なんで『友情破壊爆弾(圧迫面接)』を友人同士の間に落とす!? これでは友情が寒くなって友達ではいられなくなる! 核の冬が来るぞ!(裏声)
親馬鹿は子供同士の事が分からない! だから破壊すると宣言した!
友達が友達に距離を置くなどと!(裏声)
わたし、パワプロ・ベースボール三十五世が粛清しようというのだ、美香!
エゴだよそれは!(裏声)
友情が保たん時が来ているのだ!
――敵前逃亡は士道不覚悟で切腹なRTA再開しますゾイ。
開幕の小芝居に関してはスルーしてください。して(懇願)
友達の親御さんに圧迫面接されたらその友達との付き合い方を考え直し、距離を置くようになるのは自明の理。それが普通です。逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だと思考をループさせても逃げたくなるものですよ。
だがそんなの関係ねぇ! わたしが狙って起こしたイベなのに、それを理由に距離を置くとか流石にイミフですよ。というかですね、両財閥の総帥達と直接の知己を結び、好印象と借りをゲットできるこのイベは、経験点的にも今後の布石的にもうま味なので、踏まない理由がありませんよね。……よね?
なお今回の件を利用してマッチポンプし、みずきちゃんとかと一気に仲を深める事も可能ですが、それは些かリスクが高いので実行しません。なにがどうリスクが高いのか? 美香ちゃんはともかく、みずきちゃんが、ね……前者はもともと彼女枠なので、今回の件を利用すれば攻略する事ができるんですが、みずきちゃんは攻略可能だということを全く想定していなかった娘です。聖域だったからね、仕方ないね。今までも攻略できた試しがないですし、恐い。
みずきちゃんの思考パターンは完璧に把握してる自信があるんですが、こと恋愛関連の事になると突飛な発想で予想を超えられる事は儘あります。攻略情報のない娘を相手にそれは致命的です。前情報は実際大事ですよ。
美香ちゃんにだけマッチポンプしてみずきちゃんには隠しておく、という手も使えません。なにせ彼女達のパッパ同士が親密になってますからね、彼女らのガードが付いてる今、迂闊な真似をして尻尾を掴まれ、化けの皮を剥がされたら今までの苦労が水の泡になってしまいかねないんですよ。リスクの犯し時は少なくとも今ではありませんし、ぶっちゃけ下手な事する必要がないという事情もあるんで自重しましょう。
無駄に豊富な人脈と古代の価値観と謎のフットワークを駆使する、時代錯誤爺こと柳生翁が後の事は全部なんとかしてくれるからです。
側室なんてものはこの時代には存在しないのですが、似たようなものである内縁の妻に鞘花ちゃんを捩じ込もうとしてくれるんですよ。
実際にそれを受けるかは別として、その働きかけ自体が非常にオイシイんですよね。一部女の子はその発想はなかったと目から鱗を落としますし、パワプロくん相手に恋愛する敷居がガクッと低くなり積極性を増します。
その筆頭格は聖ちゃんと礼里ちゃんですね。聡里ちゃんはほぼほぼ認めてくれてますし、柳生翁のような無駄に洗練された無駄のない無駄な観察眼がなければ、秘匿してるこの関係が洞察される事はないです。外野からはね。流石に親密な相手からは気づかれる危険性もありますが、そこはそれ……誤魔化しようは幾らでもありますよ。ここに鞘花ちゃんが加われば――いや加えようとしなくてもなんですが、鞘花ちゃんはメイン勢以外は弾き出せる豪傑なので、某井戸端会議好きなモブ娘どものゲシュタポ活動の被害もなくなります。
モブ娘を彼女枠に据えての経験点稼ぎはできなくなりますが、そのチャートはもう捨てているので未練はありません。まだ未知数ですが、旧チャートより新チャートの方が現時点では経験点を稼げてるので。未発見だった強力な超得までついてる嬉しいオマケ付きでしたし。
そんなこんなで、秋季大会第二回戦の前日です。
「……あの、専一さ――力場様は何をなさっておいでなのですか……?」
武蔵府中・宮本シニアが練習で使用しているグラウンドで、わたしは現在打撃練習に励んでおります。目の前で白球を延々とトスしてくれてるのはジャージ姿の聡里ちゃんです。付き合わせてゴメンね。
チームメイトの面々は真面目に投球練習やら打撃練習やら、真面目にまともな練習を積み重ねている中、わたしは普段使わない技術の復習をしてるんですよね。それは木製バットでの小浪一刀流の技による斬り上げです。
自分の手元から身体の正面を斬り上げる一閃は、打撃の技としては非常にナンセンスです。剣術を野球に転用とかネタ野球漫画ぐらいでしかありえないでしょう……パワプロシリーズならアリエール? 否定できない(小並)
ともあれ普通の野球の構えから、瞬きの間に体軸を維持しつつ姿勢を捻転、足の位置を素早く差し替えながらバットを手元に引き寄せつつ、バットの先端を下に倒し捻転の力を乗せ、斬。逆袈裟よりも更に角度をつけて、股間から脳天を斬り裂くようにバットを振る。これを様々な角度で触れるように微調整を繰り返し、球を打ち上げてヒットが打てるようになりましょう。
さながら立ったままの居合い斬りですね。サムライジャパンはガチな侍になるのだ。敬遠とか許されざるですよ、士道不覚悟ですよ、切腹ですよ。敬遠していいのはされる覚悟のある奴だけだって婆っちゃが言ってた。
知ってる方も多いでしょう。これはわたしだけでなく、PSが一定の領域に達していたら、ガチ勢でなくても使えるポピュラーな技です。が、流石に使う機会なんて中々ないので、一度身につけた後は死蔵し錆びつかせてしまう事も珍しくありません。いわゆるネタ技ですね。なんかカッコイイ感じの。
一回戦で勝ったからでしょうね、フェンスの外側には高校のスカウトとかよそのシニアの偵察とかが来てますが、ガン無視します。何やってんだアイツと困惑させてやりましょう。で、そんな感じでずっと斬り上げの練習をしていたら、美香ちゃんがカメラマンを複数連れて来ました。
なんでシニアに関係ない美香ちゃんが? と思われるかもですが、彼女は本作だと『中学生読者モデル』として売り出されてるモデルさんでもありましてね。世界最大規模のスポーツであるマネーげふんげふん、関心を集める野球のコスプレは常に一定の需要がありまして。ご多分に漏れず美香ちゃんも野球ユニフォームのコスプレをしてグラビア撮影をする事があるんですよ。で、プレイヤーであるパワプロくんが仲良くなってると、撮影現場としてパワプロくんのいる所を希望してくれるわけでしてね。話の分かる宮本監督は、練習の邪魔をしなければ許可してやると言ってくれるんですよ。
で。
ホットパンツを履いて太腿(とちょっとの尻肉)を晒し、バットとグラブを持ってカメラ撮影をパシャパシャやってました。美香ちゃんはめちゃんこ可愛い上にホットパンツで野球コスプレとか媚び過ぎな格好なので、チームメイトの野郎どもは大変士気を上げてハッスルしてますね。美香ちゃんはパワプロと仲が良いとチームメイトの野郎どもは知らないんで、かなーりハッスルしておりますよ。
その美香ちゃんが、パワプロくんに話し掛けてきました。名前で呼び掛けて苗字に言い直したのは、周囲の目を気にしての事でしょう。彼女は自分の立ち位置やらをきちんと理解してる賢い娘なので、下手にパワプロくんと仲が良い事を知られると、パワプロがチームから浮きかねないと察してくれます。
や、このチームの野郎どもは良い奴らなんで、露骨に妬んでやっかまれはするでしょうが、悪い事にはならないと思うんですがね。美香ちゃんもわたしが前のシニアからここに移った経緯を知ってるんで気を遣ってくれてます。
とりあえず聡里ちゃんに待ったを掛け、一旦手を止めて答えておきましょうか。
「何って、打撃練習だけど?」
「えぇっと……素人ながら、バットはそんなふうに振るものではないと思うのですが」
あんまりにも自信満々に答えたもんだから、美香ちゃんが困惑してますね。んでキョロキョロと視線を動かし、カメラマンの男の人にも目を向けました。彼らも戸惑っているようで、美香ちゃんがシニアの皆を見ると苦笑いで流されてます。うーん……この浮いてる感よ。流石はボッチ気質の美香ちゃんだ。異性の友達はパワプロくんだけ、他の面子はパワプロくんが間にいないと仲良く話せない、親友の雅ちゃんしか純粋な意味での友達がいないだけの事はありますよ。
一人とはいえ親友がいる奴にボッチを名乗る資格はねぇぞコラッ!(唐突)
「雅がいてくれたら教えてくれたでしょうか……」
顔見知りが割といるシニアで、だーれも答えてくれないんで美香ちゃん寂しそう。その心の隙間にするりと入り込むパワプロくんである。
「ははは。気にすんなって、皆も俺が何してるのか分かってねえし。説明してもいねえしさ。あ、カメラマンさん?」
『え、な……何かな?』
「ちょっと俺の今の練習、テキトーに写真撮ってくれます? ほら」
あ、ああ……と戸惑いながらもシャッターを切ってくれるカメラマンさん。わたしの斬り上げの動作をパシャパシャしてくれてサンキュー。
「秋の大会の三回戦目は、俺が先発なんですよ。その時にこの練習の意味が分かると思います。で、その写真に俺の台詞を添えて、スポーツ雑誌の記者さんに渡したらいい感じにパイプが作れると思いますよ。俺の台詞は『この練習が必要になると分かっていた』だけでいいです」
さらっと明日の二回戦目を勝ち確と決めつけてます。なんだコイツ自信満々じゃねえかと戦慄しますね……言ったのわたしですけど。
ついでに人脈作りの餌をくれたパワプロくんに、カメラマンさんは戸惑いを隠せてませんね。スポ誌の記者さんから報酬代わりのチップを弾んで貰えますよと、中坊らしからぬ台詞も添えたんですからしゃあない。
美香ちゃんは可愛らしく小首を傾げます。中学時代は、彼女との友人関係を堅実に続けますので、なんの進展もない予定です。なので視聴者の皆さん、美香ちゃんと早く仲良くなれよ! と、焦らないでくださいね。
そんじゃ――明日まで特になんの山も谷もない練習風景が続くので、続きは別枠にアップロードしておきますね。本筋は明日の試合から上げます。
今日はここまでですが、一応今回の分の動画は今日のここまでと、明日の試合の分を編集してくっつけてお送りしようと思いますんで、そこんとこよろしくお願いしますねー。
† † † † † † † †
「ボール、フォア!」
そのコールを受けてパワプロがバットを放り投げ、一塁へと歩いていく。その目は、微かな悔しさを滲ませる投手を映してもいない。
――秋季大会二回戦目。武蔵府中・宮本シニアが当たったのは、青葉浦安というシニアチームだ。投打と走守のバランスが取れている堅実な相手だ。
だがあらゆる全てで青葉浦安を上回る、宮本シニアの相手にはなりえない。先発として登板した橘みずきから安打を一つも打てないまま回を重ねるどころか、初回先頭打者である霧崎礼里にツーベースヒットを打たれ、二番の六道聖にも左中間を斬り裂くタイムリーを浴びて、三番の和乃によって追加点を取られるや、四番のパワプロに初球からツーランホームランを被弾したのである。
初回から爆発した宮本シニアの打線に、いきなり炎上させられた青葉浦安のエースは降板。打者一巡した後、聖の当たりが良すぎたセンターライナーでスリーアウトを数えてやっと初回の攻撃が終わった。
その後は、特に見せ場もなく。
パワプロは以後の打席を全て敬遠で歩かされ、みずきは力をセーブしたまま相手打線を沈黙させた。それはみずきと聖の力というのもあるが、余りに開き過ぎた点差にチーム全体の心が折れてしまっているが故の完封である。四回終了時にコールドゲームとなるのは、2イニングまでで誰もが察していた。
33対0
四回表の攻撃が終わった後、強すぎて申し訳ないわねー……とベンチでみずきが言うのに。全員が苦笑して目を見合わせるだけだった。
これはひどい(白目)