男女混合超野球連盟ぱわふるプロ野球RTA   作:飴玉鉛

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死ぬほど書くの手間取ったので初投稿です。


緻密なチャートがちゃーんと機能する話

 

 

 

 

 ええい! 聖域勢の超特は化け物なRTA再開します。

 

 冗談ではない!(挨拶)

 

 今のとこは取得できないとはいえ、既に『変幻自在』『同心術』『超集中』『超短気』の超特をゲットしてしまいました。前三つは分かる、けど待って。待って(懇願) 最後のはなんなんですかクォレハ……(巻き舌)

 もしかして、もしかしなくても、パワプロシリーズの原点に近いナンバリングタイトルで実装されていたという謎仕様……赤特『短気』を発動したら球速とパワーが跳ね上がるアレが、本作の超特として実装されていた……?

 あおいちゃんはオリ変『マリンボール』か、『ド根性』『鉄腕』という微妙な超特しかくれない、『しょっぱい水(笑)』『手汗コツ(笑)』と揶揄されていた育成面での不遇枠です。だがそれがいいと一部コアなファンから言われてきた娘ですよ。そんな娘が実はこんな超特を隠し持っていたとは、これって……勲章ですよ? こいつはかなり有能なコツですね間違いない。

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) だからといって考えなしに取得するのは考えものです。『超短気』と書いてリミッター・リリースと読むコツですよ? 下手に使用したらヤバイ気配がプンプンします。ぷんぷん(迫真)

 

 これは多分、体のリミッターを解除する能力なんでしょう。人の体は普段、三十%の力しか使っていないというのは有名な話です。百%を使っちまうと三倍以上の力を発揮してしまい、体がガタガタになってしまうのが目に見えているんですね。これを使いこなすには、普通に身体能力を上げまくり、かつ超特『鉄人』を持っていないといけないかもしれません。しかも忘れちゃならんのは『短気』からの超特化ですからね、漏れなくブチギレ☆モードに入ってしまいかねないんで、冷静さを保つために精神系超特『明鏡止水』やらを取得しておかないと安心できません。安定して運用するには前提条件がキツそうですが……それさえなんとかしたら、凄まじい力を発揮できるかもしれません。

 

 130半ばのストレートを投げるあおいちゃんが、150の半ばかそれ以上の球速を叩き出し、パワーランクがAに跳ね上がる超特ですからね。パワプロくんがこれを発揮したらパワー上限楽々突破、球速上限も大幅に突破できます。

 はっきり言って『超集中』同様に多用はできずとも、要所で使いこなせば最強間違いなし。ガチ勢上位陣からも空振り三振取れますねクォレハ(慢心) もちろんこのパワプロくんが全盛期仕様の能力になってたらですが。

 

 いやぁ……聖域勢はどれだけわたしに齎してくれるのか。まったく、(多感なお年頃の)中学生は最高だぜ。

 

 けど、けれどですね。流石に今回のあおいちゃんには背筋が凍らされましたよ。かなーり久しぶりに骨の髄までゾッとしました。

 交通事故で選手生命絶たれるとかやめてくれよ(懇願) 交通事故に遭うのは進くんの役目だろそれは(鬼畜) 以前貰ったアイテム『ダイジョーブの成功手形』に、博士の連絡先が書かれてなかったら詰んでましたからねこれ。

 ――この時代では信じられないことに、スマホやケータイ電話を持っていない博士です。その手の端末を所持してると追跡されるとかなんとか……。なので手形に記されているのは所在地だけでした。

 走って向かい辿り着いたのは町外れにある廃ビルで、秘密基地といった有様に改造された拠点でした。監視カメラでも仕掛けてあったのか、わたしが姿を見せると廃ビルの地下に続く階段が目の前に開いた時は仰天しましたよ。やっぱ世界観違うわこの人、と呆れてしまいます。ともあれ会うことの出来たダイジョーブ博士に事情を説明しました。んで、どうもあおいちゃんの様子がおかしかったんで全力疾走であおいちゃんの家に走って行きましたよ。

 だって利き腕が以前のようには動かせないと宣告されてたのに、あおいちゃん終始無表情で虚無ってましたからね……。これはヤバイと確信するには充分でした。その後もメールしても電話しても無反応ですし? 思い詰めたあおいちゃんが暴走する前になんとかしなけりゃならず、ダイジョーブの成功手形の使用も躊躇うわけにはいきませんでした。

 

 で、そのダイジョーブ博士の成功手形なんですがね……没収されました。

 

 なんで? ねえなんで?(憤怒) 訳を訊ねると、どうも博士は一度接触した人とは二度と関わりたくないそうですね。

 というのもジャジメントの追跡があるんで、痕跡はできる限り無くしたいらしく、本当はわたしに会うのも避けたかったそうです。ですが礼里ちゃんとの一件で借りがあるから、一度だけリスクを犯して会ってくれたわけで。

 んで、博士とコンタクトを取った証拠である手形は持ってない方が良いそうなんです。博士はこれから本当にドロンし、この街からも離れてどこかに雲隠れすると言ってました。

 そう……(無関心) 仕方ないね。

 博士にそんな人情があったとは驚きですが、どっかでまたエンカウントする可能性はあるんでその時はオナシャス! とお願いしておくのは忘れません。「アノオ嬢サンニ直接借リヲ返セタワケデハナイノデ……仕方ナイデスネ」と言ってくれた博士、実は良い人? と勘違いしそうになりました。

 

 そんなこんなであおいちゃんは復活しました。あおいちゃんが『超短気』でリミッターが外れやすくなってるらしいので、これからはあおいちゃんの頑丈な体作りに協力しましょう。超特くれたんでもうコツ関連は期待しておりませんが、戦力としてのあおいちゃんは必須です。壊れられたら堪りませんので、最低でも『ケガしにくさ○』を完全取得してもらいたいです。あわよくば『鉄人』もゲットしてほしいですね。

 本作ではパワプロくんからも他のメイン・サブキャラにコツを配れます。過去シリーズのようにコツを貰ってばかりというワケじゃないのは、今回のあおいちゃんの件もあってホント助かりますよ。

 『ケガしにくさ』に関しては、既にヒロピーこと太刀川広巳ちゃんに与えてるので、そのルーチンをあおいちゃんにも当て嵌めれば盤石です。練習の前後でストレッチを丹念にさせて、練習後は特に念入りにケアしてあげればいいです。あと練習の際はインナーマッスルが付くように重点的に鍛え、『超短気』にも耐えられるように肉体改造できれば、あおいちゃんは駆け引き抜きのゴリ押しでも戦える一線級の戦力に化けます。

 

 ともあれ、なんやかんやとあおいちゃんはパワプロくんを避けなくなりましたし、普通に練習のコーチをやれるようになりました。他の皆も順調に育っていますし、後は……なんかあったっけ……?

 ああ、そうでした。秋の大会からはわたしや聖ちゃん達も出場できるようになるので、あおいちゃんに全国制覇の経験をさせてあげましょう。

 中学時代はまだ無双できるので、打席に立てばホームランバッター、マウンドに立てば無敵のエースとしてブイブイ(古代語)言わせます。んで、他の娘やサブキャラが投手を張る試合では、監督は多分わたしを外野手として起用すると思うので、長打がくればギリ柵超えしそうなボールもキャッチしてアピールしましょう。

 

 前にも言ってましたが、わたし、実は打撃と守備の方が得意なんですよ(暗黒微笑) 投手の中のガチ勢としては中堅程度ですが、投手以外なら上位の末席にギリ食い込めるかな? ってぐらいはPSがあると自負しております。

 

 ――で、いよいよ中学時代は大詰めです。

 

 え? 三年生時はどうするつもりか、ですか? 普通に流してやっても全国制覇と世界制覇できるんで、そちらは別枠に上げますよ。見どころ無いですからね、早く高校生編を見たい方も多いようなんでこっちには上げません。

 話を戻します。そろそろ仲間の皆の育成マニュアルも完成してますし、安定して中学時代をクリアできる流れに乗りました。なので皆の育成は自力でも大丈夫なんで、リソースを別のとこに割きますよ。

 そろそろね、聡里ちゃんを鍛えなきゃなりません。武力面ではわたしより強くなってもらうために、あとついでに『冷静』の上位超特『明鏡止水』獲得のために、彼女と武道の訓練を積みます。そしたら連鎖してとある女の子とも面識を持てるので、やらないわけにはいきません。その娘は滅茶苦茶チョロいので会うのは一度だけでいいというお手軽さですしおすし。

 

 というわけでやって参りましたのは聡里ちゃんのお家。

 彼女のお家には道場がありましてね、というのも本作で明らかになった聡里ちゃんのお父さんは、警視庁警備部警護課に所属するお偉いさんです。SPのプロですよ。んで聡里ちゃんの合気道の師匠でもありまして普通に強いです。

 数多の周回を経ているわたし程ではありませんがね。まだ右も左も分からない手探り状態だった頃、自衛する武力が必要だと思って小浪一刀流を十五年ぐらい修めて免許皆伝受けてるんです。その腕前は伊達ではありません。

 

 で、そのわたしを短期間で追い抜くのが天才・聡里ちゃんですよ。

 

 悲しいほどの才能格差ですが……わたしの経験が聡里ちゃんの養分になるなら本望です。それじゃ早速……ヤりますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

 合気道は実戦向けの武術ではない。

 本物の達人を除いてまともに使いこなせないのだから、その認識は間違いではないと思う。

 

 剣道や空手などは、一握りの達人でなくてもある程度は実戦に使えるのだ。無駄に敷居が高く、有効とは言い難い合気道を修めるのは理に適わないと言っていい。そもそも合気道は護身術であり、自分から仕掛ける手段に乏しいという事もあって、警護対象を危険から遠ざけるべきSPが身に着けるにはいささか不適切な武道だと言えた。

 なのに私が合気道を修めたのは、父が合気道を私に習わせたからだ。本当は空手なり躰道なり、柔道なりを修めた方が実戦的だと思うけど――父が言うには私には才能があるらしい。本物の達人になれるだけの才能が。現に実戦形式の鍛錬だと、合気道の技を使って大人を倒す事ができた。掴まれても問題なく力の流れを支配できた。けど――私は自分の才能というものへ自信がなくなってしまっていた。

 

 その原因は、皮肉な事に私の彼氏にある。

 

 彼氏。この言葉に気恥ずかしさや、かなりの複雑な想いがある。最近肉体関係を持つに到ったのはいい、いつかそういう関係になるとは思っていたから。けど問題は、私以外にも彼氏と肉体関係を持つ女の人が出てきたことだ。

 はじめは、霧崎礼里さん。その次に六道聖さん。彼氏の幼馴染の二人だ。事の経緯が経緯なだけに、私から強く言う事ができなかった。彼氏であるセンくんは被害者だし、強引に事へ運んだ私は性犯罪者なのかもしれない。

 いや()()()()()()ではなく、そうなんだ。あの時は血迷っていたとはいえ、そんなことはなんの言い訳にもなりはしない。とても、酷い事をしてしまった……どう償えばいいのか、思いつきもしない。

 

 明白な罪悪感だけが残り続け、ずるずると爛れた関係を続けてしまっている。

 

 センくんはなんでもないように私との関係を続けてくれた。傷ついているはずなのに、私なんかとの関係は清算して遠ざけるのが普通なのに。私はセンくんの、その優しさに甘えてしまっている……。

 最低だった。なんとかしなくてはならないと思うのに、どうする事も出来ずに流されてしまっている。こんな私がセンくんの隣にいる資格はあるのか、悩み続けてしまっていた。そしてその悩みは、センくんに武道の鍛錬に付き合ってもらうにつれ深まっていった。

 

 強いのだ。

 

 センくんは、私よりも。

 六道さんに聞いた、センくんは武道の経験は皆無なはずだと。ずっと一緒にいたから断言できる、と。なのにセンくんは、才能があると太鼓判を押され、SPになるために訓練を続けてきた私よりも武力が高い。

 現に私は彼に一度も勝てた試しがなかった。フィジカルエリートである彼の身体能力が高いのは理解できるけど、武道の素人であるはずのセンくんが洗練された技を繰り出してくるのは甚だ不可解だった。

 

 ――女は謎で着飾るって言うしな、いい男にも謎の一つや二つは付きものだろ? ミステリアス・パワプロと呼んでくれてもいいぜ。

 

 どうしてそんなに強いのかと訊いても、センくんは冗談めかして言って誤魔化してくる。

 センくんは強い。霧崎さんの件がある前に、私が腕を折られて突発的な実戦が起こると、センくんは実際に暴力のプロである大人の男複数人を一方的に蹴散らしていたのだ。その事からも間違いなく強いと断言できた。

 ――それこそ私の存在意義が揺らぐほどに。

 私が最初に習わされた武道が合気道というだけの事で、特に深い思い入れがあった訳じゃない。けど微かな自負はあった。少しは腕が立つという自負が。けど今はまるで自信がなくて、センくんにしてしまった最低の行為からくる罪悪感も含め、私に彼の傍にいる資格がないという想いは強くなっている。

 

「っ……」

「――おいおい、どうしたんだ聡里ちゃん。いつものクールさがないぜ?」

 

 そして今も、センくんに投げ飛ばされた。合気道とは違う武術の技で。

 受け身はきっちり取れたけど、私は畳の上から立ち上がる気力が湧かなかった。着衣の乱れた柔道着を整える気力もなく、乱れた呼吸をそのままに天井を見上げる。全身から吹き出た汗で、髪が顔に張り付き道着も気持ち悪い。

 

「センくん……」

「ん?」

「私達……別れない?」

「はあ? やだよ」

 

 不意に口を衝いた言葉は意図しないもので、しかし紛れもない本心だった。

 彼に私は必要のない、価値のない存在だ。私は彼より弱いし、彼を傷つけてしまっている。女だからって男の人への性行為の強要は赦されるものじゃないだろう。犯罪だ。それに私のした事が原因で、誠実な人であるセンくんに、複数の女の人と関係を持たせてしまった。苦しんでいるだろう、悩んでいるだろう。なら私と別れた方が、霧崎さん達といられて都合がいいはずだ。

 そう思っていたのに、センくんは悩む素振りもなく即答してきた。それに私は何も言えない。内心嫌だと即答してもらえてホッとしてしまっている自分を見つけて、激しい自己嫌悪に襲われてしまったから。

 

 センくんは溜息を吐いて、畳の上に横たわったままの私の隣に胡座を掻いて座った。

 

「なんでそんな事言うんだよ。俺のこと嫌いになったってんなら……イヤだけど、別れるのに同意するしかねえけどさ」

「嫌いになんて――なるわけない」

「じゃあなんでだよ? ……って、訊くまでもねえか」

 

 センくんは私の溢した言葉で、すぐに私の内心を察してしまったらしい。深く息を吸って、ゆっくりと吐き出すと口火を切った。

 

「聡里ちゃんが俺より弱いから、ってのが()()で」

「っ……」

「んで、本音は合宿の時の()()だろ」

「………」

 

 図星だった。

 

「沈黙は肯定って受け取るぞ? なんだかなぁ……寧ろ()()()()とまで関係持っちまってる俺が謝らなきゃって思うんだが」

「それは……私のせい。センくんが謝るのは、筋が通らない」

「そうか? そうでもねえと思うけどな。だって俺、可愛い女の子とそういう事できるってだけで喜んでるんだぞ」

「……え?」

「中坊の性欲舐めんなよ。猿だぜ、俺。もう誰でもいいから発散させてくれって思ってる。……真面目な話、聡里ちゃんにそう思い詰めさせたのは俺みたいなもんだし。聡里ちゃんがいるのに他の娘達に良い面し過ぎだし。おまけにこんなに妙な関係になってるのも、聖ちゃん達を切り捨てられない俺のせいだしな。役満だろこんなの。常識的に考えて彼女の聡里ちゃんを最優先にして、恋人でもない二人は遠ざけるのが、彼氏である俺が示すべき筋だ。それが出来てないし、なんだかんだ都合の良い方に流されてる俺は最低だろ? ほら、俺に非があるのは明らかだな……聡里ちゃん、幻滅したか?」

 

 多分、本音だ。流石にそれぐらいは分かる。

 けど愛想が尽きたり、幻滅したりとかは、ない。逆に可笑しくなってしまって、「なにそれ」と噴き出してしまう。

 確かにそう言われるとセンくんが悪いように聞こえる。けどそれは全部が全部、センくん視線の考えでしか無くて、私にある非を全部無視していた。どう言い繕っても私のしたことに変わりはないのだ。

 だから、言った。

 

「私が悪い」

「――けど俺も悪い。二人とも悪いし礼里ちゃんも悪い。聖ちゃんもな。いやその二人に関しては俺が悪いな。つまり三人分の悪さが俺にあるから、一人分の悪さしかない聡里ちゃんより責められるべきなのは俺だ」

「霧崎さんの事は、私が悪いわ。私が流されたから……」

「なら俺は聖ちゃんと合わせて二人分だ。二対二の同点だよ」

「やめて。そんなふうに言われると……センくんを責めたくなってしまうわ」

「おう、責めていいんだぜ。むしろ責めるべきだろ」

「じゃあ……あの二人と()()の、やめてくれる?」

「分かった。や、最初から分かっちゃいたんだけどさ」

「………」

 

 すっぱりと、センくんは私の訴えに頷いてくれた。私はそれが嬉しくて、けど溜め息を吐く。

 

「……無理な約束はしないで。どうせセンくんは、迫られたら断れない」

「信頼ねえのな、俺。……当たり前か」

「信頼はしてる。けど断ったら断ったで、霧崎さん達は無理にでも迫ってくるのが目に見えてる。そういうの強引だから。誰かさんに似て、ね」

「うん。否定できない……」

「分かってるくせに。センくんは、そんな霧崎さん達を嫌いにならない。なれない。……私達全員の性別が逆だったら、センくんは本当に都合の良い女扱いされるわ」

 

 私の出した例えに、センくんはきょとんとして、目をぱちくりさせた。

 そして噴き出す。自分の顎を撫でながら悪びれもしないで。

 

「確かに、それは言えてるかもなぁ」

「……その都合の良さはズルい。なんで責められるべき私が怒ってるの? なんで怒るべきなのに、センくんは笑ってるの?」

「さあな。分っかんねえよ。こちとら幼馴染との関係がブッ壊れて、おまけに初めての彼女と3P強要されてんだから。もう訳分かんなくって流されちまってるし、もうなるようになれって思ってるのが正直なとこかな」

 

 センくんが、寝そべる。私の隣で大の字になって、私と同じように天井を見上げた。

 

「……『なるようになれ』? 私の言えた口じゃないけど、無責任よ」

「かもな。けどなるようにしかならねえだろ、実際。世間一般的に見て、俺らの関係ってどう考えてもオカシイしな。もう常識とかそういう外野の見方は捨ててさ、俺らで考えて答えを出すしかねえんじゃねえの?」

「答え?」

「そ。俺は聡里ちゃん好きだし別れたくねえ。聖ちゃん達も大事な幼馴染で、仲間で、好き……なんだよなぁ。ぶっちゃけあの二人の事が好きだって気づいてたら、聡里ちゃんに告らなかったかも」

「なにそれ……怒るわ、そんな事言われたら」

「いいよ。聖ちゃん達の方を最初に好きになっててさ、距離感近すぎて気づかないままでいて、そんな状態で聡里ちゃんの事を好きになったんだ。やっぱり元凶は俺にある。だからいくらでも怒っていい」

「……やっぱり、怒らない」

 

 正確には、()()()()だ。

 だって私は知っている。センくんにとってあの二人は特別な存在だ。何をするにも一緒で、いつも一緒にいた。だからそんな二人に対して、私は劣等感を持っていて――私はセンくんと恋人になれても、心のどこかであの二人に気を取られ続けて、あの時霧崎さんに割り込まれても「霧崎さんがいたらセンくんは私を拒まない」と打算を働かせてしまった。

 その臆病さと卑劣さの代償が、今の状況だ。私に怒る資格はないし、その二人と同列に扱われている事を――本人にそうした意図はなさそうだけど――伝えられたのが嬉しかった。喜んでしまった。そう……()()()()()()()のだ。そんなところで喜んでしまった時点で、致命的に私は敗けていた。

 

「私、弱いもの」

「ん……?」

「私もセンくんと別れたくない。けど霧崎さん達は、私と違ってセンくんの夢に必要な存在だから……関係を清算してとも言えない。だって――きっとセンくんは、私とあの二人のどちらを取るのかって時になると、あの二人を選ぶでしょ?」

「それは――」

「何も言わないで。肯定も否定も、聞きたくないわ」

「………」

「どっちであっても私は信じられない。だから……今のままでいいわ」

「それだと、聡里ちゃんが辛いだろ」

「うん。とても。けど……今の関係なら、私が一番だって言えるから。だから良いの。今のままで……」

「………」

「私がセンくんの一番だって、思ってていい?」

「……おう」

「なら、いい。私を一番大事にして」

「分かった」

 

 言って、センくんは立ち上がった。そして私の腕を取って無理矢理立たせてくる。

 引き起こされるまま立ち上がると、センくんは私なんかの顔をまっすぐに見詰めた。そこには罪悪感も同情も、安堵も何もない。能面のような表情だ。けどその目には紛れもなく私だけが映っていて、私の心は吸い寄せられる。

 

「最低だな、俺」

「それは私よ」

「どっちでもいいけど、俺が弱いのは確かだ。だって人間関係が変わっちまって、それでもそれが壊れるのを怖がっちまってる。だからさ、強くなろうぜ」

「……強く」

「身体的にも精神的にもだ。そうしたらさ、いつか今の関係をブッ壊して新しい形に変われるかもしれねえし、逆に今のままでいてもなんとも思わねえようになれるかもしれねぇだろ。悩んだりすんのは、今の俺らが半端だからだ」

「そう……ね。強くなるわ、私。センくんよりずっと」

「すぐなれるよ。聡里ちゃんってば俺より才能あるんだし」

「どの口が言うの? 素人のセンくんに勝てた試しなんかないのに」

「俺はアレだよ。ズルしてるからな。そのイカサマを超えられる本物の才能が聡里ちゃんにはある。あと何年もしねえ内に、今の戦績は逆転するだろうぜ」

「……じゃあ、頑張るわ」

 

 ズルというのがなんのことか、皆目見当が付かないけれど。卑怯で臆病な私は、同じぐらい卑怯で臆病なセンくんの言うことを信じてみようと思った。

 ふと思う。

 もし私が自分にもっと自信を持てていて、心が強かったら。あの夏の日の気の迷い。センくんの特別な人に便乗したら拒まれないだろう、なんて卑劣な打算を働かせずにいたら――センくんの隣には私しかいなかったのだろうか?

 センくんは格好いい男の人だ。魅力的で、離れ難い。だから沢山の女の人に好意を持たれているし、それは親しい人ほど顕著になっている。

 同じ野球チームの女の人達は、みんなセンくんの事が好きだ。自覚してるかしてないかは別として、もしかすると私と六道さん、霧崎さんの輪に入ってくるかもしれない。

 

 そうなってもいい――とは言えないけど。今はただ、センくんの一番でいられ続けるように、自分を磨こうと思った。それこそ私のことしか目に入らないぐらい、ぞっこんに惚れ込ませてしまえるぐらいに。

 きっとそれが一番後腐れがない。自信を持って胸を張れる。そうすれば勝ち誇ってやろう、霧崎さん達に言ってやろう。センくんは私のものだって。

 

「――来たな」

「みたいね」

 

 気配を感じ取ったセンくんが不意に呟き、私も頷く。

 先に特訓をしていたけど、今日は父が他の道場から人を招いていた。他流派の技術を取り入れてみたらどうだと提案されたのだ。

 もちろん相手も、こちらの技術を盗む気満々でいる。とりあえず、今はそちらに集中しよう。父の顔に泥を塗らないように、堂々とした態度で臨もうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

【とある動画主について語るスレ2】

※このスレはぱわぷろ(平仮名)のRTA動画の動画主、センセーについて語るスレだ! 関係ない話題は出すんじゃないぞ! 管理人との約束だ!

※ある程度の雑談は可。

※センセー(俗称)について詳しい事を知りたければ纏めサイトへどうぞ。

※あくまでセンセーの開拓してる(不本意)、新規√の考察目的です。

※本スレではセンセーの撮ってる動画をリアルタイムで見れます。ただしその代わり、センセーの解説はないので、パワプロくんの内心とかは分かりません(注・センセーの許可は取ってます)

 

 

 

83:なんだこれはたまげたなぁ……。

 

84:なんだこの立ち回りの強者感。

 

85:はぇ〜すっごい……。

 

86:やってること言ってること最低なのに、なんで三股を彼女に受け入れられてんの?

 

87:俺ちょっと『人間関係崩壊阻止論・それでも僕は悪くない』見てくる。

 

88:俺も。

 

89:俺も。

 

90:実際なんで三股受け入れさせられたの? 普通に考えて無理でしょ。そこんとこどーなのよ? おせーて、エロい人!

 

91:私はエロくないけど女だからなんとなく分かる、かも。

 

92:俺はエロいけど男だからなんとなく分からん、かも。

 

93:俺はエロくないけど心理学に詳しいから分かる、かも。

 

94:なんだお前らw

 

95:分からん奴はどうでもいい! おせーてエロくない人!

 

非エロ女:面倒だからコテハンつけるね。まず前提として、このセンセーのアバターが凄く美形なこと。

 

97:やはり※なのか……(血涙)

 

非エロ女:そりゃもう男も女も最初は顔よ。第一印象が活きてる間は。後この『LOVEPOWER』とかいう『モテモテ』の上位系? みたいなのもちょっとは関係してるかも。まあセンセーならそんなのなくても普通に乗り切ってそうだけど……今回はフル活用してるっぽい、かな?

 

非エロ女:ともかく氷上さんはセンセーinパワプロくんにぞっこんなの。ベタ惚れ状態。その状態になってるなら『LOVEPOWER』もあんまり関係ないんじゃないかな、かな?

 

100:申し訳ないが古典ヒロインの真似は伝わりにくいからNG

 

非エロ男:横から失礼。非エロ女氏に倣いコテハンつける。あくまでこの場でだけね。

 

非エロ男:非エロ女氏も分かってるっぽいけど、俺から言わせてもらうとまずセンセー側が完璧に聡里氏の心理を理解し、その上でその心理の変動を完全に把握してないとこの立ち回りはできない。

 

非エロ男:聡里氏の望んでる言動を心がけて、かつ嘘偽りは述べないで(言ってない事がないとは言ってない)、そんで自分からは状況を動かさないで現状維持に努めつつ(維持するとは言ってない)、自分以外が動いて状況と関係が変化するのに任せてる(任せてるとは言ってない)

 

非エロ女:センセー、えげつないよね。リアルだと絶対友達以上になりたくないもん。こっちのこと完全に理解されたら掌の上でコロコロ転がされるわ。

 

非エロ女:コントロールされてるよ、センセーの周りの娘。一部素っ頓狂な発想と行動で想定を超えられてるくさいけど、そこは問題じゃないね。

 

106:どゆこと? ガバってるやんこれ。

 

非エロ男:センセーのはガバッても即座に修正が利く範囲に留めてるんだよ。非エロ女氏の言ってるコントロールしてるっていうのは、うーん……例えるならセンセーは◎を作ってて、その○の中で関係性を制御してるんだな。

 

非エロ女:そうそう。男さんも分かってる!

 

非エロ男:(女さんも)やりますねぇ!

 

110:なるほど、続けて?

 

111:早く続きを聞かせるんだよおうあくしろよ。

 

非エロ男:しょうがないなぁ、の○太くんは(だみ声)

 

非エロ男:円の中で関係性を制御してて、想定を超えられてもその外側の円の範囲に留めることでコントロール権をずっと維持してるんだな、これは。

 

非エロ女:状況に流されてるように見えて実はずっと主導権をセンセーが握ったままなのよね。センセーのなんちゃって理論だと、確か関係の相関図の中心に居続ける、だっけ? 参考になるわぁ。

 

115:非エロ女お前、実は逆ハーやってた奴だろ。猪狩兄をキープしながら友沢と眼鏡ない矢部とその他諸々を囲ってた。

 

非エロ女:ななななななななんの事かなわたし分かんなーい!

 

非エロ男:おまえ敗北者だったのか……。

 

敗北女:ハァ……ハァ……敗北者? 取り消せよ、今の言葉……!

 

非エロ男:古典的ネタにノッてやりたいが本題じゃないんでスルーします。

 

敗北女:そんなー……。

 

121:敗北女ってなんで死んだんだっけ……気になるから見てくるわ。

 

122:その先は修羅場だぞ……。

 

123:興味あるけど今はそんなことよりセンセーの方が気になる

 

非エロ男:なんかグダってきたから纏めに入ろう。要するにセンセーは高度な柔軟性を持って臨機応変に対処できる智将()なのだ。

 

125:雑www

 

126:一気に雑になったなwww

 

127:おいなんか新しい娘来たぞ。

 

128:あっ(察し)

 

129:聡里ちゃんの特訓イベ重ねてたら来る娘だな……。

 

130:「柳生鞘花だ。よろしく頼む!」シーフこと鞘花ちゃんキター!

 

131:なんでそこでセンセーと立ち会うんだよ(白目)

 

132:あっ(察し)

 

133:あっ(察し)

 

134:センセーのリアルファイトぢからヤベーぞおい。ガチ勢共通の武力水準の持ち主だかんな……。

 

135:実際ガチ勢ってどんぐらいツエーの?

 

136:銃火器ない連中なら軍の一個小隊までなら制圧できるぐらい。

 

137:つっよwww

 

138:強すぎワロタ。

 

139:※なお聡里ちゃん(全盛期)はガチ勢の上位中堅に食い込む模様。センセーは他のガチ勢上位のトップ陣評だと中位中堅よりちょっと弱いらしいな。

 

140:なんでそんなに強いんだよこれパワプロだぞwww

 

141:おっ、初心者かな? ぱわぷろ(平仮名)で長くやってたら自衛武力の確保のため、最低一周はずっと修行に費やすぞ。

 

142:ぱわぷろ(平仮名)の身体能力ととんでも武術はリアル基準には当て嵌まらないから注意な。

 

143:まあセンスある人ならリアルでも再現してプロの武道家が白目剥くけどな。

 

144:ぱわぷろ(平仮名)だとアバターの肉体作れるし、才能も作れる()からなぁ。これはズルいですよ。

 

145:とか言ってたら鞘花ちゃん敗けてるwww

 

146:そら(ガチ勢と立ち会ったら)そう(なる)よ。

 

147:鞘花ちゃんも才能あるけどな……流石に中坊時代でガチ勢(修行歴最低十年半ば以上)には勝てんよ。しかもパワプロくんは大抵が恵体だし……。

 

148:おいwww なんかこの娘とこの娘のパパン、センセーを婿に取りたいとか言い出したぞwww

 

149:柳生家の家訓に自分を負かした相手がいたら婿(嫁)に取れ、ってのがあるからなw しかもパワプロくんイケメンだし鞘花ちゃんホの字って顔w 強くてイケメンとか鞘花ちゃん的にド・ストライクなんよなwww

 

150:さとりんの顔www

 

151:ヒェッ……。

 

152:まーたセンセーの餌食になる娘が出るのか。(人間関係)壊れるなぁ。

 

153:ここでセンセー「よく知りもしない奴にそんな事言われても。というかそっちの家訓に巻き込むな」と正論ブッパwww

 

154:なら高校からは同じとこ行かせる。それまで花嫁修業させて三年間理解し合えばよろしいと。このクソジジイ!(笑)

 

155:さとりん激おこプンプン丸。センくんは私の彼氏だと怒りのマジレス。ぽっと出の女は流石に許容できない模様。

 

156:残当。

 

157:「? 側室でもよいぞ」って何時の時代の人間だこのジジイw

 

158:三つ指ついて頭下げる鞘花ちゃんwww

 

159:あっ、そっかぁ……センセーこれも狙ってたんか(驚愕)

 

160:??? どゆこと???

 

161:鞘花ちゃんとかいう時代錯誤娘加えて、ハーレム形成を加速させるんだよぉ!(迫真)

 

162:これは智将(ガチ)

 

163:あくまで自分は何もしてないってかwww 理論通りっすねwww

 

164:センセー屑いしゲスい(笑) だがそれがいい。

 

165:幻滅しました。センセーのファンやめます。今までは純愛派で性格イケメンだと信じてたのに。

 

166:RTAに情けは無用。効率のためならなんでも利用するから仕方ないね。

 

167:流石に動画の趣旨からして責めるのは酷だろ。

 

168:ぶっちゃけヒロイン勢が幸せならなんでもいい。

 

169:それ。

 

170:みんな纏めて幸せにできる甲斐性があるなら無問題だろ。

 

171:ただセンセーよ。これだけは言わせてくれ。もげろ。

 

172:もげろ。

 

173:一人でも泣かしたら粘着すっからな(脅迫) 二度とオンラインでプレイできないように心折るからな(ガチトーン)

 

174:キモす。だが禿同。

 

175:ハーレムとかマジでやったら死ぬほど面倒臭いんだけど、これからどうなるんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




鞘花ちゃんの親御さんマジでこのノリだから困る……。
聡里ちゃんとのとこはいつかはちゃんとやらねばならないと思ってましたが、ちゃんと書こうとするとメッチャ難しかったです(小学生並みの感想)

※鞘花ちゃんファーストコンタクト端折りましたが、後々きちんと描写します。

面白い、続きが気になると思って頂けたなら感想評価等よろしくお願いします。

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