ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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ロストワールド直前だけど投稿します
前回からそこそこ日が空いたけど今回は短めです。


50話 浦の星/死神の囁き

「グオァッ…」

 

異空間脱出を急ぐガイアの背に、漆黒を纏った鞭が打ち付けられガイアは苦痛の声を上げ、更にその攻撃が当たる度にそこから光の粒子が血のように吹き出す。

 

「遥くんっ!」

 

そんな様子をガイアが展開しているバリアの中で見ているしかできない花丸は思わず彼の名を呼ぶ。

 

ガイアの背が火花を上げるたびに苦痛に呻く。その原因の正体を見ようと花丸は後方を見ると、後方からガイアを追い越す勢いで真っ黒い光の塊がこちらへ攻撃を仕掛けてくる。

 

「遥くん、何かが追いかけてきてるずら!」

 

後ろを確認する余裕のないであろうガイアへそう花丸は叫ぶと、ガイアは一瞬だけ花丸に視線を落とすと頷き。最後の力を振り絞る。

 

だが軌道を不規則にしても攻撃を回避し続けることが出来ない。明滅していたライフゲージはどんどんその速度を速めていく。

 

「遥くん、もういいずら!マルを見捨てて反撃して!」

 

花丸はそう遥に訴える。今花丸を抱えて飛んでいるから反撃できないのだと、それなら自分を放り捨てて欲しいと告げる。

 

『嫌だ!約束したよね?僕が絶対花丸ちゃんを守るって、だから絶対そんなことしない。一緒に帰るんだ!』

 

そう遥は逆に言い返した。しかし攻撃は止まらない、ガイアはその攻撃を耐え続けるがいつ限界がきて姿を維持できなくなってもおかしくなかった。

 

その時、やっと行き先に光が見えた。恐らくそこが出口なのだろう。するとラストスパートと言わんばかりにガイアはその姿を光の球体に変え、更に加速した。

 

そこでようやく異空間から脱出することに成功するが、学校裏に光のまま真っ直ぐ着地するとその光が解け遥が花丸を抱えて膝を付いている姿を確認できる。

 

「はぁ…はぁ…花丸ちゃん大丈夫?」

 

「マ、マルは大丈夫ずら…」

 

「そっか、良かった…そうだ、怪獣を倒した時間を教えて…?」

 

そう言われて、花丸はガイアがエアロヴァイパーを撃破した時の時刻を確認してもらう意図があって腕時計を渡されていた事を察して、確認しておいたことを思い出す。

 

「えっと…確か12時だったずら」

 

「ありがとう、今が11時だから一時間あるね」

 

「じゃあまださっきの怪獣は生きてるずら?」

 

「かもね…でも12時になれば死ぬはずだよ」

 

あの異空間に飛ばされてから、全く時間が経過していなかった。周りも閉校祭で賑わう人々の声が聞こえるので、あの空間で見たものは、一つも現実にはならなかったらしい。しかしその予想はあくまで推測でしかない、でも遥には必ずそうなるという確信があった。

 

「でもさっきの黒い塊はいったい…」

 

「多分、破滅招来体だと思う。あの空間に閉じ込めてしまおうっていう意図があったんだと思う」

 

さっきの攻撃は脱出することを妨害するために行われたもので、エアロヴァイパーは関係ないと推測した。

 

「ごめん花丸ちゃん、12時になったら起こして。なんか…疲れちゃ…た……」

 

そこまで言って遥は花丸によりかかるようにして崩れ落ちると、すぅすぅと寝息を立てはじめる。

 

「ありがと」

 

先程までと逆転して、花丸が遥を膝枕している状態になってしまったが。花丸はそう小さく呟くと遥の頭を軽くなでる。

 

「あっこんなとこにいた。手伝ってくれるって言ってたじゃないのずらま…る?」

 

そこで、自身の出し物を手伝う約束をしてくれていた花丸を探して善子がやってきたのだが。今の花丸と遥の状態に気が付くと言葉を失ってしまう。

 

「あっ善子ちゃん。ごめん一時間待ってほしいずら。遥くん疲れて寝ちゃったから…」

 

「だっだだだからって何で膝枕なの!?アンタたちそんな仲だったの!?」

 

落ち着いた様子で告げる花丸とは対照的に、善子は顔を真っ赤にしてそう捲し立てる。

 

「遥くん…マルを庇って攻撃されちゃって…それで…だからマルがちゃんと見てあげようって」

 

そう花丸は少し表情を曇らせてそう告げる。それを見て善子も遥がガイアの力を使ったことを察して、なんとか落ち着きを取り戻す。

 

「何があったの…?」

 

「内緒ずら」

 

「何でよ?」

 

「だって…」

 

そこで今度は花丸の顔が少し赤くなる。今思い返すと取り乱して恥ずかしい所を遥に見られてしまったし、あの時遥に言われた言葉も人に教えるのは恥ずかしい。

 

―花丸ちゃんは絶対に…絶対に僕が守るから!!

 

あの時の遥の真剣な表情が思い浮かんでしまい、花丸は視線を逸らす。

 

「ここに居たら異空間に飛ばされちゃって…そこで怪獣と戦って、その時に遥くんがマルを庇ってくれて…」

 

「そう…そんな事があったのね…」

 

何とか要点だけ話してみると、善子は装納得してそれ以上は聞こうとしなかった。

 

「わかったわ、クラスの方には私が誤魔化しとくから。絶対後で来なさいよね」

 

そう言って善子はその場を離れる。彼女なりに気を使ってくれたのだろう。茶化す気にもなれなかったので、そのまま彼女に「ありがとう」と言って見送ったのだがいつもの堕天使は出てこなかった。

 

そしてまた眠っている遥に視線を落とす。こうして寝ている顔を見ると、姉に似て整った顔をしていて女の子みたいだなぁと思ってしまう。言うと本人は嫌がるだろうが。

 

でもそんな彼はガイアとして破滅招来体と戦って自分達もいつも守ってくれていた。

 

そんな彼にあんなセリフを言われたばかりなのだ。どうしても気になってしまう。

 

 

 

(何で何で?あの2人いつからそんな関係に…?)

 

教室に戻る途中、善子の脳裏には先程の光景がこびりついて離れなかった。そして何でそれが気になって仕方がないのがどうしてかも解らない。

 

「あっ善子ちゃん、花丸ちゃん見なかった?」

 

そんな事を考えていると、廊下でルビィと遭遇する。善子はさっきの事を話すか一瞬迷うが、すぐ誤魔化すことにした。

 

「なんかちょっと遥が調子悪いみたいだから保健室に連れてくってさ」

 

「そうなんだ…遥くん準備の間皆に引っ張りだこだったし疲れが溜まってたのかな…?」

 

そう言って遥を心配してか表情を曇らせるルビィに、少し罪悪感を感じながら善子は続ける。

 

「だから私達でクラスの仕事、代わりにやったげましょ?」

 

「うん、そうだね」

 

そう言って2人は教室へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、もうすぐ12時というタイミングで遥は勝手に目が覚める。

 

「ん…花丸ちゃん、今なん…じ…え?」

 

「あっ目が覚めたずら?」

 

段々意識がはっきりしてくると、今自分が何を枕にして眠っていたか気が付く。

 

「わわっ…!ごっごめん!すぐどくから!」

 

そう言って顔を赤くして飛び起きた遥は、顔を真っ赤にして慌てて花丸から離れる。

 

「嫌じゃなかってけど…」

 

「へ?」

 

「だから…マルが好きでそうしてたから…」

 

花丸のその言動に一回気の抜けた声の出す遥だったが、そこで段々冷静になってくると自分の花丸への行動の数々が恥ずかしくなる。

 

「そ、そっか…ところで今何時?」

 

「えっと…もうあと十秒くらいで12時ずら」

 

そう言って花丸が遥の腕時計を差し出す。そしてその時計が12時を指す瞬間を息を呑んで見守る。そして12時を示す直前、空にエアロヴァイパーが現れた。

 

「そんな…」

 

「いや、大丈夫!」

 

怯える花丸に、遥はそう宣言する。そして12時丁度になった瞬間。エアロヴァイパーの姿は完全に消滅した。

 

「これで一件落着…かな?」

 

「そうずらね。ねぇ遥くん」

 

「何?」

 

これで安心といった様子の遥に、花丸が何かを言いかけたので続きを聞くべく遥は花丸をまっすぐ見る。

 

「ありがとね」

 

「うん、どういたしまして。こちらこそありがとう、花丸ちゃんが活路を見出してくれたから僕も勝てたわけだし」

 

「そんなことない、遥くんが未来は変えられるって言ってくれたから」

 

「あー…あの時もごめんね?いきなり抱き着いたりして…」

 

「それもお礼を言うのはこっちずら、あの時はどうしたらいいか解んなくなって…でも遥くんのお陰で安心できたずら」

 

「ならよかったよ」

 

完全に緊張の解けた2人はそうやって暫く談笑していた。

 

「そうだ、善子ちゃんのを手伝ってあげるって約束してんだった…」

 

「そろそろ行かないと多分寂しくて泣いてるずら」

 

「ははっそれは無いでしょ?」

 

「まあまあ、急ぐずらよ」

 

そう言って遥の背を思わず軽く叩く。

 

「いっ…急ごっか」

 

それに一瞬顔をしかめる遥だったが、その顔は花丸からは見えなかった。

 

さっき背中に受けた攻撃は、普段と違って光の力で完全に消してしまうことが出来ず。遥の背に火傷跡のような痣となって残っていた。

 

結局善子は花丸の言う通り泣きそうだった。もっとも、理由は占いをしていたのだが、全く人が来なかったからなのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄さん、ちゃんと守ってみせてくれたわね…でもこれで邪魔だった怪獣は消えた」

 

「そうですね、あなたが焚き付けてくれたおかげでモキアンも楽に用意することが出来ました。欲を言えばそのままガイアを倒してくれれば尚良かったですが」

 

暗闇の中で、少女は落ち着いた声で話す男性と言葉を交わしていた。

 

「それは私のやることじゃないわ。ただあなたの望み通り青いお兄さんとの間に邪魔しに来れないようにしただけ…あとはあなたの仕事よ」

 

嫌味っぽく語る男性に、少女は冷たい視線を送り付けそう告げる。

 

「そうでしたね…では私は私の役割に取り掛かりましょう…『彼女』の為にね」

 

「精々頑張って」

 

そう冷たく返すと、男性の気配は遠ざかっていく。そしてシルビアはため息をつくと一人呟く。

 

「一体いつまで、『輝いて』いられるか…楽しみね」

 

そう告げると少女の身体は闇に包まれて消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南は曜と海をモチーフにしたアクアリウム風の展示で、園児等に人気を集めていた。

 

「みんなー浦の星アクアリウムにようこそー」

 

「ここは広くて深ーい内浦の海」

 

この前アルバイトをした水族館のマスコットの着ぐるみを曜のツテで借りたのだが、皆夢中になってくれたようで良かったと果南は思った。

 

そして観に来ていた人たちの奥に、博樹が居るのに気が付く。誘った時は「気が向いたらな」なんてそっけなく返されたが、やっぱり来てくれたんだ。と少し嬉しくなる。

 

 

「やっぱり来てくれたんだ?」

 

「無くなる前の最後の学祭だもんな」

 

「学祭じゃなくて、閉校祭!」

 

一旦休憩になった時に、果南は博樹に声をかけるが。すぐに訂正を入れる。

 

「あのグレーの髪の子と2人でやってるのか?」

 

「そうだよ、曜と2人でね。どうだった?」

 

「まあまあだな」

 

「まぁヒロから見ればそうだよね…」

 

そう言って苦笑いを浮かべる果南だったが、正直褒めてくれてもいいのにと思わずにはいられなかった。

 

「本当になくなるんだな…」

 

「うん、三月で本当に終わり」

 

そう感慨深そうに告げる博樹に、果南もそう同調する。これが本当に最後のこの学校でのイベントなのだ。だから近隣の住民も例年の学園祭と比べてもかなり多くの人で賑わっていた。

 

そんな学校の様子を果南と学内を歩きながら眺めていると、やはり生徒だった時の同級生に出くわす事もあるのだが、ほとんど口を聞いたことが無かったので、向こうも何か言いたげでも話しかけてくる人はいなかった。

 

「懐かしいな、何も変わってない」

 

「そうかな?私はずっと通ってるから解らないや」

 

「ああ、変わらない」

 

そう言って言葉を交わしていると、ダイヤがルビィと2人でラブライブに関するクイズの出し物をしていたり、鞠莉は中庭でシャイ煮を売っているのを見かけた。博樹は初めてそれを見たわけだが、店には近寄らないと心に決めるのだった。

 

「じゃあ私そろそろ時間だから戻るね」

 

「わかった、オレはもう暫く見て回ってる」

 

そう言って果南と別れた博樹は、校内を見学して回ろうとした。

 

「湊さん。松浦果南さんの事が、気になるみたいですね」

 

「誰だ?」

 

廊下の角で、唐突にスーツに身を包んだ男性に声をかけられ思わず博樹は身構える。

 

「そんなに構えないでください、私はあなたに用がある」

 

「オレに用…?この学校の職員じゃないな…一体何の用なんだ?」

 

「私は主の使い。主があなたに人類を滅ぼして、この星を誕生したての希望の星に戻してほしいと」

 

「断る!お前が何者かは知らないが、オレはもうまやかされたりしない」

 

そう博樹は睨みつけるようにして告げる。

 

「そうですか…残念です。また明日お伺いさせていただきますので、いいお返事が貰える事を期待していますよ」

 

「何度聞こうとオレの答えは変わらない」

 

「そうですか、本当にそうだといいですね。フフフ…フハハハハ」

 

そう笑いながら男性は紫に光ると、その場から消滅した。

 

「一体…何が起きようとしているんだ…」

 

博樹はその後、嫌な予感がして学内を走り回るが、もう先の男性を見つけることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

遥や博樹、そして花丸以外の人々は迫っていた脅威に気づくことなく。閉校祭は盛況のまま、夕日に包まれたグラウンドでキャンプファイヤーと全員で囲い、終了となった。

 

「これで浦の星学院、閉校祭を終わります。今日集まった人を見て、私は思いました。この学校がどれだけ愛されていたか。この町にとって、皆にとって、大切なものだったか」

 

終了のあいさつを、理事長でもある鞠莉が執り行うが、その声は段々と小さく、震えていった。

 

「だからこの閉校祭は、わたしにとって何より幸せで…わたしにとって…何よりも暖かくて……」

 

「鞠莉さん…」

 

その様子を、すぐ後ろに立っていたダイヤはすぐに気が付いた。でもかける言葉がすぐに思いつかなかった。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…もう少し頑張れれば…もう少し……」

 

「鞠莉…」

 

学校を存続させることが出来なかったことに責任を感じて、そう頭を下げる鞠莉を見るのは辛かった。でもそれは自分達も同じ。

 

この学校の名前を残すためにラブライブで優勝する。そう決意を新たに進んできたが、それでも閉校という結果を覆せなかった事に責任を感じずにはいられなかった。皆そうだったから、何と声をかければいいかわからなかったのだ。

 

「アークーア!アークーア!」

 

一人の生徒から始まったAqoursコールは、やがて全生徒。そして一般の参加者にも伝わっていく。

 

誰も鞠莉の事も、Aqoursの事も責めたりしない。この学校の為にと立ち上がって、精一杯輝こうとしてくれている彼女達の事を感謝しているのだ。

 

それを受けて、ダイヤはそっと鞠莉の背を押す。

 

「みんな、ありがとう!」

 

それを受けて鞠莉は笑顔でそう告げる。きっと皆が見たかったのは笑顔だった。

 

「じゃあラストに、みんなで一緒に歌おう!最高に明るく!最高に楽しく!最っ高に声を出して!!」

 

 

 

―勇気はどこに?君の胸に!




多くは語りません、Day2観てきます。
そろそろアイツとの激突ですね、お楽しみに!
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