先日、友人と話していて、そう言えば、前は翼とのペアは、クリスだったはずなのに、最近、そのポジションをマリアに取られてない?みたいな話から、こんなつばクリがみたい!との作者の妄想から始まった物語です。
最初は世界観の説明が少しあるので、多少退屈に思われる方は、アプリゲームのXDをプレイしていただければ、なんとなく設定はご理解いただけると思います。
あの時、先輩は私を信じてくれた。私は先輩を裏切って後ろから打ったのに。あのお節介な先輩は、最後まで私を信じて、絶望と罪に苛まれている私を救い出してくれた。
だから。今度は私が。
先輩を信じて、絶対にあそこから救い出すんだ。
◇
ギャラルホルンが起動してから、S.O.N.Gの活動は世界中だけでなく、平行世界にもその活動の幅を広げていた。平行世界で異変が起きた際に警報を鳴らすこの聖遺物のおかげで、色々な世界に行き、色々な人と出会った。
この世界では殉職した、ツヴァイウィングの片翼『天羽奏』や、マリアの妹でアガートラームの最初の適合者であるセレナ・カデンツァヴナ・イヴ、二課と協力をせずひだまりを得られず自暴自棄になっていた立花響。
それらの世界へこのギャラルホルンを使って渡り、救う手助けをしてきた。
そして今回も、その聖遺物がけたたましい警報を鳴らしている。それも、
なぜ、翼が動けないのか。それは以前にも他のメンバーが体験したことのある現象が、彼女を襲っているからである。
小日向未来という陽だまりを得られなかった世界線の立花響を救った、あの事件。あのとき、こちらの世界の響は悪夢にうなされ、事件解決まで目覚めることはなかった。
その現象と同じことが、現在翼にも起こっている。
夢にうなされ、眠れない日々が続いていたのだろう。ここ数日は、顔色が明らかに悪かった。それでも平気な顔をして、訓練を重ねていた。そしてつい2日前、戦闘訓練中に倒れたのだった。その日から、翼はS.O.N.Gの医務室のベッドの上で、うなされながら目を覚さない。
そして、翼が倒れた翌日、つまりは昨日。あの警報音が鳴り響いたのだ。
おそらく、原因は異世界の翼にある。以前の経験から、S.O.N.Gの誰もがそれを察していた。
◇
毎回並行世界へいくメンバーは司令である風鳴玄十郎が決める。その選択に間違いはなかったし、コチラ側の守備のためにも何名かが残るのは納得している。
だからこそ、今回のメンバー配置には私、雪音クリスも異論はなかった。
「今回の任務には、クリス君、マリア君、そして響君に行ってもらうことにする」
風鳴司令は私たち三人を抜擢した。
「私たちも翼さんを助けたいデース!」
「無理を言っちゃダメだよ、切ちゃん」
今回の任務、切歌と調、そして先日正式なS.O.N.Gのシンフォギア奏者となった小日向未来は、守備要員として並行世界には行かないことになっている。
と言うのも、今回のアラートがいつも以上に嫌な予感がするとエルフナインが警鐘を鳴らしたからだ。
「今回のアラートの原因は、おそらく翼さんに関することだと推測されます。奏者の皆さんの中でも、聖遺物への適合性が高い翼さんがあそこまで影響を受けている事件となると、ボクも警戒せざるを得ません」
エルフナインが諭すように、切歌を説得する。
「そして、平行世界の現象がこちら側に何らかの影響を及ぼすことは、今までのデータからも多くありました。切歌さんと調さんのユニゾンをこちら側に残すことが、最小で最大の効果を生むと、ボクは判断しました」
小日向未来は実戦経験の観点から、今回の任務は見送りと言うことなのだろう。
「ということだ。ここは我慢してくれ」
司令が2人の頭をポンポンと叩く。
―――――強すぎて2人の頭が首にのめり込んでいるのは、今は見なかったことにしよう。
「そうだぞ。ここから先は先輩たちの仕事だ。その代わり、こっちの世界を頼むな」
クリスはまだ不満そうな顔をしている後輩にそう諭し、小日向には視線だけで意思を伝える。小日向も納得をしたように頷きを返してきた。
そうだ。私だってもう先輩だ。後輩たちにいつまでも助けられている訳にはいかねぇ。それに
そうして、クリス、マリア、響の三人はギャラルホルンを潜った。
その先の世界でどんなことが待ち受けているとも知らずに。
◇
ギャラルホルンを抜けた先は、見慣れた公園だった。人影はない。遠くから聞こえてくる喧騒や、ここから見える町並みは、私たちの世界と何ら変わらないように思えた。
―――だが、違う点が一点だけあった。
「月が欠けてねぇ」
「ええ。この世界はルナアタックがなかった世界というわけね」
ルナアタック。フィーネが月を落とすことを目的に起こした事件。
S.O.N.Gのやつらは、私が責任を感じることはないと言うが、そんなことは無理な話だ。あれは私が望んで起動させ、望んであの結果を作ったんだ。例え騙されていたとしても、あの結果を望んだのは私だ。あれを封印するために、いろんな人たちを巻き込んじまった。
もしかしたら、この世界ではソロモンの杖さえも起動していないかもしれない。あんなものは、発見さえされていなければいいのに。そう心の中で祈った。
「とりあえず、この世界でギャラルホルンのアラートの原因を探りましょう。私たちの世界で何か起こる前に原因を突き止めないと。翼もいつまでもあの状態にはしておけないしね」
「そうですね!行こう、クリスちゃん!」
「お、おい!引っ張るな!」
ご飯と未来と人助けのことしか頭にない奴に、無理やり引っ張られている手を、しばらくは振りほどかずに見慣れたはずの道を歩く。
道を行き交う人たちは、何事もなくただ平凡な毎日を送っているように見える。ある人は友達と、ある人は恋人と、ある人は一人で。楽しそうに話たり、好きな音楽を聴きながら、並行世界からきた私たちには目もくれず、通り過ぎる。
「今のところ、ノイズが出てくる感じはないし、かと言って争い事が起こっている風でもない。本当にここがギャルラホルンが警鐘を鳴らしている世界なの?」
マリアは平和の代名詞みたいな町並みを見て呟いた。
それもそうだろう。マリアは常に平和とはかけ離れた場所にいた人間だ。こんな平和な町並み、見慣れているはずもない。
それは私も同じだが。
ふと昔の記憶がよぎりそうになった瞬間、そんな平和とはかけ離れた、けたたましいサイレンが街中に響き渡った。
「何!?」
マリアはそう叫びながらも、周りを見渡し、状況を確認している。
平和ボケしたあいつも、いつの間にやら顔を引き締めている。流石は、三度の飯より、人助けが好きなお人好しだ。
私も気持ちを切り替え、周囲を警戒する。いつも首にかけているギアが、いつも通りにあるかを確認する。この世界に来るためには、ギアを纏わなければならないのだから、無いはずはないのだが、少しだけ、不安になった。
なんせ、あの[[rb:先輩 > 翼]]に関係する世界だ。きっと、強敵がいるのだろう。
ただ、私は、あの人に返さなきゃならねぇ恩がある。利子付きで返してやらぁ!!
そう自分を鼓舞して、3人背中合わせで周囲を警戒する。
すると、いつもの見慣れた『あいつ』が黒い煙と共に現れた。
「カルマ、ノイズ・・・」
通常のノイズとは違い、自分と引き換えに物体を炭素化したりしない。アルカノイズとも違うそれは、絶唱を束ねるS2CAでも倒せるかどうか分からない相手である。なおかつ、イグナイトは、カルマノイズによって、暴走を加速させるが故に、使うことができない。
「ギアを纏え!!
サイレンが鳴ったとはいえ、まだ避難できてない人もたくさんいる。むしろ、カルマノイズは人の多い、フォニックゲインの集まるところに出現する確率が高い。
その方が、たくさんの人を殺せる。
流石は、古代の殺戮兵器の親玉ってわけだ。
「っは!!そうだね、クリスちゃん!!」
「カルマノイズが他の雑魚ノイズを呼び寄せる前に、叩くわよ!!」
マリアの声を合図に、それぞれが聖詠を唱える。
立花響はガングニールを。
マリア・カデンツァヴナ・イヴはアガートラームを。
それぞれが手にした力を、歌と共に纏った。繋ぎ、束ねて、守る力を。
相手に時間など、与えてやる義理はない。速攻で全力技を全員で叩き込む。それは今までの戦いで学んで、お互いの摺り合わせはできている。それぞれがアームドギアを展開し、目の前の黒い敵に叩き込もうとしたとき、カルマノイズの頭の部分が突如爆発した。
「何だぁ!?」
アームドギアの展開はそのままに、状況の把握を行う。
爆発の勢いは凄まじいものがあったが、煙が消えると、そこには傷一つ負っていない黒いノイズが変わらず立ち塞がっていた。
そんなことは分かっていると言わんばかりに、無数の弾丸は間髪を入れず飛翔し続け、カルマノイズに依然として着弾し続けている。
よくよく見るとそれは、対戦車ライフルから打ち出されるような、大きめの弾丸らしい。しかも、少しはノイズの動きを止めているところを見ると、どうも普通の弾丸ではなさそうだ。
「カルマノイズの動きが止まっている今のうちに!!」
「あ、ああ」
3人が息の揃ったタイミングで絶唱を奏でる。それは、以前は命と引き換えの切り札として、歌っていた歌。でも今は、そんな捨身の歌じゃない。
「「「Gatrandis babel ziggurat edenal」」」
響が束ね、マリアが調律するS2CAは絶唱を束ね、その反動を抑えるこの技は、現状唯一カルマノイズを打倒できる手段だ。
もしくは、心象変化によってギアをカルマノイズ特効型へ変化させるしかないが、それができない今は、このS2CAが最有効攻撃となる。
「セット。ハーモニクス!!」
束ねられた絶唱は、虹色の光をまとって、カルマノイズに激突した。その勢いから、凄まじい爆風が発生する。カルマノイズはその煙と共に跡形もなく、消え去っていた。
「なんとか、倒せたわね」
「ああ…だけど、あれは一体誰の仕業だったんだ?」
弾丸が飛んできた方向へ目を凝らしてみても、人影はどこにも見当たらない。かと言って、ここで油を売っていても、何も始まらないということも、皆分かっていることだった。
「仕方ねぇ、その辺調べるぞ。どちらにせよ、この世界の防衛組織とは嫌でも接点を持たなきゃならないんだからな」
「そうね、情報の共有をしておいた方が、何かと動きやすいし、この世界の状況も教えてもらわないと」
「じゃあ、別れて調べようか!15分後にまたここに集合で!」
「おう」「ええ」
◇
大通りから南へ少し行ったところにある小さな路地に入った。弾丸が飛んできたのも、南側だ。
銃を撃っていた奴は確実にカルマノイズの頭だけを狙っていた。狙撃手の手腕もなかなかだが、ノイズが見えているということは、もちろん私たちのことも認識しているはずだろう。
こちらの世界にシンフォギアシステムがないとすれば、カルマノイズと対抗できる私たちは、敵と認識されていてもおかしくはない。敵と判断するか、味方と判断するか、どちらにせよ、あちら側も私たちの正体は知りたいはずだ。
そんなことを考えながら歩いていると、路地に置かれたゴミ箱がふと目に入った。
そういえば、
そんな回想が頭をふとよぎったせいで、一瞬だけ警戒が薄れた。
「貴様達、何者だ。あの黒いノイズと、炭化を恐れず戦う貴様らは、我ら人間の敵か?」
ピタリと冷たい金属が、首の頸動脈に触れた。
問いかける声には、暖かさや慈悲はない。
あぁ、しかし。この声には恐怖を感じない。否、感じられるはずがない。
だって、この声は、紛れもなく「先輩」なのだから。
さぁ、この先輩とクリスが仲良くなることはあるんでしょうか?
まぁ、作者がクリス推しなので、クリスに優しい世界を作りたいと思っています。
次回はなるべく早めに、今週中には投稿したいと思いますので、もうしばらく、お待ちください。
喰霊はね、気が向いたら、書くよ。