これから年内は毎週Zと虹を楽しみに生きていくことになりそうです。
「とても間に合わないじゃない!ルビィと遥はどうしたの?」
なんて黒いローブを身に纏って教室の床になにやら模様を描いている善子がそう喚く。
「ルビィちゃんも遥くんも人気があるから引っ張りだこずら。ここは人気のないものが頑張るずらよ」
そう返したのは、その後ろで同様の作業を行っていた花丸だった。「どういう意味よ!」と返されるが適当にはぐらかして答えなかった。
ルビィはお店で使う衣装を縫っていて、遥は遥で出し物に使う道具の設計だったりを頼まれて善子には手が貸せない状況だったのだ。
なぜこんな事態になったのかと言うと、二年生が閉校祭を行うことを提案したことが始まりだったらしい。
もちろん、三学期が始まり三年生も進路へ向けて大変な時期なのは承知の上だったが、このまま文化祭も統廃合の件でドタバタして行われなかったしと言う事での提案だった。
そして理事長である鞠莉が快諾したことで、明日浦の星学院の閉校祭が行われることとなった。
「だからここのところももうちょっと長くとってさ?そうすればバランスよく見えるよ」
「そっか、さすが遥くん」
「どういたしまして」
そう言ってクラスメートに笑いかけると、すぐに視線を逸らして自分の作業に戻る。
アルケミースターズのメンバーをリパルサーリフトを制作し、正式メンバーに登録されて以来。クラスに隠してきた才能を知られてしまったわけだが、それ以来色々と頼られることが増えた。
だが以前クラウスが化けた遥が指摘してきたような事態は起こらなかった。なので特に三学期になってからはクラスの誰とでも関わるようになっていった。
「流石天才は違うな」
「茶化すなよ大和」
そう言って遥は数少ない男子のクラスメイトである大和を睨む。
「悪いって、でも実際モテるだろ?顔良いし頭良いしでさ、どう?告白されちゃったり」
「そ、そんなことないし、そんな相手もいない!大体、そんな話ばっか振るからお前モテないんだろ?」
そう言われて、遥は顔を赤くしながら言い返す。「バカ声が大きい」と近くにいた橋本に止められて気が付くが、思わず声を荒げたせいでクスクスといった笑い声が聞こえる。
「お前のせいだからね」
そう言って怒って見せながら作業を再開しようとすると、更に話しかけられる。
「で、実際どうなの?Aqoursの誰が好きなの?国木田さん?それとも黒澤さん?」
「あ、あのね~…」
「じゃあ津島さん?それとも先輩?」
「だからそんなんじゃないの!」
そう言って誤魔化そうとするが、返ってそれをネタに暫く弄られる羽目になった。
「桜内君、ちょっといい?」
「はい」
担任の先生に呼び出されたことで、その話はそこで打ち切りとなった。担任に連れられ、職員室に入る。
正直、呼び出されるようなことをした記憶は無い。しかしそれでも職員室は、他の教室とは違う空気が漂っていて苦手だ。
「そんな身構えないで、別に悪い事したから呼んだわけじゃないから。ちょっと伝えたいことがあってね…」
そう告げる先生の顔が真剣なものになると、遥は無意識に息を呑む。
「実は君に東京の学校に転校してこない?って提案が来てるの」
「転校…ですか?」
そう聞き返すと、先生は表情を崩さないで頷く。
「かなり偏差値の高い学校だけど、桜内君ならそれでもトップクラスの成績を収められるだろうし。他にも飛び級で大学に来ないか?って話もあるの」
「先生でも僕は…」
「解ってる、でも春には統廃合になるし。そのまま沼津の高校に行くかどうするか、一度考えてみて」
「わかりました…」
そう渋々といった様子で、遥はそう返す。
「期限は今年度が終わるまででいいって言ってたから、一回考えてみて?それで桜内君が納得する答えを出してくれればいいから」
そう告げる担任の言葉を背に、遥は職員室を後にする。
「あっ遥くんずら」
「花丸ちゃんに善子ちゃんも、どうしたの?」
廊下に出たところで、善子と花丸を見かけると向こうが先に気が付いてこちらへ歩み寄ってくる。
「何やって怒られてたの?」
「そんなんじゃないよ、ただ…」
「ただ?」
そこで遥は今あったことを伝えるべきか悩んでしまった。言えば2人は優しいから行くべきだと言ってくれるだろう。でも遥には同じくらい引き留めて欲しいという気持ちもあった。
「うーん…秘密」
「教えなさいよ!」
そう言って善子が食いついてくるのを受け流す遥だったが、花丸は何も言わなかった。それが逆にばれたんじゃないかと思って怖かったが、彼女はその話題には触れなかった。
その後、学校に紛れ込んだしいたけが折角二年生が立てたアーチを倒してしまって騒ぎになってしまい。今度はそっちの復旧を手伝ったりで結局有耶無耶になったが。
その作業のせいで予定と比べて大きく準備の進行が遅れてしまい、家の許可が下りた生徒は小原家が送るから残っていていいという許可が出たのもあって気が付けば夜になっていた。
美渡からは、しいたけを迷い込ませたお詫びとして高海家名物らしいみかん鍋が差し入れとしていただいたので、みんなで囲んでいた。
遥は一方で先程先生に言われたことを考えたくて、一人だけ作業に戻っていた。
(決勝前に、こんなこと言える訳ないよ…)
「遥くん」
「んー?」
そう悩んでいると、花丸が遥を呼ぶために戻ってきた。
「先生に何言われたずら?」
「今言わないとダメ?」
「だめずら、遥くん絶対大変なものは誰にも言わずに抱え込むから、パンクする前に教えるずら」
今なら他に誰も居ないからと付け足され、遥は「敵わないなぁ…」と頬をかきながら誤魔化し方を考えるが、残念ながらこういう時に限って頭が働かない。
「実はさ、東京から転校の誘いとかが来てるんだよね…」
「…そうなんだ」
「もちろん春に二年生になってからの話だよ?統廃合になるし、沼津の学校か誘いが来てる学校か考えてみてって」
そう補足すると、花丸もこれは予想できなかったのか口を閉ざしてしまう。
「花丸ちゃんがもし僕だったら、この誘いを受ける?」
「マルがもし遥くんの立場でも、すぐには答えを出せないずら。それに決勝が終わるまでは、考えないと思う」
「そうだよね、ありがとう。ごめんね、こんなこと言って。決勝終わるまでは隠したかったんだけどね」
そう言って遥は表情を曇らせる。こんなことで彼女に余計な心配をかけたくなかった。
「ううん、聞いたのはこっちだから」
「でもありがとう、なんかすっきりした。決勝終わるまでは絶対考えない、その後の事はその後でいいよね。それにさ、今は明日の閉校祭を楽しもう」
「そうずらね」
そう笑い合う。こんな時間がずっと続けばいい―遥はこの時そう思っていた。それが叶わぬものと理解していていても。
「もうこんな時間。もう準備も終わったしみんなの所に行こうか」
「そうずらね、早く戻らないと遥くんの分無くなっちゃうよ」
そう言ってスマホの時間を見ると、時刻は20時30分を指していた。流石に余り遅くなれば皆も心配するだろう。そう言って遥は花丸に教室を出るように促す。
「早かったわね」
みんなが鍋を食べている空き教室に戻ると善子にそう言われる。
「もう八時半過ぎてんだよ?早くなんて…」
そう言って遥が時計に目を向けると、まだ19時ちょうどを示していた。アーチの復旧が終わってからまだ30分程度しか経っていない。
「何言ってんの?まだ七時だよ」
「でもさっきスマホの時計だと…」
そう言ってスマホの画面を確認すると、まだ19時丁度と表示されていた。
「なんで…?おかしいずら、確かにマルも…」
「2人とも疲れてるんだよ、2人の分ちゃんと残してるから食べて食べて」
そう言って千歌に勧められるままみかん鍋を頂いた訳だが、2人とも納得のいかないといった様子だった。
翌日の閉校祭は生徒の保護者や卒業生等も訪れ、出店等の出し物はどこも盛況だった。
ただ遥は昨日の事が頭から離れなかった。間違いなく90分ほど時間が遡っていたのだ。きっと何か原因がある、そう思うと自然と肩に力が入る。
「遥くん、やっぱり昨日の事気にしてるずら?」
他の生徒や来賓達が一人も居ない。人気のない裏庭で一人ぼーっと考えていると、花丸が声をかけてきた。
「へ?まぁ…そうだね、あの時学校上空に変な積乱雲が出てたらしくてその中に時間を狂わせる何かがいたんじゃないかって思ってる」
「たまたまじゃないずら?」
「不自然なエネルギー反応も検知されてる、一応警戒した方が良いかなって」
ただ、みんなの不安を煽るだけなのでこの事は言いふらさないでほしいと補足する。
「あれは地球に元々住んでいる怪獣、『エアロヴァイパー』よ」
「君は…確か夏に」
「シルビア。それが私の名前」
そんな時、夏に遥に異変を教えた少女。シルビアが現れる。彼女は相変わらず感情のない顔で語り掛ける。
「あの怪獣は時間を行き来できるの。そして自分の死を免れるために、邪魔物を排除するつもり。そしてここは、そのための戦場になるわ」
「どうしてそんな事を知っているんだい?」
「私はあなたより多くの物を知っている…そして、あなたより優れた力を」
遥の問いかけに、そう答えになっていない答えを語る。
「何を言ってるずら…?」
「赤いお兄さん、お姉さんたちを本気で守りたいなら…破滅の運命を跳ね除ける意志が必要。私はお姉さんたちが踊ってるところをもう一回見たいの、だからまだ負けないでね…」
そう言うと踵を返してシルビアは去っていく。遥はそれを追おうとしたが、角を曲がった瞬間もうその姿を見ることは出来なかった。
そんな時。学校上空に、不自然な積乱雲が発生したのはそしてそれは時代に大きくなっていき、辺りを呑み込もうとした。
「花丸ちゃん!」
咄嗟に遥は花丸に駆け寄ると、庇うように覆いかぶさる。すると制服の内ポケットに忍ばせていたエスプレンダーから光が迸り2人を守る。
「一体何が…?花丸ちゃん大丈夫?」
「マルは大丈夫ずら。でもこれって…」
2人を守っていた光の膜が解けた時、辺りを見渡した2人は息を呑む。
「なっ…」
2人の周りは砂漠化しており、辺りにはファイターやエリアルベースの残骸が。そして学校の校舎は崩れ去り、ワイバーンのような怪獣の亡骸が散乱していた。
「今の間に一体何が…」
そう呟く花丸の隣で、遥は今日は付けてきていた腕時計で時間を確認する。
「三時間経ってる…」
時計の時間は14時を指していた。さっき会話をしていた時の時間帯が概ね11時頃だったので、この一瞬の間に3時間経過したことになる。
「おかしいずら!今の一瞬でこんなの―」
「落ち着いて?ここは多分あのエネルギー体の中なんだ…エアロヴァイパーを倒せば出られるはず…」
「もし、ダメだったら…?」
「元の世界で14時、XIGと怪獣の戦闘に巻き込まれて…内浦の人は全滅する」
そう告げると、花丸の顔が青ざめる。
「そうならない為に、やれる事をやろう」
そう言って遥は不安にさせまいと笑顔を作ると、周囲を2人で散策に行く。
すると急に周りの景色が変化する。すると遥は迷わず時間を確認する。
「今度は13時…」
すると周囲には生徒たちが居ることに気が付いた。
「これは攻撃される前の未来ずら…?」
「多分…」
そう聞いてくる花丸に、遥はそう答えるが2人は元々いた筈の時間からワープしてここに来ているからなのか、誰も2人に気が付かない。
すると今度は空中に歪ができ、その中から怪獣が現れて学校を攻撃する。
「キャッ!」
「危ない!」
咄嗟に花丸を庇おうとするが間に合わない。だがそこで再び空間が歪み違う場所に飛ばされる。
そしてそこで見たものは-
―浦の星学院の生徒は、戦闘に巻き込まれて全員…死亡しました…。
涙ながらに告げるXIG関係者と思われる女性の後ろには、沢山の遺体を収納する袋があった。
そして遥はそのうちの一つに歩み寄ると、そっとジッパーを降ろす。その中から現れたのは、眠るように安らかな顔で目を瞑る花丸の顔があった。
「ッ!」
「いや…」
不覚にも背後に花丸が付いてきていた事に気が付かなかった結果、花丸までその中を見てしまった。
「花丸ちゃんッ!」
顔を真っ青にして走り去る彼女を、遥はすぐ追いかける。すぐに追いついて彼女の手を掴むが、パニックを起こしている彼女は掴まれた腕を乱雑に振り回す。
「嫌っ!離して!離すずら!」
「嫌だ!絶対離さない!」
「こんなのあんまりずら!こんな…皆死んじゃうなんて!」
泣きながら喚く彼女を、遥は抱き込むと訴えかけ続ける。
「死なない!誰も死なないから!」
あんなものを見て、まともな精神状態でいられる人なんている筈がない。それも理解している上で、遥は落ち着かせようと必死に叫ぶ。
「花丸ちゃんは絶対に…絶対に僕が守るから!!」
「でも…これが未来なら、遥くんだって…」
「未来は今諦めなきゃ絶対変えられる!」
そう少し落ち着いてきた花丸に、そう言って遥は肩を掴むと体を離し笑って見せる。
「だから僕を信じて…ね?」
「…うん」
やっと落ち着いた花丸がそう短く答える。すると再びそこで景色が変わると、最初と同じ荒れ地と化した殺風景な景色が広がる。そして怪獣が今度はこちらへ向かって飛び掛かってきた。
「これ持ってて」
そう言って遥は腕時計を手渡してから花丸の前に立ち、光を開放する。その光で怪獣の巨体を吹き飛ばすと空中にガイアが飛翔する。
そしてガイアはすぐさま空中の相手に目掛けてクァンタムストリームを放つが、ワイバーンのような姿をした怪獣-エアロヴァイパー―は頭部の触角を光らせるとその場から消える。
周囲を警戒するガイアの真上に現れると、一直線にガイア目掛けて口から火球を吐きだした。
「グアァッ…」
肩にそれを食らってしまったガイアはバランスを崩し、そのまま地面に落下してしまう。そしてよろよろと立ち上がったガイアの真後ろに、怪獣は静かに着地する。
「後ろずら!」
花丸のその声に気が付いたガイアは、そのまま前に飛んで怪獣の蹴りを回避する。そして起き上がりざまにガイアスラッシュを放つが、一瞬のため動作を見て怪獣は再び触角を赤く光らせその場から消える。
消えた怪獣をガイアは周囲を見渡して探すが、真横に現れ飛来する怪獣の体当たりを躱せずその巨体が宙を舞う。
「やっぱり…未来は変えられないずら…?」
時間移動でガイアの攻撃を躱しながら攻撃する怪獣に圧倒されるガイアを見て、思わずそう呟いてしまう。
―諦めなきゃ絶対に変えられる!
そうだ、まだ遥は諦めていない。守ると約束してくれた彼の為にも、今自分が諦めてはいけない。そう思った花丸は、何か手は無いかと怪獣の様子を観察する。
その視線の先では、ガイアの攻撃を見てから時間移動で回避して一方的に攻撃を当て続ける怪獣の姿があった。更にガイアは受けたダメージによってライフゲージの明滅が始まっていた。
「あの触覚が時間を操ってるずら…?」
怪獣が時間移動を起こす時、必ず頭の触角が赤く発光していた。ならそこを破壊できれば。そう思った花丸は駆け出した。
(このままじゃ…どうする…?)
ガイアは…いや遥はこの状況を脱出する方法を考えていた。こちらの攻撃は時間移動で回避されてしまう。何とかしてそれを封じられないかと。
『頭の触角が弱点ずら!それを狙って!!』
崩れ落ちた校舎から、閉校祭の催しの為に用意されていたマイクとスピーカーが奇跡的に生きていたので、花丸はそれを使って声を響かせる。
そして花丸に気が付いた怪獣は、羽交い絞めにしていて抵抗の弱まったガイアを放り捨てると背中を向けて花丸へと向かって行く。
そして花丸目掛けて火球を吐きだそうとする。
(させないッ!)
ガイアは咄嗟に怪獣の頭部目掛けてガイアスラッシュを連射する。
死角からの攻撃に反応できなかった怪獣は、触角を破壊されて苦しみ始める。
「ハァッ!ウオァアア……ダァツ!」
その隙に立ち上がると、ガイアはスプリーム・ヴァージョンへとヴァージョンアップする。
こちらを振り向いた怪獣へかけよると、ヤクザキックを腹に叩き込み仰け反った相手の足を蹴り飛ばす。そして頭の下がった所を掴み、地面目掛けて投げ飛ばす。
そして立ち上がった相手を抱え上げると頭から地面に叩き付ける。そして頭を掴んで無理やり立たせると喉元に膝蹴りを。
そして一度距離が離れたところで反撃とばかりに翼で殴りつけてくる怪獣の攻撃は前転で回避し、起き上がりざまに回し蹴りをお見舞いする。
その威力によって後方に倒れ込んだ怪獣の尻尾を掴むと、学校とは反対の方向に投げ飛ばす。すると荒れ地となったこの場所に乱立していた巨大な岩を破壊しながら怪獣の身体が飛んでいく。
そして飛び上がったガイアは、両腕を腹の前でクロスすると大きく腕を回して胸の前で重ねる。
「デュワ!ハァアア……デヤァッ!」
そして放たれた赤と青の光のブーメラン―シャイニングブレード―によって怪獣の身体を引き裂いたのだった。
「やった!」
それを見て花丸も無意識にガッツポーズをするが、ガイアは急いで彼女の前に降り立つと手を差し伸べる。
『早く掴まって!この空間が消滅する前に脱出する!!』
この空間はエアロヴァイパーの巣だったのだ。そして主を失ったことで崩壊が始まる。花丸を手に乗せると、ガイアは猛スピードで出口目指して飛び立った。
花丸を守る為に金色の光のバリアで彼女を覆うと、どんどん速度を上げていくガイアだった。
しかしその背後を、漆黒を纏った何かが迫っていた―
作中時間だと遥と約半年ぶりに絡むシルビアちゃん(上手く出番作れなくてごめんなさい)その真意は?
そして異空間から脱出するガイアと花丸に迫っているものとは?
待ち遠しくっても、待て!(○のレコ○ギスタ感)