男女混合超野球連盟ぱわふるプロ野球RTA   作:飴玉鉛

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ブチ転がすぞオオガミぃ!

 

 

 運命の相棒と再会してしまったので再開します(激ウマギャグ)

 

 ――話をしよう。あれは今から100……いや、40年前だったか。まあいい、わたしにとってはつい昨日の出来事だが……視聴者達にとっては多分、明日の出来事だ。

 彼には11通りの派生キャラがいるから、なんて呼べば良いのか……確か最初に会った時は……矢部明雄! そう。アイツは最初から言う事を聞かなかった。わたしの言う通りにしていればな。まあ……良い奴だったよ。

 

 パワポケ時空に巻き込んだ時はホントすまんかった(小声)

 

 本作の矢部くんは、パワプロくんと同じで常に野球ユニフォームしか着ていない、なんて事もなく。普通に制服姿なので帽子を被っていません。

 なので長年謎だった髪型も見る事が出来るんですが、パワサカの『矢部坂秀人』と同じ髪型です。茶髪の普通の髪型で、アホ毛があるアレですよ。そしてお馴染の眼鏡を掛けています。

 で、その矢部くん。分かりやすい嫉妬ビームを飛ばしてきて、名前も知らないクラスメイト君とこっちを睨んでますね。

 しかしそんなのは気にしません。矢部くんとは迷惑を掛けて掛けられての間柄、文字通りの戦友だった事もあります。この程度で嫌な印象を覚えたりはしませんよ。初対面だとこんなもんだよなー、ぐらいにしか思いませんね。

 

 過去シリーズでの矢部くんは、性能面で言うとぶっちゃけ二線級のキャラです。選手能力は微妙な上にくれるコツもヘボく、イベントもイマイチなんで同じデッキに組む意味とかないでしょう。

 が、本作では矢部くんも優遇措置が取られています。というのもパワプロくんの相棒ポジが矢部くんで固定されておらず、ランダムで相棒枠が決まるようになっているので(※わたしの今生だと聖ちゃんが該当します)、必ずしも矢部くんと遭遇できるわけじゃなくなっているのです。初期パーティメンバーにありがちな、弱い性能で据え置きにする意味がなくなったんですよ。

 なので矢部くん自体の性能も、鍛えたら『男・矢部明雄』のステになり一流選手として活躍してくれるようになります。そして更にそれとは別に、とあるメリットが生じるんですよ。

 友情タッグが組めるほどの友好度を稼いでいた場合、親友と認めてくれて、ビビリながらも危ない時は助けに来てくれる熱い男になってます。万が一パワポケの闇に呑まれたら付いてきて、味方としてサポートしてくれるのです!

 ……まあ現状、その万が一も起こらないように立ち回ってるんで、矢部くんの役割はほぼ無いんですけどね……。

 

「な、なんでやんすか……?」

 

 はじめ、パワプロくんへの嫉妬か何かで、目も合わせてくれないでいた矢部くん。ジッと見られると流石に困惑してきたみたいです。眉を落としながらもこっちを見てきました。

 ですがわたしからは何も言えませんね……落ち着いて考えを纏めましょう。

 わたし個人としては矢部くんに友情を感じてますし、色々と受けた恩に感じ入るものもあるんですが……RTAに情は邪魔です。残念ですが、矢部くんを仲間にする必要はありません。鍛えたら一流選手になるんですけど、こっちはもう高校→プロ路線で考え、高校時代の面子は粗方固まってるので矢部くんを入れる必要がないのですよ。わたしのチャートが完璧過ぎる弊害ですね。

 

 なので、情を抜きにして結論を出すと……邂逅できたこの偶然は嬉しいのですが、矢部くんはスカウトしません。

 すまんな矢部くん……。君と野球するのは、また次回……RTAじゃなくて普通にプレイしてる時にします。次回こそ一緒にプロになろうな……。

 ……。

 ………。

 …………よし。割り切りました。そういえば矢部くんと一緒にプロになった事ねぇなって思い出してモヤっと来ましたが、それを晴らすのも次回です。

 かなり、いや、ちょっとですね。ちょっとですよ?(強弁) ちょっと寂しいですが、矢部くんとはただのクラスメイトで終わりましょう。計算してなかった要素を加えたらチャートが乱れる元になりかねないんで。

 

「……いや、なんでもない。折角クラスメイトになったんだし、普通に仲良くしたかっただけなんだが……悪かった、迷惑そうだし諦めるよ」

 

 こう言って距離を置きましょう。矢部くんは確か中学から野球を始めたとか言ってましたよね? んで、万年補欠だったから高校では漫画研究部だかなんだかに入るはずだったみたいで、わたしが無理に誘わない限り野球部に入る事がないはずなんですよ。となると必然的に世界観の闇に確定で関わらないんでわたしが沼に落ちても彼は無事です。平和に暮らすんだよ、矢部くん……。

 

「ちょ、ちょっと待つでやんす!」

 

 ん?

 

「なんだかオイラ達が悪者で終わりそうな流れはやめるでやんすよ! これだとまるでオイラが嫌な奴みたいでやんす!」

 

 んん? んー……言われてみればその通りですね。フォローしとかないと、矢部くんと名前も知らない彼がクラスで浮くかもしれません。

 なんせパワプロくんは『人気者』で『モテモテ』です。クラスカーストは自然と上位に位置してきます。それを邪険にしたんじゃあ、周りの見る目が険しくなるのも必然。

 友達としては普通に良い奴な矢部くんが、嫌な目に遭いそうになるとこっちも嫌な気分になります。フォローぐらいしておくべきでしょう。

 

「気にすんなよ。ほら、俺って野球しか知らないしさ、つまんない奴なんだよな。だからまあ……その、あれだ。普通に友達になっとこうぜ。俺の知らない事とか、これから色々教えてくれよ」

「うぎぎ……そんなふうに言われると断れないでやんす……パワプロくんに言われると集団圧力が掛かるでやんすよ? でも……なんでか、嫌な感じはしないでやんす。……ごめんでやんすよ、初対面のパワプロくんに、嫌な態度取っちゃってたでやんす」

「いいって」

 

 苦笑いして手をヒラヒラ振って、適当にお茶を濁す感じにします。で、これで矢部くんとその隣の奴がクラスで浮いてたり、変なイジメとか受けないように目を光らせておきますか。

 彼らがどんな目に遭ってもわたしには関係ないんですが……ほら、アレですアレ。BADイベントがどこで起こるか分からないんで、そういう芽が出そうなら摘んでおくのが最善ですから。他意はないです。

 

「……そういや、俺お前のこと知らないんだけどさ、なんでお前は俺をパワプロって呼んでるんだ?」

 

 ふと気になったんで訊いときましょう。

 パワプロくんは確かにパワプロくんですが、本名はそれじゃありません。愛称ですよ、パワプロ。パワプロくん呼ばわりされるほど、今回の矢部くんとは親密じゃないんですけど。

 訊いてみると、矢部くんはなぜかハッとしたようです。

 

「そ、それは……なんででやんすかね……?」

 

 俺に訊くな(素)

 

「うーん……あ、そうでやんす! パワプロくんって呼び方が流行ってるからでやんすよ! ほら、【パワプロ世代】って言われるぐらい有名な上に、パワプロくん自身が有名人でやんすからね! つい呼んでしまってたでやんす。不快ならやめるでやんすが……」

「いや、不快じゃねえから気にすんなよ。お前、名前は?」

「オイラは矢部でやんす! 矢部明雄! で、こっちが……」

『――だよ力場くん』

「ふーん。矢部くんと――くんね。よし、覚えた。一年間よろしくな」

 

 よろしくでやんす、と普通に返事してくる矢部くん。

 矢鱈と遠慮のない矢部くんに違和感がありますね。今のパワプロくんはイケメンで上位カーストの有名人……メンタルが弱い矢部くんなら普通、ビビって面と向かって話すのに勇気がいる対象になるはずなんですが。

 まあフレンドリーに接せられる雰囲気がパワプロくんにあるんでしょう。パワプロくんの人徳ですよこれが。

 ともあれ矢部くんの事はもういいです。今年もちーちゃんとの仲をクラスメイトの枠の中で深めていきます。で、何気にわたしの行く高校を進学先にするように誘導して、高校だと野球部の助っ人として確保すれば、外野か一塁三塁を任せられるようになります。早速ちーちゃんに絡みに――

 

「パワプロくん! ちょっと待つでやんすよ!」

 

 えぇ?(困惑)

 なんでまた呼び止めるの?

 

 戸惑ってしまいますが、矢部くんは空気が読めないとこがあるんで、気にしないようにしましょう。

 なんでか矢部くん、必死そうな雰囲気ですし。いや、なんででしょうね。

 

「じ、実はオイラも野球部でやんす……」

「おっ、そうなのか?」

「そう、そうなんでやんすよ。ただ……オイラ、補欠なんでやんす。才能がないでやんす。だから……一度ぐらいレギュラーになりたいでやんすし、パワプロくんに教えて貰えたらラッキーかなー……って思わなくもないというか、でやんす……」

 

 語尾にやんすを付けたら誤魔化されると思うな(迫真)

 まあ……それぐらいやったらええやろ。学校にいる間だけだぞ。

 

「! ありがとうでやんす!」

「……おう」

 

 他人に教えるという行為を継続的に続けるのはわたしにとっても旨味がありますしね。超特『精神的支柱』やら『不動の四番』やら、本作から実装された『オーダーメイド』とかのコツが掴みやすくなるんで。

 この『オーダーメイド』の下位能力、特殊能力は『選定眼』でして、これがあると見ようと思った人のステータスが覗けるようになるんですよ。他ゲームで定番の『鑑定スキル』のぱわぷろ(平仮名)版ですね。超特『オーダーメイド』を掴むと他人のステを丸裸にできるんで、かなり有用です。その分取得条件がかなり厳しいので、他人を鍛えまくる必要があるんです。

 なので矢部くんの申し出は渡りに船。やらない理由はありません。ただ、矢部くんが覚醒したら面白そうですし、ちょっとだけ贔屓しても……いい、ですよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近、パワプロの事を気安く『パワプロ』呼ばわりする奴が増えてきたな」

 

 なんだお前(素)

 練習中に、急に礼里ちゃんがそんな事を言ってきました。だからなんだよとしか思わないんですが……。

 

「たしかにな。そのあだ名は最初、私達しかしていなかったというのに。これではなんの特別性もないぞ」

 

 聖ちゃん? 聖ちゃんまでどうしたんですか急に。

 

「専一。これからはそう、名前で呼ぶ。仲の良くない奴には勝手に名前で呼ばせるな」

「うむ、私もこれから名前で呼ぶぞ。専一、礼里の言うように名前呼びを勝手に許すな。プレミア感が薄れるではないか」

「お、おう……」

 

 なんなの? ホントなんなの? いやまあ分かります、ホントは分かってます。この二人が実は非攻略対象ではなかった、攻略可能な娘達なのは分かってます。なのでこれは彼女達からのアプローチなんだって、本当は分かってるんですよ。マジで。

 しかしですね……それが分かったところで、この二人を攻略する予定なんかなかったわけで……チャートに組んでない行動はどうも躊躇われます。なので今はどうしたもんかと考え中なんですが……。最初は強くあたって後な流れでいくしかないんですかね(投げ槍)

 

「霧崎さん、六道さん。センくんは今日、私と帰る予定だから」

「む……」

「………」

「邪魔、しないでね」

 

 ここで聡里ちゃんのインターセプト! 二人を牽制して威圧してます。

 特に怯んではいない二人ですが、パワプロくんの恋人である聡里ちゃんを尊重してはいるようでして。無理に割って入ったり邪魔しようとはしません。

 ほんまええ娘やな……。

 クッ……せめて、せめて聖ちゃん達から貰えるコツと、どんなイベントがあるのか事前情報さえあれば、オリチャー発動する勇気も持てるんですが……!

 流石のわたしもいきあたりばったりで踏み込む勇気はありません。礼里ちゃん達とは今の関係のままの方がベストですし。安定性的な意味で。

 

「――センくん、行こ」

 

 練習が終わると、聡里ちゃんに急かされて帰路に就きます。

 ウソです。デートの時間ですね。今日は釣り堀にでも行って、餌の虫を触るのが苦手な可愛い聡里ちゃんを拝むとしますか。

 そろそろ超特『変幻自在』のコツもくれるでしょうし、その後は経験点をくれる期間を過ごせば、晴れて聡里ちゃんの彼女任期が満了しますんで。

 まあ、その前に彼女のイベから関連して、一人の有望株な選手を引っ張って来れるんで、その前段階のイベとして聡里ちゃん家の実家に行く必要があります。聡里ちゃんの実家にある道場で合気道を教わるイベがあるんです。それのイベを踏めば……条件が満たされてイベが発生するんですよ。

 

 二人で談笑しながら歩きます。最初は不機嫌そうだった聡里ちゃんも、段々機嫌を直して自然な笑顔を浮かべるようになってくれました。可愛い。

 可愛くて強くて献身的とか最高ですよ。円満に別れる予定なんですが、やはり継続して関係を保ち続けたいです。もし目標のトロフィーをゲットできたら後日談でパワプロくんのお嫁さんになっててほしいですね……後日談だとわたし達プレイヤーには手出し不能ですし、気兼ねなく結婚しててくれたら後味もよろしいんですけど。

 あ、そろそろ聡里ちゃんと円満に彼氏彼女じゃなくなる方法も、今の内から説明しておきましょうか。簡単ですよ? まず聡里ちゃんとのデートの頻度を増やしまくって――

 

 

 

「――センくんッッッ!!」

 

 

 

「はっ?」

 

 突然、聡里ちゃんから突き飛ばされました。

 イッテェ! いきなり何するんですか聡――

 

 

 

 

 ――窓ガラスにスモークの貼られている大型車が近くに急停止している。

 ――黒スーツの大柄な男たち四人が、こちらを見ている。

 ――突き飛ばしてきた聡里ちゃんの腕を掴み、捻り上げて――ボキ、と折った――

 

「っ……逃げて!」

 

 ――逃げて? 逃げろだと? こっちが目当てなのか――逃げろ逃げるべきだ――逃げたら捕まってる聡里ちゃんは?――どうなる――

 

 ――は。考える必要なんかねぇわ。とりあえず――

 

 

【俺の女に何してやがんだテメェらァッ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

「――聡里ちゃん、病院に行くぞ」

「う、うん……アレは、いったい……」

「今気にする事じゃねえよ。そんな事より早く病院だ。クソッ……アイツら聡里ちゃんの腕、折りやがって……次見掛けたらぶっ殺して――」

「やめて。そういうの、いいから」

 

 四人の男達は、明らかに戦闘訓練を積んでいるプロだった。

 それを、激怒したセンくんは、触れられもしないで一方的に叩きのめしている。けど私を取り戻すのに専念していたセンくんの隙を見て、さっきの集団は逃げていってしまった。

 センくんは私の心配ばかりしてる。嬉しいけど、悔しくもある。センくんは明らかに、私より強かった。護るべき人より弱いなんて認められない、もっと私も強くならないと……。

 

 怒りが収まらないのか、センくんは物騒な殺気を隠そうともしない。もしかしたら、次会ったら本気で殺しに掛かるんじゃないか、というぐらい迫力がある。けど、そんなセンくんは嫌だった。

 センくんは野球選手になる。世界一の選手になる人。道を誤ってほしくはなかった。

 

「聡里ちゃん、でもさ……」

「センくんは、自分の事を大事にして。……気づけてよかった。反応がもう少し遅かったら、私は……」

「………」

 

 救急車が近づいてくる。センくんは私の腕の応急処置をした後、すぐに救急車を呼んでくれていた。

 私は想像する。もしもを。もし、あの時……接近してくる車の気配に、嫌な予感を覚えずにいたら。反応が一秒でも遅れていたら。ドアを開くなり、同時に腕を伸ばしてきた白人の大男に、センくんは捕まっていただろう。

 幾らセンくんが強くても、掴まれてしまったら腕力の差で車の中に引き摺り込まれていたに違いない。そうなるとどうにもならず、攫われていた。

 

「センくんは……あの人達に心当たりはある?」

「ねえよ。あってたまるか」

 

 吐き捨てるようにセンくんは否定する。

 救急車に乗せられて、病院に急ぐ中―― 一緒に来てくれていたセンくんはずっと、無事な方の手を握ってくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




速報。聡里ちゃん、一時戦線離脱。

面白い、続きが気になると思って頂けたなら評価等よろしくお願いします。

そろそろ第二次アンケート結果に沿った遭遇が始まる、かも……?

科学ノ発展ニ犠牲ハ付キモノデース。

  • 構わん、やれ
  • ヒェッ……(やめてくれよ)
  • やってもええけど成功パターンでオナシャス
  • こんなに辛いのなら愛など要らぬゥ!

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