一杯なのに」

 

とりあえず全員分の食べ物を、といっても時間も時間だったのでおでんの残りやおにぎりやパン類なのだが。を購入した帰り、最寄りと言っても往復すれば小一時間くらいかかる道中でそう善子がぼやく。

 

「しかたないずら、今のAqoursを作ったのは千歌ちゃん達2年生3人」

 

「その前のAqoursを作ったのはお姉ちゃん達3年生3人」

 

これはルビィが

 

「責任、感じてるずらよ」

 

そう花丸とルビィに告げられる。自分たちは、踏み出す一歩を貰ってそのままついてきただけ。

 

「そんなもん、感じなくていいのに…少なくとも私は、感謝しか…」

 

そう善子が言いかけた後、咄嗟に後ろを振り返る。ルビィも花丸も茶化したりせず優しい笑みを浮かべたままこちらを見つめている。

 

「リトルデーモンを増やしに、Aqoursに入っただけなんだし!」

 

恥ずかしくなったのか、そう言って視線を逸らすが前を歩いていた遥はそんな様子を笑ってみていた。

 

「だからマルたちが面倒みるずら。それが仲間ずら」

 

「だね、なんかいいなぁそういうの。支え合ってる気がする」

 

「そうだね」

 

花丸とルビィの言葉にそう遥が同意する。

 

「いいこと言ったご褒美に、もち巾着あげる!」

 

「マルは黒はんぺんがいいずら」

 

「それはダメ!」

 

「ルビィはたまご」

 

「それもダメ!」

 

「じゃあ牛すじ」

 

「それもダメ!ってか遥何も言ってないでしょ!」

 

「そうだっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

夜食を済ませた後は、全員静かにパソコンで人数の変動を見守るだけだった。朝日が昇り始めていた。そんな中で外の空気を吸いに出たりするものもいる中、遥は相変わらずずっと理事長室の片隅に座り込んで自身のパソコンを触っていた。

 

「遥、何見てんの?」

 

「あぁこれ?ちょっとワームホールについて解析するのを手伝ってるだけだよ。大丈夫だって今は信じてるから、その間にも色々しようかなって」

 

「その内容でだけって…高1のやることじゃないわよ」

 

アルケミースターズでの捜査や研究の手伝いをしているだけのつもりの遥でも、善子や皆が見ればその内容は到底理解できない。

 

「そうかもね?でもできる事は、なんでもやろうってこの学校に来て思えたから…」

 

そうこう話していると、気が付けば残り時間は10分程度となっていた。ずっと画面を見つめていたルビィが窓を開けて千歌達、外に出ていたメンバーを慌てて呼ぶ。

 

「あと3人!お願い!!」

 

そう画面に願うしかできない。

 

「98!」

 

「時間は?」

 

「大丈夫!」

 

きっと届く、決勝に進めたようにきっと奇跡は起こる。そう固唾を飲んで見守る

 

―あと2人

 

―あと2人

 

 

 

―募集終了―

 

無情にもサイトは切り替わり、この4文字だけが画面に表示される。

 

「時間切れですわ」

 

「そんな…大丈夫だよ、あと1日あれば…ううん、あと一時間でもいい。それで絶対…」

 

「それが約束ですから」

 

悔しい気持ちを抑えて、気持ちを抑えられない千歌にそう告げる。しかし、ダイヤの様に割り切れる者の方が少ない。

 

「でも、それだけだったら…」

 

「そうだよ、ずっとじゃなくていいんだよ?あと1日くらい…」

 

そう梨子と曜も言うが、ダイヤは今度は折れてくれない。

 

「掛け合いましたわ。一晩中何度も何度も…ですが、2度も期限を延ばしてもらっているのです」

 

「いくらパパでも、全て自分の権限で決められない。もう限界だって…」

 

そう鞠莉も弱々しく告げる。届かなかったという現実が、ここにいる全員の胸を締め付ける。

 

「じゃあ、本当にダメってこと?」

 

「ダメだよ…だってわたし達、まだ足掻いてない。精一杯足掻こうって約束したじゃん!やれること全部やろうって…」

 

そう聞き返すような梨子の隣で、千歌がそう言う。まだ何かやれる。まだ終わりたくない。

 

「やったよ。そして決勝に進んだ」

 

そう果南が慰めるように優しい声音で告げる。

 

「じゃあ何で学校が無くなっちゃうの…?そんなの…」

 

「やっぱり、もう一度パパと話してみる」

 

千歌の姿に感化された鞠莉がそう言って室外へ行こうとするが「おやめなさい」とダイヤに止められる。

 

「これ以上言ったら、鞠莉が理事長をやめるように言われる。受け入れるしかない…学校は、無くなる」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時だった、学校近くの山中にワームホールから飛来した怪獣が着地したのは。

 

「こんな時に…皆逃げて!」

 

「遥くんは?」

 

「僕は戦う!こんなことになったけど…この場所を失いたくないから!」

 

ここからはまだ距離がある。遥は花丸に聞かれてそう答えた。本音を言えばまだ現実は受け入れられない。でもこの場所を今守らなくていい理由にはならない。

 

何より、自分を受け入れてくれた場所だから―

 

「ガイアァアッ!!」

 

エスプレンダーを掲げた遥は赤い光となって飛び立ち、怪獣の目の前にガイアとして土煙を派手に上げながら着地する。

 

以前取り逃がした怪獣が相手であることに気が付く。今度こそここで倒すべく駆け寄ると、拳の連打や連続の回し蹴りを見舞うが怪獣の耐久力は凄まじく、反撃を受けてしまう。

 

そしてワームホールからもう一体、赤毛のトラのような怪獣が降り立つと、ガイアを睨みつけて唸り。目にも止まらぬ速さでガイアの身体を吹き飛ばす。

 

「グルルルル…」

 

「ジュワッ!」

 

唸るトラ怪獣を前に、ガイアは腰を低く落として構える。暫くにらみ合う形となってしまうが、その間にもう一体が皆を狙おうと学校へ向かう。

 

(させないッ!)

 

そうガイアが咄嗟にそちらにとびかかろうとするが、逆にトラ怪獣に襲われてしまう。そちらの対応で精一杯なガイアを、そして廃校を阻止できなかったAqoursをあざ笑うように、怪獣は光線を角から9人の少女へと放つ。

 

しかしその攻撃は目前で地面から立ち昇る青い光に防がれる。

 

「青いウルトラマン…」

 

「ヒロ…」

 

曜と果南がいち早くその正体がアグルであることに気が付く。怪獣は以前舌を切断されたことを恨んでいるのか、アグルを目視すると怒り狂って駆け出す。

 

しかし一瞬で怪獣の背後に回り込んだアグルによって背中へ激しい連撃を受けてしまい、態勢を崩される。

 

アグルへの怒りのこもった攻撃を繰り出す怪獣とは対照的に、アグルは冷静に攻撃を見切って反撃を加えていく。このままでは敵わないと悟ったのか、今度はトラ怪獣を操り速度でガイアを振り切り背後からアグルを爪で引き裂く。

 

これで2対2で仕切り直しと言わんばかりに向かってくる怪獣だが、ガイアとアグルもそれぞれ怪獣をトラ怪獣を相手取る。しかし操って自身に合わせさせる怪獣とは違い、こちらは息の合った動きで次第に翻弄していく。

 

隙を突いたアグルが、怪獣を蹴り倒した後トラ怪獣につかみかかり両者は地を転がる。

 

その間にガイアはスプリーム・ヴァージョンへと変化を遂げる。そしてAqoursを狙おうと舌を飛ばす怪獣を持ち上げ頭から叩き付ける。

 

『その怪獣は、僕がやります』

 

トラ怪獣と一対一では俊敏さもパワーも僅かに圧され始め、先程の爪によるダメージで動きの鈍いアグルに、ガイアはそう言って相手を交代する。この怪獣はきっと父達の実験でクローン再生されるはずだったアルテスタイガーだ、ならせめて自分が。そう思ったのだ。

 

こちらの怪獣もパワーは凄まじいが、アグルには聊か冷静さを欠いた攻撃を繰り出すのと俊敏さはアグルが優るのでトラ怪獣よりは相性がいい。

 

ひたすら冷静に攻撃にカウンターを合わせ、これでは勝てないと察したのかAqoursを再び狙おうと光線を放とうとするので、咄嗟に間に入ろうとするとそのままアグルに放つという不意打ちを受けアグルの身体が地に倒れる。

 

ライフゲージが明滅を始めるが、エネルギーを吸いつくそうと伸ばしてきた舌をアグルスラッシュで撃ち落としアグルは両腕を胸の前でクロスさせゆっくりと開く。

 

「ハァッ!ウオォォオ…」

 

そして右腕を上に掲げ、左腕を腰に持ってきたまま右腕を曲げたまま下げ、横から見てL字になるようにして光線を放つ。

 

「デュワァツ!」

 

―アグルストリーム―

 

アグル最強の一撃が怪獣を貫き、完全にその身を消滅させる。

 

ガイアとトラ怪獣は、ほぼ互角の肉弾戦を繰り広げていた。やられてはやり返す、そんな状態が暫く続いたが、お互いの飛び上がっての拳が交錯し、お互い地面に叩きつけられる。しかしガイアが先に立ち上がると、ここを好機と見たのかフォトンストリームの発射態勢に入る。

 

―オレハ生キル!ガイア、オレハ生キル!子供ノタメニ!

 

その怪獣の叫びを聞いてしまい、思わず構えを解いてしまったガイア。エネルギーは儚くも周囲に霧散してしまう。

 

この怪獣は、かつての様に生きていたいだけなのだ。怪獣となる原因を作った怪獣に操られ戦闘になってしまったが、ただ生きていたいのだ。

 

しかし、このまま見過ごせば人類だけでなく。地球怪獣をも襲うかもしれない、それに本来なら滅んでいる存在だ。それを怪獣として弄んで、結果より多くの命を危険には晒せない。でも倒すことが正しいことなのか?その迷いが、ガイアに光線技を使わずに戦うことを選ばせた。

 

「…デヤッ!」

 

駆け出したガイアと先程よりさらに激化した戦闘となる。

 

アグルはその戦闘に手は出さなかった。自身が消耗しているのもあるが、一番はガイアの気持ちを尊重したからだ。

 

「スプリームでも、苦戦するなんて…」

 

「でも、どっちも悲しそう…」

 

そう鞠莉と千歌が呟く先で、お互いが苦し気な声を上げながら戦っていた。

 

投げや蹴り、拳の応酬の果て。ガイアのライフゲージも激しく明滅し、本当に必殺の一撃を放つだけのエネルギーはもう無かった。

 

飛び上がった怪獣を見て、ガイアも飛び上がると赤いエネルギーを纏って渾身の力で蹴りを放つ。

 

「デリャアアア!」

 

渾身のスプリームキックが怪獣と激突すると、辺り一面眩い光に包まれる。

 

その光が晴れた時、立っていたのはガイアだった。辺りにはまるで昇天するかのように光の粒子が舞っていた。そのまま姿を維持できなくなったガイアは変身を解き、遥の姿に戻るとその場で膝を折る。

 

「ごめん…こうするしか、できなかった…」

 

人間の都合で滅ぼした生物を、人間の都合で蘇らせようとした挙句、再び人間の都合で倒してしまった事への懺悔のようだった。

 

そしてまだ舞っていた粒子の一部が、遥の視線の先で一つの存在へ変わる。

 

それを目で見た遥の表情が一瞬で青ざめる。

 

「嘘だ…嘘…なんで…?どうして…」

 

認めたくなかった。いや、認めてはいけなかった。そうしたら、遥の今迄が壊れてしまうから。

 

「嘘だぁぁぁあああああああああああああ!!」

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