余剰の力が示すもの    作:四季乃

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さて、今回も重い話となります。というか、このシリーズに明るい、楽しい描写はないかもしれません。多分。

内容としては、並行世界の翼の過去と、どうしてああなったのか、がメインとなります。まぁ、重いですよね。
同時に、クリス自身の葛藤も相まってきますので、ストーリーとしては、もう、最高に重いですw

でも、このストーリーを書く上で必要な部分ですし、何より、翼さんは自分より戦闘能力が高い人と会った時どういう反応をするだろう、と想像しながら、書きました。

前置きが長くなりましたが、楽しんでいただけたら、幸いです。


3話 しがらみと覚悟

side:翼

 

私は奏を守れなかった。

だから私は、一人でも戦うと決めたのだ。

 

 

同じ実験で、パワードスーツを着装し、奏は槍の、私は刀のマイクロチップを搭載したノイズ対抗武器で、あの黒いノイズと戦うべく、切磋琢磨し合っていた。

 

櫻井女史が作成したこのパワードスーツは、特定の基準をクリアしないと、着装することができない。その基準をクリアしたのが、防人として訓練を受け続けていた風鳴家の娘と、考古学の研究中にノイズに両親を殺された娘である、私たちだった。

 

櫻井女史によれば、精神的なリンクがこのパワードスーツには関係しているらしい。

 

私は防人としての使命感が、奏はノイズへの復讐心が、パワードスーツと武器が使える理由なのかもしれない。

 

訓練は厳しかった。それこそ、今まで風鳴家でやってきた物とは比べものにならないくらいに。

でも、近くには奏がいてくれた。共に助け合い、励まし合う仲間がいるだけで、こんなにも、頑張れるのかと驚いた。

 

次第に奏は、私の生きる意味になっていった。

 

だが・・・・

 

3年前のあの日、黒いノイズとの戦闘中に、それは起こった。

 

刀のマイクロチップのメンテナンス日だった。私はすぐに出動できず、その間を奏が繋いでくれていたのだ。

 

メンテナンスを急いだが、そんな急ごしらえの武器だ。多少の無理がたたったのだろう。

 

黒いノイズの一撃を防ごうと、防御姿勢をとった瞬間

 

ーーー刀が砕けた。

 

パワードスーツは、脚力と腕力を向上させてくれはするが、ノイズの炭素化を防いでくれるわけではない。

 

ノイズの攻撃は砕けた刀をすり抜けて、私を炭素化するべく、刀を持っていた腕を捉えるはずだった。

 

しかし、一向に腕にはなんの変化もない。ノイズの触手が触れるでもなく、腕が炭素化するでもなく。

 

気になって目を開けた先には、

 

「奏!!!」

 

私を捉えるはずだったノイズの触手が、奏の槍と腕と足を絡めとっている姿があった。

 

「っち・・・やっぱりこのパワードスーツじゃ、炭素化は防げないみたいだな」

 

奏が持っていたマイクロチップが搭載された槍を、奏の手から引き剥がし、ノイズ目掛けて一気に突き出す。瞬間、位相差障壁をマイクロチップが解析し、ノイズの体を貫いた。

 

貫かれた黒い侵略者は、炭素へと消えたが、それは、腕の中にいる奏も同じであった。

 

「奏!!なんで!!!私を庇ったりなんてしなければ・・・」

 

腕と足から徐々に炭素化が始まる。普通の人間よりも炭素化がゆっくりなのは、身体強化がなされている結果だろうか。

 

「ねぇ、置いていかないで!!!私を一人にしないで!!生きる意味をなくさないで!!!」

 

炭素化した皮膚が徐々に空気中を舞う。それは先ほどまで、「奏」であったもの。失われつつある「奏」自身。

 

「生きる意味なら、山程あるだろ・・・ノイズを殺せ。一体残らず」

 

今にも消えかけそうな手で、私の頬をぬぐいながら奏は言葉を紡ぐ。

 

「でもな、それ以上に、お前に、生きるのを・・・諦め・・・・」

 

言葉を言い切る前に、奏の手足が炭素化され、消し飛んだ。

 

「嫌!!!いやぁぁあああ!!!!」

 

瞬間、「奏」であった物は、空気中に炭素の粉となって消えた。

 

この時、風鳴翼の生きる目的は、

「天羽奏のため」ではなく、

 

「奏を殺したノイズ全てを駆逐するため」へと切り替わった。

 

 

黒いノイズを確実に倒すためには、武器とスーツの改良が最優先事項であった。

 

まずは、位相差障壁の解析速度の向上。そして、パワードスーツの炭素化防止。

 

これを可能にしているのが、位相差障壁の解析と炭素化の解析を同時にこなす、櫻井了子の天才的な処理能力である。数人のオペレーターが補助をしているとはいえ、そのほとんどを櫻井女史がになっている。

 

戦闘員をおいそれと増やせないのは、これが理由だ。櫻井女史が同時に処理できる人数など、翼一人で手一杯だ。現状であっても、厳しい。

 

そのため、翼が会敵する前に、なんとか弱体化させようという考えのもと、考案されたのが、マイクロチップを搭載した弾丸による一斉射撃だ。

 

こちらは、櫻井女史による解析は行われない代わりに、一定の処理システムが搭載されており、決定打とは行かなくとも、当初の目的は十分に果たしている。

 

これが現状の私たちの戦略だ。ギリギリといえばそうだが、これで何度もノイズを退いてきている。これ以外の対処法はないのだ。

 

やるしかない。奏のためにも。

 

そう思っていた矢先だった。ーーーーーーあの3人組が現れたのは。

 

 

side:クリス

 

マリアが戻ってくるまで、バカと私と、この世界の先輩の3人でノイズ討伐を行わなければならないのだが、正直、上手くいっているとはお世辞にも言えない状況だった。

 

私たちが前に出れば、私たちなどお構いなしで、刀を振り下ろしてくるし、かと言って援護射撃をしようものなら、弾丸を避けようともせず、目の前のノイズへと斬りかかる。

 

まるで、羅刹だ。目の前のノイズしか見えていない。私たちは、まるで最初からそこにいないような振る舞いで、先輩はノイズへと切かかっている。

 

先輩が先鋒を担ってくれるというのであれば、私とバカはその戦略に乗じるしかなかった。私が、初動の一斉射撃に加わり、先輩とバカで最後の止めをカルマノイズへと食らわせる。

 

流石、櫻井了子が同時演算をしているおかげか、今まで以上にカルマノイズへの攻撃が通る。

 

「あの女、こっちの世界でもバケモンかよ・・・」

 

フィーネとしての記憶の方が大多数を占める私としては、心底信頼している訳ではないが、今は彼女のバックアップなしでは、この戦果はあげられなかっただろう。

 

「翼さん!お疲れ様でした!どうです?この後、あったかいものでも・・・」

 

「すまないが、用事がある。協力、感謝する」

 

目も合わせずにそういうと、翼は自身のバイクに乗り、どこかへ走り去ってしまう。

 

「お前でも、あの先輩と手を繋ぐのは難しいのか?」

 

冗談まじりにそんなことをぼやいてしまう。

 

「そうだね・・・だとしても!私は、手を繋ぐことを、諦めないよ!!」

 

とびっきりの笑顔でそう言い放つバカが、今はすごく眩しい。私もそんなことを自信を持って言いたい。

 

だけどそれは、今の私には、すごく勇気のいることで。

 

「あぁ。そうだな」

 

こいつに同調することしかできなかった。

 

 

Side:翼

 

彼女たちが纏っているのは「シンフォギア」という、聖遺物のカケラらしい。歌の力で増幅させた力で聖遺物を起動させ、聖遺物を使って戦う。

 

ーーー歌、か。

 

奏は歌うことが好きで、よく二人で歌っていた。

今まで以上に戦闘に余裕が出来たおかげか、久しぶりに奏のことを思い出した。一緒に黒いノイズと戦う中でも、雑談くらいは楽しく交わしていたあの頃を。

 

「そうだ、この戦いが終わったら、二人で歌手になるのもいいよな!」

 

そんな話は夢物語だと思っていたけど、いつか叶ったらいいな。と心の奥で思っていた。

 

ーーーでも、それももう叶わない。あのノイズたちを殲滅し、奏の仇をうつ。

その後は・・・分からない。今はそんなこと、考えられない。

 

あの3人組が来てから、戦闘はだいぶ楽になった。でも、それではダメだ。これは、私が決めた目標。誰にも邪魔はさせない。私一人で成し遂げなければならないこと。

 

協力して黒いノイズを倒そう。その方が効率だっていい。

ーーーーあの白く長い髪をした彼女は言った。私だってそう思う。

 

だが、最近の戦闘はどうだ?

 

私よりも遥かに戦闘力がある彼女たち。正直、私がいなくても、銃の援護射撃がなくても、彼女たちは、十分に戦える。

 

私よりも、効率よく、安全に、迅速に。

 

もし、あの力があれば、「奏」だって死なずに済んだのではないか?私に、あの力があれば、奏を助けれたのではないか?

 

あの夢だって・・・・叶えれられたのか?

 

 

Side:クリス

 

マリアが司令からシンフォギアシステムの情報提供の許可を取ってきたことにより、櫻井了子による提供データの解析と、新たなデータ収集作業という名目で、シミュレーターを使用した戦闘訓練を実施することになった。

 

「殺すつもりで、かかってきてもらって結構」

 

中段に刀を構えた先輩は、感情もなく、そう私に声を放った。

 

手を取り合って、一緒に戦おう。

 

それは、何度も、先輩へ打診した言葉だ。だが、それは一向に受け入れられることはなく、実戦においても、私たちシンフォギア奏者と、先輩たち2課部隊はそれぞれに、戦闘を行っていた。

 

私たちが、戦闘力として劣っているというわけではない。むしろその逆だ。私たちが、先輩達に優ってしまっているが故に、先輩もおいそれと、私たちと手を繋ぐことができないのだろう。

 

だから私は、この戦闘訓練に志願した。近距離戦闘型の先輩の相手なら、同じ剣で戦うタイプのマリアが適任だろう。

だが、私は、先輩に受けた恩を返す義理がある。

 

先輩のためになるのなら、私は、喜んで、その身を投げ出そう。

 

「弾丸食らって、吠え面かくなよな!!」

 

煽り文句で嫌われたっていい。

 

「笑止。戯言は、勝ってから言うものだ」

 

「じゃあ、初めてー」

 

スピーカーから櫻井了子の声が響いた。

 

ーーーーー瞬間、先輩の体は目の前にあり、刀は振り下ろされる直前だった。

 

世界が違っても、戦闘能力がバケモンなのは、変わらねぇな、この人は。

 

だが、私は腐ってもシンフォギア奏者。そんな移動速度についていけない訳はない。難なく右手に持ったホルスター銃で刀を受け流しながら、振り向きざまに左手の銃口から弾丸を側頭部目掛けて撃ち抜いた。

 

弾丸は、訓練用のゴム弾だ。死にはしないが、直撃すれば、脳震盪は必須だろう。

 

だが、先輩は流された刀を切り返し、左手の銃を上に弾いて見せた。

 

虚しく空を舞った弾丸が、部屋の天井にぶつかり、勢いを無くして、床へと落下する。

 

反射神経も、生身の人間とは思えないスピードだ。まるで、私の動きを予測していたかのように。

 

ーーーそこからは、ただただ、お互いの攻防が繰り返された。

 

あまり広くないシミュレーター室だ。私は得意の遠距離広範囲攻撃を繰り出すことは出来なかったものの、小型の銃を用いて、接近戦闘を繰り返した。

 

対して、先輩は、刀のみならず、体術を入り混ぜてくるあたりが、面倒だ。ノイズ相手には、使用しないであろうそれは、確実に人の動きを鎮圧するために習得されたように感じられた。

 

ーーーまさか、イグナイトまで引出されるとは思いもしなかった・・・

 

様々なシチュエーションを想定し、対人、対ノイズ戦闘を繰り返した訓練が終了する頃には、3時間は優に経過していた。

 

 

「はーい、お疲れ様ー!!おかげでいいデータが取れたわー。じゃあ、二人でお風呂入ってらっしゃい」

 

言われるがままに、タオルと着替え一式を櫻井了子から手渡され、私と先輩はシミュレーター室を追い出された。

 

なるほど、確かに汗まみれだ。

測定用にと、着替えさせられた服が、汗で湿っているのを確認している私を置いて、先輩はスタスタと歩き出していた。

 

「おい!ちょっと待てよ!」

 

もう少し、優しい言葉で呼び止められはしないものか。

そう思うが、私には生憎そんな語彙は出てこない。

 

「何だ?」

 

「せっかくだし、一緒に行こうぜ!少し、話したいこともあるしな!」

 

先輩は、少しだけ間を開けて、「好きにしなさい」と言って、また歩き出した。

 

さっきの戦闘で、少しだけ関係性が変わったのかもしれない。そう思った。

 

「・・・あんたはさ、一人で戦ってて、辛くないのかよ」

 

「先輩」そう言いかけて、やめた。この世界の先輩は、私の先輩ではないのだから。

先輩の後ろを歩きながら、背中に向かって声を掛ける。

 

「これが私の使命だ。風鳴家の者として、この国を護る。それ以外の感情はない」

 

振り向かず、歩みを止めずに、先輩は呟く。

 

あぁ、この人は、世界が変わっても「風鳴」の家からは逃れられないのか。「防人」という使命からは、解放されないのか。

 

私の知っている先輩は、そのしがらみ故に苦しんだ。否、今も苦しんでいるのだろう。でもそれは、私自信にはどうしようも出来ないことで。

 

「私たちがそれを手伝うのは、そんなに気に食わないのかよ」

 

手伝いたい。助けたい。そう思っているのに、素直に言葉が出てこない。だから、いつもこんなふうにぶっきら棒になってしまう。

 

「これは、私が決めたこと。あの黒いノイズを倒すのは、私の使命。誰にも邪魔はさせない」

 

「邪魔だと!?」

 

そして、私はとても短気だ。

 

「えぇ。あなた達の力は、確かに強力だし、一緒に戦えば、あの黒いノイズだって、全滅させられるかもしれない。あなた達の目的も、早々に達成できるかもしれない」

 

私の怒りなど、微塵も気にしていない先輩は、振り返り、私を直視し、言葉を続ける。

 

「約束を果たし切るまで、私は私でやらせてもらう」

 

「約束だと?」

 

「それは、あなたに話すことではないわ」

 

そういうと、再び踵を返し、先輩は歩き出してしまった。

 

私はというと、それ以上先輩の心に踏み込む勇気もなく、かと言って先輩を突き放す度胸もなくて、私はそこに立ち尽くしてしまった。

 

 

 





というわけで、「奏」さんは、やはり翼の過去を書く上では外せないキーパーソンだろうということで、登場していただきました。

そして、多分、翼さん、影で絶対努力する人だから、シンフォギア奏者に対して、劣等感もすごいだろうなぁ・・・と。それでも身体強化だけで、イグナイトまで引っ張り出す。お化けかな?と自分でも書いてて思います。でも多分、それくらい訓練するだろうなぁ、と思って、こんな感じになりました。

さて、次回は私が一番書きたかったシーン。私が一番聞きたかったセリフを皆さんにお届けします。楽しみにお待ちください。

感想や、ご意見(優しくね?)は絶賛募集中ですので、気が向いた方は、よろしくお願いします。

それではまた次回、お会いしましょう!
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