ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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自分はなぜ周りと違うのか?その答えは見つからない。それでも答えを求める遥は戦う理由を探し求める。
そして舞台は函館へと―


43話 遥VS遥/HAKODATE

「うぅ…寒っ」

 

そう言って遥は身震いする。防寒着を着てはいるのだが辺り一面雪景色、内浦や東京でもここまで雪が積もった記憶はない。

 

なぜならここは北海道函館市、ラブライブの大会運営側からの招待でAqoursの9人と共にやってきたのだ。

 

 

 

大会会場に到着すると、中にあるディスプレイに参加グループが次々表示される。

 

「あっSaint Snowさんだ」

 

そう千歌が告げると、画面には今日ここで歌う予備予選では最有力候補とされているだけあって書かれているコメントも他と比べてもかなり高評価であることが伺える。

 

「ふん!ならこの目で、この地の覇者となるか見極めてやろうじゃない」

 

などと言い始める善子に「いや何目線なの…?」と困惑気味な表情を浮かべる遥だったが「あの…」と背後から声をかけられたので全員が振り向く。

 

そこにいたのは、恐らくこの大会に出る学校の制服だろう。それに身を包んだ三人の少女だった。

 

「Aqoursのみなさんですよね?」

 

「え?」

 

突然そう声をかけられて千歌がそんな気の抜けた声で返すと、相手も「えっと…その…」としどろもどろになるが意を決したのか要件を告げる。

 

「一緒に、写真撮ってもらえませんか?」

 

「ちょ…ちょっとみんな落ち着こう!?」

 

「梨子ちゃんも落ち着こう」

 

写真撮影を頼まれてそう取り乱す梨子に千歌が声をかけてようやく収まる。

 

「じゃあ僕が撮りますよ」

 

そう言って遥がカメラを受けると、合計12人を写真に収める。

 

「ありがとうございます!応援してます、頑張ってください!」

 

「ありがと、がんばるよ~」

 

そうお礼を言って少女たちはその場を去る。

 

「控室に行くんでしたっけ?僕は先に客席で待ってますね」

 

「わかった、あとでね」

 

そう言って遥は皆と別れると一人先に客席に向かう。流石に男の自分が入るのは最悪警察沙汰になりうるので当然の行動ではあるが。

 

 

 

「失礼しまーす」

 

そう言って控室の扉をゆっくり開けて千歌は中に入る。そして「Saint Snowのお二人は…」と周囲を見渡すと「はい」とすぐ返事が返ってきて既に準備を済ませた聖良が歩み寄ってくる。

 

「お久しぶりです」

 

そう声をかけてくれる聖良の表情は本番前とは思えないほど穏やかだった。

 

「ごめんなさい本番前に」

 

「いえ、今日は楽しんでいってくださいね。皆さんと決勝で闘うのはまだ先ですから」

 

そう梨子が申し訳なさそうに言うとそう笑顔で返す。

 

「はい、そうさせてもらいます」

 

それを知ってか知らずか千歌もそのように応じる。

 

「何?もう決勝に進んだ気でいるの?」

 

「ものすごい自身ずら…そして、ものすごい差し入れずら…」

 

そう善子が皮肉っぽく告げると、花丸もそのように続くが彼女の場合本当に気になるのは後者だったようだ。

 

「お二人とも、前回も地区予選は圧倒的な差で勝ちあがってこられたし」

 

そうルビィも言うが、今のAqoursは決勝出場グループだ。負けてはいないはずだ。

 

「もしかして、また見せつけようとしてるんじゃないの?」

 

そう果南が挑発するように言うが、聖良は動じない。

 

「いえ、他意はありません。それにもう、皆さんは何をしても動じたりしない」

 

「どういう意味ですの?」

 

感化されたのかダイヤも口調が強気になる。

 

「Aqoursは格段にレベルアップしました。今は紛れもない、優勝候補ですから」

 

「優勝候補…」

 

そう繰り返すように呟く千歌は未だ実感がわかない様子だった。

 

「次会う決勝は、一緒にラブライブの歴史に残る大会にしましょう」

 

そう聖良が手を差し出すと、向こうで先程写真を撮ったグループと談笑していた曜と鞠莉が千歌にささやく。

 

「千歌ちゃん」

 

「ここは受けて立つところデース!」

 

「そうそう」

 

それを聞いて千歌も手を伸ばし、握手を交わす。

 

「理亞、理亞も挨拶なさい」

 

そう聖良がずっとイヤホンをして椅子に座ったまま目を閉じている理亞に声をかけるが、彼女は微動だにしない。

 

「あぁいいんです、本番前ですから」

 

そう千歌が聖良に言うと、これ以上は邪魔だろうからと言って客席へ移動する。

 

その時ルビィだけが気づいていた。膝の上で重ねられていた理亞の手が、震えていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「びっくりしたね」

 

「まさかあんなことになるなんて…」

 

そう曜と梨子が驚いたように告げる。

 

今日の地区予選は終了し、モニターには決勝大会へ進む3グループの名前が記されていた。そしてその中に、Saint Snowの名前は無かった。

 

「一度ミスをすれば、持ち直すのは難しい」

 

そう真剣な表情で告げる鞠莉に善子も。

 

「いっぽ間違えればってわたし達もってこと?」

 

「そうずら」

 

そう聞いてくるのを、花丸が答える。

 

「でももう、決勝には進めないんだよね…」

 

そう千歌が言うと、場の空気が更に重くなった気がする。だが勝負は生き物、その時にならないと解らないこともあるのだ。

 

優勝候補とされているグループが敗退し、無名のグループが優勝することだってある。

 

楽屋に顔を出そうと思い向かったのだが、Saint Snowの2人は既に帰っており。彼女らの座っていた机の周りも全て綺麗に片付けられていた。まるでいなかったかのように。

 

その時、別のグループの少女たちに事情を聞くが

 

「今日の2人はいつもの感じではなかったから…理亞ちゃんもしゃべらなかったし」

 

「あんな2人、今まで見たことない」

 

その言葉を聞いてルビィの脳裏をよぎったのは、ステージ前の理亞の手が震えていた事だった。姉の最後の大会という重責が、彼女をそうさせたのだろう。そしてそれは、ルビィにも起こりうる可能性だ。

 

接触してしまい倒れる2人、それでも流れ続ける音楽。その光景は、見ているこちらもショックだった。

 

「あれじゃ動揺して、歌えるわけないよ…」

 

「それに、ちょっと喧嘩してたみたい…」

 

そう告げる彼女らによれば、この後決勝出場グループの壮行会もあるらしいのだがSaint Snowの2人も帰ってしまい。誘われはしたが気まずかったので断り、ホテルへ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

その夜遥は持ってきていたタブレットPCを開くと、ダニエルと連絡を取ってた。

 

『前回のワームホールの入り口に、コッヴと同じ生命反応をキャッチした。そのポイントまでワームホールを開いてミサイル攻撃を行う。キミにも正確な位置の特定を手伝ってほしい』

 

「つまり、その星が…破滅招来体の本拠地だってこと?」

 

『現時点では、そう判断してる。それがG.A.R.D.と僕たちは、共同で破滅招来体に攻勢に出る為に』

 

『ハルカ、早く君の手伝い欲しいヨー』

 

そうダニエルの後ろで作業していた、今回その地点を特定したパキスタンメンバーだ。世界中にメンバーが居て、その中でも一部は同じ場所で作業をしているメンバーもいるのだ。

 

「わかった。またデータを回してくれれば、僕の協力するよ」

 

そう答えて通話を終了すると、送られてきたデータを開きその中身を確認すると作業に取り掛かる。

 

しかし、果たしてそれが本当に正しいことなのか遥には解らなかった。

 

―アルケミースターズが危ない事を始めたね

 

その話の後に、黒い自分がまた語り掛けてきた。優勝に向けて活動を再開した皆を支えると決めてから聞こえなかった声がまた聞こえる。

 

あの日アグルが戦ったギャラクトロンMK2以来、怪獣は現れていない。しかしこの人類側からの攻撃が、何か良くないものを引き寄せるのでは?そう思わずにはいられなかったのだ。

 

そしてその攻撃の為の施設が、ここ函館に建設されつつあるとデータには記されていた。

 

「疲れてるのかな…ちょっと外いこ」

 

きっと気のせいだと、皆と前を向くと決めたことでもう聞こえなくなると思ったのに。きっと自分の心が見せた幻影だと思っていた。なのに…

 

―アルケミースターズがどうして存在すると思う?

 

ホテルの部屋の扉を開けた時、目の前に広がっていたのは夜の内浦そしてそこに佇むもう一人の自分。

 

「何だこれ…一緒じゃないか、あの時と」

 

そう遥が呆然と呟くと、気づけばホテルの廊下という正常な風景に戻っていた。そしてその時無意識に手を触れていたエスプレンダーに違和感を感じた。

 

そして脳裏を駆け巡る風景、星形に囲まれた施設。そしてあの時の黒い怪獣の姿。

 

「これだ…これに何か仕込まれたんだ」

 

「あれ?遥くん?」

 

部屋の扉を開けて立ちすくむ遥に、廊下を歩いていた他の三年生3人が気づき声をかけるがそのまま部屋に駆け込むのを不審に思い思わずついて部屋について行ってしまう。

 

「遥くん何があったの?」

 

「まさかって思ってたんだけど…」

 

そう遥は独り言を言いながらエスプレンダーを分解する。すると中からガイアの光が浮遊するが、遥はその下を見ると自身が組み込んでいない発信ダイオードを見つける。

 

「これだ…あの時仕込まれたんだ」

 

そう呟く遥が思い返すのはアグルが復活した時の戦闘、果南が捕らわれた時に仕組まれたものだと

直感で判断した。

 

「でもやつらはパルス符号とかじゃなくて、人間の言葉で話しかけてきた…」

 

「何言ってるの?これ人間が作ったもんじゃないの?」

 

暫くそれを眺めていた遥に、善子がそう不思議そうに告げる。

 

「クリシスの予測は仕組まれていた…そして黒い僕、人間によって作られた…」

 

「もしもーし?何言ってるずら?」

 

いきなり逆立ちして考え始める遥に、今度は花丸がそう問いかけるが。遥は何かに気が付くと、パソコンに駆け出し何やら操作を始める。

 

「そんな事、絶対にありえないって思てた…でもそうとしか…」

 

「遥くん?」

 

「裏切り者が居るんだ、アルケミースターズに!」

 

3人は全く話の読めないといった感じだったが、遥のその一言に息を呑む。

 

「僕たち今まで、地球のみんなの為にって集まったんじゃなかったのか?」

 

元々自分たちはその能力を地球の人類の為にと集まった。そう聞かされていたし、そのためにみんなで行動していた筈だった。そして遥は、メンバーリストから一人の人物を割り出す。

 

「クラウス・エッカルト…」

 

「ドイツメンバー…」

 

「クリシスセットアップ直後に脱退…」

 

その画面を皆食い入るように見る。そして最後の分には、函館に留学中だったの文字が。

 

「この辺で周囲を星形に囲まれてる施設ってあったっけ?」

 

「五稜郭が確かそんな感じだったと思うずら」

 

「わかったありがと」

 

そう花丸が答えると、遥はさっき見えたイメージはきっとそこだと思い、エスプレンダーを組み直すと外へ出ていく。

 

「ちょっと遥くん?」

 

そんな皆の呼びとめる声は聞こえぬまま、遥はそこを目指す。

 

「遥くんどうしちゃったんだろ…?」

 

「まさかそこにさっき言ってた裏切者が?」

 

「でも人が住む所じゃないずらよ?」

 

取り残された3人は推測するも、その答えは遥しか知らない。

 

(急がないと!取り返しのつかないことになる前に…!)

 

そう遥は内心焦りながら慣れない夜の街を、スマホの地図アプリを頼りに走る。

 

 

 

 

「あれ?あなたは確か…」

 

そこで遥は思わぬ人物に声をかけられる。

 

「あなたはSaint Snowの…」

 

「鹿角聖良です、お話しするのは東京以来ですね。すみません今日はお恥ずかしいものを見せてしまって…」

 

「桜内遥です。いえあの…残念でしたね…」

 

目的地の近くまで来ると、そこで出会ったのは聖良だった。

 

「それより、どうしてこんな時間に?」

 

そう聞くと、「いえ、買い物に…」と告げられる。そう言えば彼女らはここが地元なのでいても不思議ではないのだ。

 

「それより遥さんの方こそどうされたのです?」

 

「いや…僕はその…」

 

そう言い淀むが、このまま完全に誤魔化すのは無理だと判断して遥は事実を少しぼかして彼女に問いかける。

 

「この辺に、アルケミースターズの元メンバーのクラウスって人が住んでませんか?」

 

「えっと彼は…」

 

意を決してそう彼女に聞いてみる遥だったが、聖良も何か言いにくそうなそぶりを見せた後思わぬことを口にする。

 

「彼は近所に住んでいたのですが今年の春、そこの五稜郭の中で家族の目の前で消えたそうです」

 

「消えた?細かい場所は解りますか?」

 

「えっと、彼とはどういう関係で?」

 

突然そんなことを聞かれた聖良はそう聞いてくるが、当然の対応と言えるだろう。遥は「僕もアルケミースターズなので」というと、納得してもらえたのか「近いし案内しますよ」と言ってくれた。

 

「聖良さんはアルケミースターズをどう思います?」

 

「どう…というのは?」

 

「いえ…やっぱり、忌み子とか言われることもあるので…」

 

その道中、遥はふとそんなことを聖良に質問する。

 

「どうですね、私のクラスにメンバーの方はいませんでしたから…でも、人間ってみんなそれぞれ違うと思うんです。だから人と違うことができるのは誇っていいことだと思いますよ」

 

「そう…そうですよね」

 

聖良の言葉は、きっと今の遥が一番欲しかったものだった。あの日からずっと燻っていた黒い感情が晴れた気がした。

 

「付きましたよ、ここです」

 

そう言う彼女に案内されたのは、敷地のほぼ真ん中だった。

 

「ありがとうございます」

 

だが二人がたどり着くと、夜という事もあるのかもしれないが異様な空気が場を支配していた。

 

「なんかおかしいですここ…」

 

それは遥の気のせいではなく、聖良も同じものを感じていた。

 

「これ…」

 

その時、周囲を真っ白な人影が無数に浮遊し始める。

 

「クラウスは、ここで自身の肉体と情報をやつらに捧げたんだ…」

 

それを気づいた遥は、聖良を庇うように立つと冷や汗を浮かべながらそう呟く。

 

「やつら…?」

 

「破滅招来体の、精神寄生体!」

 

聖良にそう答えると、飛んでいた一体が目の前に降り立つと黒い遥の姿となる。

 

「やっぱりここへ来たね」

 

「もう僕の真似はやめろ!あなたはクラウスなんだろ?」

 

遥は、黒い自分をにらむとそう強い口調で告げる。

 

「そうだ、僕はクラウス。そして…」

 

そう黒い遥はさっきまでと違う声でそう告げる。おそらくこれが、クラウス本来の声なのだろう。

 

「桜内遥でもある」

 

「まだそんな事言うのか」

 

再び遥の声で話す彼に、遥は苛立ちを隠せない。

 

「僕は君の隠された本当の心さ。才能を得て産まれ、そして強大な力を授かった」

 

「やめろ!」

 

「あなた本当にクラウスさんなんですか?」

 

そう告げる黒い遥の言葉を遥は遮ると、聖良はそう口を開いた。

 

「鹿角聖良…僕の言った事覚えているかい?」

 

そこで聖良の方を向くと、彼本来の顔に変わる。金髪に青目に高い鼻、整った顔をしていた。

 

「破滅をもたらす者に力で対抗するなって話ですか?それが一体…?」

 

「それは君の解釈違いだ。僕がメンバーを抜けたのはね、僕は解ったからだ!僕に力を与えてくれたのは破滅ではなく、人類をもっと高く進化させる存在なんだ!」

 

そうクラウスが告げると、漂っていた他の精神寄生体が彼の身体へと集まっていく。

 

「ウオォォォオオ!!」

 

そして彼の身体はどんどん巨大化していく。まるで遥がガイアに変わるときのように。

 

「聖良さん、彼はもう話の通じる相手じゃない。早く逃げて下さい!」

 

「何言ってるんですか、遥さんを置いていけるわけ…」

 

「僕にはまだやるべきことがある!早く行ってください!!」

 

そう強くいい聖良を突き放すと、渋々と言った様子で聖良は敷地外を目指して駆け出す。

 

「早く光を開放しろ、遥!地球の力など、遥かなる星の叡智には敵うはずない!」

 

そう言い放つと、クラウスの姿は怪物へと変貌する。縦長く黄色く発光する目の様な器官。以前戦った怪獣を、完全に人型にしたその姿はまさしく。ウルトラマンを模した怪物だった。

 

遥は意を決すると、エスプレンダーを持った手を左肩に当てる。

 

『待て!』

 

「博樹さん…」

 

ここにいるはずのない博樹の幻影が、遥を制止する。

 

『あれはお前…そしてオレのもう一人の姿だ。それでも戦うのか?』

 

「確かに…あれは僕のもう一つの姿…僕の心の中に居る怪物です。でも、だから僕が倒さなければいけないんだ!」

 

クラウスは確かに、遥や博樹のもう一つの姿。進んでいたかもしれない可能性の一つなのだ。それを理解したからこそ、遥はここで戦わなければいけない。遥はこの時、ようやく決心がついたのだ。

 

父の時のような思いはもうしたくない。だからこそ戦い抜くと!

 

「ガイアァァアアッ!!」

 

突き出されたエスプレンダーから迸る光が、遥の身体を再び大地の巨人へと変化させる。

 

「フハハハ…」

 

「ジュワッ!」

 

両腕を広げて不気味な笑い声を上げる異形に対してガイアは構える。

 

「ウルトラマン…ガイア…」

 

黒い異形の巨人に立ちはだかるように現れたガイアの姿は、後ろを振り返った聖良の目にも入った。

 

「タアッ!」

 

駆け出したガイアは飛び蹴りを繰り出すが、横に移動し躱されてしまう。しかしそれを見切っており、反撃の拳を左腕で受け流すと異形の胸に右拳を叩き込む。

 

そして体勢が崩れたところの回し蹴りをかまし、さらにその顔面に拳を放つが逆に防がれてしまい今度は反撃の拳をくらってしまう。

 

そして蹴りで思わず屈んでしまったところを背中に蹴りを入れられ前につんのめる。するとそのまま背中に張り付かれて首を絞められる。

 

だが遥自身が、今まで格闘技を齧る程度とはいえ同級生に習うなどして確実に戦闘センスを高めてきたことでクラウスとはその面で有利に立っている。

 

ガイアは異形の腹にひじ打ちを入れ、仰け反ったところを豪快に投げとばす。

 

しかしそのまま空中を回転し、静かに着地を決めた異形は立ち上がると黄色い光剣を展開する。それを見たガイアは、同様に青い光剣、アグルブレードを展開する。

 

そして繰り広げられる青と黄色の斬撃の応酬。ぶつかり合うたびに光の粒子を散らす光剣同士のぶつかり合いだった。

 

そしてそれを制したのはガイアだった。ガイアは相手の光剣を薙ぎ払うと、異形の身体はバランスを崩す。そこに3回身体を切り付けた後、ダメ押しに頭から縦に一閃。異形の身体を切り刻んで見せた。

 

「やった!」

 

聖良もガイアも、異形に勝利したと思った。しかし異形は切り刻まれた彼らそれぞれが10mに満たないほどのサイズで先ほどと同じ人型を取ると横に広がりガイアへにじり寄る。

 

ガイアは切っ先を向けて牽制するが、8体もいてはあまり効果は無い。それぞれが光球をガイア目がけて放つ。

 

ガイアはとっさに屈みこんでアグルブレードで受けようとしたが、その威力とガイア自身へ当たったことによって吹き飛ばされてしまう。

 

そして、地に伏せたガイアはそのまま微動だにしない。勝ち誇ったように嗤う異形達はガイアへ近寄っていく。

 

―遥、お前に倒せるのか?自分の心に巣食っている怪物に

 

そんな博樹の声が遥の脳裏に走るが、遥の意識は消えつつあった。

 

 

 

「立って!立ってください遥さん!遥さんなんでしょう!?」

 

そう声を上げたのは聖良だった。さっきの会話と、今の状況からガイアの正体が遥なのではないかと察した聖良はそう叫ぶ。

 

するとその声はガイアに届いたのか、土を握りしめ起き上がると膝をついたままヴァージョンアップポーズをとり、スプリーム・ヴァージョンへと変わる。

 

「ハァアアッ!デヤッ!」

 

そのままの勢いでエネルギーを収束させると、フォトンストリームで薙ぎ払う。

 

すると異形達は爆炎を上げ吹き飛ぶが、白い人魂のようなものとなり再びそれらが集合することでガイアと同じ大きさに戻る。

 

「フッフッフ…」

 

不気味にあざ笑う異形に対してガイアも立ち上がる。

 

「フオォオオオ!」

 

「デヤッ!」

 

一転両腕を広げ威嚇するように唸り声を上げる異形に対してガイアも構える。

 

そしてお互い同時に駆け出した。そして異形は左拳を、ガイアは右拳を突き出す。

 

「ハァァァアアア!」

 

「デヤァァァアア!」

 

そして異形は黄色い光を、ガイアは赤い光を拳に纏わせ思い切り振りかぶるとお互いの顔面目がけて拳が交錯する。

 

「ハァッ!」

 

「デヤッ!」

 

「遥さん!」

 

そのまま静寂が場を支配する。そして間を置いた後、異形の身体は粉々に爆散する。異形の拳は、ガイアの顔面を捉える事はなくガイアの腕に阻まれガイアの拳は異形の顔面に突き刺さっていた。

 

ガイアは振り抜いた拳を下げると、ライフゲージが明滅を始める。緊張が解け思わずよろけるが、姿勢を戻してしっかりと立つと、一度聖良の方を見る。

 

そしてそのままガイアは上を向くと、光に包まれ縮むようにして消えてしまった。そしてその消えた場所に遥が居るのではと思った聖良は、再び敷地内に戻る。

 

「…遥さん」

 

遥はこちらに背を向けたまま立ち尽くしていた。彼の胸中にあるものは、聖良には予測もできない。

 

「アイツは、本当に僕の心の奥の怪物だった…僕の心の奥底に、アイツと同じような事隠してるなんて考えてもみなかった…いや、思いたくもなかったんです…」

 

聖良から遥の表情は見えなかったが、その声は震えていた。それが先の聖良への質問に繋がっていたのだろう。

 

「でも、あったんです…だから僕は、アイツと戦った…」

 

「クラウスさんは―」

 

遥と同じではない。そう言おうとした聖良の言葉は遥によって遮られた。

 

「僕、勝ったぜ?戦って勝ったんだ…僕は…」

 

そう震える声で、強がるように話す遥は聖良の方を振り返るとさらに続ける。

 

「人と戦いたくなんてなかった…僕はそんなに強くないんです…」

 

そう涙目になりながら続ける遥はそこまで言うと耐えられなくなったのか、表情が崩れ始める。

 

「でも今は…戦うしかないんです!」

 

そう荒い口調で言い放つと、遥はそのまま泣きながら走り去ってしまった。

 

聖良はそれを見ているしかできなかった。




Saint Snowまさかの敗退、そしてもう1人の遥との決着!
今回登場した怪獣は精神寄生獣ビゾームです。前々回戦った怪獣は超時空の大決戦で戦ったサタンビゾーです、あちらのはパラレルワールドで放送されているウルトラマンガイア13話「悪魔の接吻」に登場する異世界出身だったり設定が異なる怪獣扱いになってたりします(本家13話はマリオネットの夜)。
雑学はこれくらいにして、また次回でお会いしましょう。
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