男女混合超野球連盟ぱわふるプロ野球RTA   作:飴玉鉛

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お待たせしました。諸事情で筆を取る暇もなかったので何日も日を跨いでしまってました。申し訳ありません。それと、前話の題を少し変えました。
そろそろ皆さんも本作を忘れてる頃合いなので初投稿です。


トロフィーとエフェクト現象について

 

 

 

 

「――話は分かった」

 

 専一が起きたのを感じると、私は背筋が凍りつくような恐怖を覚えた。

 半ば以上錯乱していたとはいえ、私のした事は違法行為の住居侵入だ。しかも素性の定かでない老人まで連れて来てしまっている。

 親しき仲にも礼儀あり。怪しい老人を連れて来てしまった時点で、どれだけ親しくても拒否感を懐かれるのが自然だろう。

 それが、怖い。このまま眠っていて欲しいとすら微かに思った。

 人の心が今まで以上にハッキリと感じ取れてしまっている。だからもし専一から少しでも拒まれてしまったら、私はもう耐えられない。

 専一は売られてしまった私を支える、かけがえのない精神的な支柱で――その柱が折れてしまったら、私はきっと壊れてしまうだろう。

 

 だが、その恐怖は杞憂だった。起きるなり私を見た専一は、驚きこそしていたが負の感情をまるで懐いていなかったのだ。

 それどころか私を心の底から心配してくれていて、暖かい慈しみを感じる。心底から私を大事に想ってくれているのが伝わってくる。――そうだ。専一はこういう奴だって分かっていたはずだ。だからというわけではないが、私はコイツを……好きになった。心の底から信頼できていたんだ。

 私の身に何があったのかなど、冷静に考えると話すべきじゃない。だが私は堪えられなかった。理解や想像を超えて襲い掛かってきた全てを、私一人で抱えてなどいられなかった。

 だから私は専一に昨日何があったのか、包み隠さず話してしまう。

 荒唐無稽だろう、到底信じられないはず。しかし専一は否定する素振りも、その感情もなく信じてくれた。()()()()()()()()()()()()()()()()、と無条件に信じてくれた。

 それが、どれだけ嬉しかったか……どれほど救われたのか、専一には分からないだろう。昔からとても強引で、『俺様』で、私達を引っ張って行く力強さを持っていたコイツは、どれだけ濃い闇も祓う光のような男なのだから。

 

「あの親御さんがね……訳の分からん連中に礼里ちゃんを売った、か……」

 

 悩ましげに呟く専一は、懐疑的というよりも半ば確信しているようだ。私もその心を感じて、冷静さを取り戻す。

 専一は言葉にはしなかったが、私の父と母の姿を思い浮かべていた。のほほんとしていて、優しく微笑む両親の姿を。

 ――ああ。そうだった。あの人達は――私を、大事にしてくれていた。

 どうして信じられなかったのだろう。私を売ったから? ……売るような人達じゃないと、私が一番知っているはずなのに。

 思えば、私は動揺し過ぎていた。だが今になって思い返してみると、様子がおかしいと気づける。両親はどこか心ここに在らずといった様子だったのだ。

 

「俺には信じられねえな。その……超能力だっけか。礼里ちゃんは人の心を読めるようになったんだって?」

「……ああ。正確に、ではないが……大まかに何を考えているのかが、言語としてではなく感覚として分かる。博士に手術された直後はもっと鮮明だったが今はそこまででもない」

「オカルトじゃねえか。なら俺としちゃ、あの二人もおかしくされてるんじゃねえのって説を推すね。礼里ちゃん、なんか心当たりあるか?」

「心当たり……? そう、だな。なんとなく……カメラと、宝石のようなヴィジョンが視えた気が……」

「……宝石?」

 

 ――ソウルジェイル……闇野か? 闇野がジャジメントにいるのかよ?

 

 専一の思念が流れ込んでくる。私は顔を顰めた。例え専一が相手でも、好ましい感覚ではない。このままの状態だと、人の多い所に行けば頭が割れてしまいそうだ。

 私は強くこめかみを揉み、なんとか得体の知れない力を抑制する。理論だなんだと細かいことは分からずとも、感覚的に力のON-OFFが可能な気がした。

 強く抑え込む。すると思念は本当に微弱に感じられる程度にまで収まった。

 これでいい。例え相手が誰であっても、無思慮に人の心に踏み込むのは駄目だ。人としての領分を逸脱してしまう。だが、こうして抑え込む前に聞こえてしまった声ならぬ声が、どうにも私には気に掛かって仕方なかった。

 

「専一……ソウルジェイルとはなんだ? 闇野というのは……」

「あ? あー……声に出しちゃいなかったんだが……聞こえてたんだな。気にするな、って言っても無理があるか……でも悪い、言えねえ」

「そう、か……」

「……あのさ、礼里ちゃん。暫く親御さん達はあのままだ。心を失くしたまま今までのルーチンで過ごしてく。だけど心配しなくていい、死にゃあしねえ。五年もすりゃ俺がなんとかしてやれっから」

 

 何を根拠に、そう言えるのか。問い掛けようとして、やめる。

 五年。その長過ぎる時間の隔たりに、気力が萎えてしまったのだ。

 冷静な部分の自分が、専一が何かを。――まるで都市伝説のようにあやふやな――何かを知っている事を確信する。

 なぜ、という疑問が頭の片隅で鎮座するのを気に掛ける余裕はない。私は乾いてしまいそうな心でポツリと呟いた。

 

「五年……五年も、父さん達はあのままなのか……」

「……礼里ちゃんには悪いけどな」

「……私は……あんな事になってる二人と、過ごせる気がしない。なんとか、できるんだな?」

「信じろ。俺はウソが大っ嫌いだからな。五年だ、五年以内に絶対、必ずなんとかする」

「……分かった。信じよう。……それまで、私はこの家にいる」

「ん?」

「正確にはお前の所にいる。……怖いんだ。私を、一人にするな。……ダメ、か?」

 

 本当は今すぐにでも両親をなんとかしたい。だがそれは無理なのだろう。どれだけ抑え込んでも微弱な思念は感じる、専一はウソを言っていない。それにこんな力が無くても、専一がウソを吐かない事ぐらい知っていた。

 不安だった。この力もそうだが、何より……専一がいないと、()()だった。説明できない孤独感と、心細さで……軋んでしまう。

 

 専一は戸惑っていたが、やがて頷いてくれる。受け入れて、くれた。

 

「ダメじゃねえよ。幾らでも頼れ、幼馴染だろ?」

「ああ……ああっ」

「俺だけならともかく、聖ちゃんもいるしな」

「そうだな……だが……私は欲張りで、諦めが悪い。だから……()()()()()()は、もう嫌だ」

「ん?」

 

 私はベッドに腰掛けている専一の隣にいる。距離を詰めて男の顔を両手で固定した。

 そしてそのまま、接吻する。口に感じる感触に、専一が目を見開いて。私は真っ直ぐに専一を見た。

 

「氷上がいても、関係ない。私はお前についていく。どこまでも……だから、専一。私の全部を、受け止めてくれ」

「あっ、ああ……」

 

 自分でも、自分の身体能力が上がっているのが分かる。

 今なら押し倒せる。その確信が体を昂ぶらせた。何もかもを与えたい、捧げたい、そんな衝動。私は専一の体に抱きつき、そして――

 

 

 

「ウ、ウゥン……ハッ、ココハ? ココハイッタイ何処ナノデショウ? オヤ、コレハオ嬢サン……オゥ、しょっきんぐがーる……! オ邪魔虫ハ馬ニ蹴ラレテ死ンデシマイマース……マダ寝テオキマショウ」

 

 

 

「――ぅぅううおおぉぉぉ!? 離れろ礼里ちゃん、こういうのは勢いでやっちゃダメだッ! 後悔しないでもズルズル行っちまうだろ!」

「チッ……」

 

 第三者の声で我に返った専一が私を無理矢理――しかしやんわりと押しのけてくる。私はそれに逆らわなかった。

 流石に、見られながらは無理だ。

 私はじろりと寝たふりをする老人を見た。老人は冷や汗を浮かべている。

 冷ややかな目で老人を見ていると、やがて観念したように床で転がされていた老人が体を起こした。固い床で寝ていたのは老体には堪えたようで、腰を摩りながら視線を向けてくる。

 

「――で。アンタ、誰だ」

 

 気を取り直して、私から少し距離を離す事もせず、専一は寧ろ私の肩へ腕を回して密着してきた。

 切り替えが早い。下心だのなんだのは皆無だった。純粋に老人――博士を警戒して、私を不安にさせないようにするために触れてきたのだと分かる。

 腰は微妙に浮いていて、臨戦態勢だ。専一が物騒な目を向けるのに、博士は気不味げに頬を掻いた。

 

「……言イニクイノデスガ、マズココハ何処ナノデショウカ? 無理ナ運動ヲシテイタセイカ、此処ニ来ルマデノ記憶ガ不確カナノデース……」

「ここは俺ん家だ。で……礼里ちゃん。コイツ……っていうのは失礼だな。この爺さんは誰で、なんで俺の家に連れてきた?」

「私も詳しく覚えていない。捕まって、何かをされて……気がつけば夜の街を走っていたからな。ただ博士が私を逃してくれたのは覚えている。恩人……なのだろう。連れてきたのは無意識だった、私にも理由が説明できない」

「恩人? ……微妙だな。礼里ちゃんを攫ったクソ共の組織にいた爺さんを、信用していいのか怪しむ俺がいるし、礼里ちゃんを逃してくれたって事に恩を感じてる俺もいる。……どっちの俺で行くべきだと思う?」

「信じていい。私が保障する。博士は確かに怪しいが……最後の一線を越えてはいない、気がする」

「分かった。じゃ、信じる」

 

 専一は頷き、それから時計を見た。朝練にはもう間に合わねえな、と他人事のように呟いて、そして私に視線を定めた。

 

「礼里ちゃん、下の階に行って父さんと母さんに挨拶して来いよ」

「……今からか?」

「おう。いきなり俺ん家に来て泊まってましたとか、割と洒落になんねえしな……適切な説明、頼むぞ」

「分かった」

「変な事は言うなよ? 絶対だからな? フリじゃねえからな!」

「分かっている。そんな不義理な真似はしない」

 

 専一は露骨に私を遠ざけようとしている。この博士と二人で話したいからだろう。

 私もここに留まりたかったが、専一が私のために言っているのだから無理に我を通す気にはなれない。大人しく言う通りにする事にした。

 部屋から出ていく。何を話したかについては、後で訊けばいいだろう。

 廊下に出ると、唇を撫でる。若干名残惜しい気がしたが……。

 

「――押せば意外となんとかなりそうだな」

 

 こんな時なのに、場違いにもそんな事を思ってしまう自分は薄情なのだろうか。

 依存してしまいそうになるほど頼りになる男へ、女の本能が疼いているのだろう。その庇護下に置かれたいと、情けない事に私は渇望してしまっている。

 弱いな、嫌になるほど。だが……専一に寄り掛かる自分を想像すると、それがとても甘美な理想に視えてきてしまって――私は頭を左右に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――恩人? ……微妙だな。礼里ちゃんを攫ったクソ共の組織にいた爺さんを、信用していいのか怪しむ俺がいるし、礼里ちゃんを逃してくれたって事に恩を感じてる俺もいる。……どっちの俺で行くべきだと思う?(キリッ)――

 

 だっておwww こんなん草に草生やしてまうわwww

 組織って。組織って! 幾らパワプロくんが中2とはいえ、厨二なムーブは背中が痒くなるやろがい!

 ぱわぷろ世界にパワポケ要素があって、厨二的なムーブを大真面目に行なえるとはいえですよ、真顔で言うのはちょっと無理っす!

 

 ――だなんてふざけた事は思いません。

 

 少し現実逃避したかっただけです。

 危うく礼里ちゃんに逆○されるとこでしたが、満更でもなかった自分に喝を入れましょう。紳士たるものjkになるまで手出しはしませんよ。

 え? jkもダメだろ、ですか? パワプロくんも同世代だから問題ありませんよ(強弁) 大体お忘れかもしれませんが本作は18禁です。ぶっちゃけ個人の信条に反しないなら何をシても問題ないのですよ。

 とはいえ礼里ちゃんをそういう目で見るのはちょっと戸惑うんですがね。ってか聡里ちゃんいるのにそんな不誠実な真似はいかんでしょ(真面目) 付き合ってる娘がいる内はその娘の事しか目に入れないのがポリシーです。

 

 閑話休題といきます。本題に入りますよ。

 

 わたしの前には今、悪名高き彼のダイジョーブ博士がいます。

 ダイジョーブ博士に関して、今更説明の必要はないはず。ですが一応は簡単に説明しておきましょうか。

 一言で言えば、彼はマッドサイエンティストです。自称、スポーツ医学の権威だとかなんとか。過去作でのダイジョーブ博士に遭遇すると、病気治療、やる気向上、疲労回復、能力強化などの選択肢から、好きなものを選んで実行できます。しかしそれは確定で成功するものではありません。能力強化に成功する確率は僅か30%と低く、失敗する事の方が遥かに多い。結果、手術に失敗すると各能力が大幅にダウンします。成功したら線対称的に能力が上がるのですが、賭けの要素が強いため堅実な育成を望むなら関わらないのが大吉です――が、今回はそうも言っていられません。既にガッツリ関わってしまってますので。

 

 本作のダイジョーブ博士は、プレイヤーが高校時代に入るとフリーになっているのですが、プレイヤーの中学時代ではパワポケ要素であるジャジメントに捕まっており、無理矢理協力させられている被害者枠の立場にいるのです。

 プレイヤーの中学時代では、その地元に半々の確率でジャジメントの日本支部があって、日本の掌握に勤しむオオガミと抗争に突入してしまいます。プレイヤーが関与しない限り確定でオオガミが抗争に勝利するので、敗北したジャジメントという組織のゴタゴタに紛れて雲隠れし、離脱するのに成功するわけですね。――ちなみにパワポケ世界に入りたいプレイヤーの大多数は中学時代からスタートするようです。ジャジメントとオオガミの抗争にわざと巻き込まれ、超能力者なりサイボーグなりに自分から転じて、能力を一気に引き上げる事でプロへの道を邁進するムーブをやるのだとか。

 

 わたしはやりませんが、効率的ではあるのでしょう。パワポケ界から抜け出すのが難儀で、リスキー過ぎる点が多々ある事に目を瞑れば。

 

 で、ダイジョーブ博士は誤解されがちですが、外道ではあっても邪悪ではありません。奇をてらった手段でプレイヤーを誘拐したりなんだりをすることはあっても、手術自体は任意で行なってくれます。余計なお世話だ! とでも言えば記憶を消して帰らせてくれるんですよね。

 科学の発展のためには犠牲を厭いませんが、あくまで同意を得られなければ素直に解放してくれますし、手術する事に同意すると言っても念入りにリスクを説明し、何度も確認を取ってくれる親切っぷりです。脅迫などをして無理に同意させる事もない。なので最後の一線を越えていない、という礼里ちゃんの評は間違っていない事になるのですよ。おおらかな心で見れば。

 

 ……前々回ぐらいの動画を、ブチ転がすぞオオガミぃ! という題でやってましたが、犯人はジャジメントでした。

 題的にジャジメントぉ! よりオオガミぃ! の方が語呂が良かったので、ついオオガミに冤罪を擦り付けてしまい申し訳ありませんでした(棒読み)

 

 というわけで、ダイジョーブ博士から話を聞きましょう。

 どうやら彼はこれを機にジャジメントから逃げ出すつもりのようです。礼里ちゃんという、同意もない少女を無理矢理オペらされた事でほとほと愛想が尽きて、良心の呵責もあって雲隠れするつもりのようですね。

 一応、彼からジャジメントやオオガミなどの概要を聞いておきましょう。今のパワプロくんが知ってるのは不自然なんで、ダイジョーブ博士から聞いたというプロセスを挟む必要があります。礼里ちゃん相手にはボロを出してしまいましたが、どのみち『読心術』を持ってる礼里ちゃん相手にはボロを出さなくても不可抗力的に、ある程度は露見してしまう事になるんで気にしない方向でいましょう。良い娘なんで訊かないでと言えば引き下がってくれるはず。

 

 ――ふむふむふーむふむ。なるほど、把握。

 

 礼里ちゃんに施したオペは単純な身体強化と、秘めていたESP能力の才能を開花させた程度のものですか。オペ終了直後からの記憶が曖昧なのは、強すぎる超能力が脳を圧迫していたから、と。

 簡単に逃げられたのは、追っ手の思念を一年戦争末期のアムロばりに感じ取り、追跡を躱すのが容易だったから。少し時間を置いた今は、超能力に脳が追いつき処理が可能となって、ON-OFFが簡単になってるはず――ですか。

 なるほどなるほど……。

 

 これ、担当がダイジョーブ博士じゃなかったらヤバかったんじゃ?(素)

 

 ジャジメントは超能力を開発してます。古典ラノベとある魔術の禁書目録の学園都市ばりに真っ黒な研究もしてますね。成果はさておき。例えが分かり辛い? ネットで検索したら出てきます。面白いので一読の価値ありです(ステマ) んで、超能力開発の科学者はそれに伴って相応数が存在してるんで、下手な科学者が担当にならなかったのは不幸中の幸いとしか言えませんね。

 ガチでダイジョーブ博士、礼里ちゃんの恩人説がわたしの中で急浮上してきてます。確定で成功する強化手術できるなら、歴代のパワプロくんにもやってやれよとか思いますが……礼里ちゃんの場合、同意がなかったから科学の発展のための冒険をする気がなかったのだと思います。確立されてる既存の技術だけを使えば、そら(失敗する事は)そう(滅多にないでしょう)よ。

 ダイジョーブ博士がこれから一人で逃げられるのか疑問ですが、なんとかするための考えはあるようです。ならここでお別れしてもいいでしょう。パワプロくんが成人して独り暮らししてたら匿ってあげられたんですが、あいにくとまだガキなので無理です。さっさと窓から出ていってもらいましょう。

 

「迷惑ヲオ掛ケシテ申シ訳アリマセン……モシモマタオ会イスル事ガアレバ、ソノ時ハ借リヲ返サセテクダサーイ。恩知ラズニナル気ハ毛頭なっしんぐデース」

 

 別れ際にそう言って、博士がアイテムを置いていってくれました。

 『ダイジョーブの成功手形』ですね、これ……マジか(素)

 いや、これかなり有用なアイテム貰えましたよ。何が凄いってこれ持ってると、ダイジョーブ博士はオペを確定で成功してくれるんです。

 しかし残念ながら使う予定はありません。わたしとしては是非ともオペってもらって、能力を大幅に強化してもらうのが効率的だと思うんですが、わたしの目指してるトロフィーの取得条件に引っ掛かる恐れがあるんですよ。

 

 そうですね……これを機にトロフィーの取得条件を解説しておきましょう。

 

 最初に申し上げました通り、わたしは高卒ドラ一位で本作のオリジナル球団『津々家バルカンズ』に入団して、絶対エースとして君臨する事で獲得できるトロフィー『投手の王冠』を目指しています。

 球団はどこでもいいんですが、バルカンズは万年最下位脱却のため、大型補強を狙ってる球団なんで、早い段階でエースになりやすいんですよ。

 聖ちゃんもここに入団しますから、幼馴染でなかった場合も都合が良い。優秀な捕手は不可欠ですんでね。

 トロフィー取得条件で『絶対エース』として球団の顔になり、最低五年は君臨しなければなりません。必然、絶対エースになると電撃引退が難しくなるので、クリアするまでどう足掻いてもプロになって最低十年は掛かります。

 で、ここからが重要なんですが……どんな形であれ手術を受けると、『絶対エース』の要素に『復活したエース』か『改造エース』という要素が混ざる恐れがありまして、取得するトロフィーが『投手の王冠』ではなく、類似の『球団の星』や『ドラゴンボール』にすり替わってしまう可能性が出てきます。

 

 本作はトロフィーが豊富過ぎる弊害ですね……未だに未発見のトロフィーまであるんですから、ややこしいったらないですよ。

 まとめると『投手の王冠』を得るために辿らねばならない√が『マウンドの王者』というのですが、その√を辿って獲得できるトロフィーが先述の王冠・星・ボールなんですね。本命に絞るためには、なるべくオペを受けるわけにはいきません。どうしてもオペを受けなければならない事態になるまでは、可能な限りオペは実行しないでおきましょう。或いはパワプロくん以外の面子で、深刻なケガを負ってしまった人を治すのに使うべきだと判断します。

 

 保険があるって素晴らしいと思いません?

 

 

 

「――超能力ぅ? 霧崎ってそんな冗談言えたんだ」

 

 

 

 朝練に出なかった事を詫びつつ、学校の屋上に集まった面子に事情を説明しました。下手に隠すのは愚策、情報は共有するのがベストです。

 集めたのは開幕から懐疑的なみずきちゃんと、曖昧な顔をしてるあおいちゃん、ポーカーフェイスの聖ちゃんと、負傷中のSP聡里ちゃんですね。ここに当事者の礼里ちゃんとパワプロくんを含めた六人でお話中です。

 包み隠さず話しましょう。巻き込みたくないんだ! 俺達だけでなんとかするんだ! なんて間抜けな事をシていいのは、物事を全て都合よく運べる主人公補正持ちだけです。パワプロくんはそんなものは持って――なくもないですが、メインキャラとの遭遇率が高いだけなんで、繰り言になりますが情報共有は緊密に行ないますよ。ガンガン巻き込みましょう、そんで危機意識を共有します。

 

 で、ただでさえ半信半疑なみずきちゃんは、超能力の事を聞くと冗談だと受け取りました。

 彼女らしくもなく、面白みのない普通の反応ですが、無理もありません。

 昨日礼里ちゃんを探して回った事は記憶に新しく、いつもの小悪魔チックなノリでいくのが難しいのでしょう。

 みずきちゃんは割と空気が読める、案外普通の根っこを持つ女の子なんで、デリケートなところは避けてくれるんですよね。ファン含めて彼女をみずカス呼ばわりする人も、ふっつーに良い女になる素養がある事は認めてくれ……くれ……くれなくも、ない、かも?(曖昧)

 

「証拠を出すのは簡単だな。礼里ちゃんに心を読んでもらえばいい。そしたら信じざるを得ないだろ」

「はあ? キャップ、それマジで言ってるの?」

「おうよ。みずきちゃんだけじゃなくて、ここにいる全員の考えてる事を礼里ちゃんが当てたら本物だって分かるはずだ」

「それは……うーん……そうかもしれないけど。でもキャップと聖は霧崎と幼馴染だし、私とあおい先輩だけでいいんじゃない? あんまり疑いたくないけど、口裏合わせる事が絶対に無いとは言えない――あ、もちろんそんな事はしないって分かってるから。ただの客観論ね、これ。だから本気で信じさせたいなら、その客観的な判断基準は置いとくべきでしょ?」

「だな。そんなわけだ、頼むぞ礼里ちゃん」

「……構わないが、余り好ましい感覚じゃない。余り多用させるなよ」

 

 もちろんだ、と答えておきます。礼里ちゃんは一瞬瞑目し、本作オリジナルのエフェクトを出します。銀の粒子が『読心術』発動時に舞い散るんですよ。

 これが綺麗でしてね。プレイヤー以外にもこのエフェクトが視えたりするんで、皆もギョッとしたりしてます。

 

「『霧崎の奴、やっぱり昨日なにかあったみたいね……それでヘンテコな妄想で、自分を守ってるのかも。だとしたら悪いことしたわ……話を合わせてあげた方が良かったかもなぁ。後でキャップと話を擦り合わせとこっと』」

「うぇっ!?」

「分かってはいたがまるで信じてないな。だが、その気遣いには感謝する」

「……みずきちゃん?」

「あ、あおい先輩……一言一句ってわけじゃないけど、霧崎の言ってる事、私の思ってたことです……」

「……でも、それじゃまだ弱いよね。話の流れ的に当てずっぽうでも言い当てられそうだし。次はボクの考えてること当ててみて」

 

 驚愕した様子のみずきちゃんとは異なり、最初から幾分真面目だったあおいちゃんが流れを継ぎました。すると礼里ちゃんは頷き、あおいちゃんの目を見詰めて……お! これ絵面だけなら美少女が見詰め合う百合の園なのでは?

 となると野郎のパワプロくんが邪魔ですね。退散した方がよかったり……するわけないか。手持ち無沙汰なんで聖ちゃんのアホ毛を掴んでみましょう。最近スキンシップ取ってなかったんで。「なー!?」頂きました。可愛い。

 

「何をするのだ! 真面目な話の最中なのだろう!?」

 

 う、羽毛……(イミフ)

 ハッハッハと笑って誤魔化して。とりあえず無駄にシリアスな空気を蹴散らしてると、礼里ちゃんがジト目でこっちを一瞥して嘆息しました。みずきちゃんとあおいちゃんもジト目でこっちを見てます。可愛い。

 何しても可愛いは最強ですね。人類不変の真理でしょう。咳払いをして礼里ちゃんが話し始めます。あおいちゃんがテキトーに考えた、今の話の流れに関係のない思念を読み取ったようですね。

 

「『ボクの魔球は、名前をマリンボールにしようと思ってるんだけど……なんでマリンボール投げたら水が出てくるんだろう? もしかして、これも超能力だったり? あ、でも手汗ボールとか言われたらどうしよう!?』……水が出るのか?」

「う……確かに読まれてるみたいだね。うん、まず先に言っておくと、ボクはあまり霧崎さんの事疑ってなかったんだ。その理由が霧崎さんが今言ったように、なんでかマリンボールを投げたら水が出てくるからだね。普通に考えてありえないよね、これ?」

 

 え? と目を丸くして驚くみずきちゃんをよそに、わたしや聖ちゃん、礼里ちゃんは別に驚いてません。

 というのも本作だと、オリジナル変化球を投げると出てくるエフェクトが、肉眼で視えてしまうんですよ。なぜか機械には映らないんですけどね。

 この現象は珍しいものではありません。オリジナル変化球、オリ変に分類される魔球にエフェクトがつくのは本作の野球界だと常識だったりします。古典ラノベをさっき例に出したんで、その頃の時代で例を挙げると……ヤーグルドの岩川雅規投手の持ち球、カツオカーブが分かりやすいかもしれません。

 現実で変化球にエフェクトなんか付きませんが、本作だとメインキャラ以外の投手もオリ変を投げると、なんらかのエフェクトが掛かるようになってるんですよね。……エフェクトが掛かると逆に打ちやすくなるんじゃ? と思われるかもしれませんが……普通に打ち辛いですねぇ……。その理由はまあ、また追々説明しますが、わたしの投じるオリ変は敢えてエフェクトが出ないようにしてあるだけで、その気になれば出せます。出そうと思えば(王者の風格)

 

 なので寧ろ、そのエフェクトが出る変化球を投げれるのは、超一級品の変化球を投げられる証拠だとして評価が上がるんですよね。

 わたしはとっくに知ってますし、プロを視野に入れてる聖ちゃん達も既知のことです。逆になんであおいちゃん達は知らねえの? ってなります。多分テレビ中継とかだとそのエフェクトが見えないんで、単純にその手の事に言及してる雑誌やらインタビュー映像やらに触れてこなかっただけなのでしょうね。にしても不自然ですが……世間知らずの部類に入ると言えば大体片付きます。

 

 というような事を説明すると、あおいちゃんは露骨にホッとしました。

 

「そ、そっか……ならいいんだけど……」

「えぇ……? 納得しちゃうの? って、もしかして私もクレッセントムーン開発したらエフェクトとかいうの出てくるんだ……?」

「出るだろうな。俺もジャイフォとかナックルで、出そうと思えば出せるし。エフェクトに興味あるなら偉い学者先生の書いた『プロ野球界に見るエフェクト現象』って論文読んでみろよ」

「そんなのあるんだ……?」

「こじつけでしかないけどな、あれ。そんな事よりあおいちゃん。オリ変完成したみたいだし、試しに後で投げて見せてくれよ。興味ある」

「あ、うん。いいよ。どのみち近い内にお披露目したかったしね」

「名前は……手汗ボールだっけ? なんかスゲェ臭そうだな」

「は、はぁぁぁ!? くっ、臭くないし! ボクの手がえげつない事になってるみたいな言い方やめてくれない!? それに投げてる時だけしかエフェクト出ないからね!?」

「冗談だって。あおいちゃんの手なら寧ろ良い匂いしそうだし、逆に嗅いでみたいよ」

「ちょっ、ちょっと急に何言い出すかなこの後輩くん!? 変態なの!?」

 

 顔を真っ赤にして怒るあおいちゃんprpr 可愛すぎかよ。

 なんでか睨んでくる聡里ちゃん。ダイジョーブだって安心しろよー。パワプロくんが下心持つのは君だけなんですから。わたし? わたしはホラあれですよあれ。

 

 という感じで今回はここまでです。いやぁ……礼里ちゃん救出作戦のために考えてた作戦、実行する事にならなくてホントよかったよかった。

 代わりに高校時代が終わるまでに闇野という外道をブチ転がす必要が出てきてしまいましたが――問題ありません。元々そのつもりなので。

 闇野はぶっちゃけ厄介極まるヴィランですが、わたしのチャート上、おいしい餌にする予定だったんですよね。そこに個人的な私怨を乗せるだけなので、別に無駄な労力になる事はないんですよ。闇野の攻略法は割と初期の段階で丸裸にされてるんで、別に脅威になる事はなかったりします。

 

 次回は……うーん。あくまで予定なんで、はっきりした事は言えませんが、夏が終わる所ぐらいまで行きましょうかね。

 行けるかな……行けたらいいな……水着回ですし、終わる気がしないんですよねぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろアンケートをしようと思います。次回辺り。
次回のに罠はありません。強いて挙げるとするなら、誰と仲を深める(意味深)かを選ぶ感じですね。

次回もまたよろしくお願いします。

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