ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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10話 凶報、光は先に

 

その凶報が知らされたのは翌日の昼間の事だった。

 

ナルソン邸の一室は騒然とした空気に包まれている。バレッタ達を連れてグリセア村に向かった護衛兵の一行が、村を襲撃した野党を連れて帰還した知らせだ。

 

当然カズラにとっては寝耳に水、青天の霹靂、驚天動地。

 

一瞬困惑と混乱、不安等の感情で頭が追いつかなかったが、直ぐに詳しくナルソン達の直ぐ傍に居る護衛兵を問い詰めた。

 

「バレッタさんたちは無事なんですか!?」

 

思わず座っていたイスから腰を浮かして問い詰める。

非常に心配していたが、最悪の結果は免れている様だった。

 

「グリセア村の人々は全員無事、無傷です。……襲撃してきた合計13人の野盗の多数を逆に討ち取り、うち3人を捕縛しておりました」

「……13人の武装集団を殲滅ですって? それも無傷で……?」

 

その報告に、唖然とするのはジルコニア。

確かにグレイシオールやメルエムが現れた村、それを見れば極めて特殊な村だと思えるが、その村に暮らす人達は平民だ。

ここイステリアで訓練を受けた兵士たちならまだしも、報告を聞けば13人もの野盗……武装集団を相手に殲滅。それも無傷で。

 

とてもじゃないが考えられなかった。それ程までの手練れが居る。仮に戦争を経て実践経験豊富な村人が居たとしても、それは恐らく少数の筈だと考えるから。

 

「その……それと、現場を確認しましたが……、殆どの者に戦闘痕が無かったのです――無抵抗で、背後から、一撃で即死させられています。中には胴体を肩口から腹部にまで一撃で切り裂かれておりました」

「………」

 

どれ程の剛力の者がいれば、そんな事が可能だろう? とジルコニアは思う。

腕や足、首を撥ねるのとはわけが違うのだ。人体は、骨は 思った以上に硬い。それを肩から腹にかけて、となると……現実味に欠ける話に思えた。

 

「これは……恐れながら私には――」

 

とある事を進言しようとする前に、カズラが声を上げた。

 

「ジルコニアさん。今からグリセア村へと向かいます。直ぐに準備を……」

 

その言葉に、当然 誰も異議を唱える者はいなかった。

カズラを知る者は全て。知らない者も居るには居るが、領主であるナルソンやジルコニアが異議を申し立てず、頭を下げて了承をしている所を見たら疑問以上に従わなければならない、と思う事だろう。

 

 

そして、カズラは僅かにだが身体を震わせた。

カズラの隣に居たカズキはそっとカズラの肩に手を触れる。

 

「カズラさん。……オレが先に村を見てきます」

「!?」

 

カズキの言葉の意味を、一瞬理解出来なかった。でも、カズキなら確かに今直ぐにでも村へと行ける事を思い出していた。

 

村の皆は大丈夫だ、と幾ら護衛兵たちが言い聞かせてくれたとしても、絶対に安否の確認は自分で確認しないといけない。そして一分一秒と惜しい状況である事と、どれだけラタを飛ばしても、グリセア村に着くまでに相応の時間がかかる。

そして―― 此処イステリアで一番信用し信頼出来る者と言えば……カズキだ。

 

「お願い出来ますか……?」

「任せてください。……私もまだ日は浅いとはいえ、グリセア村の皆さんの事はとても心配ですから。……だから全力を尽くしますよ」

 

カズキはそう答えると、ナルソン達の方を見ていった。

 

「早急に村へと向かわなければなりません。ですが、ご安心ください。カズラさんと共に、此処イステリアへと戻ってくる事をお約束致します。……私が単独となりますが、了承願えますか?」

「わかりました。カズキ殿の後になる形になりますが、我々の兵を出動させてもよろしいでしょうか?」

「はい。勿論大丈夫ですよ。……注意してくださいね」

「勿論でございます。ありがとうございます」

 

ナルソンとジルコニアの2人は頭を下げた。

頭は下げてほしくなかったな、とちょっと思いつつ、カズキは今度は控えているハベルの方を見る。

 

「すみません。ハベルさんのお力を借りたいのですが、少しご同行願えますか? アイザックさんは、カズラさんを宜しくお願いします」

「かしこまりました」

「直ちに準備いたします」

 

ハベルは いつも以上に決意を身に宿らせた。アイザックではなく、自分自身を選んでくれた事に誉れが有り、誇らしくも有り、そして何よりも自分自身の目的の為に欠かせない関門を突破できた事による歓喜があった。

表情には出さない様にしつつ、早足でカズキの隣へ。

 

「アイザック。第2軍団の近衛を護衛に出すわ。兵舎に行って私の名前で100人準備をする様に近衛部隊長に伝えて。装備は往復10日分で十社の動向は可。私が到着するまでの指揮権はアイザックに委譲。大至急よ」

「はっ!」

 

迅速に進められていく布陣。

野盗はもう既に捕えている様だが、この布陣ならばまた別の不届き者たちが現れたとしても大丈夫だろう。カズキはそう思うと、カズラに一声をかけた。

 

「では、行ってきます」

「……宜しくお願いします」

「バレッタさんとも約束しましたからね。……カズラさん。会う時は難しいかもしれませんが、笑顔で」

 

カズキはそういうと、ハベルと共に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

カズキとハベルが去った後、アイザックとカズラも同じくグリセア村へと向かう準備の為、部屋を出ていった。

 

此処に残っているのはジルコニアとナルソンの2名のみ。報告にきていた護衛兵――オーティスは、グリセア村の住人の異様さ、異質さを肌で感じ取っており、それを進言したのだが、ジルコニアは、ただただ他言無用である事、それを厳守する事のみ伝えるだけだった。

 

今回の騒動、グリセア村を知った者たち全員がその対象だ。

 

その後は、野盗をジルコニア直々に尋問することを告げ、オーティスは対応へと向かう為、部屋を後にする。

 

そして残った2人は、今回の異質さについての話し合いを始めた。

 

 

「……ジル。長剣で人間の肩から腹までを一撃で切り裂くことは出来るか?」

 

ジルコニアは女性でありながら 相当な手練れ。それは軍部の中においてもトップクラスの剣の達人なのだ。故にナルソンはジルコニアの口から聴きたかった。人と言うものは思いのほか硬い。肩から腹ともなれば、腕や首を撥ねる時よりも何倍も負荷が必要となってくる筈だから。骨、筋肉、それらを考えたら。

……この際、グリセア村の住人の事は頭から離しつつ考えて。

 

「やろうと思えばできない事も無いけど、そんな大振りの攻撃をする余裕があるのなら、私だったら腹でも突き刺すわね。大振りは隙も大きいし、そこを別の相手に狙われる可能性だってあるから。……乱戦なら特にそうね。……勿論、戦闘中はその時の状況によって、何でも起こりえるから一概には言えないけど」

「ふむ………」

 

ジルコニアの返答を聞いて、ナルソンは再び考える。

 

「……メルエム様、カズキ殿の伝承は伝わっておらん。……が、グレイシオール様であるカズラ殿は別だ」

「え?」

 

ジルコニアは、ナルソンの意図が判らず、それを確認する様にあの2人が出ていった扉から目を離してナルソンを見た。

 

「お二方がここへやってきてから、ジルは何か体調に変化は感じているか?」

「ん……、そうね。……あの物凄い光景を目にしたもの。それこそ神話に出てくる場面でも魅せられた時からは、身体の疲労が吹き飛んだわ。……まぁ、冷静になっていくにつれて、思い出してきた感じはあるけど。だから、極端に変化、っていうのは無いかしら。精神面から来る波って所ね」

「ふむ。私と同じだな。ジルの言う通り、カズキ殿の神業を見て 心底畏怖し、興奮もした。そして、カズラ殿が様々な神の国の知識や道具でこの国を救う手立てを見繕ってくれる、と約束してくれた時も高揚した。……それらだけだと思っていたが、今回のコレは説明がつかん。……もしかしたら、お二方は我々に祝福のようなものを与えて下さったのか、若しくは―――」

 

ん、とナルソンは昨日の事を思い返していた。

どうしても、あの暗くなってしまった部屋を一瞬で明るくさせた神業に脳裏がいっぱいになってしまうのだが。数秒考えて思い出す事は出来た。

直接的に、彼らが自分達にしてくれた事を。

 

 

「もしくは?」

「あの時食べた、缶詰のせいかもしれん」

「……物を食べて力が上がった、って言いたいの?」

 

ジルコニアは流石に訝しむ視線を向けずにはいられなかった。

まだ、カズキのあの光の力を自分達に~ の様なシーンの方が説得力が増すと言うものだ。

でも、あの時の光は部屋を照らす事のみだったと記憶しているからそれは無さそうだ、とジルコニア自身も思っていたが。

 

「……ジルはグレイシオール様の言い伝えを知っているだろう? 思い出してみろ。気になる一文がある」

「ああ。メルエム様の伝承は、って言ってたのは此処に繋がる訳、ね。……でも、ごめんなさい。一応言い伝えは知っているけれど、文面全てを暗記しているわけじゃないから……」

 

ジルコニアは知っている風にナルソンに何度か言っていた事がこれまでにもあったので、少し意外だった。でも、覚えているかどうかは何ら問題ない。今は伝承の中身が一番重要なのだ。

 

「言い伝えの中には食べ物の話があるのだ。【不思議な事に、男の持ってきた食べ物は、少しの量でも身体に力が沸き起こり、大勢の飢えた人々を救う事が出来た】とな。別段珍しくもなく他の御伽噺にも登場する謳い文句、ではあるが……、もしかすると、言い伝えの内容は本当のことを示唆しているかもしれんぞ」

「……ちょっとまって。つまりナルソンは、今回の野盗の襲撃。それを撃退する事が出来たのは、グリセア村の住人達は皆、カズラ殿―――グレイシオール様の持ってきた食べ物を食べていたから、って事になるの?」

「いや、あくまでこれは推測だ。そうとは限らん。……カズラ殿も神の名に相応しきお力でグリセア村の住人に祝福を与えて守っているのかもしれないし、そもそも野盗と戦ったのはグリセア村の住人ではないかもしれないからな。……我々の常識の範疇では語る事が出来ない事が、あの村で起こった、と言う事実以外ははっきりせん」

 

ナルソンの推理を聞くと、ジルコニアは険しい表情で、自分の額を抑えて見せた。

 

わからない、と言う事がわかった。と言う事なのだが、推測の全てがあり得そうで何が正しいのか皆目見当もつかない。

 

メルエムの光の裁きで野盗連中を下した! と言うのなら、実際に光を間近で見ているので直に結論が出て終わり、となるのだが、報告内容と先ほどの様子からみても、それは無さそうだ。

考える事が多すぎて頭が痛くなってくる。

 

「……ふぅ。どちらにせよ、真実を知るにはあのカズラさん、カズキさんのどちらかに聞くしかないけど……」

「うむ。……聞きづらいな。本人の口から話してもらえるのが一番なのだが……」

 

 

そもそもな話。

今回の騒動も、2人がここイステリアに来なければ起こらなかったかもしれないのだ。この時点で大分不興を買ってしまったのは事実であり、2人はグリセア村をとてもよく思っているのは昨日のやり取りで一目瞭然。

カズラに至っては、バレッタと言う村娘との間で淡い想いが募っている可能性も否定できない。そんな村がこんな事になれば、例え助かったとしても、無傷だと言ったとしても、不機嫌になるのは目に見えている。それは人間だって同じ事だ。立場の違いはあれど、恨みつらみを買う事になるだろう。

今回は カズキが何とか宥めてくれていなかったら、どうなっていたか……。

 

 

「んー……、えっと、長机(これ) 持ち上げられるかしら?」

「なに?」

「私たちも食べ物たべたんだし、一応検証しておこうと思って」

「ふむ」

 

ジルコニアは、ナルソンがとりあえず立ち上がって机から離れたのを見て、両手に力を入れて、持ち上げようとした―――が、分厚い板で作られている重厚な長机はとても女性一人で持ち上げれるような代物では無かった。

余程の剛力の持ち主でなければ1人で持ち上げるのは不可能だろう。

 

「はぁ、無理ね。持ち上がらない」

「……まぁ、食べ物がどうこうと言う話は保留にしよう。この状況でこちらからずけずけと聞こうとするのも同じくだ。カズキ殿が我々をフォローする形となったのに、我々が更に悪化させるワケにはいかんからな」

「そうね。……それに、捕えた野盗を尋問すれば、どんなことが起こったのかくらいわかるはずだし」

 

そういうと、ジルコニアは部屋から出ていった。

ジルコニアが去っていった扉を見ながら、ナルソンは再び大きくため息を吐く。

 

「…………」

 

全てが上手く回りだすだろう、と思っていた矢先の出来事だ。

神が降臨してくれたと言うのに、人間の手で災いを起こすなどと、領主として申し訳ない気持ちだが、此処で立ち止まる訳にはいかない、と手に力を再度入れ直すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、カズキはと言うと。

 

 

「さっきは、いきなりですみませんハベルさん。えっとですね。此処に屋上の様な空が見える場所はありますか?」

「はっ! 直ぐにご案内致します」

 

ハベルは足早にカズキの前に出て屋敷にある屋上――見張り台へと案内してくれた。

人払いも一緒にカズキはお願いしたので、在中している兵士はハベルの指示で早急に退散し、この場所にはカズキとハベルの2人きりとなる。

 

「ありがとうございます。ハベルさん」

「いえ。私はカズキ様、カズラ様の為、時には剣、時には盾と 身を粉にして働く所存ですので」

 

ピシっ、と一糸乱れぬ姿勢で胸を張って応えるハベル。

それを聞いて、やっぱり重いなぁ、と思って苦笑いしつつ、もう一つハベルに指示を出した。

 

「後、もう1つだけ頼めますか?」

「はい! 何なりと!」

「今のカズラさんには余裕が一切ありません。……ハベルさんの目から見てもよく判ると思います」

 

 

カズキの言う通りだ。グリセア村の凶報を聞いてからのカズラの様子を見れば誰が見ても明らか。余裕等ある訳がない。だからこそ、アイザックやハベルは そんな彼を守る為に努めている、と言っていい。

 

 

「きっと、グリセア村に向かうまで、カズラさんを1人にすれば……色々と思い詰めると思うんです。……とても優しいひとですから」

 

カズキの言葉を聞いて、【それはカズキ様も同じなのでは?】と言いたかったが、口に出さず最後まで話を聞く姿勢を取る。

 

だが、この次の指示に関しては、ハベルにとって全くの予想外の事だった。

 

「だから、ハベルさん。カズラさんも面識のある人を宛がって貰いたいのです。我々が知る者の中で。……個人的には、つい先日お世話になったマリーさんが一番の適任ですかね。強制はしませんが、出来るのなら、どなたかカズラさんの従者としてあてがわせていただきたいのです」

「!!!」

 

それはハベルにとって願っても無い指示、命令だった。

ハベルの目的そのもの(・・・・・・)に直結する願いをされるとは夢にも思わないが、これが現実である事を知り、状況が状況で不謹慎だとは思うが、歓喜に震えた。

 

「人選はお任せします。……頼めますか?」

「っ! は、はい! マリーなら、大丈夫です。私にお任せください!」

 

ハベルは いつもの自分であるなら、恐らく相当な無理難題は別として、直ぐに返答をする筈だが、一瞬出遅れてしまった事を悔いた。歓喜し過ぎたが故に、だ。

 

「ありがとうございます。……少し、難しいかもしれませんが、理想はカズラさんがマリーさんを指定する流れ―――が、好ましいかと思います。【カズキ(わたし)が指示を出した】と聞けば、きっとまた気にしちゃうと思うので。あ、勿論こっちも無理にとは言いませんよ? 私の名は出していただいてもかまいません。後、カズラさんを1人にさせないで頂けるのであれば」

「畏まりました。すぐさま、マリーを派遣いたします。方法は全て私に一任して頂けるのであれば、何なりと尽力致します」

「ありがとうございます。ハベルさん宜しくお願いします」

 

ハベルの返事を聞いて、カズキはニコッと笑った。

 

別にカズキが頼まなくとも、きっとハベルはマリーを宛がうだろう事はカズキは知っていた。でも100%とは言えないので 敢えて頼む事にしたのだ。

ハベルは決して断らない。嫌な顔1つせず、寧ろ歓喜した事もはっきりとその表情に見えたので、ハベルとマリーに関する情報は、間違いないと認識するカズキ。

 

 

「では、行ってきますね」

 

 

カズキはそう告げると、身体を光にした。

昼間であるのにも関わらず、何よりも眩い光に。

 

ハベルはそれを至近距離から見てしまった。それでも目が眩む事はない。ただただ、神々しい光を、――(メルエム)を、自分の身体全体で浴び続けたい、と無意識に感じていた。

 

「っとと、流石に目立っちゃ不味い。もうちょっと控えめに控えめに……」

 

カズキは自分自身の光の輝きを一段階抑えた。それは光度の制御。……それとなく深夜練習してたりしている。カズラが起きない程度には、光の加減を調整できる様にはなってきた。

これは、自分のオリジナル! と楽しみながら。

何でもかんでも ピカピカしているだけでは面白くない。

ゲームの世界ででも、出来る範囲内で自分自身が出来ることを追求してきたのだから。

 

 

そんな風に思いながら、身体を宙に浮かせた。丁度、この世界の太陽の位置を確認して。……サングラスの様な偏光レンズは無いであろうから、誰も好き好んで目が痛くなる太陽の光を直視する者なんて居ないだろう。

 

その太陽の光に紛れながら空高く飛び上がり、もう 恐らくは誰も見ないであろう高さまで到達したら、グリセア村への方角を確認。

 

確認すると同時に、一瞬だけ、一瞬だけ懺悔。

 

 

「オレは……思い出せなかった。読んでた筈なのに……見てた筈なのに。あの村が襲われる事」

 

 

グリセア村、そして イステリアへきて、色んな人に出会った。

グリセア村の皆とはたった1日限りと短い期間だったが、身に覚えのある者たちばかり。それはイステリアに来た時も同様。

アイザックとハベルに誘われ、この地へと足を運び――ルーソン家の奴隷であるマリーと出会い、領主のナルソン、ジルコニア、……そしてリーゼと出会った。

 

記憶の深層域の扉が、重要とされる人物と出会う度に、開いていった、と感じていたのに……、この重要な所は思い出す事が出来なかった。

 

「―――防げたかもしれないのにっ」

 

必死に、また思い出そうとする。

確か―――村は報告通り大丈夫な筈だ。……でも、100%か否か、と問われれば………決して首を縦に振る事は出来ない。

 

ここに来て、いわば運命ともいえる流れは徐々にではあるが変わってきている筈だから。

 

あの森の獣たちとの出会い。そしてカズラにその獣たちの存在を伝えた事。

自分の知っているこの世界を正史世界、とするなら、例え僅かな差異だったとしても、もう別物の世界になっているといって良いから。

 

 

「っとと、深く考えすぎないすぎない! 今は1分でも1秒でも早く……バレッタさん達の元へ」

 

 

時間にして凡そ5秒ほどではあったが、体感時間となれば、もっと長く感じられていたカズキ。それ以上は余計な事は考えず、ただただカズラと約束した様に、直ぐにグリセア村に向かう事だけを頭に入れて、一直線上に光を伸ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………カズキ、様」

 

ハベルは、暫くの間動く事が出来なかった。

カズキが空高く光を纏いながら飛んでいく光景。これを見たのは恐らくカズラを除けば、ハベルが イステリアでは初めて見る者である、と言えるだろう。

 

その神々しさは、無意識に自身に膝を付かせ祈る。極々自然に。元々そのような習慣は無かったハベルだったが、それでも 本能に身を任せる様に。

 

軈て、光の筋がグリセア村がある方角へと一直線上に伸びたのを確認。

 

光の球が、その軌跡に乗って……、まるで夜空を流れる星の様に、瞬きながら動き――消えてしまった。

 

 

「――メルエム様。ありがとうございます。…………っ」

 

 

礼を言うのと同時に、色々と画策していた自分自身を悔いてしまったハベル。

全ては彼自身の目的の為――。

 

運もあるだろうが、アイザックの下につける様に動いたのも、そもそも軍に入隊したのもハベルの目的の為。

その目的の為ならば、例えグレイシオールであろうとメルエムであろうと、何だって利用し、のし上がる腹積もりだった。

 

そして今。

 

ハベルは今――まるで腹の底まで見透かされている様な感覚に見舞われた。

無論、それは初めての感覚ではない――が、これまでの冷たい腹の中の探り合いとはまた全く違う別物。

そして 神の慈悲――と言うものを本気で感じられた。

 

故に、それに甘んじる様な真似はしまいと誓う。

 

腹の底まで見据えられている、と言うのなら、小細工は一切使わない事を決めた。

 

「――メルエム様の為に」

 

アイザック程ではないが、ハベルもこの時 心底腹を括ったのだった。

腹の底の想いに応えてくれる形になったのだから、自分自身も―――と。

 

 

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