前回の投稿から少し日が空いてしまい、申し訳ありません。
そして、6千字超えるから、2話に分けたはずなのに、調子に乗って、戦闘シーンを書き進めたら、なんか、いつの間にか、6千を超えて、7千字に迫る勢いになってしまいました。
本当にごめんなさい。
ただ、戦闘シーンだし、まぁいっか!!と思っている作者です。反省はしても、後悔はしてない。
今回は、翼とクリスがバッチバチに戦っております。クリスは、翼と手を繋げるのか??
side:翼
「大丈夫だ。お前は、俺たちが守ってやる。あの爺さんの好きにさせるものか」
そう、2課の司令である叔父様は私に言った。
風鳴の家に名を連ねるものは、お爺様の力から逃れることはできない。しかし、そう言ってくれた叔父様を私は、
「信じたい」そう思っていた。
◇
ノイズとの戦闘を禁じられた翌日、私は、鎌倉の風鳴家へ呼び出されていた。呼び出したのは、言うまでもなく風鳴家当主の風鳴訃堂だ。
私の祖父であり、父である人。
「お呼び出しに応じて、参上いたしました。お爺様」
祖父の部屋の襖の前に膝を立てて、入室の許可をとる。すぐに「入れ」との返答があり、静かに両手で障子を開いた。
障子は何の抵抗もなく動いたが、その先にある部屋の空気が、私の入室を拒むように、重く漂っている。
早く入らねば、と意を決して体を部屋の中に入れ、静かに障子をしめた。
ーーー途端、より一層、空気の重みが増した。まるで、戸を開けて薄まった瘴気が、徐々に濃くなっていくように、私の肺を侵していくように。空気がうまく吸えない。
なんとか必死に部屋の中央まで移動し、用意してあった座布団に正座する。
「最近の戦闘の報告は受けている」
一言、言葉が発せらると、またズンと空気が重くなるのを感じる。
私は、顔を上げることができず、黙ってお爺様の言葉を聞いていた。
「他の世界から来た、などとほざく輩に惨敗しているようではないか。それでもお前は、ワシの子か?」
風鳴の血を濃く残そうと、私の母に祖父自ら孕ませた子が私だ。だから、父と私は正式な親子ではない。
「防人たる我らの地を、黒いノイズと異世界の野蛮人どもに、こうも好き勝手にのさばらせるとは。それが風鳴としての名を落とす行為であると認識しているのか」
お爺様の手前、嘘をつけば簡単に見透かされる。しかし、戦闘技術は正直負けているとは思えない。であれば、私に足りないものは
「面目次第もございません。私には、彼女らが扱うシンフォギアと言う戦力に勝るだけの技量はあっても、力はありません」
「力・・・か。力があれば、お前はノイズと異世界者、どちらも相手取れると?」
「はい。武器さえあれば、私は戦えます。そのための力を現在、2課にて作成中です。それを使えば」
「甘いわ。たわけが。所詮は、異世界者の真似事、模倣品に過ぎぬ。そのような型落ちの装備で、護國を成し得ると思うてか」
さも可笑しいものを見たかのように、お爺様は静かに笑う。私の発言に怒るというより、呆れているような、そんな雰囲気だった。
「お前も、風鳴の人間ならば、覚悟を見せよ。その身が防人たらしむか、今こそ儂が見極めてくれよう」
「それは、どういう・・・」
顔を上げると、そこには見覚えのある女性がお爺様の隣に立っていて。
「お前には、儂から『力』をくれてやろう。ただし、これでも結果が出なければ、お前に防人たる資格はない。その先は、分かっておろうな?」
風鳴訃堂から切り捨てられる、ということは風鳴家との縁を切られるということ。さもすれば、私は2課でノイズと戦うという任務を解かれ、住む場所を追われ、『風鳴』翼として生きていくことはできなくなる。
私は居場所を失い、ノイズを倒し奏の仇をうつという、生きる目的すらも無くすことになる。
最終宣告であった。
力が、必要だ。お爺様の期待に答えなければ。
そうしなければ私は、奏の思いを、「生きろ」という最後の言葉を、叶えることができない。
◇
side:クリス
「首根っこ引きずってでも連れて帰ってやる!お前の本当の居場所に!」
私がかつて先輩に言われた言葉。私が裏切っても、私を信じて力を貸してくれた人の言葉。
翼はそんな言葉を拒絶するかのように、ノイズを自分の周りに発生させ、まるで盾のように陣形を整えている。
ソロモンの杖とノイズを手に入れても、戦う相手である私の武器の特性を考え、戦略を練るところは変わらない。
今度は、私の番だ。借りを返すぞ、先輩。
盾が形成しきる前に、その隙間を縫って、先輩の足を撃ち抜いて動きを止める。
戦闘プランを思い浮かべ、私が意を決するように、銃を握ると
『よく言った!クリスくん!』
突如、無線が鳴り響き、ちょっと前のめりになって止まる。
「おい何だ、こんな時に!」
そんな私のツッコミはお構いなしに、2課司令は続ける。
『翼に伝えてくれ。お前の帰るべき場所は、風鳴家ではなく、この2課だと。お前の新しい武器もある。大人は大人の仕事をするもんだ。守ってやると約束したからな。』
瞬間、ノイズの触手が飛んでくるのをイチイバルの弾丸で吹き飛ばしながら、思わず、ふっと笑みがこぼれてしまう。
先輩、やっぱりあんた、間違ってるよ。支えてくれる仲間、切り捨てちゃダメだ。
「だってよ」
途中から無線をオープンモードにして、翼にも聞こえるようにしていた。おっさんの言葉は、多分ノイズの盾に包まれた先輩にも聞こえているだろう。
「・・・笑止!私の居場所は、後にも先にも風鳴家ただ一つ!!!」
叫びのような声と共に、大量のノイズが私の頭上に発生する。
先輩を縛っているのが、「風鳴」という存在そのものならば、そんなもの、私が吹き飛ばしてやる!!
「あんたには、風鳴なんて場所の他にも、帰るべき場所があるだろうが!」
「あそこは、風鳴家あってのもの!風鳴の家に見捨てられれば、圧力をかけて潰されるのがオチだ!」
次々と飛んでくるノイズを、両手に構えたガトリングガンでなぎ倒してく。
「あのおっさんは、そんなに柔じゃねぇよ」
盾として機能してたノイズ達の間に少しだけ隙間ができた。そこを潜り抜けて、私の弾丸が走る。話をしながら隙を突いて、先輩を捉えるはずだった弾丸は、虚しく地面へと激突し、砂埃をあげた。
「何!どこに消えた!?」
「私の間合いはこちらなのでな」
耳元で声がしたと思った瞬間、鋭い痛みが首筋に走る。
振り向きざまに何発か弾丸を放ちながら、間合いを作る。ギリギリのタイミングでイチイバルのシールドが発動したが、普通の人間ならば、確実に首を切り落とされていた。
少しだけ流れ出る血を手で押さえながら、私はふと、何で斬られたのだ、と考える。翼は首を切り落とせるような武器は持っていなかったはずだ。
だとすれば、考えられる可能性は一つだけ。
「おいおい・・・ソロモンの杖の形状を刀の形に再構築して、固定したってのか?」
フォニックゲインと完全聖遺物を、たったの3日でここまで使いこなすか?普通。
ーーーいや、この人は、普通じゃなかったな。
「お前の遠距離広範囲攻撃は、私には部が悪いのでな。間合いを詰めさせてもらった。この間合いでは、銃を構えるより、刀を突き出した方が早いな!!」
そう言いながら、休む間も無く、翼は私へと切りかかってくる。間合いを詰めるスピードも、刀を上段から振り下ろすスピードも、今までとは大違いだ。
元々戦闘技術の高さでは、私はこの世界の翼に敵わない。翼が真っ直ぐに、真剣に鍛錬に打ち込んできた賜物だろう。
それでも私がこの世界の翼に勝てるのは、足りない技量をシンフォギアシステムの出力で補っているからだ。
今はそこに、フォニックゲインによるブーストとソロモンの杖から召喚するノイズが上乗せされている。
正直、勝てる気がしない。
それに、イチイバルの特性上、私は遠距離、物量攻撃のフォーメーションが多い分、近距離の戦闘パターンはそう多くはない。
どこかの映画バカのおっさんが、「銃と素手でやり合うときはな、銃を撃たれる前に、相手の間合いに入って、無力化すればいい」って言っていたが、先輩のはその比じゃねぇ。
翼は、この近距離で打ち出される弾丸をいなしつつ、最小の動きで、私の急所へと刀を振り下ろし、突き出し、なぎ払ってくる。
アームドギア程の攻撃力はない。だが正確に急所を突かれる分、こちらが疲弊しているのは明らかだった。
かと言って、銃の間合いまで離れたと思った時は、常にノイズが照準の邪魔をして、先輩までの弾丸の起動が読めない。
ジリ貧だ。私は、翼とノイズの両方を相手取りながら戦わなければならないが、先輩の相手は私1人だ。ノイズが戦ってくれている時間は、少しでも休息が取れる。この差は大きい。
「風鳴の家は、あんたがそうまでして、従わなきゃいけない場所なのかよ!」
「私はあの家に生まれた者。防人たるは、私の使命。そのために、私は今まで生きてきた!私には、戦うことしか、存在意義などありはしない!!!」
瞬間、左右の死角にいたらしいノイズから粘着性のある触手に両腕を掴まれた。一瞬、動きが止まる。
「しまった!!」
すぐさま、握ったままだった両手のサブマシンガンから、大量の弾丸を放ち、触手の元のノイズを除去する。身動きを取り戻したのも束の間、今度はいつの間に回り込まれたのか、目の前に振り下ろされる刀を、間一髪銃で受け止めた。しかし急な展開で、意識は全て上部の刀を止めることに持っていかれていたため、翼が繰り出す回し蹴りに反応できず、モロに肋骨で受け止め、数m吹き飛ばされる。
呼吸をするたび、骨が軋むのがわかる。3本は持っていかれたな。
口の中も多少切れたらしく、広がる鉄の味を悔しさと共に足下へと吐き出した。
やっぱり、強ぇなぁ・・・先輩。敵にいると、こんなにも厄介なのかよ。
「諦めて、大人しく現状を2課で見ていろ、雪音クリス。カルマノイズは私が倒す。お前がそうまでして私と戦う理由は、ここにはないはずだ」
それもそうだ。
だが、カルマノイズの討伐数から言って、今回は警報の原因はそれではない。多分今のこの状況、「風鳴翼によって引き起こされたソロモンの杖の起動」こそが、警報の原因だ。
この状況を放置すれば、次は確実にルナアタックに繋がる。それを止める手立てをこの世界は持っていない。それこそが、ギャラルホルンの警報の本当の原因だと、私は思っている。
「なぁ先輩、知ってるか?ノイズはな、本来統一言語を失った人が人を殺すために作った古代兵器だ。やっぱり私は、先輩にそんな力、使って欲しくない」
痛む脇腹を押さえながら、精一杯言葉を紡ぐ。
「私はお前の先輩になったつもりはないし、私が何を力としようと、お前には関係あるまい」
冷え切った目で、私に刀の鋒を向けながら、吐き捨てるように翼は言う。
「ーーーあるんだよなぁ。それが。私は、借りを、返さなきゃなんねぇんだ。たとえ、世界が変わったとしても、風鳴翼は風鳴翼だ。私を信じて手を繋いでくれた人を、今度は私が助ける。なかなか良い展開だろ!!!!!」
ただ、攻撃をいなしていた訳じゃない。ただ会話をしていた訳じゃない。先輩が近距離型で、私と相性が悪いというのなら。
ーーーー私は私の間合いで、私の戦闘スタイルで、戦えば良いだけのこと。
「何を言っている?」
スッと静かに手を上空へ向ける。先輩も釣られて上を見上げる。その視線の先には
ーーーーーー大量のミサイルの頭がこちらを向いていた。
「貴様!!!最初からこれを狙って!!」
「私がただやられる訳ねぇだろ!!!さぁ、第2ラウンドだ!いくぜ、先輩!!!!」
大量のミサイルや分離した弾丸が、字の如く雨のように翼へと降り注ぐ。
ノイズを使い、確実に処理をしているのは流石だが、さしもの先輩も、あの物量には勝てないらしい。徐々にノイズの発生量と処理の確実性を失い、被弾する数も多くなる。
先輩の機動力は確かに脅威的だ。だったら先輩自身を、物量でその場に釘付にしてしまえば良い。
「私には、このソロモンの杖が、最後の切り札なのだ!もう、後がない」
少しずつ疲弊し、立っているのもギリギリな様子で先輩は、刀を振るう。
私もミサイルの軌道を制御しながら、先輩の言葉に言葉を返す。
「あんたには、2課の開発した武器があるだろ!」
櫻井了子無くして、どこまでの性能を発揮できるかどうかは分からない。だが、確実にスペックは上がっているはずだ。なんせ、あの天才科学者の開発した武器なのだから。
「奏の仇をうつためには、力が必要なんだ!」
先輩が抱え込んでいたのはこれか、と内心納得する。ノイズに殺された、かつての先輩の片翼。この世界での「天羽奏」が、どのような存在だったかは私には分からないが、それでも、このやり方は、間違っている。
「その人は、あんたがノイズを使役してる姿見て、どう思う!!喜ぶのかよ!?」
私の問には答えず、振り続ける弾丸をいなし続ける。
「それに、この国を守れたとして、その後はどうする?そのソロモンの杖は、ノイズを生み出すんだぞ。海外のお偉いさん達はどう思うだろうな?」
先輩の答えを待たずに、私は自分の推論を続ける。
「責任を押し付けたい大人達は、ノイズを操れる先輩がこの世界の脅威だと吹聴するかもしれない。そうなれば、この国に敵を招き入れるのは、あんた自身だ」
ピタリと、先輩の動きが止まる。
こちらの用意したミサイルも、残り一つ。これが防がれれば、先輩への有効な攻撃手段は、もう近距離用のハンドガンしか残されていない。
「さて、それでも日本を海外からの侵略から護るには、どうしたらいい?風鳴翼」
そう。これが、おそらく風鳴訃堂の筋書きだろう。あの糞爺は、世界をノイズで脅迫するつもりだ。先輩と、ソロモンの杖を使って。
この国に攻め込めば、ノイズが貴様達の国にも襲いかかることになるぞ、と。恐怖政治の始まりだ。
「それでも私はぁぁぁぁ!!!!」
期待が大きくなれば、それに応えたい。応えられなければ、呆れられ、いつかは捨てられるかもしれない。その恐怖は、私には痛いほど共感できた。
できたからこそ、先輩の考えも、分かってしまう。
先のことまでなんて考えられない。目先の事ばかりが優先されてしまう。成果を上げなれけばと、焦りだけが先行する。
大型のノイズが刀から発生する。今までで発生している中では、最大級のものだろう。
だが、今更ノイズ!!私に勝てない敵じゃねぇ!!
形が形成しきる間に、残っていた最後のミサイルを超近距離で激突させる。その余波により、爆風があたりの砂を巻き上げ、お互いの視覚を奪う。
今までの位置情報を頼りに、一気に距離を詰め、翼の手に握られている刀へと手を伸ばす。今度こそ届いた先輩の手から、ソロモンの杖を引き剥がし、胸ぐらを掴んで顔をこちらに引き寄せる。そして、思いの丈を目一杯、ぶつけることにする。
「いい加減、目ぇ覚ましやがれ!この石頭!!!」
私には、これくらいがちょうどいい。
「借り物の力で、カルマノイズを倒したところで、それは、アンタの力にはならねぇだろうが!アンタには、信頼できる2課のメンバーがいるだろ!その人達と今まで、一緒に戦ってきたんだろうが!勝手に、決めつけて、切り捨ててんじゃねぇよ!!!!」
目を見開いて私を見る先輩に、構わず私は言葉を紡ぐ。
「アンタが今まで訓練してきたのは何のためだ?自分の力で、カルマノイズ倒すためじゃないのかよ!アンタには、助けを求める場所がある。生きていける手段がある。それなのに、家のため、国のためだと、言い訳言って、諦めてんじゃねぇよ!!!」
翼はハッと息を飲んだかと思うと、幼い子どものように、クシャっと顔を歪めて、顔を逸らした。
「しかし、私はもう2課には、戻れん」
「聞いてただろ、さっきのおっさんの言葉。待ってんだよ、みんな」
胸ぐらを掴んでいた手を離し、一歩下がって、今度はその手を、先輩へ向ける。
「帰ろう。ここから、やり直すんだ。アンタには帰る場所がちゃんとある」
こちらを向いてくれない先輩に、私の精一杯の言葉を紡ぐ。
あのバカが諦めなかったように。先輩が信じてくれたときのように。
「いいのだろうか、帰っても」
それでも、差し出された手を、なかなか握れない先輩に少しヤキモキして。
「いいに決まってんだろうが!ほら、帰るぞ!」
モジモジと伸びてきた手を引っ張って握った。しっかりと。
私は、差し伸ばされた温もりが嫌じゃないってことを知っているから。強く握られた手が、熱いのを知っているから。
狂った運命を壊すための勇気の歌を、歪んだ嘘を千切る未来の歌を、今度は私が、先輩に渡すんだ。
握った反対の手に持つ、刀に形を変えたソロモンの杖を、ここで壊してしまいたい衝動に駆られる。
でも、これは2課へ持って帰らなければなぁと思い直す。これは、2課には観測し得なかった最先端技術の塊なのだ。
「それは、ちょっと困るわね。ソロモンの杖だけは、置いていってくれないと」
そう声が聞こえた瞬間、私の手には空が見えていて。
ソロモンの杖はカランという乾いた音と赤い流血と共に、地面へと落下した。
翼と手を繋ぐシーン。少し無理やり感ありますが、それくらいの方がクリスらしいかな、と。ちょっと照れて、でも真っ直ぐに気持ちを伝えるクリスなら、こうなるかなぁと想像して書きました。
そして、最後のクリスの独白。ある歌を引用しています。分かりましたかね?
次回は、やっと黒幕の登場!?楽しみにお待ちください。
いただいた感想、とても励みになっております。ありがとうございます。気が向いた方、是非優しい言葉で今後ともよろしくお願いします。