XIGファイターチームからの援護、そして少女たちからの声援を受けたガイアとアグルの周囲を、突如七色の光の粒子が包み込んだ。
よろよろと立ち上がり、その光を不思議そうに見つめる2人のライフゲージへとその光は吸い込まれるように入っていく。
するとライフゲージが再び青い光を灯し、ガイアのアグルの身体を全快させる。その光の正体は、リナールのものだった。戦う力を持たない種族である彼らは、地球の力を再び遥と博樹に与えることで地球に迫りくる脅威を振り払う力を与えたのだ。
「きれい…」
そんな光の輝きを見て、思わず千歌はそう呟く。そしてその視線の先では、ガイアはアグルに頷くとガクゾムの前に立ち両腕を天に掲げ、その手の間に産まれた光を腕を振り下ろすことで全身に行き渡らせた。
「デヤッ!ウオォォオオオ!」
その様子を見て、みんなは目を輝かせる。どんな時も必ず皆を守りぬいてきてくれた、最強のガイアの誕生に。
「ガイアが変わるずら!」
再び光に包まれたガイアの身体は、一層マッシブなものとなり二の腕のあたりまで金に縁どられた黒いプロテクターが生まれ、更に全身がほぼ赤く染まり銀色の面積が減る。そして体の側面には銀色で縁どった青いラインが生まれることで、ガイアは自身の最強形態―スプリーム・ヴァージョンへと進化した。
「デヤッ!」
拳を強く握りしめ、ファイティングポーズをとったガイアはガクゾムへと駆け出す。するとガクゾムもガイアへと肉迫していくが、ガイアの渾身の回し蹴りを受けて転倒する。
「ラアッ!」
さらに立ち上がろうとするガクゾムの太ももを蹴り立ち上がる事すら妨害する。そしてガクゾムの頭を掴むと、そのまま力ずくで放り投げる。
強化体となったガクゾムに先程まで圧されていたが、リナールから更に光を与えられた結果。スプリームヴァージョンとなり強化された筋力を活かし、今度はガイアが一方的にガクゾムを圧していく。
「強い…」
初めて目の前で見るスプリーム・ヴァージョンの戦闘力に月も思わずそう呟く。しかもそれが、最近知り合った少年だというのが信じられなかった。Aqoursのみんなは慣れているのかもしれないが、それぐらい普段の遥とガイアとして戦う時の遥にはギャップがあった。
「デェリャアアアア!!」
投げ飛ばされ倒れ込んだガクゾムにガイアはさらに駆け寄ると首を掴んで無理やり立たせると、巴投げの要領で投げ飛ばし、さらに起き上がると駆け出してガクゾムを蹴り飛ばしさらに持ち上げると頭から落とす。
更にダメージに悶えるガクゾムを頭上に持ち上げると、ガイアは空高く投げ飛ばしガクゾムは盛大に地面に叩き付けられる。
ガクゾムも接近戦は不利だと悟ったのか、破壊光弾を放ちガイアを攻撃するもガイアは横に転がって回避し、起き上がりざまにフォトンエッジを放つ。
「ウォオオオッ!デリャアアアッ!!」
スプリーム・ヴァージョンへとヴァージョンアップを果たしたことで、V2時のおよそ二倍の威力で放たれたフォトンエッジだったが、それでもガクゾムは吸収して見せた。
そして増幅し、紫色の光線として跳ね返され再びガイアへとその一撃が迫りくる。
「ハアッ!」
だがその攻撃を、間に割って入ったアグルが粒子が渦を巻くバリア、ウルトラバリアーで弾く。そしてアグルは隣に来たガイアの方を向く。
『遥』
『博樹さん』
『行くぞ!』
『うん!』
それ以上の言葉は必要なかった。アグルの意図を読み取ったガイアは頷くと、それぞれが大技の発射態勢に入る。
「デヤッ!デリャアアア……」
ガイアは左腕を胸に右腕を天に掲げた後、両腕を大きく前後に回し両手の間にエネルギーを集中させて胸の前に合掌の形に合わせる。
「ハァァアアア……ハアッ!」
アグルは両腕をライフゲージの前に構えた後、両腕を水平に広げ右腕を天に掲げると両腕で体の前に大きく円を描くと光球を創り上げ腰だめに構える。
「デヤァッ!!」
「トワァッ!!」
ガイアは右手を下にスライドさせ、アグルは創り上げた光球を両掌で押し出す。
ガイアのフォトンストリームとアグルのフォトンスクリューの同時攻撃―フォトンスクエア―を受けたガクゾムは、それすら吸収しようとするが長時間におけるフォトンストリームの照射とフォトンスクリューの二発目に耐えきれず、その身を爆散させるのだった。
ガクゾムを倒したことによって、空を覆っていた暗雲もバイアクヘーも消滅し。空は青空を取り戻していた。
「やった!」
「ウルトラマンの勝利ですわ!」
青空の下で、ガイアとアグル。2人のウルトラマンは佇んでいた。そして自身たちへと駆け寄る少女たちに気がつくと、彼女らへと視線を落とす。
「ありがとう、ウルトラマン」
千歌がそう告げると、2人の巨人は無言で頷く。そして2人は、空を見上げるとそのまま青空へと飛び去って行った。
遥は、今朝ライブを行っていた庭園のあるビルがあった場所に佇んでいた。シルビアが、リナールと共に光を授けてくれなかったら今頃この瓦礫の中で息絶えていただろう。
あの時負った怪我は、光を授かった時に不思議な事に完治していた。それもきっと、この地球が起こしてくれた奇跡なのだろう。初めてウルトラマンガイアになったその日から、何度も自分はは地球そのものに救われてきたのだと。この時遥はそう思っていた。
「「遥(くん)!」」
そうしていると遠くから自分を呼ぶ声が聞こえたのでそちらを見やると、Aqoursのみんながこちらへと駆け寄ってくるのが見えた。
「みんな…」
みんなの無事な姿を見て、遥はなんとなく身体から力が抜けていくのを感じた。それでも、自分を心配してくれているみんなに笑顔を向ける。
「遥…ほんとに良かった」
「姉さん…ありがとう。僕を信じてくれて」
遥にそう泣きそうになりながら告げる梨子に、遥はそう返す。きっと彼女も、あのままでは遥が助からないであろうことには気がついていたであろうことは遥も予測していた。
「遥くん…」
「ごめんね花丸ちゃん、いつも心配かけて…でももう大丈夫、僕は生きてる。ここにいるよ」
泣きながら遥へと駆け寄ってきた花丸には、優しくそう告げた。ゾグと初めて戦った日の前日、善子に『花丸はきっと遥の事が好き』そう告げられてから。彼女は特に自分を大事に思ってくれている、心配してくれていることを自覚するようになった。
それなのに、ゾグに敗北した時もフェイトと戦った時も、そして今回も―いつも心配ばかりさせてしまった事を申し訳なく感じていた。
「うん……」
「みんなもありがとう。みんながいてくれたから、僕は戦えた。この街も、ここに住むみんなもあったかいから、僕はそんな場所を守りたい。って頑張れたんだ」
短くそう返す花丸に頷くと、今度は全員を見渡して遥はそう告げる。みんなの存在が、遥に戦う勇気を与えてくれたのだからと。
「ヒロはそうやって後ろから見てるのが好きなの?」
「勘弁してくれ…」
そんな彼女らの元に、博樹が歩み寄ってくるのに気がついた鞠莉がそう言って冷やかすと、本気で嫌そうな顔を博樹は見せてくれた。
「博樹さんも、ありがとうございます。アグルがいなかったらきっと…」
そう千歌が告げると、博樹は「あぁ」と素っ気なく応じる。
「もしかして照れてる?珍し」
そんな博樹の様子を、果南もそう言って茶化す。すると博樹は図星だったのか、すぐさま話題を変える。
「そういえば、果南達は何時までこっちにいるんだ?」
「千歌達6人のライブを見届けたら、そのまま発つよ」
今企画している、新しいAqoursを静真高校の関係者や街の人に観てもらうためのライブ。それを見届ければ、そのまま彼女達と言葉を交わすことなく。三年生はこの街を発つ、その事に千歌達在校生組は寂しそうな顔をする。
でもそれを口にすることは無かった。たとえもう9人でステージに立つことが無くとも、9人でやって来たことは決してなくならない。心はずっと繋がっていると解ったから。
「ヒロは?」
「オレもそうするかな…遠回りしたが、オレも自分の夢を追うさ」
聞き返されて博樹はどこか空を見ながらそう告げる。『海を知りたい』かつて果南にそう語った博樹は結局は、アグルとして地球を破滅から救う為に併走してきた。だが答えを得た今、再びかつて見た夢を追うことを決意したのだという。
「それじゃあ今度こそ、4人ともそれぞれの場所に向かうのですね」
そう言ってダイヤは笑った。
そうしていると不意に遥は倒れそうになり、目の前にいる花丸にもたれかかるような格好になってしまう。
「遥くん!?」
「ごめん花丸ちゃん、なんか…すごい眠いんだ……」
そう言う遥の声は先程までと比べるとか細いものだった。そしてそのまま彼は目を閉じてしまう。
「…おやすみなさい」
そんな遥を抱きとめると、花丸もそう穏やかな顔で告げるのだった。
そして翌日から、予定通り次のライブの準備を進めていった。浦の星の仲間たちと、ステージから何まで全て自分達だけで作り上げていくのだった。
遂にライブを前日に控えた今日。なんとかステージも完成にこぎつけそうだった。虹を模したアーチにバルーンアートで作ったAqoursの文字、全てここにいる皆で作り上げたものだ。
更には浦の星の生徒だけでなく、静真高等学校の生徒たちも今回のライブの準備を手伝ってくれた。
決め手となったのは、Saint Snowとのライブだった。あのライブの動画を、月がネットに載せてくれたおかげで沢山の生徒の目に留まり本気でAqoursを応援したいと思い協力を申し出てくれたのだ。
「よく考えてみたらさ、Aqoursのステージを自分達で作るの初めてじゃない?」
「そうね」
できあがったアーチを見て、不意にそう呟く曜に梨子もそう同意する。
「新しいスタートにふさわしいってことだね」
そう千歌も告げる。このステージが、自分達の新しいスタートとなる。今までのことは無くならない、ゼロをイチにした。そしてそのステージが、その先へと進む第一歩となるのだ。
「このステージで歌うんだね」
「楽しみね」
そう言葉を交わしていると、不意に花丸が目の前に飛び出してくる。
「緊張…しないずら……」
「ホントだ。なんで…?」
そう善子も同様に不思議そうな顔で告げる。
「きっと、ちょっぴりおおきくなったのかも」
「マルたちが?」
「うん!」
この前の静真での発表会の時から、そんなに時間は経っていないが色んなことがあった。その出来事が自分達を成長させてくれたのだと、ルビィは思った。
実際そうなのだ、緊張しない。というのは気が抜けている訳では無く、心に余裕ができたと言う事なのだから。
その日は、残りの準備は任せて欲しいという好意に甘えてAqoursは先に抜けて帰路についていた。そして練習しようかと悩んでいたところで果南達三年生と出会い、一緒に浦の星前まで来ていた。
沼津の方からバスで学校前まで来ると、バス停閉鎖の張り紙がされていた。元々浦の星の生徒しか利用しなかったのだから当然と言えば当然なのだがやはりもの寂しさを感じる。
夕日で赤く染まった空の下、バス停から学校までの坂を上っている時に不意に曜が告げた。
「なんか懐かしい気持ち」
「まだ卒業式から少ししか経ってないのに」
そんなに日が経った訳では無いのに、この場所に来るのがとても懐かしく感じる。「毎日通っていた道ですから」と道中ダイヤもそう言って笑っていたが、やはりこの気持ちは全員同じだった。
「少し来ないだけで、懐かしくなっちゃうのかもね」
そしてグラウンドが見えてくると、不思議と安心した。
「本当、色んなことがありましたわね」
「毎日に賑やかだったなぁ~」
学校へと続く道からグラウンドを見下ろしてダイヤと鞠莉がそう感慨深げに告げると。善子は「賑やかって言うよりうるさいかもだけど」と冷やかすと「花丸にうるさかったのは善子ちゃんもずら」と逆にからかわれてしまう。
「でも、楽しかった」
そうこう話をしていると、一同は校門の前に辿り着く。
「どうして学校だったの?」
ここに来ることを提案したのは三年生だったので、千歌がそう問いかける。
「どうだろ?呼ばれたのかな?」
「でも、ちゃんとあって安心したずら」
そうはぐらかすように答える果南に、花丸はそう本当にほっとしたように告げるとどっと笑いがこみ上げてきた。
「あっ…開いてる…」
そう最初に気がついたのは曜だった。彼女が向けている視線の先を見ると、校門が少しだけ開いていた。まるで、また中に入ってくることを望んでいるように。そして千歌がゆっくりとそこへと歩み寄っていった。
「大丈夫、無くならないよ」
そう校門に優しく手を触れた千歌はそう告げる。
「浦の星も、この校舎も。グラウンドも図書室も屋上も部室も。海も砂浜もバス停も太陽も船も空も山も街も…Aqoursも」
そう言って彼女は校門をそっと閉じる。
「帰ろう。全部ここにある、ここに残ってる。ゼロには絶対ならないんだよ」
振り返って千歌はそう笑顔で告げる。寂しい気持ちがない訳ではないだろう。それでも笑顔で前を向いていくことを決意したのだ。ここでの思い出を、笑顔の思い出にするために。
「わたしたちの中に残って、ずっとそばにいる。ずっと一緒に歩いて行く。全部わたしたちの一部なんだよ」
「だから」と彼女は円陣を組む時と同じように手を差し出す。
「全部始まりはゼロだった」
そう千歌が告げると、彼女の手に全員手を重ねた。
―始まって。一歩一歩前に進んで、積み上げて
―でも、気づくとゼロに戻っていて
―それでも、一つ一つ積み上げてきた
―何とかなる。きっと、何とかなるって信じて
―それでも現実は厳しくて
―一番叶えたい夢は、叶えられず
―また、ゼロに戻ったような気がしたけれど
―私達の心の中には、色んな宝物が生まれていて
―それは、絶対消えないものだから…!
―青い鳥が、あの虹を越えて飛べたんだから。わたしたちにも、きっとできるよ!
『皆さんこんにちは。わたしたちは浦の星…あっ、元浦の星学院スクールアイドル、Aqoursです。今のルビィ達、新生Aqoursを是非、見てください!』
遂に来たライブ当日、ライブ前のあいさつをを受け持ちたいとルビィは自分から志願した。これからは姉達の居ない中でやっていくのだから、いつまでも上級生に頼りっぱなしではいられないからと。
1人ステージの上で話す彼女の姿は、一年前では想像できない程堂々としたものだった。それは即ち、一年間での成長と彼女自身が自分に自信を持つことができるようになった証明なのだろう。
特に昔からルビィを知っている博樹たちは、そう強く感じた。
「もっと前で観ればいいのに」
駅前の特設ステージ前に集まっている観客から少し離れた遠い位置で一人見守る博樹に果南がそう告げる。
「いいんだよオレは、結局時間とれなくて最後まで居れないしな」
そうヒロは視線を逸らして告げるが、その表情は苦笑いを浮かべていた。
「ヒロって相変わらず冷たいのね」
「鞠莉さん、最後まで居られないのは私達もでしょう」
そう言って鞠莉がからかうのをダイヤが窘める。結局4人とも、6人が新たなスタートを切るのを見届けるとライブが終わるまで待たずにそれぞれの場所へと向かってしまうのだ。
ルビィが舞台袖に戻り、衣装の上に羽織っていた上着を脱ぐと他のメンバーは先に衣装でスタンバイしていた。
「さあ、精一杯歌おう!」
「みんなの為に!」
「思いを込めて!」
「響かせよう!」
「私達の歌を!」
「始まりの歌を!」
そう一人一人が告げると円を組み、それぞれの右手を重ねる。
「イチ!」
「ニ!」
「サン!」
「ヨン!」
「ゴ!」
「ロク!」
『ナナ!』
『ハチ!』
『キュウ!』
ここにはいないはずの3人の声も、この時6人は聞こえた気がした。そして千歌は息を吸うと大きな声を出す。
「イチからその先へ!その先の未来へ!Aqours―」
「「サンシャイン!!」」
―NEXT SPARKLING!!―
ゼロをイチにした少女たちの、そのイチの先を目指す始まりの歌。少女たちの物語はゼロをイチにして終りでは無く。その先へと進んでいくのだ。
輝きを目指した少女たちは、その輝きの先へと。一つ虹を越えたら、また次の虹を越えるために。
そしてこの先、少女たちがどう輝いて行くのかは誰も知らない。だってそれは、この先の未来のお話なのだから。
―数十年後―
内浦の砂浜を駆ける少女がいた。ふわりとした少しくせっ毛のある赤紫色の髪を肩まで伸ばした少女は、立ち止まると後を追ってくる少女を待っていた。
「待ってよ薫子(かおるこ)、なんでいっつもここに来るとそんな元気なわけ?」
「だってせーち?だよ?」
「あー何だっけ?えーと…」
そう笑顔で返す薫子と呼ばれた少女は、タレ目気味な綺麗な琥珀色の眼を釣り上げて頬を膨らませる。
「Aqoursだよ~ア・ク・ア。ボク絶対高校生になったらスクールアイドルやるんだ!」
そう言って今度は屈託のない笑みを浮かべる。
その空は青く、虹が架かっていた。
この星には人間が居て、怪獣がいる。そして他にもまだ知らないこの星の仲間が生きている。彼らの存在が再び『ウルトラマン』という光を呼び戻してくれた。
この星を破滅から救う力を持っているのは今の所人類だけだ。だからこそ、この星を破滅させないという意志を人類が持ち続け、その努力を辞めない限りこの世界は滅んだりしない。
そして、そんな人の心が見せる輝きもまた。ずっと消えずに残っていくのだろう。
これからも、ずっと―
まずは今まで読んでくださって本当にありがとうございました。
この8ヶ月間あっという間でした。初めて書く小説、初めての二次創作と初めて尽くしでしたが何とか無事完結に持ってこれて安心しております。
ガクゾムとの戦いの後も、根源的破滅招来体との戦いは続いたのか?遥はどうなったのか?そして最後のシーンの少女は何者なのか?それは皆様のご想像にお任せします。
それでは、また会う日まで
追記:最後に登場した少女と同名のキャラクターがラブライブに登場しますが全くの別人です、勘違いさせてしまった方大変申し訳ございません。本作のオリジナルキャラクターです。