余剰の力が示すもの    作:四季乃

4 / 6
さて、今回の話からが、作者が書きたかった内容になります。言ってしまえば、ここまでが序章です。
正確には後半からが、メインストーリーとなりますが、是非楽しんでいただければと思います。

書いてて、非常に楽しかったです。歪んでるなぁ、自分w

あと、メインのあらすじを少しだけ変更しています。作者が書きたい内容を、先に読者様にお伝えした方が良いと思いましたので。ここでご報告をさせていただきます。


4話 歪み

Side:???

 

「報告は聞いた。そのフォニックゲインとやらが、聖遺物を起動させることができるとはな。この世界でも、それは再現可能か?」

 

暗闇の中で、パソコンから発せられる光だけが、ぼんやりと部屋の中を照らしている。

 

「もちろん。私を誰だと思っている?提供されたデータと、今までの実戦データさえあれば、再現することは、簡単な話だ」

 

パソコンのスピーカーから聞こえてくる声は、変声機でも使っているのか、それともただ聴き取りづらいだけなのか、男なのか女なのか判別できない声色であった。

 

「ふむ。では早速、起動してもらいたい聖遺物がある」

 

「ほぅ、準備がいいな。こうなることが予想できていたか?」

 

楽しそうに、通信相手は喉を鳴らしながら笑う。

 

「無論だ。この国を守るためなら、どんな手でも尽くすのが我々だからな」

 

「で、起動させて欲しい聖遺物とは、なんだ?」

 

「『ソロモンの杖』だ。バビロニアの宝物庫からノイズを引き出すそれは、ノイズを意のままに操れるという」

 

「目には目を、歯に歯を、ノイズにはノイズを・・・という訳か」

 

「そういうことだ。」

 

「起動の歌姫はどうする?」

 

「無論、翼を使え。あれは、この国を守るためにいるのだからな」

 

通信が終わり、暗くなったパソコンの画面の前で、ニヤリと笑う顔には、

 

ーーーーー充分すぎるほどのヒゲが蓄えられていた。

 

 

side:クリス

 

シミュレーターでのデータ分析が終了した後、櫻井了子から受けた報告は、少し残念なものだった。

 

「結論から言うと、私たちの世界では、『フォニックゲイン』というものを検出することは出来なかったわ」

 

エルフナインのレポートを熟読し、かつそれに倣った実戦訓練であったはずだが、世界が違うと、物質の検出方法も違うらしい。

 

フォニックゲインを利用し、聖遺物を起動させることは不可能であった。と言う結論が櫻井技師から報告された訳だが、その代わりの朗報が続けて報告された。

 

「シンフォギアシステムの応用で、翼ちゃんの位相差障壁解析チップと、パワードスーツの改良に成功しました!!!」

 

その発表に、聞いていた司令や私たちシンフォギア奏者、そして翼までもがその報告に、期待に胸を膨らませた。

 

「フォニックゲインは検出できなかったけど、歌からエネルギー派を検出することに成功したので、それを翼ちゃんの、位相差障とパワードスーツの解析ツールへ変換できるようになりましたー!」

 

「それは!!つまり、つまるところ!・・・・・どゆこと?」

 

うんうん、と先ほどまで説明を聞いていた、立花響が、櫻井技師へ疑問を投げる。

 

大丈夫、多分みんな同じことを思っていたはずだ。

 

「私のバックアップほぼ無しに、しかも前より戦闘が楽になります!!」

 

本日2回目の感嘆が、司令室に訪れた。おーという歓声が広がる。

 

「でも、そのためには、ちょと刀とパワードスーツの調整が必要なので、翼ちゃんは、しばらく戦闘禁止ね」

 

「なっ!!櫻井女史!それは」

 

調整が必要なことは、先ほどの報告からも予想はついていただろうが、戦闘禁止まで言い渡させれるとは思っていなかったのだろう。それには、先輩も反対の意思を示す。

 

だが、予備の武器が用意されていないことに加えて、今は並行世界の私たちが戦闘に参加できる。急いで先輩を戦線に引きずり出さなくてもいい状況、という訳だ。

 

この間の会話から、先輩がカルマノイズ戦に対して、のっぴきならない理由があるのは、なんとなく察している。ただ、ギャラルホルンの警報の原因を無くした後、この世界で戦っていかなければならないのは、他ならないこの世界の「風鳴翼」だ。

 

だとすれば私たちは、この世界の先輩が強くなるために、協力をしなきゃならないだろう。私たちは、ずっとこの世界にいて、ノイズと戦っていく訳には、いかないのだから。

 

「あんたが戦えるようになるまで、私たちがその役目、担えばいいだけだろ」

 

櫻井了子を睨み付けるように視線を送る先輩を視界に入れながら、私は司令へ視線を飛ばす。

お節介だとは分かっているが、司令は私たちがそう言い出すことを半ば、期待していたのかもしれない。

 

「すまないな。君たちには頼ってばかりだ」

 

司令が申し訳なさそうに、頭を下げた。

 

「翼がパワーアップするなら、私たちにとっても、この世界にとっても、プラスのはずよ。気にしないで」

 

「そうですね!!今以上に翼さんが強くなったら、私たちも勝てないですよ!!」

 

マリアは努めて冷静に、立花が笑いながら明るく言う。

 

だが、先輩の顔は依然として硬いままだった。

 

「私は・・・!」

 

やはり納得のいかない先輩は、司令に抗議を試みるが、頷き一つで、止められる。

 

「翼には、後で今後について話し合おう。では、今日はこれで解散とする。ノイズが発生した場合には、シンフォギア奏者達、頼むぞ!」

 

「ああ」「ええ」「分かりました!!!」

 

こうして3日間、先輩は戦場に姿を見せることはなかった。

 

 

ビービービー!!!!!

 

2課全体に、ノイズの出現警報が鳴り響く。

 

ここに来てから、もう何度も聞いた警報音だ。櫻井了子が多くても月1度ペースと言っていたが、まだここに来て1週間も立っていないというのに、この音を聞くのはこれで5度目になる。ほぼ、1日に1回ペースだ。

 

いつものオペレーター達にお礼をいいながら、移送用のヘリに乗り込み、現場へと向かう。

 

その途中 「あったかい物、用意して待っていますね」「よろしく」

なんてやりとりを交わすくらいには、スタッフ人ともだいぶ打ち解けてしまった。

 

程なくして、ヘリは目標地点へと到着し、奏者を下ろした後は帰投場所へと進路を変えた。ヘリの無事を祈りながら、今回の(やっこ)さんへと目を向ける。少し遠いが、何とか視認できる位置だ。

 

見れば、相対する今回の敵は、ブドウノイズ型のカルマノイズらしい。頭のブドウを飛ばして攻撃してくるタイプのやつだ。投げて減ったブドウは、どういう理屈か、気がつくと房へと新たに供給されている。

 

遠距離戦闘型に分類するべきだろうか。

 

「なんか、カルマノイズの出現ペース上がってないか?」

 

「ええ。こう毎日S2CAやっていたんじゃ、こっちの身が持たないわよ」

 

「でも、翼さんがいない今、目の前にいるカルマノイズを倒せるのは、私たちだけです!」

 

それぞれがシンフォギアに身を包み、それぞれのアームドギアを構え、眼前のカルマノイズを傾注しながら、少しだけ愚痴をこぼす。

 

それくらいは許されるだろう。

 

今回は、翼が出撃しないこともあり、2課の銃撃部隊は出撃しない。奏者達の単独出撃となる。

私たちの連携の邪魔になるというのもあるが、実のところ、使わなくても良い資源は使いたくない、というのが2課の本音だろう。

 

どの世界においても、予算と実績のすり合わせをしなければならないのは、変わらないらしい。

 

司令おっさんの顔を思い出して、あの人もそれなりに苦労人のようだと、心の中で労いの言葉を送らないではいられない。

 

「嘆いていても仕方ねぇ!一気に蹴散らすぞ!!」

 

今までの考えを振り払うように、一度息を吐いてから、戦闘開始の合図を二人へと送る。

 

「ええ!!」「うん!」

 

息の揃った返事が返ってくる。幾度も死線をくぐり抜けてきた仲間達だ。その返事には、少しのゆらぎもない。

 

ーーーー仲間、か。

 

私にはもったいないくらいの、出来すぎた奴らだ。私の誕生日を騒がしく祝って、一緒に勉強して、息のあった戦闘をして、間違ったら正しい道に引き戻してくれる。

 

いつもは、そんなこと絶対に口には出せないけど、大切で、掛け替えのない、私の仲間達。

 

この世界の先輩に、そんな存在はいるのだろうか。

ふとそんなことを考える。

 

私には、手を差し伸べてくれた、立花響がいた。

間違った道をゆけば、引きずり戻してくれた風鳴翼がいた。

 

そんな人が、彼女にもいてくれたらいい。そう思っている。

 

「クリス!気を抜いていると、死ぬわよ!!」

 

瞬間、ノイズのブドウが、顔の左側をかすめて後方へと着弾した。

 

「分かってる」

 

先輩の必死な姿を見てから、初のカルマノイズ戦だからだろうか。今日は考え事は多い。

 

とはいえ、もうこれ以上の考え事は無しだ。

 

思考を頭の隅に追いやり、スナイパーモードのヘッドギア越しにブドウ型カルマノイズを覗く。

 

遠距離攻撃がし易いように、少しだけ遠くのポイントに待機していたはずなのに、ここまでノイズの攻撃が届くというなら、私は少しカルマノイズの評価を改めなければならない。

 

「ノイズ、またブドウ撒き散らすよ!!」

 

耳に装着した無線から、あのバカの声が鳴り響く。私は依然として冷静に、今まさに解き放たれたブドウの一つ一つ目掛けで、弾丸を発射した。

 

方々へと飛び散り、被害を撒き散らすであろう、それらは、地上から約3mの位置で正確に撃ち抜かれ、爆散した。

 

「すごい!!乱れ打ちだ!!」

 

「バカ!全部狙い撃ってんだ!!!!」

 

いつか、どこかで交わした会話だな、と心の中で思いながら、ブドウが付いていない房だけの葡萄型カルマノイズへと照準を合わせる。

 

響はここ連日のS2CAの使用により、今日の戦闘は温存。最後の切り札時にのみ戦闘に参加することになっている。マリアはその警護と、ノイズのタゲ取り。アタッカーは遠距離攻撃の私だ。

 

イチイバルのスナイパーモードで照準を定めていく。風や引力、対象の動きを予測し、確実に撃ちぬける瞬間を待つ。

 

「早くしないと、ブドウが復活しちゃう!!」

 

ーーーー焦るな。焦らせるな。

 

イチイバルの補助により、調整を行っていた照準がーーー合わさる。

 

ロックオン!!

 

期を逃さずに、迷わず引き金を引き切る。弾丸は寸分違わぬ着弾ポイントに命中し、カルマノイズの頭を吹き飛ばした。

 

着弾を確認するや、大役を果たしたスナイパーライフルをその場に捨て置き、マリアや響の元へ急ぐ。

 

最後の留めである、S2CAを発動するためだ。

 

そこに至るまで、約30秒。距離にして1000m。

 

シンフォギアなら可能な距離だが、とてつもなく遠く感じる。3人での戦闘の厳しさと、連日の戦闘疲れが憎たらしい。

 

二人のもとにたどり着いた時には、もう準備は出来ていた。

対してカルマノイズはといえば、先ほどの狙撃で受けた損害を修復している真っ最中のようで、すぐに戦闘態勢に移れる気配はない。

 

「いくよ、クリスちゃん!」

「お前も、無理するなよ!」

 

バカの掛け声に、柄にもなく、そんなことを口走る。

 

「おお!心配してくれるの!?」

 

「いいから、早くやれ!」

 

戦闘が終わってから、労いの言葉をかければ良かった、と少しだけ後悔しながら、手を繋ぐ。

 

アームドギアが手を繋げる形だから、コイツだから出来る技。誰とでも話し合い、手を繋ごうとしてきたからこそできる、絶唱を束ねることのできる力。

 

「セット、ハーモニクス!!」

 

繋いだ絶唱を、マリアが調律していく。

 

「S2CA、トライバースト!!!!!」

 

フォニックゲインの塊が、虹色になって、カルマノイズへと放たれる。渦巻く虹色のそれは、カルマノイズを調律し、バラバラに砕いて、爆散した。

 

カルマノイズの撃退を確認後、流石に立ってはいられず、3人でその場に座り込む。

 

いくら調律をして、負荷を分散しているとはいえ、絶唱の負荷が全くないとは言えない。これだけの頻度でS2CAを連発したことがない以上、どれほどの負荷が私たちにかかっているのかも、分からないような現状だ。

 

「やっぱこれだけ頻繁にやると、キツイな」

 

「えぇ、そろそろ、このカルマノイズの発生原因を突き止めないと、私たちが先に倒れるわね」

 

「でも、翼さんが戻るまでは、私たちが持ち堪えさせないと・・・」

 

確かに、二人の言う通りだった。

 

そもそも、こんなにカルマノイズが大量に発生する平行世界は初めてだ。大抵は、カルマノイズが途中で逃げるか、複数体いて戦闘が長引くことはあったが、カルマノイズ本体を倒せば、ギャラルホルンの警報は鳴り止んだ。

 

だが今回は、遭遇している5体全てを倒しているのに、一向にギャラルホルンの警報が鳴り止む気配はない。警報の理由が分からない。

 

2課に戻ったら、カルマノイズの出現ポイントの照らし合わせと、出現傾向をもう一度さらい直す必要がありそうだ。

 

ーーーそろそろ戻るか、と3人が立ち上がった瞬間、私たちの後ろで悲鳴が上がった。

 

悲鳴のした方向へ目をやると、微量ながら、黒煙の上昇も確認できる。

 

事故の可能性は、ほとんどの住民が避難しているこの現状で、発生する確率は低い。

火災の発生は、電気系統によるものなら、ある程度の可能性はある。こんなジャストなタイミングで発生する確率は限りなく低いが。

 

ーーー現状で限りなく可能性が高いのは、「カルマノイズの再発生」。

 

「おい、おいおいおい!!!!」

 

「もう一体!?まさか!」

 

響が悲鳴のした方へ飛びたしていく。その悲鳴の本人を助けるために。

 

「だとしてもぉぉおおおおお!!!」

 

響に少し遅れる形で、私とマリアも駆けつける。距離的には、そんなに離れてはいなかった。

 

「クリスちゃん、マリアさん、これ・・・・」

 

先ほどの悲鳴の主であろう少女を抱えた響が、ポツリと呟く。

 

良かったじゃねえか。逃げ遅れた悲鳴の主は助けられたんだな、と安堵したのも束の間。

眼前に広がる光景を見て、

 

ーーーーーー私は膝から崩れ落ちた。

 

眼前に広がるそれは、カルマノイズを埋め尽くす程のノイズ達。

 

ノイズ達は、自分たちの元締めであるはずのカルマノイズを覆い尽くし、徐々にその端を炭素化させている。

 

「ノイズ・・・だと?この世界の普通のノイズは、長らく発生していないはずじゃ・・・」

 

どこからこいつらが発生したのか、その原因を見つけるために、あたり一面を隈なく見渡す。

 

御誂え向き(おあつらえむき)のようにある高いビルは、この現状を見渡すには最高の場所で。

 

イチイバルのスナイパーモードを使い、ヘッドギアの拡張機能で倍増させた景色に映し出された映像には、

 

「何で・・・なんでだよ」

 

ーーーー 一番いて欲しくない人が、見覚えのある杖を使って、ノイズを今まさに発生させている姿があった。

 

 

「それは、あんたが一番持ってちゃいけないもんだろ・・・」

 

音にならない程の呟きが、ポツリともれる。

 

本来ならそれは、私が犯した罪。私が背負うはずの罪。それを、なんでよりにもよって、私を間違いから引っ張り上げたはずの、「あんた」が使ってるんだよ。

 

いつだって誠実で、真っ直ぐで、防人としての信念を持って、ノイズと戦ってきたあんたが。

 

いつの間にか、感情の整理がつかず、頬を何かの液体が伝うのを感じるが、構わず、叫ぶ。

 

 

「よりにもよって、なんで先輩が!!!それを、『ソロモンの杖』を使ってるんだよ!!!!!」

 

 

 




と言うわけで、最初の方で、やたらクリスがソロモンの杖について考えていたのは、ここの伏線となります。伏線らしいものではなかったですがw

と言うことで、半闇落ちした翼先輩。次回ではどうなるのか、クリスはそんな先輩と手を繋げるのか。
お待ちいただければと思います。

感想やご意見、あれ?ここ矛盾してないと言うご指摘(優しくね?)お待ちしております。気が向いたらよろしくお願いします。

それではまた次回、お会いしましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。