そしてAqoursの少女たちはその先に何を見る?
「ガイアァァアアアッ!!」
「アグルゥゥウウウッ!!」
地球に住むみんなの力を借りて蘇ったガイアとアグルは盛大に土煙を上げて着地する。
「ガイア!」
復活したガイアを見て、花丸は嬉しそうに名を呼ぶ。
そして2人のウルトラマンは立ち上がるとお互いを見ると頷き合う。
「タァッ!」
「ジュワッ!」
そして同時に暗黒に囚われた空を睨むと、今度こそ空を取り戻すために天高く飛び立つ。
2人はそれぞれ東と西、別の方向へと飛び立っていく。するとドビシの群れが前回同様にウルトラマンの体に張り付かんと大軍で押し寄せてくる。
「ハアッ…デリャア!!」
「デュワッ!」
それはアグルはリキデイターで、ガイアはクァンタムストリームでそれぞれ薙ぎ払うと、連鎖した爆風によって青空が顔を覗かせていく。
「空が…空が晴れてくよ!」
ガイアとアグルが飛び立った東京を起点に広がっていく青空をみて、曜がそう顔を輝かせる。
その間にもガイアとアグルは世界中を飛び回り、光線を放ち続けドビシの群れを焼き払って行く。
世界中の空に、光を取り戻すとガイアとアグルは再び東京の地へと舞い戻ってくる。
するとガイアの後方に、突如天使が現れガイアへと念動弾を放ちガイアを撃ち落とす。
『ハァッ!』
「ウオアアアア!?」
完全に不意を突いた一撃に、ガイアは防御もできずまともに食らってしまいそのまま地面へ叩き付けられる。
それを見て天使は悠然と地上へと降り立つ。
「ハァッ!」
「デヤッ!」
再び派手に砂埃を上げながらガイアの近くへと降り立ったアグルが拳を握り、ファイティングポーズをとると。ガイアは跳ね起きて同様に構える。
「ふたりとも、頑張って…!」
昨日手も足も出なかった天使と再び戦闘に突入する2人へ果南はそう祈る。そして天使は、前回ウルトラマンを完封して見せた念動弾を放つ!
「「ハアッデヤッ!」」
2人は同時にバリアーを展開し、それを重ねることで念動弾を押し返した。
「凄い、今度のガイアとアグル…!」
「うん…うん!」
前回大ダメージを受けた攻撃を、今度は完全に押し返して見せた2人の姿に、そう聖良と理亞は驚きの声を上げる。
「よーし、いっけぇ!!」
「遥くん!」
「遥!」
そう千歌が勢いよく叫ぶ隣で、花丸と梨子が遥の名を呼ぶ。
「勝てる…勝てますわよ!」
「ヒロ~ファイト!」
ダイヤと鞠莉もそう嬉しそうに声を飛ばしていた。そしてガイアとアグルの反撃が始まる。
「デュワッ!」
「ハァッ…デヤ!」
フォトンエッジとリキデイターが天使に直撃し、天使は思わず仰け反る。
「デリャァァア!」
「ダアッ!」
更にクァンタムストリームとフォトンクラッシャーによる追撃で、相手に反撃の隙を与えない。そこに加えて、ガイアスラッシュとアグルスラッシュを二発ずつ交互に放ち天使の体を更に仰け反らせ大きな隙を作り出す。
「デュワ!ハアアア……デヤッ!!」
「ハァッ!オラァア!!」
トドメと言わんばかりの勢いで胴目掛けて放ったシャイニングブレードとフォトンスクリューが天使の腹を貫く。
『ウッ!………ヌウゥゥゥウウ…』
この波状攻撃でかなりのダメージを負った筈の天使だったが、腹を抑えて苦しむが次第にその声が地の底から響いてくるような不気味なものに変わる。
『ハァッ…ハァッ……ウワアアアアアアアアアアアア!!』
怒りの雄たけびを上げる天使は、腹を抑えていた手を広げるとその体を一気に膨れ上がらせる。
ただでさえ100mを優に超える巨体を持っていた天使だったが、その姿をスカイツリーよりも巨大なものへと変貌する。
グリフォンのような四本のビルのような太い脚に、龍のような鱗に覆われた身体に余計にその体を大きく見せる翼、女性的な綺麗な手は鋭利な爪の生えたものへと変貌した。
「何…?あれ…?」
「黙示録の怪物…」
最早天使とは呼べなくなった化け物に、ルビィと善子がそう呟く。ガイアとアグルもその変化に驚いていた。
『ウワアアアアアアア!!』
化け物はおぞましい叫び声を上げながら二本の後ろ脚だけで立つと、前脚がそれぞれビルを粉々に踏みつぶす。そして口からは今までよりも強化された念動弾を打ち出す。
「ハァッ!セヤッ!」
咄嗟に反応したアグルが同様にバリアーを打ち出すが、円形に渦を巻いているバリアーは少しずつ押され、形も歪になってしまう。
「フッ!デヤッ!」
反応の遅れたガイアも同じくバリアーを打ち出したことで、なんとかその念動弾を押し返す。
そしてガイアは助走をつけると、目の前の化け物へと飛び掛かるが手で簡単に叩き落とされてしまう。
「ドワアアア!?」
更に目の前に落下したガイアを、化け物は踏みつぶそうと右脚を踏み出す。ガイアは立ち上がり両腕でそれを防ごうとするが圧倒的な体格差によってあえなく地中へと踏みつぶされる。
だがすかさずアグルが飛び出しその足をどかしたことで、ガイアはその隙に化け物の頭上へと飛び上がる。
そしてガイアは右足に、アグルは左足にそれぞれ赤と青の光を纏わせ急降下する。
「デヤアアアッ!」
「デアアアアッ!」
2人の蹴りが、化け物の側頭部から王冠のように生えていたトサカを左右それぞれを粉砕し、化け物は苦痛によって悲鳴を上げる。
そしてふたりは更に正面から突っ込んでいくが、揃って両腕で弾き飛ばされ地面を転がる。さらにそこへ追撃として放たれた念動弾が直撃し、ふたりは火花を散らして後方へと吹き飛ばされる。
だがそこでガイアとアグルを守るように、ミズノエノリュウが化け物へと立ちはだかる。
『ミズノエノリュウ!よせ、下がるんだ!』
そうまだ膝を付いた体勢で、ガイアがそう叫ぶがミズノエノリュウは化け物を威嚇するように吠えると尻尾に付いている頭から光弾を次々に発射して攻撃を行う。
だが先程の戦闘で消耗していることもあってか、化け物からすればかゆい程度にしか感じていないのか簡単に手で払い落されると、逆に念動弾による反撃を受けてしまい。ミズノエノリュウはその攻撃に苦しむ。
「ウワアア………ハアッ!!」
その光景にガイアとアグルは怒り、両手を握りしめながら起き上がると同時に飛び立ち怪獣の喉へ突撃するとそのまま喉を貫く。
化け物は喉を抑えて苦しんだ後、翼を広げて飛び去って行くガイアとアグルを走って追いかけてくる。その一歩一歩がビルを潰し、街を破壊していく。まさに動く大災害だった。
ガイアとアグルは、ある程度距離を離すと滞空して化け物の方へと向き直る。そして二人はアイコンタクトを取ると、ガイアはゆっくりと地上に降り立つ。
「行くぞ!」
そのガイアの掛け声で、地上のガイアと空中のアグル。それぞれウルトラマンが最強の一撃を放つべくエネルギーを充填させる。
「デヤッ!デヤァァァァアアアッ……」
「ハァッ!ラアァァァァァアアッ……」
ガイアは右腕を掲げた後、両腕を回して頭上でエネルギーを溜めた後両手を合わせたまま胸の前へ。アグルが胸の前で両腕を組むんだ後腕を回して、斜めに一直線に腕を広げ、右腕が上になるように腕胸の前で重ねエネルギーを集中させる。
「デヤアッ!!」
「ゼヤアッ!!」
そしてガイアは左手を下へスライドさせ、アグルは肘に拳を当てたまま右腕を立ててL字を組みそれぞれ最大まで集中させたエネルギーを解き放つ!
ガイアのフォトンストリームとアグルのアグルストリームは一つになると
地球に生きる者達の力を借りた一撃によって化け物の体は粉微塵に爆散する。こうして、この星に生きる命の輝きにより地球に光が戻ったのだった。
決着が付き、夕日を背に立つガイアの周りに人々が集まってくる。口々に「ありがとう」などの感謝の言葉を投げかけながら。
そしてガイアの隣へ、アグルが青い光を纏いながら降り立ってくる。2人の巨人は向かい合うと、ハイタッチするとそのままその手を握る。
地球を救うという同じものを目指していた筈なのにすれ違い、時に激突したふたりの手によって人類は滅亡の危機を脱した。
「遥くーん!」
足元を見ると、花丸を先頭に11人の少女たちが集まってきていた。果南は目に涙を浮かべてアグルを見つめるとゆっくりと頷き、アグルもまた同様に頷く。
足元に集まってくる少女たちに、ガイアとアグルは一度正面を向くとそのまま光に包まれて縮んでいく。そして光が晴れると、遥と博樹が少女たちの目の前に並んで立っていた。
「花丸ちゃん、『ただいま』」
遥は目の前の少女にそう笑顔で告げる。この言葉を言えたことで、遥はやっと戻ってこれた。そう感じることが出来た。
「うん…『おかえり』」
花丸もそう涙を浮かべながらそう返すと、遥の目は涙が光っていた。
「ヒロ」
果南がそう博樹に声をかけると、遥たちのやりとりを見ていた博樹がこちらへ視線を移す。
「約束、また破ろうとしてたでしょ?」
昨日ドビシの大軍を何とかしようとワームホールへ突っ込もうとしたことが、どうやらバレていたらしい。
「いや、そういうつもりじゃ…」
「ヒロはいっつもそう、一人だけ危ない事すればいいと思ってる……待ってる方の気持ちも考えないで…」
そう果南は責めるように告げるが、その声は徐々に震えていった。
「悪い…オレはこんな生き方しかできないらしい」
「知ってる、だって何年の付き合いだと思ってるの?」
「…そうだったな」
そう申し訳なさそうに告げる博樹に、果南はそう笑って答える。博樹にとっても、果南が今までの人生で一番付き合いの長い相手だ。そんな相手だからこそ、心を開いて本音を言い合える。
「次は、お前らの番だぞ」
「そうだね」
博樹も、純粋に果南達が―Aqoursがステージの上で輝くのを見たかった。だからこそ、決死の覚悟で戦ったのだ。
戦いの余波で東京の街は大打撃を受けてしまった。ガイアとアグルも、人々が避難し終わった無人地帯を戦闘の場に選んではいたが、だからと言ってその場所をどんなに破壊しても良い訳では無い。
それでも人々は、また新たな希望を見つけて生きていく。今日はもう日が沈んでも、明日にはまた日が昇るように。
ラブライブ決勝は、結局一週間延期になった。中止にならなかったのは、是非開催したいという人々の熱い声援があったから。そして会場のアキバドームは避難場所になっていた事もあって、ウルトラマンが死守してくれたからだ。
それまでの一週間、遥は気が気でなかった。一番は、一度天使に敗北した時に中継で自分がガイアだとバレてしまったからだ。
あの後クラスメイトには色々と質問攻めにあったし、外に出れば名前より『ウルトラマンガイア』と指さされることが多かった。何より母親に知られたことがかなり堪えた。事の経緯を説明し、そして父の事をちゃんと話したが恐らく人生で一番心臓に悪い時間だったと記憶している。
それでも母は、遥を責めることはせずただ「ありがとう」と告げ、遥を抱きしめた。
きっと父も、遥の姿をどこかで見てくれていた。あの戦いの後、確かに遥はそう感じた。
そして迎えた、ラブライブ決勝の日。
―WATER BLUE NEW WORLD―
スモークがたかれ、本当に雲の上のようなステージで少女たちは歌い、踊った。
この1年間、本当に沢山の事があった。スクールアイドルとの出会い、そして学校の廃校。彼女達の輝きを追い求めた物語は、決して順風満帆ではなかった。沢山の困難に激突し、乗り越えられなかったものだってあった。
そしてこのステージを最後に、このメンバーでラブライブのステージに立つ日はもう2度と来ない。
それでもこの瞬間を精一杯輝き、楽しんだ。
この曲は、そんなこの瞬間を楽しむ気持ちと新しい世界へと羽ばたく覚悟の歌だ。そう遥は感じた。
そして、観客のもつサイリウムが青く輝き作り出される光の海の中心で彼女達は輝いていた。
全てのグループがパフォーマンスを終え、今大会の優勝グループの名前がステージ後方の巨大モニターに表示される。
そしてそのグループの名は―
『Aqours』
彼女達はやり遂げたのだ。学校の名前を大会の歴史に残すという、学校みんなの願い。そして彼女達が探し求めていた『輝き』もそこにあった。
そして優勝したAqoursへのアンコールを催促する声が会場へ響き渡る。そしてそれに応えて、彼女達はもう一つの曲をその場で披露したのだった。
―青空Jumping_Heart―
「みんな、おめでとう」
その日の帰り、遥は笑顔でそう9人を迎える。
「ありがとう!」
そんな遥に、代表して千歌がそう答える。沢山の困難にぶつかったが、少女たちはこの一年間追い求めてきたものを掴むことが出来た。
「帰りましょう、浦の星へ」
ダイヤのその言葉で、優勝旗を一旦保管すべく学校を目指して帰路につく。帰りの電車の中では、みんな疲れ果てて眠ってしまい会話は無かった。
そして学校へと帰ってきた彼女達だったが、眠りから覚めても優勝旗がそして2曲披露した事での疲労感が現実だったことを教えてくれる。
「わたしたち…やったんだね?」
「うん、優勝して…学校の名前を残したの」
まだ信じられないといった様子で呟く千歌に、梨子がそう告げる。自分達はやり遂げたのだと。
「学校の皆の想いも、先輩達自身の願いも全部叶えたんです!」
遥もそう言葉を紡ぐと、千歌は嬉しそうに笑う。
やり切ったんだという、その実感を胸にその日は解散となった。
「ねえ遥」
「どうしたの?」
その日の帰り、姉に不意に呼び止められた。
「閉校祭の時から思ってたんだけど…何か隠してない?」
そうまっすぐ遥の目を見て、姉である梨子はそう問いかける。やはりずっと一緒に生活してきた姉を誤魔化すのは無理か。そう思って遥は転校の話が来ていることを話した。
「そうなのね…」
母親には話したが、先生にも母にもAqoursのみんなが決勝を終えるまでは話さないでほしいと頼んでいたので、そのこと自体は隠せていたが。何かを隠しているという事実までは誤魔化せていなかったと言う事だ。
「遥はどうするの?東京に戻る?」
「まだ決めてない……でも、もうすぐ期日なんだよね」
遥は表情を少し暗くしてそう答える。ラブライブの決勝が伸びてしまった事で、考えることが出来る期間は縮まってしまった。それでも遥は、決勝が終わるまでその事を考えることを拒んでいた。
それに、ゾグとの決戦以降。結果的に人類最後の希望であった『ミッションガイア』を提案したアルケミースターズのメンバーであるだけでなく、ウルトラマンガイアとして戦った遥を評価してくれる人は多く。来てほしいという声は強まったと担任には告げられていた。
それでも遥には、今の仲間の元を去る事が自分にとって本当にプラスなのか答えを出せずにいた。
「遥の人生だから、遥が本気で行きたいのなら…行くべきだと思う」
どうすればいいか解らない。そう悩む遥に、梨子はそう優しく告げる。
「私たちの為にって残ってくれるのは嬉しい。でもね?みんなも、遥の本当にやりたいことを頑張ってほしいって本気でそう思ってくれるはずよ?」
そう告げる梨子が思い出しているのは、きっと夏休みの事。ラブライブの地区予選より、ピアノのコンテストに出て自分の気持ちに答えを出してほしいと千歌に告げられた時の事だろう。
「うん、わかってる…とにかく今日は、優勝おめでとう!姉さん」
「うん、ありがとう」
そう姉弟は笑い合うと、家に帰る。もうあとは三年生の卒業をもって、この学校での生活は終わる。そんな寂しさも、この日だけはもう考えないようにした。
そして少しだけ時は戻り、決勝の直後。東京の街を見渡す一人の少女が居た。
「ゾグを倒すなんて…流石は地球に選ばれた人ね……でもお陰で、もう一回お姉さんたちの舞台が見られた訳だけど」
そう呟く少女の視線の先には、1週間がたってもまだ色濃く残る戦闘での破壊の跡。普段感情の見えない彼女の表情も、今回ばかりは憂いを帯びていた。
「でも都合のいい生き物よね、人間も……わざわざウルトラマンが負ける光景を見せつけられれば絶望して、ゼブブの言葉を思い出したかのように魔女狩りを始めたくせに。勝てば今度は英雄扱い……」
どこか昔を思い出すような目で、今度はそう呟く。声音に怒りの感情を覗かせて。
「ゾグがやられた以上、もう私以外に手出しできる存在はいない。私の望み通り、私の手で終わらせてあげる…」
そう誰にでもなく告げると、少女はその場を去る。そして彼女は遂に、『人類と地球を抹消する』為に行動を開始する。
ゾグ戦遂に決着!
本家ガイアだとこれで最終回ですがこの作品はもうちょっとだけ続くんじゃ…
次回からアニメ最終回である二期の13話の内容へ突入していきます。
そして根源破滅天使ゾグ第二形態ですか、慎重666mと50mちょいのガイアとアグルが豆粒に見えるくらい巨大な相手でした。
実はこの数字、ヨハネの黙示録の怪物の数になぞらえているらしいです、劇中の善子のセリフもあながち間違いでなかったり笑
それではまだもう暫く続くこの物語、最後までお付き合いいただければと思います。それではまた次回!