背にした
茹だるような熱気は、全身から。額に滲んだ汗が目に入らないように、乱暴にユニフォームの袖で拭った。
睨みつけるのは、14.02m先で捕手の掲げる茶色い的。射落とさんとするのは、打席に立つ最大の好敵手。
場面は六回裏、得点は0対0のまま最終回にもつれ込んでいる。白熱した試合展開に、明治神宮球場は溢れんばかりの声援で揺れていた。
だがその全ての声援も、状況も、意識にはない。あるのは燃え立つような対抗意識、ライバルを打ち取ってやるという闘志のみ。
この日、僕――猪狩守は六回を投げて被安打数5の無四球無失点と快投し、絶好調と言える内容を続けていた。一時は一塁と三塁に走者を進められたが、それでもほぼ完璧な投球だと言えるだろう。
しかしそんなものなど誇れはしない。相手チームのエースはここまで、パーフェクト・ピッチングをしているのだ。四回表で一番打者がショートゴロを打つまで、誰もバットにボールを当てる事すら出来ず、それ以降はファールを打ちはしても結局三振に切って取られてしまっている。
アウトカウント全18の内、17個を奪い取ってきた世代最強左腕。完全試合達成まで、あともう一息。それを前に、五本も安打を浴びている僕が誇れるほど、僕の自尊心は安くなかった。
勝つ。投球内容で負けていようが、試合には勝つ。野球はチームでするものだ、チームで勝てばそれでいい。そのためにはこの回を抑え、延長戦に持ち込まねばならない。延長まで行けば、アイツは確実に降板する。既に疲れが見え始めているのだ、アイツさえ降板させられれば――こちらのチームの打線ならきっと相手の二番手を打ち崩すことができるはずだ。
故にだ。打席に立つ好敵手を抑えるために、自慢の速球を叩きつけてやる。
フッ、と矢のように鋭い呼気を吐いた。相手チームの中核、三番打者の力場専一を打ち取るため、投じる球種とコースを捕手と擦り合わせ、リードに頷きこの打席の第一球目を投じるべく始動する。
――思えばこの時に、僕の運命が。僕の野球人生が本当の意味で始まった。
キンッ、と耳を劈く快音が球場に響いたのだ。
振り抜いた金属バットを、悠然と放り捨てる強打者の風格。
愕然として背後を振り向き、センターの外野手が打球を追い掛ける様を祈るように見詰めた。
だが悟っていた。ゆっくりと塁を回っているライバルの姿で。打球の強さ、弾道、共に申し分がなく――ここに試合は決した。
六回裏、2アウト。世代最強の男は、この僕から本塁打を打ち放って、自らの最強を証明したのである。
「――パワプロ。君をいつか、必ず……!」
膝は、折らなかった。意地を張って立ち続け、心を強く持った。
この時、僕は予感していたのだ。いや、これは確信だろう。
これから先の野球人生で、最大最強のライバルとして、あの男は僕の前に立ち塞がり続ける。あらゆる栄光、栄冠。手に入るはずの全てを、あの男が総取りにして独占する未来が垣間見えた。
それを奪い取れるのは僕しかいない。
この僕が唯一無二のライバルだと認めた男を倒して、初めて僕は己を天才だと認められる。常軌を逸したあのバケモノと――天才を超えた怪物である男と――同じ地平に必ず昇るのだ。
敗北の涙は苦く、この魂に焼け付いた。
しかしこのまま終わるつもりはない。同じサウスポーとして、盗める技は全て盗み、自己流に昇華して――そして勝ってやる。
そのためには、強いチームを作らねばならない。野球は一人ではできないからだ。この大会でアイツは一人で野球をしていたと言われているが、そんなことはない。捕手の六道がいなければ真価を発揮できていないだろうし、霧崎のいるバックの堅牢な守備陣がなければ安心して球を投げられないだろう。
僕も信頼できる仲間を集める必要があった。
捕手は、この僕の弟が非凡な才を見せている。霧崎と同じポジションには、去年投手からコンバートした友沢亮がいる。他にも磨けば光る天才達は多くいた。その天才達を集めるのが、僕の役目だ。実力で勝ち、チームでも勝つ。それが僕が目指す完全勝利の形だった。
ありったけの敵意、対抗心。そしてあらん限りの敬意を持って戦おう。打倒パワプロを掲げて、頂点を目指して。
――そんな因縁の好敵手と、
或いはこれも、運命という奴なのかもしれない。
† † † † † † † †
ただのエンジョイ勢に興味ありません。ガチ勢、廃人、野球狂がいたらわたしの所に来なさい。以上!
はい、というわけで再開します。今回はこれまで、動画内だとほぼほぼ空気だった小山雅ちゃんにスポットを当てていきます。
というのもですね、彼女関連のイベを今の内に進めてかないと、雅ちゃんは高校だと『マネージャー枠』になるんですよ。そっからイベを進めてくと選手に出来るんですが、まどろっこしい事情は早期に解決しておくに限ります。
今のところ雅ちゃんは高校でも野球ができるとは思ってないので、パワプロくん達との自主練の集まりには、ただ厚意で参加させてもらってるんだと思ってます。まあ、
それが悪い事とは言いませんし、本気でヤッてないとは言いませんが、それでも本気度の純度は周りに比べると一段落ちてるんですよ。
このままだと意識の差、音楽性の違いから皆の輪の中から浮いていき、次第にフェードアウトしていく羽目になる。そんなのはダメです。わたしのため、何より雅ちゃんのためになりません。
なので早くガチ勢になって貰いましょう。
とはいえ、雅ちゃんの抱えてる問題はありふれたものですが、同時に解決の難しいデリケートなもの。なんせ家庭環境が裕福じゃないから、シニアのチームに入れてもらえず、満足に野球道具を買い揃える事もできないんです。
そのせいで雅ちゃんはリトルだけで野球を終わらせ、高校には奨学金制度を利用した特待生として入学するのが本作本来の√になります。マネージャーを始めるのは雅ちゃんの野球への未練、らしいですね……。
そうなると座学にばかり比重が傾き、リトル以降は野球をしてなかったせいでブランクが空いて、イベントを進めて無事に選手化できても二線級の実力しか発揮できません。野球にうつつを抜かして座学の成績を落とすわけにはいかないから、野球の練習をする時間も短めになるからです。
で、実を言うと今までその問題を解決しておらず、雅ちゃんは野球の実力を高めていますが、中学の思い出作り気分でいるままなんですよ。――だから美香ちゃんを攻略する必要があったんですね。
「――家庭環境が理由で、夢を絶たれるのは悲しいことです。ワタシからお父様に話しておきましょう」
「え? え?」
美香ちゃんと雅ちゃん、金髪ガールコンビ結成秘話が目の前で展開されてます。わたしは何がなんだか分からないといった顔をしておきましょう。
――木村美香ちゃんは最初に紹介した時に言ったように、パワプロくんの彼女枠兼闇ガードの役割を担ってます。が、それとは別件で利用できますよ。
木村財閥の麾下にある企業の一つに、雅ちゃんのママンがパートとして勤めてるのです。これを実家パワーで正社員にしてあげる事で、ある程度の負担が軽減し、野球を再び出来るようにする事が出来るんですよ。
……縁故を利用した不正じゃないか、ですか? 現実でもありがちでありふれたパワーじゃないですか言わせんな恥ずかしい(憤怒) そのパワーで雅ちゃんが助かるならなんの問題もない、いいね?
流れとしてはこうです。美香ちゃんは別校ですが、対等に付き合える友人を欲して、運命的な出会い(笑)をしたパワプロくん目当てに向こうから接触してくるのですよ。それと普通の態度で受け答えしてる内に、美香ちゃんはグングン好感度を高めていってくれます。自分から攻略されに来るとこは木場静火ちゃんと同じですが、チョロさもまた同レベルですね。……いや本気で悪い男に捕まりそうでやばくね?(素)
このチョロ可愛い美香ちゃんは、くどいようですがとにかく普通に話せる相手に飢えてます。何せ本人のスペックが高く、実家も大金持ちですからね。異性は当たり前として、同性の娘すらまともに話してくれない孤独な日々を送ってるんですよ。有り体に言って、美香ちゃんはボッチなんですね……。だから普通に接してるだけで好感度が上がりまくるという……。
んなもんで、彼女は今まで誰にも悩みを打ち明けられてません。なので世間話の中で悩み的なのを聞いてあげましょう。すると美香ちゃんは野球をしてみたいと言ってユニフォームを着るのですが、ちょっと練習に付き合ってあげるだけで満足してしまいます。この接待――げふんげふん。練習に付き合うと、美香ちゃんはこれを借りと認識し、借りを返そうとしてくれるんです。
この練習してる時に雅ちゃんを巻き込んでおくと、あら不思議。金持ちのお嬢様の感覚は色々とアレなんで、雅ちゃんの代わりに彼女の家庭環境を知ってるパワプロくんが、冗談混じりに雅ちゃんがまた野球を本気でやれるようになれば嬉しいなと言います。パートから正社員にしてくれとか、金を払ってくれとか言ってはいけませんよ。あくまで美香ちゃんが自分から言い出すように誘導するのです。するとあら不思議、雅ちゃんの問題が解決してしまいます。
これを機に雅ちゃんは美香ちゃんに恩義を感じ、頭が上がらないとばかりに接していくのですが、それを嫌った美香ちゃんに絆され、美香ちゃんと雅ちゃんは親友同士になるわけです。美香ちゃんはあおいちゃんにとっての遥ちゃん枠になるわけですね。
ガードを増やせて闇を防げて、彼女にして経験点とコツを貰えて、更には雅ちゃんの問題も解決できる。美香ちゃんはわたしにとって一石二鳥……一石三鳥な、便利なお助けキャラなわけです。ちなみにこのイベントを発見したのはわたしではなく、wikiに載ってた情報を利用してます。情報提供者さん、この場を借りて感謝します。ありがとう、貴方のおかげで雅ちゃんはプロになれますよ……わたしがしてみせます。
で、これだけだと美香ちゃんは、わたしに利用されるだけの可哀想な娘になりそうなんで、今度からはこっちからも積極的に会いに行きましょう。感謝の気持ちを持って、彼女の望む友人関係を築き上げるのです。
美香ちゃんへのアフターフォローをするため、というのもわたしが『女の子パラダイス』のシステムを利用してる理由の一つです。やっぱ女の子同士の友人関係もほしいでしょうからね、パワプロくんの身の回りにいる女の子達は美香ちゃんにも普通に接してくれるんで、普通に友達になれるんですよ。ほんといい娘達ばっかで、な、涙が出ますよ……尊みで前が見えません。
この一連の流れでわたしのチャートの仕上り具合が伝わるといいですね。わたしはガバなんか起こしたりしない(キリッ)
そんなこんなで、雅ちゃんはエンジョイ勢からガチ勢に転身します。今更シニアに入ろうとは思わないようですが、高校もわたしと同じとこに来て、置いていかれないように本気で野球に打ち込むようになりました。
そのタイミングを見計らって提案します。河原に集まるいつもの面子に。そろそろ夏だし、ここにいる皆で自主合宿みたいなのやらない? みたいに。この街は今危ないんで、夏休みの間は離れて安全なとこに行きたいという思いもあります。すると皆は賛成してくれました。やったぜ。
面子はパワプロくん、聡里ちゃん、礼里ちゃん、聖ちゃん、雅ちゃん、あおいちゃん、みずきちゃん、ヒロピーこと太刀川広巳ちゃんの八人で――――す?
「――話は聞かせていただきました! ワタシが皆さんをリゾート地へご案内しましょう!」
おや、どうやら美香ちゃんも参加したいみたいですね。
オッケーオッケーオールオッケー。ほんとはみずきちゃんが合宿地を提供してくれるはずなんですが、美香ちゃんでも構いません。
誰アンタ? みたいな顔をしてる娘はいませんね。わたしは橋渡し役みたいなもんで、女子陣には既に紹介してましたから。わたしの見てない所で勝手に親睦を深めてくれていたのでしょう(テキトー)
そんなこんなで美香ちゃん主導の下、夏の強化合宿を行ないます。
「――君は」
さあやって参りました夏の海! 燦々と降り注ぐ日光がクソウザいですが慣れたもんです。
っと、おや? どうやら先客がいるようですね。ホテルに着くと、先にチェックインをしていた団体様がいましたよ。
「………」
無言でパワプロくんを睨みつける顔。
うーん……まあ、こんな事もあるのでしょう。今まで出会った事なかったのにどんな乱数出たらこんな事になるんですかね……。
まあいいや。
オッスオッス、久し振りやね――いのかりくん!
「誰がいのかりだ! 僕は猪狩、猪狩守だっ」
「……久し振りだな。元気だったか?」
ほんで金髪の君は友沢くんやないですか。で、ちっちゃい男の子が守くんの弟、猪狩進くんなんですかね。
何はともあれ――女の子パラダイスの邪魔だけはすんじゃねえぞテメェら。
案の定水着回とはいきませんでした…(掠れ声)
アンケートです。読み込めなかったら時間を置いてリロードしてくださいお願いします。
今回のアンケートに罠はありません。次回もまたよろしくです!
水着回で仲良くなるのはだーれだ!
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礼里ちゃん(何をするだァ!)
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聖ちゃん(逆襲のひじりん)
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聡里ちゃん(弾道、あげよう!)
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青・緑・金・黒の娘のいずれか
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こんなにも辛いのなら、愛など要らぬゥ!