第一話並みに短いですが、彼らの物語に最期までお付き合いください。
激突する必殺の一撃その光によって周囲は真っ白に塗りつぶされる。
「ど…どうなったの?」
「わからない…」
その余波と光で誰も二体の巨人がどうなったか確認できずにいた。ただAqoursの面々は遥の身を心配する事しかできなかった。
気が付けば遥は真っ白な光に覆われた空間に立っていた。しかもガイアの姿ではなく人間の、桜内遥としての姿で。
「ここは…?」
周囲を見渡すと、もう1人この場にいることに気が付く。そしてその相手と目が合う。
「シルビア…」
「お兄さん、強くなったのね…本当に」
そう告げる彼女は真っ直ぐ遥の目を見ていた。そしてその声には憂いが乗っていた。
「…キミは本当は、こんな事したくなかったんじゃないのか?」
そんなシルビアの様子を見て、遥はそう問いかける。今までの彼女の行動は、遥から見て破滅招来体の思惑通りに遥や博樹を動かそうとしてのものだとしても、それでも遥にはヒントを与えているような気がした。
「そんなことない、私は…人類が憎い」
「嘘だ、本当にそうなら何で僕たちと戦う以外で、人間に危害を加えなかったの?どうしてライブを見て楽しみにしてくれてたの?」
「それは…」
遥のその問いに、シルビアは即答することが出来なかった。
「君は本当は優しい人間だったはずだよ?だからもう、苦しまないで?」
「…随分優しいのね?」
「そんなんじゃない……本当に優しいなら、君と本気で戦ったりはできないよ…」
そう遥は自虐的に笑う。
「そんなことない、貴方はいつも戦った相手も気にかけてた。貴方みたいな人ばかりだったら、誰も苦しまずに済んだのかもしれないわ…」
「シルビア……」
そう言って顔を伏せるシルビアに、遥も悲し気な表情を浮かべる。彼女がこうなってしまったのは、間違いなく人間が原因なのだから。
「でも、最期に貴方と話せてよかった。今ならそう思える…ありがとう、私もこれでやっと眠ることが出来る」
「ごめん、僕はこうする事しかできなかった…」
「謝る必要はない…貴方は正しい事をした。私ももう少し人間として生きていたら、貴方達みたいに輝けたのかしら…」
『ありがとう』とそう言って初めてほほ笑んだシルビアを見て、遥は余計に心を締め付けられた。でも彼女のその後に続いた言葉には、笑って答えた。
「君がそう望めば、今からでもきっと輝けるさ」
「そうね…ありがとう、輝きの人たち。そして、さようなら…」
シルビアがそう告げると、遥の視界は再び真っ白になる。そしてその光が収まると、周囲は突如爆炎に包まれる。
その時、遥の体は再びガイアのものへと変わっており、気が付けばフェイトの姿は無く。一人佇んでいた。
「遥くん!」
不意に聞こえた声に、ガイアはその方を見下ろす。視線の先では花丸が、そしてみんながこちらへ手を振っていた。
自分は最後の戦いに勝利したんだという実感が、この時初めて得られた気がした。
そしてガイアの身体は輝くと、赤と青の入り混じった光の球体となり目の前へと降りてくる。そしてその光が消えると遥の姿が見えた。
「やったね!」
そう言ってみんな遥を口々に労うと、遥も笑ってそれに応じる。大切な場所を最後まで守り抜いたのだ。公開などあるはずもない。
「遥、やったな」
不意にその輪の外からそう告げられ、遥は声の主を見る。するとそこには、博樹が立っていた。
「博樹さん!」
「心配したんだからね?」
博樹に駆け寄る遥と果南だったが、博樹は笑みを浮かべるも遥に「それでよかったのか?」と言いたげな視線を送るが、遥もそれに無言で頷く。
「アグルの光、お返しします」
そう言ってエスプレンダーを突き出すと、先程受け取った光を博樹に返還しようとする。
だが、エスプレンダーに宿った光は全て外へと出るとそのまま天高く舞い上がる。
「どうして…?」
何が起きているのか解らぬまま、それを見上げる遥たちの視線の先でその光は赤と青。それぞれ二つの球体へと別れる。
「ガイア…」
「アグル…」
遥と博樹の視線の先で、それぞれがその身に宿していた巨人の姿へと変わる。そしてガイアは遥に、アグルは博樹にを真っ直ぐ見つめる。
そして2人の巨人はゆっくりと頷くと、光の粒子のなって消えてしまった。
(ありがとう。そして…さようなら)
その光景を見て、遥はそう口にはしなかったが心の中で一年間一緒に戦った仲間に、そう笑って告げるのだった。
「帰ろう、みんな」
遥は振り返ってみんなにそう告げると、全員帰路につく。それぞれの、帰るべき場所へ。
それから早くも一週間が経過した。三年生たちはそれぞれ新天地へと旅経っていき、博樹もまた世界の海が見たいと言って海外へと旅立った。
遥は、梨子にピアノを貸してくれと言って一人ピアノと向き合っていた。
「ここはこのリズムで…」
夏にまたピアノと―過去と向き合おうと思ってからずっと一人で考えていた曲があった。その曲が、もう少しで完成しそうだったのだ。
夏の時点で、ほぼメロディーラインはできていたのだが。リパルサーリフトだったり色んなことがあって止まっていた作業を、この一週間で再開し歌詞も考えてそれと照らし合わせた上で完成に向かっていた。
「できそう?」
「うん…もう少しで、完成できそうなんだけどなぁ……」
そう問いかけてきた梨子に、遥はそう答えるも視線は気が付けば虚空を見ており行き詰っている雰囲気がでていた。
「みんな、行っちゃったね」
「うん…でも、これっきりじゃないよ。僕たちは、きっとまた会える」
不意にぼーっと天井を見上げる遥に、梨子はそう話題を変えようと告げると遥は振り返ってそう言って笑う。
―博樹さんも、ここを離れるんですね
―あぁ、オレもやっと…オレの目指す道が見えた気がする
―また、会えますかね?
―鞠莉が言ってたそうだ。オレ達は『この空で繋がってる』って、また会えるさ。生きてれば何処かで
そう博樹とのやり取りを不意に思い出す。
「ねえ、学校にいかない?」
「沼津の?」
不意に姉にそう提案されて、遥はそう聞き返す。すると梨子は悪戯っぽく笑うと首を横に振る。
「ううん、浦の星に」
「浦の星に…?どうしてまた……」
「いいから、ほら」
そう言って梨子は遥を急かして、浦の星の制服に身を包むと浦の星学院へと向かう。そしてそこには、千歌を除く、全校生徒がいた。
「姉さん、みんな…なんで?」
「みんなで最後にもう一回歌いたいって、この場所で」
そう梨子が告げる。三年生でさえ、このために再び制服に身を包みこの場所に戻ってきている。
そして千歌を驚かす意図もあったらしく、あとは家族にそれとなくここへ誘導されて少しだけ空いている校門をくぐってここへとたどり着くはずだ。
そして暫くすると、何も知らされてない千歌が学校へとやって来た。
「みんな…どうして?」
千歌はステージ上で自信を見つめるAqoursのみんなに驚く。そしてみんなで千歌へと手を差し伸べる。
「千歌ちゃん!」
「歌おう!」
「「一緒に!!」」
その差し伸べられた手に、千歌は駆け寄る。
―WONDERFUL STORIES―
決勝で歌う為に作ったが、披露する事の無かった曲。思い出にと、ダンスまで完成させてそのままみんなの記憶に残しておこうと。その曲を、最期にみんなで学校のみんなにだけに披露した。
今まで彼女達が進んできた道こそが、『輝き』だったんだ。そしてきっと自分は、この景色を見たくて戦ってきた。そう遥は実感した。
『ウルトラマンガイア』として、そして『桜内遥』という一人の人間として、迷って苦しんで。それでも進んできたこの道は、決して間違いなんかじゃなかった。そう感じた。
この瞬間瞬間が、輝きだったんだと。
そしてそんな彼女達の様子を体育館の入り口から静かに見つめていた人影は、ふっと笑うとそのまま踵を返して歩み去って行ったのには果南以外誰も気が付くことは無かった。
白い上着を羽織った彼は、何も告げずにその場を後にした。でも気持ちはきっと、繋がっている。
2人のウルトラマンは、最初こそ考え方の違いからぶつかり合ってそして全力で相手を倒す為に争った。
でもそんな彼らにも、解りあう日が来た。
それもきっと、彼女達の『輝き』があったからこそだった。
その輝きに魅せられて、その輝きを守りたくて。命をかけて戦い抜いたウルトラマンは、もうみんなの前には現れないのかもしれない。
そして、どうして2人の少年にそれぞれ自身の光の力を授けたのか?それは今の僕たちには解らない。地球の声を直接訊く術を、人類はまだ持っていないから。
でもきっといつか、その声を聞く日が来る。遥はそんな気がした。
それから更に数日後、遥は東京にいた。
量子力学の実験の手伝いで、春休み期間中だけそこにいるアルケミースターズの手伝いという名目でその実験を見学させてもらいに来ていたのだ。
駅前の緑豊かな公園で、木の陰に座り込み一人ノートパソコンのキーボードを叩く遥。
天才と言われ、その事にも苦悩してきた遥にもまだまだ知らないことが沢山あるのだと実感させられる日々に、充実感を覚えていた。
「遥くん、ご飯食べに行こう」
「はい、是非」
この実験に招待してくれた大学生のメンバーに、遥はそう笑顔で応じると後に続く。
その時、足元のコンクリートの間から一つの花の芽が伸びていることに気が付く。駆け寄ってその葉っぱに触れると、水分が足りないのかしおれていることに気が付く。
咄嗟に持っていたミネラルウォーターの入ったペットボトルを開けると、少し水をかけてやる。
『□□ーッ!』
不意に聞こえた龍の咆哮。その方へ向くと、ビル群の間にミズノエノリュウが見えたような気がした。
街往く人、鳥のさえずり、風によってなびく木漏れ日。全てがこの地球を形どっているものなんだと。遥は実感した。
もうシルビアのように苦しむ人を出さない為に、人類が同じ過ちを繰り返して地球を破滅させることが無いように、そんな世界を目指して遥たちは生きていく。
「そうなんだ…これが…これが地球なんだ…!」
周囲を見渡してそう呟く遥は、今度は空を見上げる。
「おーーーーい!!」
きっと空から自分達を見てくれている存在に向かって叫んだ。『自分達はここで生きている、地球に生きる命が手を取り合って生きていける。そんな世界にしていくために』と。
その頃梨子は、自室のピアノの前に腰掛けていた。
そして遥が書き上げたまま梨子の部屋に放置していった楽譜を、おもむろに弾き始める。
その曲の名は『Beat on Dream on』
夏休みに、コンクールから帰ると遥に「もう一度ピアノを弾いてみたい」そう言われた時は驚きよりも、嬉しさの方が大きかった。
一度もちゃんと聴かせてくれなかったが、自分で弾いてみて素晴らしい曲だと。そう素直に思った。
今まで天才であったがゆえに、そしてウルトラマンに選ばれたことで沢山悩んで苦しんで。それでも真っ直ぐ成長していった弟が、誇らしく感じる。
東京へ行くと言い出した時も驚いたが、もう遥は梨子と離れてもちゃんとやっていける。浦の星に入学した時の遥からは考えられなかった事だ。
この一年間はきっとみんなにとって、忘れられない一生の宝物。
同じ空を見上げて、9人の少女と2人の少年はそう思っているのだろう。
地球には怪獣がいて、ウルトラマンがいる。
この美しい星を、私たちはもっと愛していきたい。
これでテレビシリーズのお話は完結となります。みなさん本当にありがとうございます!
前回入れなかった補足を少々
まずアグルの放ったプロミネンスキャノンですが、本編未使用ですが公式に存在する技です。「凄いスピード」らしいです。
フェイトの技とガイアが最後に放ったサンシャインストリームは勝手に作者が考えました。見慣れない技名で、公式に存在するのがプロミネンスキャノンだと覚えて帰って頂ければ幸いです(笑)
一応この物語、もう少しだけ続きます。もう暫くお付き合いいただければ幸いです。
それでは次回、サンシャイン劇場版編でお会いしましょう。
Next ver.Final Over the Rainbow〜ガイアよ再び〜