というわけで初投稿です(なにが?)
好きな人がいた。
快活で、屈託のない、笑顔が素敵な人だ。
こちらが迷いそうになったり、道を踏み外しそうになると、手を取って引っ張っていってくれる強引さが好きだった。
顔が良いとか。頭が良いとか。運動神経が良いとか。そんな上っ面のステータスよりも、一つの事に打ち込む姿と心が好きだった。
一緒にいるだけで満たされる。
同じ夢を視るだけで心地良い。
はじめは、兄のように慕った / はじめは、嵐のような奴だと思った
共に居るのが当たり前だった / 共に居るのが当たり前にされた
霧崎がいたから自覚できた / 六道のせいで気付かされた
私は、パワプロが―― / 私は、アイツが――
/ 好きだった /
だから取り乱した。
力場専一の外見だけを見て、同世代で有名だからと近づいてきた女。そんな軽薄な女と最初、彼が付き合い始めた時はそれほど動揺しなかった。『告白を断るのが申し訳ない』なんて後ろ向きな姿勢で付き合って。一日としない内に別れてしまったから気にしていない。
衝撃的だったのは、氷上聡里と付き合い始めたこと。それも、彼の方から告白したと言うのだ。となると、ああ――ひたむきで誠実な彼の事だ。軽薄な理由で別れたりはしないだろう。ともすると、生涯を共にするかもしれない。
なら、私に割り込める余地はない / 直視できるほど私は強くない
仲睦まじくする2人を見たくない / 汚い心を懐かないとは思えない
表面上の気持ちを取り繕って会う / そんな軽薄な真似は御免だ
氷上聡里が嫌な女だったら、どうにかして彼を説得し別れさせようとしただろう。
だが私は知っている / 私も知っている
氷上は良い奴だ。前のシニアでパワプロを潰そうとしていた連中から、直接護るように立ち回ったのだ。
それは誰にでもできる事じゃない。力が要る、勇気が要る。片方だけでは意味がなく、両方あって初めて実行でき、実現できる。
パワプロは氷上と生涯を共にしかねない。まるで炎と氷のような相反している性質なのに、あの二人は並んでみるとよく似合っていたから。
その未来予想図に絶望した。
素直に祝福するのが正しいのだろう、だがそんなに潔く振る舞えるほど大人ではない。
嫉妬するだろう、怒り、憎むだろう。ポッと出の女なんかを見て、どうして自分達を見ないのかと、パワプロにさえ八つ当たりしてしまうかもしれない。
そんな自分は嫌だ。
彼の中の自分は、綺麗なままでいたい。真っ直ぐな自分達を覚えていて欲しいのだ。だから――失恋した事実を認めよう。
だけど、だけど、せめて彼と同じ夢だけは見ていたい。厚かましい、恥知らずと罵られようと、彼と一緒にいたいのだ。一緒に――野球を、したいのだ。
だけど。ああ、だけど――簡単に割り切るには、想いの丈が深すぎて。
暫くは離れて、時間を置いて、落ち着けるまで――この想いを振り切るまで――放っておいて欲しかった。
夜。枕を濡らして、眠る。時間が失恋の傷を癒やしてくれる事を願った。
――けれど、夢を視た。
私が目の前に立つ、夢を見た / 私の前に、
『諦めるのか?』
私に投げかけられる自問 / 焚きつける火種
『なんとも見苦しいな。割り切ったふりをして、【いつも通り】を取り繕った自分を見てほしいなどと』
鏡像が語る本音 / 五月蠅い、黙れ
『嫉妬する自分を見られたくない? 汚い感情を発露して失望されたくない? 誠実に向き合ってくれるパワプロに、上っ面の自分で向き合おうなどと恥知らずにも程がある』
突き刺さる本心に歯を食い縛る / この想いは耳を塞ぐには大きすぎる
『大体だ、私は一度だってこの想いを伝えていないだろう。伝えてもいなかった想いに蓋をして、それで終わらせて良いのか? 好きだと伝えて困らせたくないなどと、いい子ちゃんぶっているからポッと出の氷上に
その通りだった / その通りだった
『気づいたな。一度も伝えず、パワプロから告白してほしいなんて乙女ぶって――こちらから踏み込む勇気がなかったからこうなった。パワプロにはその勇気があった、氷上には応じる勇気があった、それだけの話だろう。パワプロの隣にいたいなら、最低限それぐらいの勇気は持っていないと駄目だ。フラレるのが怖い……そんな恐怖に怯えているようだと話にならない。パワプロに相応しい女は、この程度の恐怖に怯んだりはしない。そうだろう?』
その通りだ / その通りだ
『フラレてもいい。むしろ、フッて貰っても構わない。その上で諦められないのなら、待て。鳴かぬなら、鳴くまで待つのがいい女というものだ。鳴くまで待てないなら奪いに掛かるのが強かな女というものだ。野球は九回裏のスリーアウトまで終わらない、まだ勝負は終わっていない、そのはずだ』
――なんだ。その程度の事に気づくのに、四日も掛かってしまったぞ。
――バカバカしい。傷心を装って慰めてもらおうとでも思っていたのか、私は。
私は、スマホを取った / 私は、アイツに電話する
「――む」
「六道。今からお前の家に行く」
「……奇遇だな。後一秒遅ければ、私が同じ事を言っていたぞ」
「………」
「パワプロも、呼ぶのだろう」
「……ああ。アレは、台風だからな。その目の中にいなければ、騒がしくて落ち着けない」
† † † † † † † †
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンなRTA再開しますぞい。
本日は快晴なり! 土曜日なり! 前日は神様頼みの祈祷を済ませ、果報を寝て待ちましたよ。というわけで朗報を寄越すんだよ、おうあくしろよ。
10万注ぎ込んでの剛毅な神頼みですからね、何もなかったら訴訟ものですし、流石に無駄になるわけがない(確信) ならないよね?(怯え)
ともあれなんらかのイベントが起こるのは確定的に明らかなので、それを待ち構えていましょう。とはいっても、効率を常に追い求めるわたしには、一秒たりとも無駄に過ごせる時間などありません。
なので空いてる時間は聡里ちゃんとデートでもしましょうか。聖ちゃん達が離脱したのは聡里ちゃんとの絆を深めて障害を乗り越えるイベントなんでしょ知ってるお願いそうだと言って(早口)
と、そんなふうに祈りながらスマホを手に取ります。再走は嫌だ再走は嫌だ再走は嫌だ――とにかく祈りましょう。この段階であの二人とお別れとかしてしまうと、お前のチャート、ガバガバかよって失笑されちゃいます。ええ、予定している育成すら完遂できないとか論外ですからね。ですがわたしは知ってますよ、未知のイベにも必ず突破口はあるって!
ポチポチして聡里ちゃんにメールを打ち込みます。今日ヒマならどっか遊び行こうぜ――と、おや? 送信しようとしたタイミングで電話が掛かってきましたね。相手は……きんつば、と表示されてます。
……。
………えっ。
今まで電話してもメールしてもガン無視してきた聖ちゃん!? と、ということは……やってくれましたよ神様! 流石は金に忠実な御方、サンキュードラゴンボール!(元気玉)
とりあえずこの電話には出んわ(激寒ギャグ) なんて事はしません。普通に出ます。やあジェニファー、元気ぃ?
『パワプロ。すまない、要件は言えないんだが……私の家に来てくれないか? 会って話をしたい。霧崎もいる』
「分かった。すぐ行く」
『……即答か。今までなんで無視していたのかと、訊かないのだな』
「なんか理由があったんだろ。とにかく待ってろよ、家も近いし多分三十分もしたらそっちに着く」
『分かった。……待ってるぞ』
「おう」
ピッと切ってビュンっと動き出すぜヤッフゥー↑!
急げ急げ、速攻パジャマから外行きの服に着替えて寝癖を整えて歯磨きして顔洗ってママンにお小遣いせびってGO!
ビュンっと走って近所のパワ堂に寄ってママンから貰ったお小遣いできんつばと今川焼きを買います。きんつばは聖ちゃん、今川焼きはここの礼里ちゃんが好物なんです。これでご機嫌を取る! 媚びるぜぇどんどん媚びるぜぇ。
こっから走って行ったら丁度、電話で言ってた時間にギリ間に合います。時間にルーズとか許されざるですからね。聖ちゃん家に行くのに礼里ちゃんがいるという事は、なんらかのイベントが起きるのは確定的に明らか。何があっても最適解を掴み取り、切り抜けていけるように覚悟を決めておきますよ。
聖ちゃん家はお寺です。親が住職さんです。聖ちゃんのお家であるお寺って無駄に長い階段登って行かなきゃなんないですが、別にその程度はもはや慣れたものです。このぐらいで疲れはしませんよ。
今まで何回通ったと思ってんの? もはや顔パス状態なのでお邪魔しますとか言う必要もないです。言いますけどね(紳士) お邪魔しま――っと、おやおやぁ? なぁーんでか聖ちゃんと礼里ちゃんが出迎えてくれましたね。これはとても珍しいですよ。
聖ちゃんの私服姿は和服です。いつ見ても、何度見ても可愛い(可愛い) とはいえ普段は野球のユニフォーム姿でいる事が多いので、何気に和服姿でいるところを見る機会は少ないのでレアだったりします。
で、もっとレアなのは礼里ちゃんの私服姿ですね。本作ではじめて実装されたという私服姿は必見の価値ありですよ。
濃紺のデニムスカートと、白いブラウスに紫のリボン。白い肌と銀糸のような長髪とも相俟って、非常に清楚な印象を受けます。綺麗寄りの可愛さとでも言えば、初見時のわたしの感動が少しは伝わるでしょうか? 聖ちゃんが大和撫子的な可愛さだとすると、礼里ちゃんは西洋の妖精みたいに可愛いんです。……聖域ヒロインは並んで立ってるだけで尊い、はっきり分かんだね。
「きっかり三十分。流石だな」
「その手に持っているのは……フン。貸せ」
「ありゃ、目敏いな礼里ちゃん」
お礼も言わずに手に提げてた袋を引っ手繰られました。これはいけません、礼里ちゃんに礼儀と「親しき中にも礼儀あり」という言葉を教え込んでやらねば……。
「パワプロ」
「……ん?」
「すまない。それから……
「………ん。気にすんな」
礼里ちゃん、順調に素直クール路線に進んでますね。ヨキカナ。
目を逸らしながら言うと、赤くなった耳が丸見えになりますよと教えてあげるべきか否か、悩みますねぇ。
ともあれ苦笑して礼里ちゃんが聖ちゃん家に入っていくのを見送ってると、おずおずと聖ちゃんが声を掛けてきました。
「……とりあえず、上がっていくといいぞ」
「おう。ところでオジサン達は? 挨拶ぐらいさせてほしいんだけど」
「……ちょっと離れに行ってもらってるぞ。大事な話があるからな」
「……そか。分かった」
聖ちゃんの案内を受けて、家に上がります。何年来の付き合いだと思ってんですかね……いまさら案内とか必要ないんですけど。
まあいいでしょう。礼里ちゃんは台所でわたしの買ってきたきんつばと今川焼きを皿に盛って、お茶とかを淹れて持ってきてくれるようですし。VIPのように丁重にもてなされてやりますかね(謎の上から目線)
通されたのは聖ちゃんの部屋です。年頃の女の子が男を部屋に通しちゃいけませんが、ぶっちゃけわたしとそのファミリーは家族みたいなもんなんで、気にする事でもありません。今まで何回も来てますし、バッテリーを組む上で一緒に色々と研究してきたから今更ですし。時にはわたし、礼里ちゃんの家でもヤッてましたね。野球研究という名のコミュ。
「で、話ってなんだ?」
「きり……礼里が来るまで待て」
「ん? おーおー……俺が見てない間に名前で呼ぶようになったのか?」
「う、うむ……今朝方な。特に理由はないが、私と礼里も幼馴染同士だ。なら名前で呼び合うのが自然ではないかと話し合ったのだ」
「ふーん……」
聖ちゃんの部屋は当然和室です。整理整頓が行き届いてて、女の子の匂いがしますね。くんかくんか。
座卓の上には沢山のデータが記されたメモ帳や、ノートパソコンがありますね。時代の変遷が進み、アナログさとは決別した聖ちゃんです。
掛け軸には「一球入魂」と。部屋の隅には衣類チェストがありますね。あそこに聖ちゃんの下着も入って――おっと邪念退散、邪な視線で見てはなりませんよ。わたしは紳士なので。
二人が急に名前で呼び合うようになった理由……多分イベントなんやろなぁとか思いつつ、低反発のクッション座椅子の真ん中に座ります。聖ちゃん家に来た時の、わたしの定位置ですね。その対面に聖ちゃん、わたしから見て座卓の右側が礼里ちゃんの定位置です。
聖ちゃんは定位置に着き――ません。なんでかわたしの右隣に座りましたよこの娘……。
えぇ……?(困惑) 肩が触れ合うぐらい近くに座るってお前、勘違いしますよ他の男なら。良い匂いするんで許しますが()
「聖ちゃん……?」
「な、なんだ?」
「フー」
「なー!? いきなり何をするっ!?」
耳元に息を吹き掛けてやると、聖ちゃんは飛び上がって驚きましたね。「なー!?」頂きました。可愛い。
無防備に野郎の隣に座ったらどうなるか、これで分かってくれたでしょう。定位置に戻るんだよ、おうあくしろよ。
「全く! 私でなければ許さなかったところだぞ!」
「って離れないのかよ」
「むっ……今のは、私が邪魔だったから追い払おうとしたのか……?」
「そんなわけないやろなにいってだ」
「……呂律、回ってないぞ」
右下から不安そうに見上げられてそうだよとは言えぬぇー!
ま、まあいいや……とにかく礼里ちゃんが来るのを待ちますよ。
――ぴと。
ねえ。
ねえ聖ちゃん。聖ちゃん様? なんで肩、触れ合わせて座るんです? 耳に息吹き掛けられたんですよ?
ま、まあこんな日もあるやろ。落ち着け、落ち着くんだ。聖ちゃんの距離感が近いのは今日に始まった事じゃないし、今日はたまたまそういう気分ってだけなんでしょう。
なんでか聖ちゃん喋らないし、待ちに徹します。ミス・レイリー! 早く来てくれー! 間に合わなくなっても知らんぞー!
と、悶々とした居心地の悪さに浸ること数分。襖を開けて礼里ちゃんが登場しました。来た! メイン礼里ちゃん来た! これで勝つる!
礼里ちゃんはお盆を手にしてますね。台所できんつばを切り分けて、今川焼きと一緒に皿へ盛り付けたものを持ってきてくれました。熱々のお茶もありますね。それを座卓に並べて――って、あれ?
なんで礼里ちゃん、左隣に座るんです?
――ぴと。
しかもなんで密着するんです?
左右を挟まれてますねクォレハ……。
「……礼里ちゃん? 聖ちゃん?」
「大事な話がある。このまま聞け」
「うむ。いい加減、受動的だと駄目だと気づいたのでな」
「お、おう……?」
ちょっと待ってくださいよ……今、明鏡止水になりますんで。
スゥ――(深呼吸)――ハァ――(吐息)
スゥ――ハァ――よし落ち着きました。今のところBADイベントの気配はしませんが、何やらオカシナ流れです。
カメラ撮れてます? 撮れてますね……よし!(現場猫)
検証は後です。何がどうなってこうなったのかを考えるのは後! とりあえず今は、二人の言う大事な話とやらを聞きましょう。
さあどこからでも掛かってらっしゃい! わたしは逃げも隠れもしません!
矢でも鉄砲でも持ってこんかい、そうでもなけりゃわたしをどうこうできるわけないんですからね!
「パワプロ。実は、だ。私は――初めてお前に声を掛けられた時に言われた、嫁にしてやる、というのを……かなり本気で期待していた」
ん?
「私も、幼稚園の頃だが……『お兄ちゃんのお嫁さんになる』と言ったな。あれを、今も……その、本気で想ってるぞ」
……ん?
「好きだ。パワプロ。いや――専一。私はお前が好きだ。女として、男としてのお前が」
「専一、私もだぞ。礼里よりもずっと、私の方がお前の事を好きだ」
「……張り合うところではないはずだが?」
え、なんだって?(難聴)
えー、と……すみません。わたしの耳、イカレてます。多分あんまりにも長くぱわぷろ(平仮名)をやり過ぎてたからです。ちょっと中断して病院行って来ますね(錯乱) いやマジで耳がおかしくなってる可能性があるんで、ちょいと病院にガチでいきますよ。
「氷上と付き合い始めたと聞いて、ショックだった。だが、それはもういい。今の関係に満足して、踏み出せなかった私が悪いからな。だが――もう同じ間違いは犯さない。私も、聖もだ」
「氷上と別れろとは言わない。私と付き合えとも言わない。だが、『待っている』とは言わせてほしいぞ。もしパワプロの今の恋が終わったら――私に、声を掛けてくれ。その時を待っている。今の恋がずっと終わらないでも、ずっと待つ」
「……私は待たないが。氷上からお前を奪い返す、覚悟しろ」
「なー!? さっきと言っている事が違うぞ!?」
「気が変わっただけだ。やはり待つのは性に合わない。ともあれ――」
「う、うむ……ともあれ、だ。誓いの証は必要だな。決意表明だ」
左右の頬に、二人の顔が近づいてきて……?
チュ。
……ん? えっ。今……もしかして……?
「――今のを忘れるな、パワプロ。力場専一。私の、本気の意志だ」
「は、はははは、破廉恥だがっ!
うーん(失神)(ログアウト)
ちょっと病院行ってきますね。すまんがパワプロくん、戻ってくるまで寝ててくれ。
※神様は本人の本音を引き出しただけです。
※プレイヤーが不正な手段でログアウトすると、キャラはそのまま原因不明の失神をします。
※想い人が目の前で失神した場合、二人の取る行動とは……? なおリアルでのタイムとゲーム内時間はズレてるので、復帰までそんなに間は空かないですけれども。
面白い、続きが気になると思って頂けた方はポチ〜とお願いします。次回もまた見てくださいねー!
高校編での仲間(意味深)は誰が良かろうなのです?
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友沢亮などの優秀な男性選手
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柳生鞘花、冴木創などの優秀女性選手
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他はモブでええやろ(無慈悲)
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作者の裁量に任せるで!(有情)
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こんなにも辛いのなら、愛など要らぬ!