前回の最後のシーンなどで嬉しい感想をSNSだったりで貰って大変うれしい限りです。
―でもあのシーン、女装してるんだよな…
それでは56話、どうぞ!
一度遥たちは東京を離れ、内浦を目指していた。
「博樹さんは?」
「私達も探したんだけど…多分あの騒ぎの後、自力で移動したんだと思う。バイク無くなってたし」
そう美渡に教えられ、遥はひとまず安堵する。博樹も無事なのだと。
「でもどこへ行ったか解らないのよね…」
「僕に心当たりがあります」
そう、遥には心当たりがあった。光を失った博樹が、向かうであろう場所に。
そんな時、車の通りが無い山中の道を突き進んでいると突如地響きが起こる。
「何!?」
一度車を停止させ、外を見ると地底からティグリスが現れる。
「ティグリス…」
「こんな時に地球の怪獣まで出なくたっていいのに…」
「これが破滅なの…?」
「違います!」
そう怪獣の出現を不安がる姉たちに、遥は違うと即答する。
そしてそれと時を同じくして、世界中で怪獣たちが一斉に目覚めた。アメリカでは以前ガイアと戦ったのと同じ個体のゾンネルが、函館にはシャザックが。
他にも今までガイアやアグルと戦った、ギールやゴメノスをはじめとした怪獣達が一斉に目覚めたのだった。
そしてその怪獣たちは一斉に、地球の力を-マグマを空のイナゴへと放ち青空を取り戻そうとしていた。
「これは…地球の叫びなんだ」
全身を赤熱化させ、空へ攻撃を行おうとするティグリスの前にカイザードビシが飛来し戦闘になる。
世界中でも同様に、怪獣たちを倒そうとカイザードビシが現れ戦闘に入っていく。
だがカイザードビシの力は強く、ティグリスは苦戦を強いられる。
「こんな時に何もできないなんて…僕はウルトラマンになれなきゃ何もできない人間だったのか…?」
「そんなことないわ」
同じ地球に生きる命が精一杯頑張っているのに、何もしてやれない無力さに打ちひしがれる遥に、違うと千歌の母は言う。
「あなたはウルトラマンだったから、みんなを守ってきたの?それは違うでしょう?」
「それは…」
「ウルトラマンとしての力は与えられたものかもしれないけど、それをどう使うかを決めたのは遥くんでしょう?」
そう問いかけられ、遥は答えを言い澱んでしまう。
「ありがとう、今まで皆を守ってくれて」
「いえ、僕は自分にできることをしただけです」
「ほら、遥くんはちゃんと自分で答えを持ってるのよ」
そう言って千歌の母は笑う。
「ありがとうございます」
それに遥はそう言って笑うが、だが状況は好転しない。
「そうだ、僕を博樹さんの所に連れて行ってください」
そう言って車へ乗り込むと「どこに行けばいいの?」と聞かれるので、遥ははっきりと目指す先を告げる。
「淡島へ」
そうはっきりと告げる遥に対して頷くと、一同は淡島へ向かう。
そして博樹は遥の予想通り淡島に戻っていた。そして彼は一人海を見つめていた。
「オレはここで、アグルの光を手にした。だがもうオレの中に、光は無い…」
天使にアグルの力を奪われ、もう自身にアグルに変身する力も残されていない。だがここに来ればまた光を得られるかもしれない。
そう思ってここへ戻ってきたが、やはり海が光を授けてくれることは無かった。
「オレは…どうすればいい…?」
「まだできることは残っているはずよ」
いきなり後ろから声が聞こえ、博樹は咄嗟に振り返る。
「母さん…」
「どんなに空がイナゴに覆われていても、宇宙からニュートリノは降り注いでいる」
いる筈のない母親に、博樹は驚きの色を隠せないが相手はそれを無視して話を続ける。
「地球は独りぼっちじゃない、広大な宇宙と地球は…繋がっている……」
「待ってくれ、母さん!」
そう後ずさりながら続ける母、麗華はそう告げるとそのまま周囲の闇に溶けるように消える。博樹の咄嗟に伸ばした手も、届くことは無かった。
それでも博樹には、今自分のやるべきことをしっかりと見据えることが出来た。
淡島へたどり着いた遥は、以前鞠莉に教えてもらった事を思い出してた。
『実はホテル近くの地下に〈プロノーン・カラモス〉っていう施設があってね。そこにはヒロのお母さんの研究も残されてて、ヒロは何かあったらそこか海辺によくいるわ』
その会話を鞠莉がしたのは、ゾーリムと戦った後博樹と再会した時のことだった。彼女も博樹が心配で、同じウルトラマンの遥なら彼を変えてくれると思っての事だったのだろうが結局遥は一度も音連れたことは無かった。
だが初めて来たこの場所は、未稼働だと聞いていたものの現在稼働状態になっているようで間違いなくいると思い遥は中へ入っていく。
「どうなってるんだこれ…」
施設内では蒸気が噴き出し、何かの装置をフル稼働させていることが見て取れる。
「オレ達にはまだやるべきことがあったぜ、遥」
奥の方から博樹のそう告げる声が聞こえた。声のする方へ駆け寄ると、博樹は装置のコンソールをせわしなく操作していた。だがその手には迷いはなく、次々と操作していく。
そして複数あるコンソールの画面を見て、遥が博樹が何を操作しているのか理解した。
「ニュートリノの発生システム…?こんなものをどうして…」
だが、何の目的でそれを行っているのかすぐに理解できなかった遥だったが、答えを貰わずともそれを察することが出来た。
「そうか、ニュートリノなら地中を貫く。地球自身をネットワークにした、通信システムを」
ニュートリノは他の物質とほとんど反応せず、宇宙から無数に降り注いでいてかつ宇宙で最も豊富な素粒子なのだ。
これを元にすることで、空を電波に干渉できるドビシに囲まれたとしてもニュートリノを元にできれば通信を回復させることができるはず。
「母さんが教えてくれた」
「え…?」
博樹の母は既に亡くなっている筈、そう思って思わずそう漏らす遥だったが。そこで遥をここまで送ってくれた美渡が遥に追いつく。
「通信が回復するの?」
「はい!」
「わかった、じゃあ千歌たちにも2人の事伝えとく」
「お願いします」
短くそう言葉を交わすと、家族にもその事を伝えに彼女は戻っていく。そこで遥も博樹の作業を手伝いに入るのだが、そこでようやく博樹は遥の方を見たのだが真剣だった表情が一瞬で怪訝そうな顔に変わる。
「お前…その恰好どうした?」
「え…?あっいやこれは色々あって…」
「そか…」
色々と誤解を受けてそうだったが、博樹は遥へ指示を飛ばして装置を動かしていく。
「クリシスにログインできた、光量子ネットワークを復活させる」
そう言って博樹が一度息を吐く。これで通信回線は生き返るはずだと、遥はこのゴタゴタでスマホを忘れてきていたのでまだ志満か美渡がいる筈だと外に出る。
「これで通信が復活したはずです」
そう告げると、スマホを確認すると「本当だ」と声を上げる。千歌の家族にみんなへの連絡は任せて博樹の元へと戻る。
すると、ダニエルから博樹の元へ通信が来ていた。
『君たちにもう一度、地球の力を戻す』
「どうやって?」
丁度戻ってきた時に聞こえたその言葉に、遥は思わずそう身を乗り出す。
『すごく無茶な方法だが、これに賭けるしかない。世界中で、アルケミースターズのみんなとXIGの皆がスタンバイしている。後は任せてくれ』
そう告げるダニエルの口から説明された作戦『ミッションガイア』の全容がこうだ。
推進システムとして搭載されているリパルサーリフトを応用し、リパルサーフィールドという特殊なバリアー状のものをファイター下部に展開。
そこに怪獣たちの持つ地球の力をぶつけさせ、エネルギーとして照射し一点に集め、その力を以てウルトラマンを復活させるという大変無茶なものだった。
現に、アルケミースターズのメンバーも「怪獣は生きている、どんなスーパーコンピューターでも計算が追いつかない」と苦言を呈した。それでもダニエルの「僕たちのできる事、僕たちの力を信じるんだ」と鼓舞し、計算が間に合わないなら自分達はマニュアルで計算し、照射角を選定するという手法をとる事となった。
だがこの作戦には他にも問題があった。怪獣達ももう限界が近いのだ、現に数体の怪獣は既にドビシに全身に組み付かれ倒されてしまってた。
更に酸素濃度は太陽光を遮られたことで 徐々に減少し、気温も下がる一方。
もうこの決死の作戦しか、人類には残されていなかった。
「本当!?」
『うん、2人とも無事!今できることを頑張ってるよ』
千歌は遥と博樹の無事を教えられ、表情が明るくなる。アルケミースターズによって、通信状況が回復したことをニュースでも取り上げられていたがまさか2人の手によるものだったとは思わなかった。
「みんな、2人とも無事だって!」
「良かった…」
その知らせに、全員がそう安堵し胸を撫で下ろす。二人の行方が解らなくなって気が付けば丸一日立っており、かなり肉体的にも疲労が溜まってきていたが一同に笑顔が戻る。
「遥くん良かった…本当に…」
そう安堵していると、今度は姉から一枚の写真が送られてくる。遥と博樹が通信回線を復活させている様子が写っていた。
「遥くんの恰好って…」
「ワーオ!これは似合ってるね!」
当然今の遥の服装が気になるのだろう。鞠莉はそう言って似合うと絶賛していたが。
「でもこれ多分聖良さんのだよね?」
そうリボンの色で判断した曜が、疑問に思っていると「私が貸しました」と声が聞こえる。
「聖良さん!」
「変装だったんだけど、結局バレて追い回されて大変だったけどね」
「千歌さんのご家族のお陰で助かりました」
そこにはマスコミを撒いたのであろう鹿角姉妹が戻ってきていた。
「遥のこと、ありがとうございます」
「いえ、今まで遥さんに…ウルトラマンに守ってもらってたのは私達ですし」
そう頭を下げる梨子に、聖良はそう言って応じる。
「なんでまた東京に?」
「地球で一緒に生きる者の力が、そこに集結するんです」
ミッションガイアによって、世界中の怪獣たちのエネルギーが収束する場所は東京に決まった。これはドビシを殲滅するために、一番巨大な東京上空のワームホールを潰すためだ。遥はそう説明する。
淡島から戻ってきた時に、一度家に戻る時間を貰った遥は自分の制服に着替えると父の写真の前で一度手を合わせる。
(行ってきます)
そして博樹と共に、遥は東京へと戻る。
その一方でXIGは昨日のドビシとの戦闘で損傷した新型ファイターだけでなく従来の戦闘機にリパルサーリフトを搭載したファイターの合計10機が世界中へと飛び立っていった。
ウルトラマンが敗北したとしても、人類はまだ絶望しきってはいなかった。遥と博樹だけでなく、XIGやアルケミースターズといった。地球の為にこれまで戦ってきた者たちは、まだ抗えると。
最後まで足掻く、万策尽きるその時まで。そう口にはぜずとも、誰もがそう思っていた。
東京へと遥たちが戻ってきた時、東京ではミズノエノリュウが単身ドビシの群れと戦闘を行っていた。
だがこの地の守り神ともいえるミズノエノリュウでさえも、キリのないドビシの数に力を浪費させられさらに現れたカイザードビシによって接近戦を挑まれており、苦戦を強いられていた。
「ミズノエノリュウが」
「もう力があまり残ってないんだ…」
だがその時、XIGのスティンガーが援護に現れた。ミズノエノリュウと共に、遥と博樹が力を取り戻すまでここを守り抜いてくれると。そう宣言して。
「光が届くまで、オレ達が守ってやるよ」
その頼もしい援護によってカイザードビシの撃退に成功し、当初の予定ではもうすぐ光が届く。遥と博樹は工事建設予定の更地に立っていた。光の余波で、他の人を巻き込まない為に。
「遥くーん!」
2人ただ無言で、光が来るはずの空を睨んでいると不意に背後の方から自身を呼ぶ声がしたのでその声の主の方へ視線を移す。
「花丸ちゃん、みんなも!」
そこにはAqoursとSaint Snowの11人の少女たちの姿があった。
「ヒロー!絶対に…絶対に勝って!!」
「じゃないと…マリーが、ウルトラウーマンになっちゃうからね~!」
そう叫ぶ果南の隣で、鞠莉もそう悪戯っぽく叫ぶと博樹も表情を綻ばせると笑顔で右手を上げる。
「どうしてここに?」
そう遥は皆の方へ駆け寄るとそう問いかける。
「XIGの人がここでふたりを勇気づけて欲しいって」
そう答えるのは曜だった。恐らくアルケミースターズの中で遥の学生生活を知るものはそう根回しをしてくれたのだろう。
遥と博樹だけでなく、誰よりも2人の身を案じていたであろう少女たちを安心させるために。
「遥…」
「姉さん」
その背後から、泣きそうな顔をして梨子が歩み寄ってくると遥も少しだけその表情を曇らせる。
「心配してたのよ…?」
「ごめん…でも今度は絶対…絶対勝つから、見てて?」
「うん…信じてる」
いつも梨子は自分の事を心配していた。ガイアだと知る前から、戦う為に毎回誤魔化して行方をくらます遥の事を。そんな姉に、遥はそう優しく笑って見せる。
「ずら丸だって心配してんたんだからね」
そう言って善子が花丸の手を引いて割り込んでくる。あの時彼女は遥を引き留めようとしたし、あの光景を見ているのだから当然だ。
「マル…怖かったずら、遥くんが死んじゃうんじゃないかって…」
「ごめんね、でも大丈夫だから…もう何処にも行かないから」
気が付けば気を使ったのか、周りは気を利かせて聞こえないように距離を取っていた。
「今度はちゃんと、ただいまって言うから」
「うん、みんなと待ってる」
「じゃあまた後で」
そう告げると、遥は再び戻っていく。地球の光が届くまでもう数分しか残されていない。
「ありがとね」
その時、善子の前を通って短くそう告げる。善子も何か言いたげだったが、遥はそれを聞くことは無かった。
「オレ達がウルトラマンになったら、またあの天使ヅラしたやつが来るぞ」
「もう負けません、だって待ってくれる人が居るから」
博樹が、遥にそう告げると、遥はそう即答した。それを聞いて博樹は一瞬、果南や鞠莉、ダイヤの方を見ると視線を戻す。
「そうだな…」
そう呟く博樹の顔は、一瞬だけだったが笑って見えた。
一方で、世界中で怪獣たちが自身の頭上で滞空するファイターへ火球を放った。そしてファイターはリパルサーフィールドを展開し、それを受け止める。
本来想定されていなかった使用法、さらにはどの角度で怪獣の攻撃が当たるかもわからない。だが受け止めたファイターの姿勢から、各機に一人ずつ担当でついたアルケミースターズのメンバーがそれぞれ角度の計算を行い、遥と博樹の待つ東京へその光を放たせる。
ファイターのパイロットも、かなりの衝撃に耐え小数点以下の細かさで機体の仰角を調整する技術が求められる。
そして寸分の狂いもなく、エネルギーへと変換された光は、東京という一点を目指して世界中から集まってくる。
「遥くん、もうすぐ来るよー!」
「みんなおふたりの事、信じてますからね!」
そうルビィとダイヤが、XIGの関係者が操作していた計器を見て光がここへ近づいていることを教える。
それに遥が手を振っていると博樹は別の場所で違うものを見つけたのか「遥」と声をかけると首を振ってそちらを向くように仕向ける。
「母さん…」
車から降りて遥の方を見つめる母親に、遥はそう小さく呟くだけでお互いの声は聞こえない。母には知られたくなかった、自分がガイアだと言う事。それを母は知っているから、遥を見つめる表情は色んな感情が入り混じっていることが見て取れた。
だがそれもつかの間、母はこちらへ笑うとサムズアップをしれくれた。遥もそれを受けて、同様に笑うとサムズアップを送る。
-絶対に勝つから、見ててほしい
言葉にはしなかったが、そんな遥の気持ちは母へと届いた。少なくとも遥はそう思っていた。
そしてついに2人の頭上に光が集まる。
「来たぞ遥…」
「うん…行こう!」
そう2人は声をかけあうが、その目は空をしっかりと見据えていた。そして二人は天から降り注ぐ光へ手を伸ばす。
辺り一面に天から降り注いだ光によって周囲は真っ白に塗りつぶされる。
その光の中心で、ふたりはそれぞれが身に宿していた巨人の名を再び呼ぶ。
「ガイアァァアアア!!」
「アグルゥゥウウウ!!」
そしてその光が止んだ後、一瞬の静寂が訪れる。そしてその一瞬の静寂を破って、2人の巨人が大地へと盛大に土煙を上げて降り立つ。
ウルトラマンガイアスプリーム・ヴァージョン
ウルトラマンアグルV2
地球に生きる命の力を借りて、今ここにふたりのウルトラマンがよみがえった!
次回、遂に決着
第57話 地球はウルトラマンの星/光の海