ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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お待たせしました、劇場版編第1話です。


ver.Final Over the Rainbow〜ガイアよ再び〜
Ⅰ新たなる始まり


またこの9人で歌えた。この時間はとてもかけがえのないもので、もう訪れることのないと思っていた時間。

 

そんな時間も終わりを告げる。

 

その時、3年生たちから、Aqoursの『これから』の話をした。

 

そして今度こそ、3人はそれぞれ新しい場所へと旅立っていった。

 

「行っちゃったね」

 

「うん、わたし達ももどって練習しよっか」

 

駅の中へと消えていく3年生の背中を見送った後、背後からそう曜に告げられて千歌は振り返りながらそう答える。

 

「そうね。6人で新しい学校へ行っても、Aqoursを続けていく」

 

そう曜の隣にいる梨子が続く。3年生3人が卒業しても、残ったメンバーは新しい学校でそのままAqoursを続けていく。それが、みんなで話し合って決めた事だった。

 

「そうだね。それがみんなの答えなんだもん!」

 

「やる気が出てきたずら」

 

そう話していると、木の陰からそう言ってルビィと花丸が出てくる。そしてその後ろから「ギラン!」と普段通りのキャラクターで善子が出てくる。

 

「相っ変わらず空気読めないずらね」

 

「やかましいわ!」

 

なんて顔をしかめる2人と普段通りのやり取りを行う。そんな光景になんだか微笑ましい気持ちになる。

 

「あ!」

 

そんなやり取りの横で、ルビィが何かに気がついて声を上げる。

 

「どうしたの?」

 

「練習、どこでやるの?」

 

「どこで?っていつもの―」

 

そうルビィに指摘されて、千歌はそう言いかけるがそこで重要な事に気が付く。

 

「そっか、学校はもう使えないんだ……」

 

「駅前の練習スペースは?」

 

「あれはラブライブが終わるまでって約束で」

 

そう、学校はもう練習で使うことは出来ない。ならばと梨子が提案するが、それも駅前のスペースを貸してもらえるように交渉した曜に却下される。

 

「え?じゃあどうするずら?」

 

「鞠莉にでも聞いてみる?」

 

そう善子が提案する、確かに鞠莉なら内浦で練習できそうな場所に心当たりがあるかもしれない。

 

「ううん、自分達で探そう」

 

だが千歌は首を横に振ってそう答えるのだった。これからはこの6人でAqoursとして活動していくのに、いつまでも卒業生に頼るわけにもいかない。

 

「なんかね、頼ってたらダメな気がする。この6人でスタートなんだもん、この6人で何とかしなきゃ」

 

それが千歌の気持ちだった。「でしょ?」と言ってほほ笑むと、そうだねといって全員ほほ笑む。反対する意見など出る訳もなかった。

 

「閃いた!」

 

「はい曜ちゃん!」

 

そういって挙手した曜を千歌がそう言って指さし、その案を聞く。

 

「新しい学校行ってみない?わたし達が春から通う」

 

その提案を受けて、6人は曜が学校来ていたメールと地図アプリを見て全員をその学校までナビゲートする。

 

「結構遠いね~」

 

「生徒数考えると、かなり大きな学校っぽいけど…」

 

普段あまり行く事のない方向へ向かって走るバスの中で、そんなやり取りが千歌と梨子の間で行われる。

 

「あれ?こっちに学校なんてあったかなぁ…?」

 

その後ろで曜が、そういって頭を悩ませる。少しの不安を残したまま、学校から指定された住所に一行はたどり着く。

 

「へ?」

 

まず千歌の第一声はそんな気の抜けた声だった。無理もない、どうみても現在使っている雰囲気は無く。外壁にまで草が伸びているわ、窓はひび割れテープで補強しているわの廃墟と言っても差し支えない木造の建物が目の前にあったのだから。

 

「か…過去ずら……」

 

「曜、間違ったんじゃないの!?」

 

余りにボロボロな建物に、花丸はそう言って驚き善子は曜に突っかかる。

 

「えぇ…でも、学校から送られてきた場所だよ。浦の星の生徒は入学式の日にここに集合する事」

 

そう言ってもう一度スマホを確認してメールを読み上げる。するとルビィが何かを見つけたのか「ああああああっ!」と大声を上げる。

 

「見て!」

 

そう彼女が指さしたのは、校門横にくっついている木製の板だった。そこには『静真高等学校』と擦り切れではいてもはっきり読みとれる文字が並んでいた。

 

そしてその下に白い文字で最近書かれたのか、真新しい文字が並んでいた。それこそが―

 

『浦の星学院 分校』

 

「「分校~!?」」

 

全員の声が、辺りに木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で遥は、東京での日々を過ごしていた。

 

アルケミースターズのメンバーと、量子力学の実験を見学させてもらっていたのだ。

 

もちろん、手伝いという名目ではあるので春休みで人の少ない大学内で遥もできることは全力でこなしていたし、たった数日だが充実感を得ていた。

 

だが、ゾグを倒してから1か月近くが経過しずっと地球にいた。シルビアとの激突こそあれど、地球の人々は怪獣やら破滅招来体の脅威を認識することなく。平和な時が流れていた。

 

でも、一つだけ遥にとって不安なニュースが飛び込んできた。

 

作業の傍ら、パソコンをニュースのサイトに切り替える。そこで見たものこそ―

 

『ゾンネル、ウェスト・コーストに出現』

 

そんな見出しのニュースが、画像付きでサイトに投稿されていた。そしてその記事の中には、場合によっては『排除』するという旨が記されていたのだった。

 

「地球に生きる、仲間なのに…」

 

ふとエスプレンダーに視線を落とす。だがもうガイアと別れた遥の手元に、もう光は宿っていない。

 

エスプレンダーも、もう役目を終えたものだと遥も認識しているのだが。それでもお守りとして、常に持ち歩いていたのだ。

 

「ねえ、あの人知ってる?」

 

「えー誰?」

 

不意にそんな声がするので、声の方を見ると女子大生数人がこちらを指さしているのが目に入る。

 

「ウルトラマンガイア」

 

「えーうそ!?」

 

やっぱり変身が解ける瞬間を中継されてしまったので、遥ももはや自分の顔が知られていることにも少しずつ慣れてしまっていた。

 

「かわいい顔してるけど、あたしはアグルの湊くんの方がタイプかな」

 

そんなやりとりをしながら過ぎ去っていく女性に『なんだと?』みたいな少し悔しいような感情が湧き上がる。

 

そうだ、ちょっぴり変装してみよう。そんな事を考えていると、沼津にいるはずのAqoursのみんなから1通のメールが届くのだった。

 

「嘘でしょ…?」

 

「どうしたの?」

 

「へ?いや何でもないんです」

 

不意に現れたアルケミースターズのメンバーにそう聞かれ、咄嗟に誤魔化した遥だったがここである事を頼みこむ。

 

「一つ、お願いがあるんですが―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何それ!」

 

沼津の喫茶店でそんな千歌の怒声が響く。分校に通えと言われたのだから無理もないだろう。

 

「なんでも、浦の星のみんなと一緒になるのが嫌だって声が一部であるみたいで」

 

「しばらく、分校で様子を見ましょう。ってことになったんだって」

 

「それで、浦の星の生徒用に今は使ってない小学校を借りたらしくて。教室も今のところひとつだけ…」

 

そんな千歌に、幼馴染である三人が説明するが、やはり彼女達も納得している訳では無く。表情からは不満が見て取れる。

 

「統廃合になって、廃校になった学校に行くんじゃ意味ないずら」

 

そう言う花丸の意見はもっともだった。それなら尚更、浦の星を廃校にした意味がない。元々の校舎の方がきれいだし、教室だってちゃんとある。

 

「それに、三年生が卒業したからってルビィ達全員が同じ教室に入ったら…」

 

ほぼ間違いなく、狭すぎて授業どころでは無くなるだろう。

 

「なにそれ?授業できないじゃーん」

 

そう千歌は愉快そうに言うが、梨子に「スクールアイドル活動もね」と言われてその顔が凍り付く。授業が無くなるのは嬉しいがそれは困る。いや、学生なのだから受けるべきだが…。

 

「でも、どうして一緒にしたくないなんて声が…」

 

「そう言えば、曜ちゃんはどうしたずら?」

 

そう梨子が疑問を浮かべたところで、ホットドックを食べようとした花丸がその手を止めてそう切り出す。

 

そう言えばと全員周囲を見渡す。全員一緒に座るのは無理だからと、散らばって座っていたのだが店内に他に客の姿は無く。曜の姿も見えない。

 

「確か、電話がかかってきて……」

 

そんなやり取りを聞き流しつつ、店の外へと視線を向けた善子は信じられないものを目撃するのだった。

 

「…嘘!?」

 

そう思わず声を出して窓ガラスに顔を近づける善子。そしてその横には店内中央付近のカウンター席にいたはずの花丸とルビィが立っていて、食いつくように善子と同じ方を見つめていた。

 

「なに?」

 

千歌がそう言って同じく窓の外へと視線を移そうとするが、すかさず一年三人組は立ち上がって腕を伸ばし外が見えないように妨害する。

 

「な、なんでもないずら!」

 

「リトルデーモン達が、少しざわついてるだけよ」

 

「ピ、ピギィ!」

 

そう言って咄嗟に誤魔化そうとするが、誰が聞いても何かあったのはバレバレだった。ルビィ、花丸、善子の順で口調がごちゃごちゃになってしまっていたからだ。

 

「…何を見たの?」

 

そう梨子が詰め寄る。

 

「何でもない!何でもないの!」

 

「見ない方が良い!」

 

「その通りずら!」

 

だが頑なに譲らない一年生を見て、逆に俄然何を見たのかきになった千歌と梨子は店外へとでていく。

 

「あっもしかして、どこかでかわいい制服みつけちゃったとか~?」

 

そう言ってアーケード街へと出て行った千歌はそのままその場で固まってしまう。そしてその視線の先を、千歌の後を追って出て行った梨子も同様に言葉を失う。

 

その視線の先に間違いなく、渡辺曜はいた。だが問題は彼女と向かい合っている人物だった。黒いジャケットを羽織って帽子を被った曜より頭一つ程背の高い人物と会話していたのだ。

 

帽子を被っていても、そこから覗かせる顔は中性的で整った顔立ちをしているように思える。すらっとした印象を与える人物を見る曜の顔は親しい間柄でなければ決して見せないような、それでいて普段Aqoursの皆に向けるものとも少し違う笑顔に感じられた。

 

「ゆめ?」

 

そう言いかけると千歌が唐突に梨子の頬を引っ張るので、呂律の回らない声でつぶやきつつ梨子もやり返す。

 

「ゆめだよね、ゆめゆめ」

 

「そっかーゆめかー」

 

なんてやりとりをお互いの頬を引っ張り合い呂律の回らない声で呟くと、お互いに顔を見合わせる。

 

「リアルこそ正義」

 

「「…はい」」

 

いつの間にか後ろに来ていた善子にそう言われて、再び曜たちの方へと顔を向けさせられる。

 

「もしかして、曜ちゃんの弟ずら?」

 

「確か居ないはずなんだけどなぁ…」

 

花丸に小声でささやかれて、千歌はそう腕を組んで首を傾げながら答える。

 

「じゃあやっぱり…」

 

「曜の…ビッグデーモン!?」

 

そう梨子が小声で続くと、善子が思わず声を張り上げてしまった。

 

「あぁこっち向く」

 

そう言って千歌が善子の口を塞いで咄嗟に全員物陰に隠れる。暫くすると、ルビィが「あっ居ない!」と声を上げたので千歌が「追えー!」と号令を出し、五人はふたりの後をつける。

 

時々曜はこちらを振り返るが、なんとか彼女の視線に写り込む前に物陰に隠れる。「にゃ~お」と善子がそのたびに猫の鳴きまねをして誤魔化していた。

 

だがそんな事も、そんなに長く続くはずは無かった。

 

いつの間にか、どこかのお店の前に鎮座していたマスコットキャラクターを持ち出してその背後に隠れた善子が、また猫の鳴きまねをした時だった。

 

「なぁんだ、猫ちゃんか」

 

そう言って曜たちがまた進んでいくと、安心した善子が立ち上がる。

 

「危ない危ない、危うく見つかるところだ……」

 

そう言って振り返ってマスコットを拾った時だった。目の前に曜の顔があった。

 

「善子ちゃん」

 

「おかけになった電話は、お客様のご都合によりお繋ぎできません!」

 

にっこりと笑顔で善子と顔を合わせる曜だったが、善子はマスコットを持ち上げて顔を隠すとそう言って誤魔化そうとする。

 

「いや、そうじゃなくて…」

 

「どうしたの?曜ちゃん」

 

そんな彼女の様子に、曜は困ったような声を上げると曜と一緒にいた人物がそう声をかける。その声は、少年にしてもやけに高いなと思った。中性的な少年は身近に遥がいるが、彼よりももっと高い。

 

「あぁ、ごめんね。月ちゃん」

 

「月……『ちゃん』?」

 

そう告げる曜に、千歌がそう反芻する。

 

「ええ!?千歌ちゃん?」

 

そんな千歌の様子に、曜は目を丸くして驚くがすぐに納得がいったようで。

 

「そっか紹介して無かったっけ?わたしの従姉妹の月ちゃん」

 

曜にそう紹介されて、その人物は帽子を取る。すると綺麗な黒髪が肩のあたりまではらりと落ちてくる。

 

「月です。よーろしく~」

 

そう言って敬礼をして見せる。

 

「もしかして―」

 

「女の子?」

 

「「なぁんだ…」」

 

そう言って勝手にした誤解が解けたところで、全員膝の力が抜けてしまった。そんな様子を不思議そうに曜と月は見つめていた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、あの学校の生徒なの?」

 

「うん。入学前、曜ちゃんに一緒に通わない?って誘ったんだけど、曜ちゃんは千歌ちゃんと同じ学校がいいって」

 

統合先の学校である、静真高校の生徒であることを曜の口から紹介された千歌は、月にそう反芻すると月は笑いながらそう返すと、その横で曜が顔を赤らめる。

 

「そ…そうだっけ?」

 

「照れる事ないじゃない」

 

そんな曜に、梨子はそう告げると月は梨子の方へと視線を移す。

 

「君が梨子ちゃんだね?」

 

「は、はい」

 

同い年なのだが、梨子はとっさに声をかけられてそう緊張気味にそう返事をする。

 

「いつも曜ちゃんが言ってたよ。尊敬してるって」

 

「そ、そんな…」

 

「照れることないのに」

 

そう月に言われ、梨子は返答に困ったような反応を示すと今度は曜に笑いながらそう言い返される。

 

「千歌ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん。曜ちゃん本当にAqoursのみんなが好きみたいで、会うたびにいつもみんなの事話してたんだよ」

 

そう言われてまた恥ずかしくなったのか毛先をいじりながら顔を逸らす曜に、月は顔を近づけて続ける。

 

「いつも思うんだ。もうAqoursは曜ちゃんの一部なんだなぁって」

 

そう言って彼女は眩しいほどの笑顔を見せる。

 

「さすが曜ちゃんの従姉妹ずら、裏表がないっていうか」

 

「なんでわたしの方見るのよ?」

 

そう告げる花丸に、視線を向けられた善子が噛み付く。

 

「それと、分校の事…」

 

花丸と善子のやり取りを面白そうに眺めていた月に、ルビィがそうおずおずと尋ねると。彼女は逡巡すると、しっかり説明してくれた。

 

静真高等学校は、元々部活動が盛んで全国大会でも結果を残すような強豪の部活動が多く存在している。そんな部活が、逆に大した結果を残せなかった浦の星の生徒と同じ部活となった時に、部の雰囲気がだらけたものにかってしまわないか?そんな声が一部の父兄から上がったらしい。

 

どうしてそんなことになるのか?そんな憤りを善子たちは見せるが、そんな様子も月は「だよね」と学校側が下した措置を不満に思っているようだった。そして暗い表情のまま説明を続ける。

 

「僕達生徒も先生たちも心配ないって説得したんだけど、部がダメになったらどうするんだ?とか責任とれるのか?とか」

 

「それでどうしたらいいか相談してたんだ」

 

そこで曜もそう口を開く。

 

「全面戦争?」

 

「そんな訳ないでしょ」

 

物騒な事を呟く善子に、梨子が素早くツッコミをいれる。

 

「その人たちが気にしてるのは、浦の星の生徒が部活でちゃんとまじめにやって行けるか何だと思う」

 

そう曜が告げると、今度は月がその続きを告げる。

 

「だから実績のある部活もあるよって証明できればいいんだよ」

 

「部活…」

 

「証明するって言っても…」

 

ルビィと花丸がそう視線を落とす。そんな誇れるような凄い部が存在したか、千歌も視線を落として悩み始める。

 

「あるでしょ」

 

そんな様子に気がついた梨子が優しく告げる。

 

「全国大会で優勝した部活が一つだけ」

 

今度は曜がそうヒントを与える。そこでようやく千歌ははっとしたように視線を上げる。

 

「わたし達、スクールアイドル部が新しい学校の部活にも負けないくらい真面目に本気で活動していて、人を感動させられるんだってわかってもらえばいいんじゃない?」

 

「それ……それいい!」

 

「でしょ?」

 

そこでようやく表情を明るくさせた千歌に、曜もそう告げる。

 

「ライブでもやるつもり?」

 

「それもいいけど。実は来週、丁度いいイベントがあるんだ」

 

そう善子に聞かれ、月は丁度いい機会があると切り出すのだった。




劇場版何回も見返しながら書いてくことになりそうな最終章。
作者の涙腺が先か完結が先か、更新ペースはちょっと遅くなりそうですが気長にお待ち下さい。
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