アゼもライブの目途が立って良かった…ほんと良かった…
物語もガイア本家で言う最終章へ突入していきます。
翌日、遥は背中の傷の痛みで目が覚める。
「いてて…やっぱ結構派手にやられたな…」
変身後にも目に見えてダメージが残ったのはいつ以来だろう?アグルと戦った時だろうか?
それに昨日の背後から攻撃してきた黒い物体は一体何者だったのだろう?花丸からも黒い何かとしか聞けず、ハッキリとした形の特徴は視認できなかったようだし遥は遥で振り返る余裕は無かった。
「あれはきっと…破滅招来体の仕業。僕が花丸ちゃんを守るのを邪魔するため?いや、まだ何かあるはず…」
そう考えてもすぐに答えを得ることなどできない。しかし、それでも今の遥には結論がほしかった。
あの時、本当は脱出した時にはもうガイアの力を保つことができないくらいには消耗しきっていた。でも空間を出てすぐ光が消えてしまえばふたりとも地面に叩き付けられて結局助からなかっただろう。
あの時は必死だったし、疲れすぎて寝てしまったからそこまで気が回らなかったがよく持ったものだと思う。
スプレンダーに目を落とすと、まだその中の光は弱々しくとてもじゃないがまだ戦闘は行えないだろう。
時計に目を落とすと、それでももう時刻は8時を回っていた。今日は決勝が近いので練習は行うが、昨日の事もあって開始時間には遅めに設定してあるのでまだ余裕があり、問題は無いのだが。あまり疲れが取れた気はしない。
「昨日も一回寝ちゃったし、かなり疲れてるのかな…?」
そう口に出すと、脳裏に昨日の事がよぎって顔が赤らんでしまう。本人は好きで膝枕してたからいいなんて言っていたが、誰かに見られてたんじゃないか?とかい色々考えてしまう。
「いや、もう気にするな…忘れよう…うん、それがいい」
そう言ってその記憶を奥に押しやると部屋から出る。
「あっ遥、おはよう」
「おはよう姉さん」
「大丈夫?顔赤いけど風邪ひいた?」
そう言って梨子は遥のおでこに触れると「熱は無いみたいね」と言ってすぐ離れる。
「うん、風邪はひいてないと思う…なんか疲れちゃったみたいでさ?」
「そういえば遥、クラスでの催しだったりいろんなとこに手伝いに行ってたんだっけ?」
「まぁ…ね?」
「みんなと打ち解けてるみたいで安心したわ、ご飯できてるから食べて来たら?」
「そんな心配されなきゃいけないこと?まぁいいや、ご飯食べてくるよ」
「私は先に学校に行ってるわね」
そう言って洗面台前で遭遇した梨子と別れると「おはよう」と母親に告げてからリビングに入っていくのだった。
平和などこにでもある家庭の光景がそこにはあった。
「遅くなりました」
時間的にはまだ余裕があったが、自分が最後だろうと思って部室にそう言いながら入っていく。
「おはようございます」
「ダイヤさんおはようございます」
「果南さんを見ませんでしたか?いつもは早いのに今日はまだ来てないので…」
「いえ、見てないですね…」
部室に入るとダイヤから、果南だけがまだ来ていないことを告げられる。
「ヒロを連れてくるって言ってたし、ヒロがごねてるんじゃないの?」
そう鞠莉が口を挟むが、そこで湊博樹が入ってくる。
「だから何で部外者のオレを呼び出すんだ」
そう言って入ってくる博樹に「果南知らない?」と鞠莉が問いかける。
「アイツまだきてないのか?」
「ええ…いつもなら一番早いのですが…」
そうダイヤに告げられて、博樹は深刻そうな顔を見せる。
―松浦果南さんのことが、気になるみたいですね
「まさか…」
そう呟くと博樹はすぐに外へと駆け出していく。
「博樹さん!?」
その様子にただならぬものを感じた遥が後を追いかけると、博樹は校門前に停めていた自身のバイクに飛び乗るとヘルメットをかぶる。
「遥!お前はここでみんなと居ろ!オレが果南を探しに行く、いいか?絶対離れるな」
そういうとエンジンをかけ、スロットルを全開にして去っていく。
(果南、無事でいてくれ…)
今さっき来た道を駆け戻り、水上バイクに乗り換えると淡島へと戻っていく。
「果南、居るのか!?」
果南の家に駆けこんでいく博樹だったが、家族は今ダイビング客と海に出ているのか誰もいなかった。
―フフフフフ…
昨日話しかけてきた男性の不気味な笑い声が響く。
そしてその声は幼い時に来て以来だったが、間取りが変わっていなければ果南の部屋から聞こえてきた。
ドアノブに触れようとする手を一瞬躊躇ったが、すぐに開け放ち彼女の部屋に入っていく。
「これは…」
開け放った扉の向こうには、一目で彼女の部屋ではないと解る異様な空間が広がってた。頭上には星空とその中で大きく輝く惑星があり、開け放った扉はひとりでに閉まると消滅してしまう。
そして視線の先の岩肌には、果南が力なく横たわっていた。
「果南!」
博樹はすぐさま彼女に駆け寄り、何度も名を呼びながら体を揺さぶるが反応がない。
「ご心配なく、ただ気を失っているだけです」
「お前は…?」
突如頭上に右腕の先が手ではなく鋭利に尖っており、左手も異様に指が太く長い上に指先が尖っている。どこか菩薩を連想させる格好をした異形の生命体がいた。
左右非対称で血管が全身浮き出ているかのような姿には、嫌悪感を感じずにはいられない。
「私は主の遣い…」
「主の遣いだと?…昨日の奴か」
「そう、そしてここは…モキアンの体内!」
そう言って両腕を広げる異形だったが、まさかワームホールのようなもので怪獣の体内に呼び寄せられてい閉まったことに博樹は驚愕する。
「そしてその石は、主から貴方へのプレゼントです」
「何?」
プレゼントだと言って異形が指さしたのは、今現在博樹が立っている岩肌だった。これは怪獣の体内に存在している特殊な物体だったのだ。
「博樹さん…どうしたのでしょう?」
「ヒロは果南が大好きだからね、大げさなんじゃない?」
部室に戻ると、ダイヤと鞠莉がそのような会話をしていた。無駄な心配であってほしいが、遥も胸騒ぎがして仕方がない。
「とりあえず皆を部室に…嫌な予感がします」
そう遥が告げると、残りの全員が部室に入ってくる。
「みんな空見て!なんかでっかいのが居る」
そう言って部室に飛び込んできた千歌に言われるままに外に出ると、巨大な物体がゆっくりと降下していくのが見える。そして目にギリギリ見える程度の黒い影がその周りを飛んでいる。恐らくファイターだろう。
「なんだあれ?…」
「大きい…」
思い思いの感想が口から出るが、全てが繋がっている気がして遥は背筋に冷たいものが走った。
ひとまず部室まで戻って、アルケミースターズのネットからXIGとコンタクトを取ろうと試みる。
「あれが何なのか、XIGは掴んでいる筈…そのデータが見れれば…」
そう言って遥はキーボードを操作していく。だがやはり厳重にプロテクトがかかっているが、遥は多少無茶をすれば抜けれる自信があった。
「未来ずら…」
見たこともない記号が羅列する画面を、遥はキーボードを操作していく。そして空に浮かんでいる物体の物と思われるデータを閲覧することに成功した。そこには全長300mは超えると想定される巨大な魚のような怪獣が映っていた。
「モノポール?」
「何それ?」
中身をスキャンした結果であろう画面をみて首を傾げる遥に、そう千歌が聞いてくる。
「磁気単極子…磁石でいうS極かN極どっちか片っぽの極しか持たない、理論上の物質です」
「理論上ってでも…」
現にあるではないかと善子が指摘してくるが、遥はそれにも答える。
「地球上で発見されてないだけで、宇宙の始まり。ビックバンの時に生成されたって言われてる」
「そ、それが落ちてきたらどうなっちゃうの…?」
「強力なN極が発生することで、地球内部のマントルが大移動して…世界は滅びる…!」
そう静かに告げる遥によって、場の空気が重くなる。
「接触までどのくらい猶予があるの?」
「あと30分もしたら地表に影響が出ます、防ぐためには強力なS極で引き上げるしかない…」
「そんな方法あるの?」
そう鞠莉に聞かれた遥は、少しだけ考えるとXIGを連絡を取ろうとする。
「エリアルベースのリパルサーリフトなら、一時的に磁気単極子Sに限りなく近づけることが出来ます」
「何故だ?何故こんなものを使う必要がある?」
「人類を滅亡させ、地球を産まれたばかりの希望の星に戻すため…浄化する!」
「浄化だと…?」
博樹は異形へとそう叫ぶが、異形は地球を浄化するためだと告げる。
「何故人間を嫌う?人間がお前たちに何をした!?」
「我々は…滅ぼされたくない…」
「人間が、お前たちを滅ぼすというのか…」
恐らく人類が皆思っていた筈、なぜ地球がここまで狙われるのか?その疑問を口にした博樹に異形は怯えるような仕草を見せてそう告げる。
「このままでは、全宇宙が滅んでしまう」
そう告げる異形は視線を逸らす。そして同じ方を見ると、そこにはモキアンに対して9機のファイターとエリアルベースが攻撃態勢をとっているのが見える。
そして全火力をもって、モキアンへと攻撃を開始するが目に見えるダメージを与えられているようには見えない。
「主はいつも、貴方達を見ています。お見せしましょう…宇宙の真実の、ほんの一部を!」
そう言って異形が手をかざすと、周囲の星々が一点へ集まっていき光の中から横たわる女性の姿が現れる。
「ここは一体…?」
そこで果南はようやく目を覚ますが、どうして自分がこんな場所にいるのか解らないといった様子だった。だが博樹はそんな果南の様子に気づく余裕は無かった。
「彼女は、悪性のウイルスに侵されています…主は、彼女の痛みを取り除こうと様々な薬を投与した」
そうわざとらしい演技で異形は語って行く。
「あなた方が、『破滅招来体』と呼んでいるのがそれです」
「人間が…宇宙を蝕むウイルスだというのか…?」
そう言い返す博樹を余所に、異形は外の様子を見ている。
「随分しぶといウイルスだと思いませんか?どんなに薬を投与しても…死に物狂いで向かってくる」
そう独り言のように告げる異形の目が光ると、モキアンは反撃に出る。あっという間にエリアルベースは半壊し、大ダメージを受ける。
「そんな…」
「その様子を黙って見ていた果南が思わずそう声を上げるが、異形は無視して博樹へと更に言葉を投げかける。
「主は、貴方を必要としています」
「破滅招来体が…オレを?」
「はい、もし貴方が彼女の痛みを取り除いてくれるのなら。貴方に、このモキアンを差し上げましょう。地球の運命は、貴方の思うままに…」
かつてクリシスの仕組まれた予測に踊らされ、人類を滅ぼさんとした博樹に異形はそう告げる。博樹が人類を滅ぼすなら、地球を好きにしていいと。
「人類は今までの戦いで十分苦しんだ…これ以上の戦いは無意味だ!」
「彼女の痛みはそれ以上だ!お前たちの苦しみよりも!ずっとずっと長く、苦しい…」
博樹の答えは、否定だった。だがしかし、異形はそう言い返してくる。これ以上の対話は不可能だろう。
『意見をありがとう、エリアルベースで怪獣を安全圏内まで引き上げて艦諸共破壊することにした』
「いえ…僕にできるのは、これくらいしかない…」
通話で、石室コマンダー自ら遥の意見を聞いて対応をしてくれた。だが遥も悔しそうに唇を噛むことしかできなかった。
『万一の為に、街にも避難勧告を出すよう通達した。キミ達も避難するんだ』
「わかりました…どうかご無事で」
そう告げると、通話を切る。その時に見えたエリアルベースの中は以前訪れた時と違ってボロボロになってしまっていた。
「遥くん…私達も避難しよう?」
「いや…僕は戦うよ」
そう言ってエスプレンダーをとり出す、しかし光はまだ回復しきってはいない。
「無理ずら…遥くん、昨日の戦いでケガしてるよね?まだ治ってないんじゃないの?」
「それは…」
「さっきの方法で怪獣は倒せるんでしょ?なら遥くんが無理しなくたって…」
そう花丸に諭すように告げられ、遥は視線を泳がせる。
「それにヒロと果南も心配だし、合流するまでは一旦は逃げるべきよ」
そう連絡のつかないスマホを下して鞠莉もそう告げる。
「わかり…ました…」
遥はそう渋々といった様子ではあったが同意し、一同は指定の避難場所へ向かうことにした。
「宇宙に命が芽生えたその時から、強いものが弱いものを取り込み糧とする…その戦いのシステムが、彼女の痛みを生み出したんだ!」
博樹も負けずとそう反論する。弱肉強食、その自然の摂理がこの事態を招いたのだと。
「人類は進化しすぎた、その事自体が宇宙を破滅に導くのだ!」
「勝手すぎる…」
異形が声を荒げると、果南がそう漏らす。
「人類を滅ぼしたいだけじゃない、人類が進化しすぎたから滅ぼすなんて…宇宙の視線で見たらみんなおんなじ命なんじゃないの?」
そう果南は告げると、博樹へと振り返る。
「ヒロだって、人類を憎んで…苦しんで…それでも沢山の命を救ってきた。そんな優しさを持てる人が、本当に何かを救える人なんじゃないかって…私は思うんだ」
「果南…」
そう博樹が果南に視線を落とすと、果南は博樹の胸に抱きつく。
「わたしね、ヒロの事が好き……悩んで苦しんで、それでも誰かの為にって頑張ってるそんなヒロが…」
「とんだ茶番ですね…人間に、ウイルス如きに何ができる?」
そう異形は嘲笑うように高笑いを響かせながら粒子になってその場から消失する。すると空間そのものが溶け出すようにして景色が消えていく。
そしてマグマのような物体に周囲が囲まれ、どんどん温度が上がっていく。
博樹は果南の体を左腕で抱き寄せると、右腕のアグレイターから光を解き放ち青い光となってこの場を脱出した。
空中の様子を見守っていた遥は、エリアルベースの様子がおかしい事に気が付いた。安全高度まで引き上げることは出来たのだろうが、リパルサーリフトが先の攻撃で損傷していたのだ。
「このままじゃ…」
このままでは怪獣は落ちてきてしまう。そう思った遥は、突如皆とは違う方へと駆け出して、光を解き放つ。
「待って遥!ダメ!」
「うおぉぉお!!」
制止する姉の声に耳を貸すことなく、遥の体は赤い光となって天へと昇っていく。
「遥くん…死なないで…」
もう無事を祈ること以外、できることなどなかった。
「ジュワ!」
モキアンの目前に出現したガイアは、怪獣の左側面へとクァンタムストリームを放ち側面を粉砕して見せた。
しかし怪獣を倒すには至らず、頭部の口が開き中から眼がこちらを睨みつける。致命傷を与えることが出来なかった事を察したガイアは、次はフォトンクラッシャーの態勢に入る。
しかし、怪獣の目から放たれた光弾によって吹き飛ばされ右側面から放たれた4本の触腕によって四肢を捉えられる。
「ぐぉあああ…」
そおこから放たれた電撃によって、ガイアは苦しみ始めすぐにライフゲージが明滅を始める。
するとエリアルベースは退艦が終了しており、プログラム通りに怪獣への突撃を敢行する。
怪獣もそれを阻もうと必死に攻撃するが、無人の空中要塞はそのまま怪獣の顔面に激突。大爆発を起こす。
その爆風でガイアは吹き飛ばされるが、怪獣はまだ息があり地上へと降下を始める。
(やらせる…もんかぁ!!)
ガイアも爆風によって吹き飛ばされるが、怪獣へと止めを刺すべく最後の力を振り絞りクァンタムストリームを再び発射する!
「ウォオオオオオ!」
残ったエネルギーを全て込めて放った渾身の一撃によって、遂に怪獣を完全に消滅させることが出来たが、同時にガイアも限界が訪れる。
力なく腕を下したガイアは、そのまま地上へ真っ逆さまに落ちていく。
「どうなったの…」
空中で大爆発が起こり、その爆発の光が見えた事で善子がそう呟く。
「わかりません…でも…」
ダイヤもそれに何かを言いかけるが、言い澱んでしまう。すると視線の先で、赤い光が落ちてくるのが見える。
「遥くん!」
それを遥だと直感した花丸は、光が落ちていく方に駆け出す。そして残りの皆もそれに続いていく。
昨日と違い完全にガイアの体を維持することが出来なくなっていたが、光によって地面と激突する事だけは防げたが、遥は倒れ込んだまま立ち上がる事ができなかった。