まーた一万字か壊れるなぁ…。
強すぎて申し訳ないとイキり倒すRTA再開します。
前途ある若者たちを蹂躙する喜び!(老害)
こんなヤツは粛清された方が世のため人のためですが、憎まれっ子世に憚るという世知辛い真理に震えますよ……とはいえその憎まれっ子になるつもりはないです。
が、世に憚る事はやめたくありません(爆)
なーのーで、若人を導く賢人ムーブ&誠実なる紳士ムーブ&悪は絶対許さない善人ムーブをしましょうね。本作では合理性を重んじるばかりが最善ではなく、時には回り道に見えるルートが逆に最短の道となる事も多々あります。
この賢人誠実善人ムーブこそが実は一番安定してるという、人の心を持つ合理主義者もニッコリな素敵仕様ですねぇ。
とかく渡世は厭世なりし。旅は道連れ世は情け、意外と善人が得をする優しい世界。けど無知・無謀・無能な善人は食い物にされるのはリアルと同じですので、成り上がって成功者になりたければ知恵をつけ、情報強者となり、勇気と蛮勇を履き違えない謙虚さを持たねばなりませんよ(吐血)
いきなり何言ってんだコイツと白眼視されるのは不本意なので、いい加減なんでこんな事を言い出したか説明しましょう。
「――君は我々の娘のなんだね?」
わたしは今、地元を離れてとある高層ビルにいます。時刻は20時ちょっと過ぎ頃かな? とても夜景が綺麗でうっとりしてしまいそうですよ。まるで地上に散りばめられた星々のちりめんじゃこのようだぁ(表現力ZERO)
なおこの夜景は工場やビルなどで夜勤or残業に勤しむ、勤勉なる社会人の皆様の汗と涙の結晶らしいですね。その観点から見るとロマンもクソもなく、非常に心にクるものがあります。
で。オフィスビルの最上階にある総帥室に、現在わたしはいます。ちなみにわたし以外には四人の男性がいますよ。わたしを含めると男五人ですね。男が密室に五人……何も起こないはずもなく。わたしは何故か査問会的なサムシングの詰問を受けてます。
事の起こりは秋季大会一回戦終了後。パワプロくんの活躍ぶりに興奮してる皆に揉みくちゃにされ、次の試合に備えて解散! となった後でした。
さあ帰るべ、と礼里ちゃんと聖ちゃんといういつもの面子で帰路につき、家について汗を流し寛いでいると来客があったんです。おやおやぁ? こんな時間に誰かなと首を傾げていると、パパンとママンが顔を青くしながら呼んできたんで出向こうとしました。すると唐突に礼里ちゃんは読心術エフェクトを発動して言ってきたんですよね。私は顔を出さない方が良さそうだ、と。私がこの家で寝泊まりしている事は隠しておけ、と。
なんでとは思いません。さもありなんと頷きましたよ。礼里ちゃんがパワプロくんの家にいるのは聖ちゃんしか知りませんし。というか礼里ちゃんとパワプロくんの年齢的に同じ家で寝泊まりとかありえへんやろ普通、と思いますしね。パパンとママンは礼里ちゃんの事情と精神状態を知ってるんで仕方なく、とお人好し全開で受け入れてくれてますが、世間一般的に見ると非常識ですから仕方ない。
なおパパンとママンに受け入れてもらうために全力で説得しましたよ。懐が深すぎる……聖人かな? 聖人だったわ。礼里ちゃんは意識してわたしの心を読まないようですし、清らかなる人たちの優しい世界ですね。
で、一人で部屋から出て客人に会うとですね、それはなんと警察でした。
は? わたし犯罪犯してないアルヨ。なのになんで? なんでケーサツ? 意味分かんなーい! ――とはなりません。
逆に計画通り、ニヤリ(新世界の神)となりましたよ。むしろやっと来たのかと内心高笑いが止まりませんでした。
その警察の人はスーツ姿の聡里ちゃんのパパです。「すまないが専一くん、私と来てくれ。私も本意ではないが上からの要請でね、断れなかった。……君なら悪い事にはならないと信じているぞ、専一くん」と言われたのでは仕方ありません。家から出て家の前に停めていたお義父さんの車に乗り、何処かへと連れて行かれる運びとなってしまいました。
ホントは分かってるんですが、今のパワプロくんが訳知り顔で落ち着いてたら逆に不自然なので、車の中で事情を訊くとですね。お義父さんはこう言ってきましたよ。
いつぞやの道場で、聡里ちゃんと稽古してた時。柳生鞘花ちゃんとその祖父が来て、わたしと鞘花ちゃんが立ち合いましたよね。で、わたしが鞘花ちゃんを完璧に抑え込んで勝利した事がキッカケで、柳生翁が孫娘の婿にほしいとパワプロくんに言ってきた事が発端となったようです。
どういう事かと言いますと、まず聡里ちゃん。この娘のパパンはSPのプロでその部署のお偉いさんです。んで鞘花ちゃんの祖父は警察やらなんやらにも顔が通ってる謎の爺です。というのも鞘花ちゃんとこの流派は『小浪一刀流』でして……ここが肝です。小浪一刀流……コナミ一刀流……KONAMI……本作をプレイしてるなら、後は分かりますね? 小浪一刀流はその名前繋がりで優遇されており、開発陣は謎の人脈ギミックを仕込んでるんですよ。単純すぎて逆に知らない人の方が多いはずです。ちなみにwikiにも載ってません。わたしはこれを独力で発見しましてね、今回のチャートを組むキッカケとなったのはこの発見があったからと言っても過言ではありませんよ。
――長かった……ここまでホントに長かった……試走を重ねること幾星霜、東京湾で素潜りする事一回(意味深) 攻略法確立するまでにどれだけのパワプロくんが屍を積み重ねた事か(一人) 野郎ぜってぇ許さねえ!(憤怒)
鞘花ちゃんをパワプロくんに宛てがいたい翁ですが、あの時聡里ちゃんは怒りセンくんは私の彼氏だと言いました。それを聞いた翁は『ウチの孫娘は別に側室でもええんやで』と時代錯誤丸出しで言い出したのですが、聡里ちゃんは無視できてもそのパパンは流石に無視できませんでして。突破口を見つけるために翁は人脈を駆使してパワプロくんの人間関係を調査し、浮かび上がってきた面々に頭を抱える事になりました。
翁とその一門は男女関係に関しては一夫多妻脳でしてね。翁からするとわたしの周りにいる親密なおにゃの娘は『そういう関係(意味深)』に見えたようです。一部は正解だよ(震え声) そういう観察眼に長けてる翁は聡里ちゃんと聖ちゃんと礼里ちゃんが『距離感近くね? これはアウトですよ……』と悟り、連鎖して他の娘の事もパワプロくんの側室認定を(勝手に)しました。
あの翁の思考回路は完全に把握してるんで、この流れで間違いありません。で、翁は謎人脈を駆使して次々と親御さんと会いましてね。一言断りを入れておこうと思いました。何で断りを入れる必要があるんですか(声だけ迫真)
それはずばり、おたくの婿さんにウチの孫娘を宛てがって、側室にするけど問題ないよね? というものです。――頭湧いてんのかこの爺(辛辣)
寝耳に水なのは親御さん達ですよ。え、ウチの娘に婿っていたっけ? いやいやいねえよ何言ってんだよコラ誰だよそれ連れて来いとなるわけです。そうして聡里ちゃんの彼氏の事だと翁の口から判明して、両財閥の総帥から圧力掛けられたんじゃNOとは言えない、金と権力に弱き本作の日本警察はYESマンと化しました。斯くして聡里ちゃんのパパは頭越しに決まった事に逆らえず、心底嫌々といった様子で我が家を訪れ、そして現在に至ります。
はい。四人の男性とはズバリ、聡里ちゃんのパパン、鞘花ちゃんのジッジ、そして――美香ちゃんとみずきちゃんのパパンです。
右からゴツくて大柄な、けれど氷の知性を感じさせるスーツのオッサンが聡里ちゃんのパパン。白髪頭のシワクチャ顔、和装の爺さんが鞘花ちゃんのジッジ。ソファーに腰掛けている、水色髪をナチュラルカットにしているスーツのオッサンがみずきちゃんのパパン。その隣に座っている、アイスブルーの目の持ち主でブロンド&白スーツのオッサンが美香ちゃんのパパンです。
で、わたしは立ってる聡里ちゃんパパンと、柳生ジッジを両サイドに固めてる大財閥の総帥二人、その対面のソファーに座らされました。
(一中学生が対峙する面子じゃ)ないです。さあ賭け狂いましょう?(震え声) 掛け金はパワプロくんの命ですよ(白目)
大袈裟に聞こえるかもですが、大袈裟ではありません。けど誤解しないでほしいですが、この人達がわたしに何かをする事はありませんよ。ですがここで下手こくと美香ちゃんとみずきちゃんがフェードアウトし、必然的にガードが消えてぱわぷろ(平仮名)世界の闇から護られなくなります。そうなるとパワプロくんは遠からず闇に呑まれ、闇の世界で戦う羽目になります(十四歳病)
その過程で大幅な時間ロスは避けられませんし、割とえげつない確率で死ねます。わたしは一度東京湾で、パワプロくんに永遠の水泳権を与える羽目になりました。なのでしくじるわけにはいきません。ええ、決して。
とは言っても、もう完璧に攻略法を確立してますし、この難局を突破するのはハッキリ言って簡単なんですがね。まあ見ていてください。破滅への輪舞曲を奏でて俺様の美技に酔いな(意味深)される事はないと断言しましょう。
「は? 我々の娘って……あー、聡里ちゃんのお義父さんからある程度聞いてますけど、美香ちゃんとみずきちゃんの事ですよね」
――タメ口は利きません。友達でもなんでもないのでね、流石にね。というか大人の方々には常に敬語ですよパワプロくん。
わたしが確認すると、デキる男といった様子の木村さんが頷きます。というかライバル財閥の橘さんと矢鱈仲良さそうっすね……わたしの存在が架け橋になったのかな? だとしたら良かったです。
「そうだよ。ああ、挨拶がまだだったね。私は橘御門、こちらが――」
「――木村アンダーソンだ。夜分遅くに招く事となって申し訳ないが、できれば宜しくして穏やかに話を終わらせよう」
「……そうですね」
そうですね(真顔)
うん、ホント穏やかにいきましょう。
わたしが神妙に頷くと、橘御門さんが補足してきました。
「本当は小山さんと霧崎さん、六道さん、太刀川さんや早川さんのご両親にも来てもらおうと思ったのだけどね。流石にそこまで大事にしたい訳でもない。これは君と我々の問題で、よその家を巻き込むのはナンセンスだろう?」
サラッとお前の身辺の調査は終わってるんだよ宣言が暗になされましたね。
知ってた。鞘花ちゃんとの一件から今日までの日程で、一般ピーポーを調べ上げるなんてお茶の子さいさいだったでしょうよ。
しかしわたしもパワプロです。パワプロたる者この程度で動揺したりはしませんよ。この世界観では中坊も秘めたる才能がエグいですからね。なので割と冷静にレスポンスを返しても不思議には思われません。逆に感心されます。
なので平常心そのまま、かつ真意を探るような面持ちで応答しましょう。そうすれば評価が微増します。
「その心は」
「ははは、物怖じしないな、力場くん。つまりだね、我々は我々の娘のことをこの場では第一として、よそ様の家には関与しないと言っているわけだ。問題があったとしても我々には関係ないからね」
「………」
橘さんの言葉に木村さんが頷いてます。
しっかし大財閥の総帥ともあろう御方とは思えないフレンドリーさ、話しやすい雰囲気ですよ。お二人共まだまだ若いですし、これはいい人だ(確信)
ですが普通に冷酷な面もあるのは確かです。でなけりゃ財閥総帥なんかやってられませんからね。
「なんとなく話は読めてきました。察するに、娘さんに汚い虫が付いているのではないかと心配しているわけですね」
「うん、有り体に言えばそうだ。これまで娘の人間関係に口出しするのは控えてきたけど、この柳生さんからとある話を聞かされてね。流石に黙ってはいられなくなったんだよ」
「虫は駆除するに限る。だが君は人間だ、虫を駆除するように片付けられる問題ではない。だからこうして少ない時間をやりくりして君と直接顔を合わせる事にした。しかし私や橘さんは暇ではないからな、手前勝手な事情ですまないが単刀直入に本題に入り、速やかに話を終わらせよう」
どこかのんびりした印象の橘さんとは違い、木村さんはテキパキと話してきます。ってどんだけ話終わらせたいんですか。二回も言いましたよ、話を終わらせようって。
うーん……性格の印象が正反対な二人は、だからこそ個人的に話す機会ができた事で親近感を覚えた的な感じなのでしょうね。
ちなみにこの二人は今後親密になり、橘と木村の両財閥は同盟する事になってたりします。そうした未来は前周回までのパワプロくんの軌跡で把握してますんで、ガチでわたしのお蔭で仲良くなっちゃってるんですよねぇ。
しかし無駄に時間を使いたくないというのは同意見です。とりあえず困惑してるフリをしながら聡里パパと柳生翁をチラ見して、と。それから嘆息して腹を決めた素振りをしてから切り出しましょう。
「柳生さんから話を聞いた……それに本題ですか。それがさっきの質問の事なら、俺から言えるのは一つしかないですね」
「聞かせてもらおう」
ポイント解説。前々回のパワプロくんは長々と言い訳がましく言ったせいで不信感を買ってしまいました。なので前回では切り口を変え男らしく短く纏めて断言してみると成功したんですよね。今回もその切り口で攻めましょう。
「あの二人は――美香ちゃんは友達です。みずきちゃんも友達で、そして仲間です。それ以上でも以下でもありませんし、俺はお二人の懸念なさってるような目で二人を見ていません。不純な関係になっていないと断言します」
「……橘さん」
「……ええ。直接顔を合わせてみましたが、嘘を言ってるようには見えませんね」
「だから言ったではありませんか。専一くんはそんな少年ではないと」
やったぜ。木村さん、橘さんが安心したように溜め息を溢すと、氷上さんがそれ見たことかと呆れてます。やったぜ(二連続) 橘さん達の目を見ながら自信を持って断言した甲斐があります。
すると橘さんが懐から書類の束を出して前のテーブルに置きましたね。これはアレです、パワプロくんの素性や素行を入念に調査したデータです。だから動画冒頭で言ってたようなムーブをしてる必要があったんですね。
「すまないが、こうして会う前から君の事を調べさせてもらっていた」
「……そうですか」
「本当は自分の娘に個別に会って確認すればいいんだろうけどね、その話はデリケートな所に突っ込んでしまう。多感な年頃の女の子だ、それがキッカケで君に対する態度が変わるのも悪い。だからといって力場くんをこうして呼び出し迷惑を掛けてしまった事も申し訳なく思う。謝罪させてほしい」
「構いません。俺は気にしてませんので」
「……ありがとう。それから、すまない事をした」
膝に手を置いて頭を下げる橘さん。立場を嵩に着て偉そうにするだけの人ではないですね。普通、財閥総帥の大の男が、たかが一般人の中坊に頭を下げられるもんじゃないと思うんですがね。
――と、柳生翁がソワソワしてますね。どうしたんでしょう?(棒読み)
「オカシイのぉ。儂は君や身の回りのおなご達はしけこんでおると睨んでおったんじゃが……」
「……! 柳生さん、だからそれは無いと何度も言ったではないですか!」
柳生翁がポロリと失言。これに氷上さん、パワプロくんの肩を持ってくれて怒ってくれますね。橘さん達は困ったように顔を見合わせてます。
今回はこの翁の早とちりで起こった出来事ですからね。怒りたくなるのも分かります。わたしは怒ってませんが。むしろ感謝してますが。
「のぉ、専一くん。氷上さんとこのおなごはともかく、六道や霧崎というおなごともお主はしけこんでいると儂は見たんじゃが、どうなんじゃ? どうもお主の周りにおるおなごはお主を好いとるようじゃし、抱くあたりまではとっくに逝っておると思うたんじゃが……」
「柳生さんッ!!」
「そうがなるな氷上さん。中坊の性欲を舐めるでない、あんだけ綺麗どころが揃っといて何もないわけがなかろうよ。で、どうなんじゃ?」
この柳生翁。氷上さんの怒声も意に介してません。ちゅよい。まあわたしの方が強いんですがね(マウントゴリラ) だからこそ柳生翁はわたしの武力を見抜いて、是非婿に! と鼻息を荒くしてるわけですが。
しかし侮れません。嘘が通じない人ですし。なのでそれっぽく膝の上で握り拳を作り肩を震えさせ、目を伏せて真意を隠しつつ明言を避けましょう。対人の心理的駆け引きでもわたしに分がありますよ。
「……俺は、聡里ちゃんと、付き合ってます。俺にできる、誠実な付き合いだと思ってます。他の皆とは、確かに仲良くさせてもらってますが……」
ここでギュ、と唇を噛んで言葉を切ります。肝心のとこは言及しません。嘘を言わず、周りに勝手に後へ続く言葉を想像させましょう。わたしの卒論【人間関係崩壊阻止論・それでも僕は悪くない】の応用編です。
この言い方と態度だと、わたしは普通に常識的な否定をすると見られます。彼らはパワプロくんを調べてるので、その人となりを知っていると思い込んでいますし、誘導するのは容易いです。偉い人達や諜報員にありがちな、自分で調べて掴んだ情報は疑いにくいという性質のお蔭ですね。これが企業の機密やらが関わってるならもっと慎重になるでしょうが、パワプロくんは一般人の中坊なので警戒意識が薄いのも助けてくれますよ。
彼ら視点からすると、パワプロくんは何も悪い事をせず、誠実に生きて来た好青年です。後ろめたい事は何もない。なのにこうして連れて来られ、大の大人四人で詰問ですよ。愛娘が関わってると思い、勇み足になってしまったあたりに人の好さが権力で暴走したのが伺い知れます。
で、その好青年は落ち着いて応対してくれたので印象upしてて、わたしの作り上げてきた好青年パワプロは、客観的に見て柳生翁の物言いにひどく傷ついたように見えるはずですよ。彼らの人間性を鑑みるに間違いない。
するとやはり、わたしを信頼してくれてる氷上さんが真っ先に反応します。
「ッ……柳生さん、もういいでしょう。専一くんはそんな不誠実な真似はしない。貴方の思い込みで専一くんを侮辱するのはやめていただこう」
「ふぅむ……相分かった。儂の勘違いだったようじゃな……すまなかった」
頭を深々と下げる翁。(勘違いじゃないから気にして)ないです。むしろありがとうと言いたいですよ、なんせ貴方のお蔭で木村・橘パパン連合に会えたのでね。普通に過ごしてたんじゃ雲上人な二人に会えませんから。
で。わたしは気にしてないです、頭を上げてくださいと淡白に言います。この淡白な口調がミソです。ホントはめっちゃ気にしてます的な言い方ですが、それを隠してるみたいな感じですよ。中坊ですからね、腹芸できないと思われたいんで演技してます。これは餌です、リターンを得るための! 釣れろ、釣れろ釣れろ釣れろ――
「橘さんに任せていたが、君の素行を調べるように提案したのは私だ。柳生さんの勘違いが発端だが、それを鵜呑みにして暴走してしまった私にも落ち度がある。怨むなら私にして欲しい」
――釣れましたね、はい(冷静)
木村さんがクールな面持ちのまま言うのに耳を傾けましょう。
「調べた結果、君の事はかなり詳細に知る事が出来た。生年月日、血液型、これまでの来歴、周囲の人間関係。またその人となりや将来性。およそ力場専一という個人に関して、調べ上げられなかった事はないと言える」
ほんとぉ?(懐疑)
なら礼里ちゃんや聡里ちゃんが片足突っ込んだジャジメントやら関連の事も調べが付いてるんですかね……。
付いてるんでしょうね。それを口にはしないでしょうが。調べが付いてるから以前よりガード要員が増員され、以前のようなへなちょこガードではなく、優秀な人員を回してくれてるみたいですし。
とはいえ礼里ちゃんは表向き、実家暮らし中です。ついでに礼里ちゃんは橘と木村の両財閥のガード要員にも気づいてましてね。その素性や目的まで読心しちゃってるんで、わたしの家に入る時は彼らの目を掻い潜ってたりするので我が家での寝泊まりは気づかれてません。
流石はミス・レイリー。遠方からでも自分をターゲットにした心の声まで聞こえるとか読心術チート過ぎます……というか成長してる……?
「君は周囲から信頼され、慕われているな。非常に優れた精神性の持ち主だと評価している。とはいえ――これは立派なプライバシーの侵害だ。今回の件は完全にこちらに非がある。だが厚かましいようだが、今回の事で気を悪くしないで、娘達と仲良くしてやってほしい。これまで通りに」
「……そりゃそのつもりですけどね」
普通に考えて、普通の中坊はこんなお願いされても頷けませんよ。表面では頷けても圧迫感は感じますし、みずきちゃんや美香ちゃんへ壁を作ってしまうのが当たり前の反応です。
それが分かってるのか、木村さんは口ごもります。で、この木村さん。過去シリーズには登場してない人ですし、それは他三人にも言えてますよ。なので過去作はやってても本作はやってないという方のために説明しておきます。
木村さんは有り体に言えば、自分の愛情が独りよがりなものだと自覚しながらも押し付けずにはいられない、甚だ面倒で迷惑な性格です。それを除けば人格的にも能力的にも極めて秀でた傑物なんですがね……娘さんの美香ちゃんに許嫁を作る時も、それが美香ちゃんのためになると決めつけて、美香ちゃんの意志や意見を無視してしまう所があったりするんです。ちなみに橘さんもね。類友かな?
「……今回の件でのお詫びと言ってはなんだが、私から何かできる事があれば言ってほしい」
「私も木村さんと同じ気持ちだね。今日は確か、野球の試合があったばかりなんだろう……? 疲れているだろうし、ね」
来たわね、ぬるりと。
おいおい物で釣ろうとはナメた真似してくれるじゃねえですか。金持ち様は考えることも現金なんですね――とかなんとか煽るなら言うとこですが、もちろん言いません。
あからさまに気を遣ってくれてるお二人。ふっふっふ、掌の上に乗せてやりましたよ。一度出来た関係というのは中々変えられないって事を教えてやりますよ。非のある立場から作った関係は、常に互いの関係に遠慮と配慮を挟まないとならなくなるものなんですからね。そうして配慮してくれた時点で勝ち確ですよ。今後この二人はパワプロくんに対して、一定の気遣いをするようになります。
本音を言えば、ここで要求したい事があるんですが……それはまだ時期尚早でしょう。油断慢心は排除して臨み、今回はベターな対価の獲得に留めます。それが本命の要求をするための布石になりますので。
が、ここですんなり釣られたフリをするんじゃ、そなたなどまだまだ子犬よとお蝶殿に馬鹿にされてしまいます。なのでワンクッション置き、今思いついたとでも言いたげな顔をしましょうね。
「別に欲しいものなんかありませんよ、ほっといて――ぁ、いや……」
「ん、何かあるのか。遠慮はいらない、言ってみなさい」
「……美香ちゃんの事、なんですがね」
「美香の?」
木村さんがピクリと反応します。それにわたしは頭を掻く仕草で、言いづらそうに伝えましょう。別枠としてアップロードしてますが、えー……と、確か一ヶ月前ぐらいの美香ちゃんとの会話シーンだったと思います。そこでポロリと美香ちゃんが愚痴ってたんで、それを拾っておくのもフラグです。
え、本動画しか観てないからなんの事か分からん? 仕方ないね(棒読み)
「ええ。この間、美香ちゃんが言ってたんですが……えーと、木村さん?」
「呼び方はなんでもいい」
「じゃあ木村さんで。美香ちゃんは木村さんが許嫁を勝手に決めようとしてると母親から聞いてるみたいでして、それが嫌みたいなんですよ。なので、それヤメてください。娘さんの自由意志で、自由恋愛させてやってくださいよ」
「それは――……いや――ああ。その件については了承しよう。だが君はそれでいいのか? 君にはなんの利益にもなっていない」
虚を突かれたんでしょうね。美香ちゃんからこの話聞いてなかったら切り出せなかったんで、ありがたい事ですよ。
とはいえ意外だったようです。木村さんは娘さんの幸福を願いながら許嫁探しをしてたんですが、それが嫁さんから娘に伝わってたのは把握してなかったのでしょう。わたしからのお願いに、木村さんは驚きながらも渋々頷いてくれましたが、このお願いがパワプロくんにとってなんの利になってないと感じたらしく、かなり驚いてくれてるみたいです。
わたしにも利があるんだなぁこれがなぁ(ゲス顔) 美香ちゃんとパパンを絶対の味方に引き込む心象upに繋がりますし……他にも、ね。ともあれ、わたしはぶっきらぼうに言います。このシチュではこの言い方が正解です。
「友達が悩んでる事に、利益云々とか一々考えませんって。木村さんって損得で友達作ってるんですか。俺ならそんなの御免ですけど」
「――そうか」
「俺からはそれだけですね。帰っていいですか?」
「待ってくれないか。木村さんはそれでよくても、私はまだ何もして――」
橘さんね。正直、橘さんにはみずきちゃんに、木村さんと同じく勝手に許嫁を作るなと言えばいいんですが。隣の木村さんに既に言ってあるのを聞いてあるんで、勝手に自重してくれるようになるので言う意味ないんですよね。
なので無欲さをアピールします。
「別にして欲しい事とか特にないです。氷上さん、すみませんけど連れて帰ってもらえます?」
「もちろんだとも」
「それから……あー、橘さん? で、いいですか」
「あ、ああ……」
「ほんと気にしてないんで、そっちも気にしないでくださいよ。どうしても気にしてしまうっていうなら、借りができたとでも思っといてください。正直、その借りを返してもらう機会とか要りませんけどね」
「――そう、か。これは、デカイ借りが出来てしまったね」
アフターケアっぽく見せ掛けたお願い権利のキープ……! あんまり強い効力は望めませんが、ないよりゃマシでしょ。
有意義な出会いの場でした。ではそろそろ今回はここまでとしましょう。次回は秋季大会二回戦目。先発はみずきちゃんですよ。ちなみにその後がわたしで、その後がヒロピーで、その後にまたわたし、決勝があおいちゃんです。
それではまた見てくださいね。――オチはこの方に任せましょうか。
「――素晴らしいっ! なんたる快男児かっ! ますます我が一門に加えたくなったぞ! 鞘花をなんとしても力場くんの側室に捩じ込まねば……!」
語尾に「(使命感)」とでも付きそうな語調、素晴らしい。更新したわたしのチャート上、最大の味方は貴方だ翁! 頑張れ頑張れマジ頑張れ!
冷静に考えたらアレな爺さんですが気にしないでいきましょう。当人の鞘花ちゃんがまるで気にしてないので。
そんなわけで、次回もよろしくお願いします。ばいばーい!
どれだけの傑物も…ぱわぷろ経験歴〇〇(ピー)年超えてる走者を前にすればまだまだ子犬よ…。野球よりこっちが向いてるまである。
いつも沢山の感想評価ありがとうございます。一日一万字も書けてるのは皆さんのお蔭です。