ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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1話 わんぴーすに憧れて【ピカピカの実】

いつどの時代にもいる様に、どの世界にもいるのだろう。

そう納得するのに足る事が目の前で広がっていた。

 

 

 

「バルベールとの国境では今にも決戦が始まろうとしているはずだ!それにも関わらず、なぜこんな場所にこれ程の軍勢を置いているのだ!! イステール家が裏切っている事などもう我々は解っておる!! 即刻武装解除し、投降しろ!」

「お前たちは騙されているんだ! ニーベルと言う男が全て仕組んだものだ!!」

 

 

今、この村では 2つの軍勢が睨みをきかせている。互いに一歩も引かず、言い争いを続けている。……否、即戦闘になりかねない緊迫した様子だろう。一触即発とはまさにこの事。あとほんの僅かの種火を放り込めば、即座に業火へと変わり、ここら一帯が戦場になる。

 

それだけは看過出来ない者がいた。

 

そう―――決して出来ない者が。

 

 

 

「シルベストリア様。これはまずいですよ」

「うん。まずいね。……セレット。もう力業でいくしかない」

 

 

 

全面的な戦闘を覚悟した2人の兵士の間に、突如光が舞い降りた。

無数の粒子が1つ1つ現れ、軈て1人の男を形成する。

 

突如の事で驚き思わず仰け反ってしまったが、直ぐにその現象が何を意味するのかを悟り、シルベストリアとセレットの2人はすぐさま跪いた。

 

 

「シルベストリアさん、セレットさん。ここはオレに任せてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【あぁ―――最初は恥ずかしかったんだけどなぁ。でも、ここまで来たら 成りきらないと向こうさんは通じそうにない。コレ(・・)を見せるだけでも十分すぎるくらい説得力あるけど、口調辺りも変えて、っと……。うしっ、行くか】

 

 

 

 

 

 

光の粒子が今度は言い争いを続けてる軍勢の間に空間を割く様に現れた。

 

最初こそは、怒気・怒声が止まらなかった様だが、超常的な現象が起きてしまえば 止まらずにはいられないだろう。

皆の視線が1つに集中した。

 

そして、光を知る者は安堵の表情を浮かべ、何も知らない者はただただ唖然としていた。

 

 

 

【――――我は、リブラシオールに仕えし 存在……メルエム。貴様らか? 我が友の地を汚そうとする不届き者めらは】

 

 

神々しい。

口に出すのは簡単だ。だが、それを実際に体感するともなれば、色んな意見があってしかるべきだろう。……だが、このあり得ない存在を前にすると、そんな言葉だけでは物足りないものがあった。

 

武装解除し投降せよ、と押し入っている軍勢は今にもとびかかってきそうだったのだが、圧倒されたのか、思わず武器を落とし、膝を落とす者たちも現れだした。

先陣切ってまくし立てた男は、辛うじて立つ事は出来ていたが、その脚は震えていた。

 

我に大義有り、と心を決めているのであれば。何も間違えてなどいないと心から思っているのであれば、こんな無様は晒すまいと思える。

 

【発言を許可する。……そこの貴様だ。申してみよ。―――なぜ我が友の地を汚そうとするのだ】

「っ、っっ………!!」

 

 

光は更に光度を上げ、まだ明るい屋外だと言うのに、埋め尽くさん勢いだった。

 

 

そんな中、光に紛れてあのシルベストリアとセレットの2人の元へと向かう影があった。

 

 

 

 

 

 

「……こんな感じでどう? 上手くいったと思う??」

「あ、あははは……。っとと、はい。勿論でございます」

「私も同様の意見です。流石です」

「……そっか。良かったぁ……。あ~やっぱ恥ずかしいな。そもそも何でこんな事やってるのやら……」

 

 

 

あまりに強い光を受けて、完全に委縮し声を出す事さえ出来ていない事を確認したメルエムと称する彼は 疲れた、と言わんばかりに頭を掻いていた。

場は混乱を極めるだろうが、これでも強硬手段を取ろうとする者は皆無だろう。……それ以上するのなら実力行使しかない。思う存分に力を振るえばどれ程の軍勢があったとしても制圧するのは容易い事だ。……でも、それを御免願いたいのは彼。

 

 

ほんと厄介な事になったな――――と、頭を何度もかきむしるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで―――時を、時空を遡ってみよう。

 

それは彼が神様の様な真似事をする切っ掛けとなった事件。

 

世にも不思議で奇妙な物語の序章である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本 西暦20XX年 1月 6日(木)

 

 

 

1人の男が室内でヘルメットの様なモノをかぶっていて、それを思いっきり脱いでガッツポーズを見せていた。

 

 

 

「いよっっっっっっっしゃぁぁぁぁぁぁ!! イヤァァァァァァァァァ!! イェェェェェェェスッ!!」

 

 

 

何度も何度もガッツポーズと奇声を繰り出す近所迷惑な男がアパートで1人暮らしてた。

彼にとって今日は記念日となったからのこの行動である。

その記念日の内容とは、今彼がしているゲーム。VRと呼ばれる即ち仮想現実で行われているゲームである。

 

 

そのソフトとは 約1年前に発売した国民的漫画・アニメを原作とする王道冒険ファンタジー『ONE PIECE』の世界を舞台にしたゲーム。

 

 

「苦節、苦節10ヶ月!! 毎日毎日彼女にフラれてから、延々と潜りに潜って、とうとうオレは手に入れたぞ! これぞ男のロマン! これぞ田中邦〇! そうっ、ピカピカの実ぃぃぃっ!!」

 

 

ゲームは1日8時間を主とする彼は、約2400時間と言う時をかけて 目的のブツを手に入れたのだ。

ネット上でも存在は確認されていても、誰もが取得するまでに至らなかった究極(個人的主観)の悪魔の実(アイテム)

 

 

「ふぉぉぉぉぉ!! 絶対にオレ、言うぞ!! 能力使いながら言うぞ!! 【おっかしぃねぇ~……】【もしもーーし、こちらキザルゥ~~!】【化け物染みてて怖いねぇ~】ぜぇぇぇったい真似して言うぞ!! うはぁっ、楽しみだな、コンチクショ――!! 光速を体感するぞーー!! ウハ―――!!」

 

 

近所迷惑極まりないのだが、幸運にも今、上下左右の部屋には誰も居ないのでクレームが来る事も無い。興奮しっぱなしの彼は、そのテンションを維持したまま、さっき外したばかりのメット型のゲーム機 《ヴァ~チャル》を装着。パワースイッチを力強く入れた。

 

 

「さぁ、今日からゲームは一日10時間だ!! いっちょやってみっかぁ!!」

 

 

それが新たな世界の始まりを告げる事になるとは夢にも思わないまま――再びゲーム機を装着し、仮想世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

「ふんふんふん♪ やっぱり最初の方からやりたいよな~。さいきょーの悪魔の実の力の試運転も兼ねて~♪」

 

いつも通りのOP、いつも通りのメニューを操作してあの世界に降り立つ準備を着実に進める彼。

 

そんな時だった。恐らくは 初めて得たピカピカの実(アイテム)だったからだろうか チュートリアル、説明文の様なモノが現れたのは。

目の前に大きなウインドウで表示されるのは能力の使い方についてだ。

 

 

「んん? なになに~……、え゛? 使えるの1日1時間までぇ!?? マジ!?」

 

 

最初の方の文面を見て、思わず変な声が出そうになってしまった。

折角頑張って頑張って頑張って……手に入れた力に制限がついてしまってるのだから。こんなのクレームものだろう。

……だが、彼はとりあえず良しとしていた。

 

「追々にだな。今後手に入れるヤツとか増えたら、色々とアップデートとかで改善しそうだし。兎も角、OKOK! 早く光の力を~~♪ ふむふむ、ほうほう……、こうやって光の身体にか。勿論 通常物理は無効、と……。防御は自動でしてくれる、と」

 

 

 

能力の確認画面に食い入る様に見つめる。1日1時間制約もそうだが、能力確認等の文面に注視しすぎていたせいからか……、この文面の後半部分をしっかりと見ていなかった。

 

 

 

【新たな世界への旅立ちが始まります】

 

 

 

と言う文面に。

いつも仮想世界に入る時、そんな文面等はない。

 

【野郎ども! 出航だ!!】

 

のいつも通りのキャッチフレーズだけだった筈なのに。興奮冷めた後、改めて見てみたとするなら違和感を覚えた事だろう。

 

 

 

 

 

もう――――改めて見る様な事は出来なくなったが。

 

 

 

 

 

 

 

「っっええ!? なに? なにこれっ!?」

 

突如現れたのは大きな大きな黒い球体の塊。まるでとてつもない吸い込まれるかの様に身体が引っ張られる感じがした。

 

 

「ひ、ひかりっ……‼ ピカピカの力っっ!?」

 

 

直感的にヤバイと感じたので、逃れようと藻掻くがそれは叶わなかった。

まるで………、光さえ逃さないブラックホールにでも吸い込まれてしまってる様だ。

一瞬、黒ひげの存在を想像したが、生憎あのキャラは 海の奥に鎮座するBOSSキャラ。こんな所で仕掛けてくるなんて今まで無かったし、聴いたことも無かった。

 

 

そして、身体の殆どが闇の中へと放り込まれた。圧倒的な漆黒が蝕んでいくような感覚。生理的嫌悪感も一気に押し寄せてくる。

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

そこで――――彼の意識は遮断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一気に意識が覚醒する。訳が判らなかった。一瞬だったのか、ずっと暗闇だったのか何にも判らない。

 

「――――ぁぁぁぁぁっ!!?」

 

だから、思わず叫びながら身体を起こした。

どうやら、自分は寝そべっていたようだった。

 

「っ!? っっ!? い、いったいなんだったんだ?? 今の―――って」

 

身体を起こして、辺りをきょろきょろと見渡してみる。

どうやら、森の中にいる様だ。……それも濃霧が発生している森。

 

「うわぁ……、ナニ? ここ。リトルガーデン?? 誘惑の森??」

 

と、思いつくのは森があるステージ。……でも、どれとも当てはまらないのは直ぐに分かった。外観がまるで違うし、実装されてるステージのマップデータは全て頭の中に納まっている。故に間違える筈もないからだ。……そして、知っているどの場所とも違った。

 

一体此処は何処だ? と三度頭をひねらせて考えていたその時だ。

 

 

 

【グルルルルルル……】

 

 

 

と、低く唸ような声が聞こえてきたのは。

咄嗟に完全に起き上がって辺りを見渡した。すると……、そこには大きな大きな犬……ではなく、虎? 狼?? ……連想するのは軍隊ウルフ。そんな獣がぱっと見で5匹いた。

 

明確な名称は判らなかったが、それでも十分すぎる程判る事はある。

 

剥きだされた牙、今にも飛び掛かってきそうな四足姿勢、人よりも大きそうなその体躯から察するに、自分は餌として認識されているであろう事。……つまり、十中八九 肉食獣であると言う事。

 

色々と思考を張り巡らせた時だった。

 

【ガァァ!!】

 

と一斉に飛び掛かってきたのは。

 

「い、いきなりなんだよ!! って、そういうイベントか?? 周知されてたか!? さっきのといい、これといい!」

 

(ゲームの中で)襲われる事は、云わば慣れっこだ。即座に飛びのいて回避しつつ、右手で指を振る

この仕草がメインメニューを呼び出す操作だからだ。色々と確認や迎撃態勢を整えるのにも必要な操作……なのだが、振れども振れども 空間には何にも現れない。左手と間違えた? と思って左手でも同じようにしてみるが一向に変化はない。

 

「んだ……? こりゃ、ってうわっっ!?」

 

もう1匹が飛び掛かってきたので、反射でどうにか回避する事が出来た。

身体の方は、ゲームの世界で培ってきた様に少なからず動かせる様だ。現実ではまず出来ないくらいの素早さと敏捷性で動く事が出来た。ただ、それは少し運動が出来る程度の身体機能。思いっきりジャンプして空高く飛び上がったり、大地を蹴る事でめくりあげたり、とそういった超人的な事が出来なくなってしまっている。

 

此処は現実? いや、ゲーム?? 何度目かになる攻撃を回避している間に考えるが、答えは出なかった。……答えを出したくなかったのかもしれない。

ゲームの世界では出来ていた事が出来なくなってしまっている。ゲームの世界から現実の世界へ戻る為の所作も、右手を振ってメニューを呼び出す操作に含まれているからだ。時間による強制終了機能も備わっているが、長時間プレイが主流だった為、機能OFFにしてしまっている。……そして、もう1つ。心肺機能が急激に変われば、安全装置が働いて強制終了となるんだが……。

 

「う、うわっっ!?」

 

メニューを呼び出せない所から、彼の思考には恐怖の二文字が現れてしまっていた。普段のゲームの世界であれば、笑いながら蹴散らす所なんだけれど、そんな楽観的な事は出来ない。そんな状況ででも、必死に紙一重で躱す事が出来ているんだが……あの獰猛な牙が自身を捕えたらどうなるか、想像しただけでも縮み上がる。

ただHPが減るだけだろ、と頭の中では思いたい。だが、明らかに変だから それは身体が拒否する様に動いて躱した。

 

そして、数秒後。

 

とうとう捕まってしまう事になるようだった。バラバラで攻めてきていた獣たちが連携を取り出したからだ。獣らしからぬ動作、連携で追い詰められ……一本の大きな樹の前で取り囲まれてしまった。

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……、た、性質悪いぞ。落ちろよ、落ちてくれよ……ッ、こんなトコに居たくないって。……ってか、これ夢か??オレ、疲れて寝ちまったのか??」

 

 

どんな悪夢でも良い。夢であって欲しい。

ゲームの世界ではどんな危険でも笑って乗り越えてやろうと言う気概も生まれるが、生憎現実? な場所で命張れるような心臓は持っていない。

でも……、どれだけ拒否しても 目の前の獣たちは待ってくれなかった。

 

周囲 一斉に飛び掛かってきたから。牙が爪が、自身の身体よりも遥かに大きな獣が 襲い掛かってきた。

 

 

あ……―――これ死んだ。

 

 

 

そう思ってしまっても仕方なかった。

死の瞬間の走馬灯の様なモノも体感してしまったからだ。過去を遡るようなのではなく、世界が圧倒的にスローになった。迫る脅威もスローになる。体感時間が一気に増大する。恐怖も増大したんだ。

 

 

爪が迫り、貫かれる感覚がした。自分の身体をすり抜け……背後にある大樹に突き刺さる音も。

 

【あぁ、これはダメだろ……、なんで、なんでこうなったんだ? 一体、なにがあればこうなるんだ?】

 

と、帰ってくる答えのない問いに自問自答を繰り返していくうちに、違和感に気付けた。

間違いなく、身体を突き抜けた筈だった。背もたれにしている大樹が衝撃で震えたのもなんとなく判った。……なのに 自分に感じられる衝撃が殆ど無かったからだ。あまりの大怪我で痛みを通り越して感覚がマヒしているのか? とも思ったが、どうやらそうではないらしい。

 

恐る恐る貫かれた場所、腹部をチラリとみてみた。正直見たらマヒした感覚が一気に覚醒しそうでそれはそれで怖かったが、見られずにはいられなかった様だ。

そして、また唖然とする。

 

「……なんだこりゃ?」

 

確かに、腹部を貫通していた。普通なら贓物が飛び出てグロテスクでスプラッタなシーン満載になる場面なのだが、それは間違いだった。

貫いたと言うより通り抜けた、と言った方が正しいだろうか。

 

そう認識した瞬間、急速に頭が回転し始める。

 

 

「あ、これって…… アレか。オレ、光人間になったって事?」

 

 

貫かれた部分に光が集まっていた。まるで、目の前の獣が光る腕輪? みたいなのをつけているみたいに見えなくもない。

 

そして、思い出す。

 

少し前? までの自分を。

 

 

一体なんであんなにテンションが高かったのか?

一体なんで時間を超えてまで再びあの世界に降りようとしたのか?

一体何をこれ程時間をかけて追い求めたのだろうか?

 

 

 

―――そう、全ては ピカピカの実(最強アイテム)の為に。

 

 

「く、くく、クハハッ クハハハハハハッ!!」

 

自分は助かったんだと言う圧倒的な安堵感。

追い求めてた力を得た充実感。

 

そして―――、眼前の畜生共に今まで散々甚振ってくれた礼が出来る事の歓喜。

 

 

「お仕置きタイムだ畜生どもがコラ……!! よくもやってくれたなぁぁぁ!!」

 

 

とりあえず目の前のヤツから思いっきり殴ってみた。

某アニメや漫画のキャラの様に、速度は重さ、と言った感じでは出来てない様だが、とりあえず良い具合に顔面に決まった。ぎゃんっ! と小さく悲鳴を上げながら森の奥へと吹き飛んでいった。

 

 

「チっ、笑い方と言いパンチの打ち方と言い、力手に入れた時に決めた様にできなかった。でもッ 今ならいくらでもやれるぞ! かかって来いや!!」

 

大声をあげて構えた所で、狼たちは 勢いを一気に失った様だった。牙を剥き出しにしていた筈なのに、いつの間にか引っ込んでいるし、項垂れる様に耳と尻尾を下げていたから。

獣だからこそ、もう理解したのだろう。力の差を。敵わないと言うことを。

 

でも、だからと言って許される筈もない。人間に危害を加えようとした大型肉食獣など適切に処置しても良い筈だ。……と、彼の中では結論は決まっていた。

 

なので 謝っても許してあげない精神で実力行使を執行しようとしたその時だ。

 

 

「お、お待ちください!!」

 

 

森の奥から1匹の黒い獣が姿を現したのは。

それも驚いた事に人の言葉を喋るらしい。……展開としては 獣たちが服従し、そして配下に加える、的なゲームそのものな展開にもっていっても良いかな、とも思えたのだが、本気で命の危険に晒された気持ちでいるので、直ぐに王道通りに事を運ぼうとは思えなかった。

 

 

「話せる時点でお前はこいつらと違うみたいだけど、同じだろ。……襲ってきたのは そっち側なんだ」

「本当に申し訳ございません。私の一族の者たちが恐怖に駆られ、行動してしまったのです」

「いやいや、恐怖に駆られたのはオレの方だっての。マジで死んだと思ったんだぞ!」

 

 

腹の部分を指さして狼?に言った。その部分はつい先ほどまで大きな穴が開いていた部分だ。……もう見事にふさがっていて、説得力が無いかもしれないが、誓っても嘘ではない。

 

「森がざわめきました。得体のしれない何かが現れたと。この森の全てが、ざわめき立ちました。その中心に……貴方様がおられましたので、この者は、私の制止を聞かず、仲間たちを引き連れて襲い掛かってしまったのです。……本当に申し訳ございません。どうか、お許しいただけないでしょうか」

「……むー」

 

 

襲い掛かられた事に対して、正直今でも怒ってる。こうやって言葉を交わせるのなら、恐がってる、と言うのならイキナリ襲わずに対話でもすればよかったのに、と。でも……恐怖に駆られた行動を御する事が出来なかった、と言う気持ちも判らなくもなかった。

 

それと勿論、今更だが強者としての余裕も生まれていた。

絶対的な力である能力を得た今の自分は無敵! とまで思っちゃってるから。

 

 

後ろ側に居たのだろう。ついさっき殴り飛ばした狼がおずおずと頭を下げていた。

時折、きゅーん、きゅーん、と鳴く姿は何処となく可哀想な気もしないでもない、と思ったその時だ。黒い大きな狼が小さく変貌していき、軈て黒い髪を風に靡かせる女性の姿になったのだ。

突然の変身に思わずぎょっとした。

 

 

「女の人?? 動物系(ゾオン)の能力者!?」

「どうか……、え? ぞおん……とは 何でしょうか?」

「あー、いやこっちの話」

 

 

薄々ではあるが、頭の何処かでは察していた。

 

此処は、自分の知る場所ではないのだと言う事を。ゲームの世界とも現実世界とも違う。なのにピカピカの力を使う事は出来るみたいだから、尚混乱してしまう。

 

どうしたものか、と更に考えを張り巡らせていた時だ。

 

目の前の黒い獣……ではなく、女性が土下座をしたのは。生の土下座などそう見れるものではない。それも美人と言って差し支えない女性のモノなら尚更だ。

 

「どうか、私の首1つでご勘弁をして頂けないでしょうか……。今回の責は全て私に有ります」

「はぁっ? 首??」

「……はい。どうか、それでお怒りを………」

 

女性の周りに、きゅんきゅんと さっきの狼たちが集まってきていた。

獣の表情を読取るような真似は出来ないが、悲壮感は嫌と言う程感じられる。

そして、そんな中で更に一際大きな狼が姿を現したのだ。

 

「―――お前の首1つで償いきれるものか。それに……一族の長である私こそが差し出すべきだろう。それで償いきれるかどうかは判らぬが」

「でもっ」

「でもではない。……今度ばかりは聞いてもらうぞ」

 

大きな大きな狼さんは、あの女性を尻尾で隠す様にして、その巨体をこちら側へと預ける様に頭を下げた。

 

「どうか、この首1つで赦していただきたい」

 

また、首を差し出されてしまった。動物の首を切るような趣味は持ち合わせてはいない。どちらかと言えば、グロテスク系は映画でも漫画でも苦手な部類なんだから。

 

「いや、もう、そんな事しなくても良いって。オレも頭冷えてきたから」

 

両手を上げて手をヒラヒラ~とさせた。これが一応精一杯のこれ以上何もしない、と言う意思表示。

その後何度か押し問答が続いたが、【もう手にかける気などさらさら無い!】 と思わず怒っていった事で、何とか聞いてくれた。

 

今は、動物の首なんかよりも情報が何よりも欲しいから。

 

 

 

「はぁ、座っていいかな?」

「あ、はい。私もご一緒に……」

 

 

対面する形で座る2人、そして女性の隣に大きな大きな狼、その後ろには大きな狼が沢山。傍から見たら生きた心地がしない1対多数。四面楚歌、な状態である。

 

「まず言いたいのは、もう さっきの1件は終わりって事。オレがこの先蒸し返したりする事は絶対にしないから、そっちも謝ったり、奉ったり、みたいな事しないで。オレ人間だから。神様とかと違うから」

「はい。承知いたしております」

「了解した」

 

ぺこっ、と2人? が頭を下げた。

なんだか主従関係みたいで悪い気はしないけれど、実際に何かを強いるつもりもさらさら無い。

 

「聞きたいのは ここ何処? って事。何でオレがこんなところに居るの? ってのも聞きたいんだけど、……知るワケないよね?」

「はい。私達は貴方の存在を察知致しましたが、原因については不明です。突如現れた、としか……」

「OKOK.……全然OKじゃないケド、そっちの問題はとりあえず置いとく。……んで、話戻すケド、ここ何処? なんてトコなのかな?」

「はい。ここはイステール領・グリセア村の北部に位置する森林です。慈悲と豊穣の神 グレイシオール様を祀る森、ともされています」

「ん~~やっぱ聞いたこと無い……。んん? (いや、聞いたことあるぞ。確か一時期ハマったラノベだ。結構古いラノベで、そんな名前の村や名前があった様な……、えっと…… くそっ、ここ数ヶ月はずっとゲーム三昧だったからなぁ……)」

 

 

 

 

 

その後、暫く話を続けた。

 

結局のところ、何がどうなったのか、何で自分はここにいるのか等 わからないままだったが、とりあえず話し相手が早々に出来たことは良しとするのだった。

 

 

 

 

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