でもアルバトリオンに心を折られて他のをやってます…
それでは53話、どうぞ!
ゼブブをアグルが倒してから、一度も怪獣が現れることは無かった。だがエリアルベースの陥落によって、XIGは攻撃性能を持った全てのファイターを失った。
その事は、確かに人々の不安を煽ったが東京のジオベースにその拠点を移し、新型のファイターの実戦投入の為の準備を続けてきた。またいつ、破滅招来体の攻撃が来るか解らないから。
元々従来の機体よりも遥かに高い運動性能をもつ機体の開発は行われていた。アルケミースターズによって開発された従来の戦闘機の常識を覆す運動性を与えるリパルサーリフト。それをより活かすためのファイターを。
閉校祭から約一週間が経過し、明日にラブライブ決勝を控えたAqoursのメンバーたちは休日の誰もいない学校に集まっていた。
「忘れ物ない?」
誰もいない教室で、初めて東京で歌った時のイベントのランキングが記された用紙を一人見つめていた千歌に、そう曜が声をかける。
「大丈夫」
「素敵な閉校祭だったね」
そう答える千歌に対して、何を見ているのかと用紙を覗き込んだ曜だったがその事には触れなかった。
「うん、だからやれる事は全部やって挑まなきゃね」
「そうだね。この時の為にすっごく練習したもん」
そう梨子の声が聞こえてくる。
「確かに毎日朝早くから夜遅く、暗くなっても」
「がんばルビィしたから!」
そう告げるのは黒澤姉妹。
「でも、みんな一度もサボらなかった」
今度は果南がそう言って入ってくる。基本彼女が考案することが多かった練習メニューはハードなものが多かったが、それでも誰もサボることなくこなしてきた。
「弱音は言ったけどね」
そう茶化したのは鞠莉だった。もっとも、果南以外からすれば嫌がらせかと思うくらいにきつい事の方が多かったので無理もない。
「とにかく朝は毎日眠かったずら。ね?善子ちゃん」
「ヨハネ!流石は我がリトルデーモン達、褒めて遣わす!」
そう言って特に朝が大変そうだった花丸と善子が入ってくる。
「ついに来ましたね」
最後に入ってきたのは遥だった。彼も今日までの活動を支えてきた。
全員で校門の前まで出ていくと、学校の方を振り返る。
「行ってきます!」
全員で学校へ向けてそう告げると、それからは一度も振り向くことなく歩いて行く。
決戦の日は明日だ。
東京駅へは、特に何のトラブルもなく到着することが出来た。
「お姉ちゃん?」
「もう大丈夫ですわ」
ルビィにそう聞かれて、優しく返すダイヤだった。恐らくトラウマの事を心配したのだろう、もっともダイヤは春からほぼ毎日見ることになるだろうし未だに取り乱されると寧ろ心配になるが。
「これからどうする?」
「本番は明日だしね」
全員にそう聞く曜に、果南が答える。時間を確認するとまだ旅館にチェックインする時間まで余裕がある。
「リリーはブクロに行きたいのよね?」
そう善子が意地悪な笑みを浮かべながら梨子の方を見る。
「ど、どこそれ?」
と引き攣った顔でそう告げる梨子を余所に、「ブクロ?」と聞き覚えのない名前に鞠莉が不思議そうな顔で聞いてくる。
「ブクロっていうのは…」
そう得意気に説明しようとする善子だったが、それに邪魔が入る。
「サイレントチェリーブロッサムナイトメア…!」
とよくわからない技名を言いながら梨子が善子へ関節技をかけたからだった。
「どんどん善子ちゃん化していってるずら…」
「あはは…頭が痛い……」
そう呆れた表情で告げる花丸の隣で、遥がそう引き攣った笑みを浮かべる。
「でも遥くんも…」
「フォトンエッジとかクァンタムストリームとか…」
そうルビィが言いかけた言葉を花丸が代弁する。
「え?いやでも一部は僕が付けた名前じゃないし…」
ガイアの技名の事を指摘されて遥はそう言って視線を逸らす。
「じゃあとりあえず、あいさつに行こうか!」
他に特にやりたい事、行きたい場所の案が上がってこなかったので元々そういう場所があった千歌がそう告げる。
向かった先は、以前東京に来た時と同じ神社だった。
なんでもスクールアイドルの聖地と呼ばれる場所になっているらしいここは、AqoursやSaint Snowだけでなく、沢山のスクールアイドルが訪れているのだという。
「急な階段だったずら」
「でも、前来た時に比べたら楽じゃなかった?」
「そういえば」
前の階段を駆け上った時に、そう花丸とルビィが言葉を交わす。
「成長って、気が付かない間にしてるもんだよ」
そう告げる果南に「なるほど」と遥は思った。あの時と比べたら、みんな成長しているのだ。
「よし、じゃあお祈りしようか」
千歌のその言葉で、全員で並びお賽銭を入れて思い思いの決意を手を合わせて頭に思い浮かべる。
―会場の全員に、想いが届きますように
―全力を出し切れますように
―緊張しませんように
―ずらって言いませんように
―全てのリトルデーモンに喜びを
―浦の星の皆の想いを
―届けられるような歌が歌えますように
―明日のステージが、最高のものになりますように
―ラブライブで、優勝できますように
―みんなが笑顔で、輝けますように
それは神頼みというより、一種の宣誓だった。そんな9人が、全力を出し切れる事が遥の望みだった。
「ずらぁ」
花丸が、絵馬をかけられている場所を見て、感嘆の声を漏らすと全員がその方を見る。
『Aqoursが優勝しますように 浦の星学院有志一同』
絵馬にはそう書かれていた。
「これって……」
「見て、こっちにも」
今度は別の場所の絵馬を見て、曜がそう声を上げる。そこにも浦の星有志一同と記された絵馬がかかっていた。
去年の秋から、他の生徒たちによって何度もこの場所に絵馬はかけられていったのだ。Aqoursが優勝することを願って。
「みんな来てくれたのね」
「こんなに、何回も…」
「私達には一言も言わないで…」
そう梨子と千歌が嬉しそうに呟く。遥もこの場所を訪れたという話を生徒たちから聞いたことは一度もなかった。
「やっぱり、、この学校の生徒はみんなクールデース」
鞠莉がそう嬉しそうに言う。学校のみんなが、Aqoursの事を応援してくれているんだと改めてそう感じた。
「千歌ちゃん、これって…」
そう曜に言われて、その視線の先にあるものを見る。それは同じくラブライブの優勝祈願の絵馬だったが、グループ名が違う。
「こっちにもあるよ」
そう何を見ているのか気づいた果南が教えてくれる。
「こんなにも沢山のスクールアイドルが、ここで祈願していったんだ……」
そうルビィが呟く。優勝したいのは自分達だけじゃない。どのグループも、学校を背負って決勝に出ているのだ。
「お久しぶりです」
不意にそう馴染みのある声が聞こえてきた。声の主の方を振り帰ると、そこには聖良と理亞が居た。
「聖良さん」
「ついにここまで来ましたね」
そう言いながら2人はこちらへ歩み寄ってくる。
「ビビってたら負けちゃうわよ」
「わかってるわよ!」
そう意地悪く告げる理亞に、善子がそう噛み付く。だが強気な彼女とは対照的に花丸は不安げな表情で。
「アキバドームは、今までの会場とは違うずら」
「どんなところか想像できない…」
そうルビィも告げる。確かにこれまで立ってきたどのステージよりも大きく、どのステージよりも多くの人の視線を浴びることになるだろう。
「私も、あのステージで歌えたことが今でも信じられない」
そう告げるのは聖良だった、前回大会では決勝に出場している2人はステージからの景色を知っている。
「自分の視界で全てキラキラ光る…まるで、雲の上を漂っているようだった……」
「雲の上…」
そうどこか遠くを見るように告げる聖良に、千歌もそう反芻するがそれでもやはりイメージしきれるものではない。
「だから。下手なパフォーマンスしたら、許さないからね」
そう理亞がずい、とルビィに顔を近づけると告げる。
「当り前だよ、がんばルビィするよ!」
この時のルビィは、そう強気に答えるのだった。初めて会った頃の、いつも怯えていた彼女はもういないんだなと感じた。
「また一緒に歌おうね」
「うゆ」
また一緒にステージに立とうと、そう言葉を交わす。
「ちょっ…ルビィはヨハネのリトルデーモン第四号なんだからね!」
「わたしは10号だったっけ?そういう恥ずかしいのイヤだから」
「なんでそう言う事言う!?」
そんな様子に、メンバーを取られると思ったのか善子が割り込んでいくがそんなやり取りを聞いているとなんだか冬休みの事を思い出して微笑ましくなる。
「遥もなんか言いなさいよ!」
「ん~?じゃあその時もまた5人で一緒に曲、作ろっか」
「賛成」
「遥もそっち側なの!?…まぁそう言うなら、一緒でも悪くないか…」
笑顔で返してくれる理亞と違って、渋々といった様子で承諾する善子。「今度はもっとヨハネの案取り入れなさいよ?」なんて前回の事を根に持っていたようなので「はいはい」と他の四人で受け流しておく。
あの時は遥自身にも余裕が無かった時の事だったから、その時はあまり思わなかったが楽しかったんだと感じられる反面、理亞にだけはガイアの事を教えていない事に後ろめたさも感じる。
「素敵な笑顔ですね」
「はい」
そんなやり取りを見て、聖良はそう千歌に話しかける。
「初めて出会った時、なんて弱々しいんだろうって思ってました」
それは6人だったころ、初めて東京のイベントで歌う前日に初めてAqoursと出会った時の聖良の本心だった。
「でも、今の皆さんを見て思います。なんて頼もしいんだろうって」
それはきっと、Aqoursがこの一年でどれだけ成長してきたかを物語っているものなのかもしれない。そして聖良は真剣な眼差しで、いつか千歌から受けた質問と同じ言葉を送る。
「勝ちたいですか?」
「え…?」
「千歌さんがいつか、私達に聞きましたよね?ラブライブ、勝ちたいですか?」
勝ちたくなければ、どうしてラブライブに出るのか?そう聞き返された質問を、今度は千歌が答える側に立っている。
「そして、誰のためのラブライブですか?」
その質問に、千歌は即答することは出来なかった。
宿泊する宿は、以前東京で歌った時と同じ宿にしたらしい。もっともあの時は遥は来ることが出来なかったし、三年生もメンバーになっていなかった。
明日で9人でステージに立てる最後のラブライブは終わる。泣いても笑ってもだ。遥は一人その事実にもの寂しさを覚えていた。
湿っぽいのも良くないと思い、折角の旅館だし温泉に入ろうと思い部屋をでる。
『あーなーたーたーちぃぃぃいいい!!』
そんな怒声が隣の部屋から聞こえてきた遥は思わずその部屋へと飛び込む。
「何があった…ぐはぁ!」
Aqoursの皆がいる部屋に飛び込んだ遥は、いきなり顔面に枕の直撃を受け、後ろへ倒れこむ。
「いっ…てぇ……何なんだよ一体…?」
よろよろと上体を起こした遥が、何をしているんだと周囲を確認すると枕投げに興じるみんなが視線に映る。
「本番前に何してるんですか!?」
その声は届くことなく室内を枕が飛び交う中、更にもう2、3発それを食らった遥も頭に血が上ったのかその合戦の中へと飛び込んでいった。
結局全員が落ち着きを取り戻したのは、かなりの時間が経過してからとなってしまった。
「まったくひどい目にあった…」
「女の子の部屋に入ってくるからずら」
旅館一階の客間にあるソファーに腰掛けてそうぼやく遥を、そう言って隣にいる花丸が冷やかす。
「だってあんな声聞こえたら喧嘩か何かしてるのかと思って焦るじゃん…」
そう言って顔を逸らすと、パックジュースの中身を音を立てて吸いあげる。結論から言うと、元々非力なのと全力で投げるのに気が引けた結果ボッコボコにやられてしまって恥ずかしいのだ。
「ボッコボコだったしね」
「うるさいよ…」
今度は対面にいる善子にそれを指摘されて今度は完全に誰も居ない方を向いてしまった。
「でも楽しかったよね」
そう言ってルビィが笑う。それも事実ではあった、全員が決勝への緊張や不安を忘れて遊びに興ずることが出来たのだから。
「そうだね…」
「まぁみんならしくはあったよね」
そう言って談笑していた。学年が同じと言う事もあって、この三人と一緒に居る時間は他のメンバーと比較すれば圧倒的に長い。もし転校を選べばもうこんな時間を過ごすことは無くなる。
決勝が終わるまでは考えないようにしていた遥だったが、不意にそんな事を考えてしまう。
「みんなで温泉行こーよ」
そう言って外に言っていた二年生が戻ってくる。
「行ってきなよ、僕もそろそろ入りたいし」
そう言って遥は立ち上がってその場を去ろうとする。
「ちょっとまって、話があるの」
それを呼び止めたのは善子だった。
「どうしたの?」
「いいからちょっと」
いつになく真剣な表情でそう告げる彼女には、今済ませておくべき重要な話があるのだろうと察した遥は頷くと、一緒に外へと出る。
「本当は決勝が終わるまで言わないつもりだったんだけど…」
「どうしたの?」
時間も時間と言う事もあって、周囲に人の気配はない。旅館の外にある街灯に照らされているが、そう告げる彼女は背中を向けていて表情を見ることは出来ない。
「遥はさ…遥は、ずら丸の事好きなの?」
「え…?」
「だって最近よく一緒にいるし…距離も、近いし…」
突然そう言われて、遥は困惑したような表情を浮かべるが、暫し逡巡した後その口を開く。
「きっと、好き…何だと思う。多分善子ちゃんが聞いてる通りの意味で」
恋愛感情があるという意味で、そう答える遥の言葉を聞いて善子の背が一瞬だけ動く。
「そう…やっぱりそうなのね……」
遥は、どうしてそんな話を今しなければいけないのか?そう思ったが、直後に善子の真意に気が付いてその言葉を口にすることは無かった。
いや、怖かったのだ。その答えを聞くことが…。
「わたしね、遥の事が…好きなの」
「善子ちゃん…」
「でも気づいてた、きっとずら丸も遥の事…好きなはずよ」
いつもならヨハネだと訂正する彼女は、この時ばかりはそれをせず続く言葉もか細いものだった。
「でももういいの、スッキリしたわ。これで後は明日のステージに堕天するだけ!」
そう言って振り返ると笑って見せる彼女だったが、頬には涙が伝っていた。
「…ごめん……」
「何で謝るのよ?こっちこそごめん、こんな事言われて迷惑だったわよね」
「そんなことない、こんな事言われたことなかったから、嬉しかった…」
でもと遥は首を横に振って更に言葉を続ける。
「でもごめん、その気持ちには答えられない…いや答えちゃいけないんだ…」
「なんで…?」
「もちろん、善子ちゃんの事が嫌いな訳じゃないよ?でも僕自身そういう好意を向けられてどうしたらいいか解らないし、花丸ちゃんの事が気になってるのも事実なんだ。だからそんな中で善子ちゃんの気持ちを受け取れないよ」
そう告げる遥の言葉に、善子は一瞬顔を伏せるが無理に笑顔を作ると顔を上げる。
「いいの、私はちゃんと自分の気持ちに向き合えたから。遥もちゃんと踏ん切りつけなさいよ?じゃないとずら丸取られちゃうかもよ?」
「え?いやでも…僕もホントにそんな感情を持ってるって自信もまだないし…」
「このヘタレ!そんなんじゃ何もできないわよ?でも最後に…」
そう笑ってから善子は遥に歩み寄る。そして…。
遥の頬にキスをした。
「え…?なっなぁ…」
遥は思わずすごい勢いで顔を真っ赤にして後ずさると、言葉が出てこないのか口をパクパクさせる。
「これでヨハネの恋は終わり!ごめんね?決勝前に…」
「善子ちゃん…」
「だからヨハネよ!じゃあおやすみ」
そう言って善子は旅館へ走って戻っていく。遥にはその背中を追う事は出来なかった。
「ねえ遥くん」
「千歌さんどうしました?」
温泉を上がって暫くすると、廊下でたまたま千歌と出くわしたのだが彼女は何か話があるのか声をかけてきた。
「遥くんは、私達に優勝してほしい?勝ってほしい?」
「僕はもちろん、優勝してほしいって思ってます。姉さんも僕も、千歌さんと出会えたから変われた…そして皆で輝きを目指してきた」
遥は自分がそんな問いをぶつけられるとは夢にも思っていなかったが、千歌のその真剣な眼差しをみると。今まで言えなかったセリフがスラスラ出てきた。
「だから優勝してほしい、みんなが目指す輝きの…その向こうにあるものを僕も観たいんです」
そう答えると、千歌は「そっか…」と呟く。おそらく聖良に聞かれた時に答えることが出来なかったことも鑑みると悩んでいるのだろう。
「最初は嫌がってたけど、本当に僕はAqoursに関われて幸せでした。本当にありがとうございます」
「遥くんこそ、今まで一緒にやってきてくれてありがとう」
そう千歌も笑って答える。
「はい!明日、頑張ってください!!みんなと応援してます」
そう遥も笑って告げるのだった。
この時はまだ誰も、明日人類が滅亡の危機に瀕する事になるとは夢にも思わなかった。
当初の予定より1年生同士の絡み書くのが楽しくなりすぎました。
でも理亞ちゃんと遥の絡み函館編の時あんま書けなかったの今になって後悔しております。
そして善子ちゃんのシーン入れるか迷ったんですが入れました。正直1番の推しなのでこの展開は心が痛かった…
次回遂にヤツらが現れます。