5話で終わる予定だったのにまだ終わる気配が見えない…おかしいなぁ…
あの後、本来の目的は一応達成した事で三年生より一足先に8人は沼津へと帰ってきた。そしてそのままの足で分校となる予定の学校を訪れていた。
「だれもいないずら」
「むっちゃんたち、ここだって言ってたんだけど…」
そう言って周囲を見渡すが、狭いグラウンドに他のは人影は見えない。すると校舎の窓が開き、そこから顔を覗かせてきた。
「ごめんね急にライブの手伝いお願いしちゃって」
そう千歌がまず謝るが、彼女達は「全然大丈夫だから」と笑って応じてくれた。
先日の部の活動報告会での失敗を取り返すべく、今度は自分達で一からステージを作ることにしたのだ。
だが流石に遥含めた7人では手が足りないので、そこで千歌はむつ達同級生に協力を頼んだのだ。
「メールもらった時点でみんなに連絡したら協力してくれるって」
「実はもうステージのイメージもできてるんだ」
そう言って黒板にかけていた布をとると、そこにはきれいな虹のかかったステージが描かれていた。
「でも、流石に時間が足りないんじゃ…?」
「それも言ったんだけど、浦の星も生徒もちゃんとしてるんだって証明したくって」
そう曜が指摘すると、どうやらその話も既に上がっていたらしいのだがそれでもやりたいという浦の星の生徒全員の希望もあったらしい。
「でも音響スタッフとかどうしても手が足りなくて…」
そう告げると、「はじめまして~」と静真高校の生徒が三人入ってくる。
「ボクのところに相談しにきてくれたんだ。まだ一部の保護者の反対もあるけど協力したいって。まだ少人数ではあるけど…」
そう月が告げる。これで人手不足の問題はなんとか解決できそうだ。
「ありがとう」
「さすが生徒会長!」
この前の発表会も、生徒会長である月が頑張って特別に用意してくれた機会だった。そして今回も、彼女には頭が上がらない。
「あーっ!」
そうしていると、今来た渋間高校の生徒が善子の顔をみるとそう声を上げる。
「もしかしてヨハネちゃん?」
「わたし、中学で一緒だった―」
「ちっちがいます!!」
今でも中二病キャラを続けている彼女だが、それでも中学時代は黒歴史のままらしく。そう少女たちに口々に言われると顔を赤らめてそう誤魔化す。
「いっつも配信見てるよ~」
そう言って少女たちは善子が良くやる目元でピースサインをするポーズをとる。
「「ヨハネ、降臨!」」
遂に耐えられなくなった善子は、顔を真っ赤にすると教室の外へと飛び出すとそのまま廊下を全力疾走で逃げようとする。
「ダメじゃない、せっかく応援してくれてるのに」
だがそれは、反対側から廊下に出た梨子によって妨害される。悪そうな笑みを浮かべる彼女に、善子は余計に顔を引きつらせる。
「一緒に写真撮りませんか~?ヨハネちゃんと」
「えっ本当?」
いつの間にか真後ろに立っていた花丸にそう言われると、少女たちは「撮る撮る」といって廊下に出てくる。
「ひっヒドイ……リトルデーモンの反逆…!」
今にも泣き出しそうな表情でそう呟く彼女に、内心同情せずにはいられなかった。
「ありがとう、大切にするね」
「な、なんくるないさ…」
なんで沖縄弁?と疑問に思ったが、一緒に写真を撮っただけとは思えない程疲弊していた彼女にそれを言うのは何となく酷な気がした。
「写真送るから、連絡先教えて」
だが、そのまま彼女達と連絡先を交換している善子はどこか嬉しそうだった。
「よーし、やるぞ!」
「でも、向こうで歌った時とは違って鞠莉ちゃん達はいないずら…」
そう意気込む千歌とは対照的に、花丸はそう不安げに呟く。失敗した時と同じ、6人でのステージとなる訳だから。
「できる…できるよ!」
だがそうはっきりと言い切って見せたのはルビィだった。もう一度姉であるダイヤと共に歌えたことでルビィは何かを見つけたのかもしれない。
「ボクたちも頑張らなきゃね」
6人で顔を見合わせて笑い合うAqoursを見て、月はそう呟いた。
「そういえば、遥くん本当にウルトラマンですか?とか言われなかったね」
「でしょ?メガネ効果てきめん!」
その日の帰り、不意にそう曜に言われて遥はなぜか自信ありげに告げる。
だが実はイタリアにいた時、すれ違った人が遥の方を振り返って何かを言い合っていた時『ウルトラマン』とか『ガイア』といったワードが曜の耳には時々入っていたが、遥は全く気付いていなかったようだった。
一方でその日、アラスカの山岳地帯にゾンネルが出現した。そしてG.U.A.R.D.アメリカは戦車部隊を出撃させ、これを攻撃。撃退した。
だがその時、それを妨害しようとした人物がいた。その人物は、最新型のパーセルをゾンネルの頭部に射出しその効力で地底に帰そうとしたのだ。
「ゾンネル、地底へ戻れ!それ以上進んだら…」
そう叫ぶも、ゾンネルは何かを伝えたいのか唸り声を上げて首を動かすだけだった。
「クソッ…一体何を伝えたいんだ…?」
だがパーセルは怪獣へ命令するための道具でしかない、そうしていると戦車部隊が現れ、砲撃を開始する。
「戻れ!戻ってくれぇ!!」
その悲痛な叫びも虚しく、ゾンネルは砲火に晒されてしまう。その戦闘によって傷を負ったゾンネルは地底へと戻りはした。
だがしかし、G.U.A.R.Dはゾンネルを操り攻撃しようとしたとしてその人物を指名手配することを発表した。
夜家に帰った後、千歌と梨子は千歌の家でさっそく新曲の作成に取り掛かっていた。一方で遥は、自室でアルケミースターズとコンタクトを取っていた。
「ごめんなさい、折角誘ってくださったのに…」
『いいんだよ、それよりそっちはどう?分校の話、解決しそう?』
「そうですね…今度ライブをして、この前その話を覆せなかった失敗を取り戻そうってみんな頑張ってます」
そう答えると、相手は笑って『なら大丈夫、きっとうまくいくよ』と笑っていた。だがその笑みが消えると、話は本題に入る。
『最近、海底から知的生命体のものと思われる通信が送られてきていることは知っているかい?』
「奇妙な…?」
『その通信は、僕達の知る限り未知の言語なんだけど、その周波数は人間が使うものに合わせてあるらしいんだ』
「人類に何かを呼びかけている?」
そう教えられた情報に、遥は自分なりの推論を立てると相手もそれに頷く。
『まぁその辺は今、G.U.A.R.Dの科学技術部が解析してるし。ダニエル達が協力して解析してるとこだから僕も詳しい事は知らないんだけどさ』
そう言って未知の情報を楽しみにしているような素振りを見せるが『でも今やってる研究の方が僕には重要だし。翻訳とかはあんまりね…?』と言ってすぐに表情を綻ばせる。
『とにかくライブ、成功することを祈ってるよ』
「ありがとうございます」
そう言って通話を切ると、遥は「ふぅ」と息を吐く。
「海底からの通信…怪獣の出現…もしこれが繋がっているとしたら…」
その時、遥の脳裏にはある一つの考えがよぎった。だがそんな筈はないと、この時遥はそう信じていた。
翌日、三年生も含めて近所の和菓子屋のイートインスペースで集まっていたAqoursの皆は、三年生から告げられた言葉に驚愕の声を上げた。
「「理亞ちゃんがAqoursに入るぅ!?」」
「転校してくるってこと?」
「イエス」
開口一番、三年生からそう告げられ、在校生組はそれぞれ困惑の声を上げる。無理もないいきなり函館から転校してくるなんて言われたのだから。
「今から手続きすれば、みんなと一緒に新しい学校に行けるし。馴染みやすいだろうからって」
そう果南が補足する。昨日の夜、日本へ戻ってきた三人のところへ聖良からそう連絡を受けたらしい。
「理亞ちゃんがそうしたいって言ってるの?」
「いいえ、まだ話してないみたい」
「ただ、聖良はそれが一番いいんじゃないかって」
そう問いかけるルビィに、鞠莉と果南がそう答える。どうやら、今のところその話に理亞の意見は取り入れられていないようだった。
「私たちで聖良さんでお話しても良かったのですが、やはり千歌さん達の気持ちも大事だろうと思いまして」
そうダイヤが告げる。聖良としては、このまま新しいグループでスタートが切れないことが心配なのだろう。
「どう思う?」
「そりゃ全然嫌じゃないよ?Aqoursは何人って決まってる訳じゃないし」
「それに、理亞ちゃんも同じラブライブで頑張った仲間だし」
曜にそう問われた千歌と梨子がそう答える。確かに、理亞をメンバーに加える事自体に異論はない。しかし、そこに今現在彼女の気持ちが入っていないことは問題であった。
「うん、ただ―」
「ダメだよ」
ただ不安げな顔で千歌がそう切り出そうとしたのをルビィが遮る。
「理亞ちゃん、そんな事絶対望んでないと思う。Aqoursに入っても、今の悩みは解決しないと思う」
「どうして、そう思うの?」
そう鞠莉に問われ、ルビィは話を続ける。
「だって理亞ちゃんは、Saint Snowを終わりにして新しいグループを始めるんだよ?お姉ちゃんと続けたSaint Snowを大事にしたいから、新しいグループ始めるんだよ。それは、Aqoursに入るってことじゃないと思う」
そう真っ直ぐな瞳でルビィは続けた。理亞は以前語った、Saint Snowは姉との大事な雪の結晶で、それを大事にしたいからこそ新しい雪の結晶を探すんだと。それはやはり、Aqoursに入ることが答えではないはずなのだ。
「ルビィ、向こうでお姉ちゃんと一緒に歌ってわかったんだ。お姉ちゃん達は居なくなるんじゃないって、同じステージに立っていなくても、一緒にいるんだって。多分理亞ちゃんはその事に気づいていないんだと思う」
そう続けるルビィに「一緒に?」と反芻すると、ルビィはそう話す。きっとそれは、離れ離れでも同じ空で繋がっているというのと同じことなのだろう。同じ場所に居なくても、気持ちは無くならない。一緒にあり続けるのだと。
「居なくなってしまった聖良さんの分を、何とかしなきゃって。Saint Snowと同じものを作らなきゃって、お姉ちゃんと一緒に果たせなかったラブライブ優勝を実現しなきゃ、聖良さんに申し訳ないって…」
そう言って視線を下におろしてしまうルビィの手に、ダイヤが優しく手を重ねる。
「多分、理亞さんの気持ちは、ルビィが一番よくわかってると思いますわ。同じ三年生の姉を持つ者として」
そう優しく告げると、花丸と善子もその上に手を重ねる。
「ルビィちゃんの言う通りずら」
「同意!」
理亞の一番大きな夢を一つ叶えて、『離れ離れじゃない、ずっと一緒に居る』それを彼女に伝えるために。再びこの9人の少女は動き出した。
一方でその日の朝。
―姉様の大切な夢、私が壊してしまった―
最後のラブライブ地区予選での失敗は、今でも理亞の心に大きな影を落としていた。早朝まだ朝日も昇る前、日課であるランニングの最中、彼女は自責の念に苛まれていた。
新しいグループを作る。そう宣言したのに未だにその目処は立っていない。その事が彼女を焦らせていた。
そんな現実から逃げるように彼女は駆け出した。どこをどう走ったのか解らなくなるほど走った後、気がつけば港まで来ていた。
「あの人、どこかで…?」
その時、誰かが海を見ていた。だがその人物が誰だったか考えていると、その人物は手から何かを滑らせて海に落としてしまうとそのまま倒れ込む。
「ちょっ…」
先程までの悩みも忘れて、その人物へと思わず理亞は駆け寄る。
海を眺めながら博樹は、アグレイターを手に持っていた。もう光を宿していないそれを、悔し気に睨みつける。
だが博樹は胸元に強い痛みを感じて、思わず手に力が抜けアグレイターを海に落としてしまう。
『アグルの光、そこにはもうない』
不意に背後から聞こえたその声に、博樹は振り返るとそこには白いワンピースを着た。銀髪をまっすぐ腰まで伸ばした少女が立っていた。
「…誰だ?」
そう問いかけるも、その答えが返ってくる前に、博樹の意識は闇に沈んでいった。
「ここは…」
気がつけば博樹は見慣れぬ部屋で目が覚めた。毛布を掛けられており、傷の手当てをしてくれたようだった。
どうやら倒れた際に、何者かがここまで博樹を運んだらしい。幸い、スマホは羽織っていた上着のポケットから動かされていないらしく、痛む身体をこらえて何とか取り出す。
『怪獣攻撃を妨害した容疑で、G.U.A.R.D当局はヒロキミナトを指名手配しました。怪獣は地球の生き物です。しかし怪獣が人類の邪魔になるならば、排除されるべきなのです』
海外のニュースキャスターがそう読み上げるのを、博樹は睨みつけるようにして見つめていた。
そんな彼の胸元には包帯が巻かれ、右胸のあたりは血が滲んでおり。ゾンネルへの攻撃に巻き込まれた時の傷の深さを物語っており、その額には汗が浮かんでおり息も荒かった。
(何故だ…何故また出てくる…)
そう疑問に思う博樹だったが、やはり怪獣の声を聞く手段は未だ人類は持っていないのだ。
その時、突然空が暗くなった。博樹は窓の外へと視線を向けると、空は海中から見た水面の様に波が見えその手前をトビウオのような生命体が大量に飛行しているのが見える。
思わず息を呑むと、傷の痛みをこらえながら窓の方へと立ち上がり歩み寄るとその光景は消え、先程と同じ青空模様が広がっていた。
「まさか…」
またな何か良くないことが起きる。そんな予感を、博樹は感じていた。
「気がつきました?」
「アンタがオレをここまで運んだのか?」
不意に室内に入ってきた人の声に反応すると、咄嗟に画面を暗転させてそう問いかける。元々追われることも想定内だったが、相手がそれを知っているかどうかが最優先だ。
かなり失礼な物言いになってしまったが相手はどうやら歳のそう変わらない少女だが嫌な顔一つしないで首を横に振る。
「いえ、見つけたのは私の妹です」
「そうか…すまない、世話になったな」
どうやら日本では報道されていないらしい、ならば好都合だこのまま立ち去ろうとするが無理に日本まで移動した事で傷が悪化したのか思うように立てない。
「まだ寝ててください、必要なら病院へも…」
「いや、それはまずい…」
さすがにそうなればG.U.A.R.Dに感ずかれる。そう思って博樹はすかさず断る。
「私、鹿角聖良といいます、貴方は?」
「湊…博樹」
そう名乗った相手に、博樹は逡巡するが流石に無礼が過ぎるだろうと思って名を明かす。すると彼女は少し驚いた顔をすると、そのまま話を続ける。
「アグルだった方…ですよね?どうしてあんなところで倒れてたか、教えてもらえませんか?」
「…シャザックは街に出てきてないか?」
「いえ、あのゾグとの闘い以降は特に…」
答えず逆にそう問いかける博樹に、首を傾げつつもそう返す。その問いかけで、彼女も怪獣が再び現れていることを知っているのかすぐに納得したように頷く。
「姉さま、さっきの人は?」
そう言って理亞も何処かへ行っていたのか、そう言って部屋へと入ってくる。
「ありがとう、助かった」
「たまたま目の前で倒れたから…」
博樹は何となく、初対面の理亞という少女がどことなくルビィに似てくると感じそう素直に告げると、理亞はそう答えて視線を逸らす。
「怪我が治るまで、休んでいってください」
聖良は事情をこれ以上聞こうとはせず。ただそう告げると部屋を後にする。
そしてその時、聖良の元へ理亞の件で鞠莉に相談した事への答えが返ってきた。
その提案を聞いて、彼女の表情には明るい笑みが浮かんでいた。
「君たちの顔、どこかで見たことあると思った。正月に内浦に来てたスクールアイドルだろ?」
「そうだけど…」
お互い暫く気がつかなかったが、先に思い出した博樹がそう告げる。
「あの時も思ったが、何か悩んでるだろ?」
「…ッ!」
その言葉に、理亞は息を呑み表情に影が生じる。
「オレは君の悩みは解らないし、きっと解決してやることもできない」
そうはっきり言い切った博樹に、何か言いたげな表情を浮かべる理亞だったが博樹は「だがな」と遮って進める。
「同じ場所にいられなくても、同じ空の下で繋がってる。生きてるうちは…な」
「あなたにはそういう相手はいないの?」
「今はいる。絶対に守りたい人が、だからオレはアグルとして戦えた」
そう言って博樹はどこか遠くを眺める。やはり痛むのかまだ息が荒いが、それでも理亞は博樹の言葉に耳を傾ける。
「今のAoursだってそうだ。もうあの9人でメンバーで大会のステージには立てない。でも、気持ちは繋がってるんだ。君達の今までも、絶対に無くならない」
そう言って博樹は理亞に視線を戻す。すると理亞は立ち上がると、部屋を去ろうとする。
「ありがとう、なんか励まされた気がする」
「そうか」
「傷が痛むのに長々しゃべらせてごめんなさい、じゃあまた」
そう言って理亞が出ていくのを見て、優し気な表情を浮かべていた博樹はすぐに表情を険しくする。
「ぐ…偉そうなことを言うようになったな…オレも……」
傷を抑えながら痛みに顔を歪ませそう呟くのだった、きっと博樹にとって放っておけないものを彼女に感じたのだろう。
はい、というわけで唐突に新キャラ登場です。
この少女が、物語の鍵を握っています。そしてまたやんちゃして追われる博樹くんェ…
ここでセイスノとの絡みがあるのは元々本編で無かったので…
着実に終わりへと向かっていく物語、最後までお付き合い下さい。