ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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12話 君の名は。ノワール

 

 

 

「うーむ………、流石に夜の森の中って言うのはちょっとあれだったかなぁ……」

 

カズキは、ぽつんと一軒家……ではなく、ぽつんと1人だけでグリセア村の外れにある森の中へと来ていた。

 

カズキの言う通り、現在は真夜中。

漆黒の闇がどこまでも辺りを支配しており、この場にあるランタンの灯りが無ければ、一寸先でさえ何も見えないだろう。

 

グレイシオールの伝説の森の中であって神秘さ、神聖さは何処となくありそうだと連想出来るが、真夜中の森の中と言うのは……、怖がりな人であれば絶対に来たくないだろう。それにあまりに静かすぎて逆に耳が痛い。

 

勿論、カズキが1人で此処までやってきたのには理由がある。

 

「練習って、この辺じゃこの森の中じゃないと出来ないしなぁ……」

 

そう、カズキが持つ能力、ピカピカの力の練習である。

夜だと光で目立ちそうな気もするが、この森には基本的に誰も立ち寄らないので安心だ。

それに 昼間だと色々と忙しい事が多くてなかなか抜け出せず、忙しい時間帯を抜けたとしても、村の子供たちに結構な人気者になってしまったので、遊ぶ事を優先させている。

 

因みに今度は日本の歌を披露する、と言う流れになってしまっていた。

 

アカペラで、【あの素晴らしい愛をまた一度】を軽く歌った所……いつの間にか子供たちだけでなく、村のお年寄りの方々も、加えては働いていた人達までも手を止めて集まってきて……ちょっとした グリセア村コンサートになってしまった。

 

目を閉じて歌っていたのが災いしたようで、集まってきたのに気付くのが遅れてしまったカズキ。何だか恥ずかしくなってきて止めてしまおうか……と思ったのだが、皆目を輝かせて聞き入ってくれているので途中でやめるのは悪い、と思い直し最後まで歌ったのだ。

これがまた大好評。自身が楽器を、ギターを演奏する事が出来る、と言う事を告げると 今度、カズラが日本からギターを持ってきてくれる、と言う流れになってまた披露する約束になったりしている。

 

 

「おほんおほんっ!」

 

 

歌の事を思いだしたカズキは、気恥ずかしくなってきたので軽く咳をした後に、本来の目的を実施。

 

「ここは やっぱ天叢雲剣(あまのむらくも)デショ」

 

夜の森の薄気味悪さや思い出し恥ずかし など、ピカピカの力を使い始めた数秒後にはコロッと忘れたカズキ。意気揚々と作り出したのは光の剣。

某黄色い猿が使っていた光の剣である。

 

「おー、凄い斬れる斬れる……。うおーーすげー!! ………でも、うん。これ以上は無し。今後も 練習とはいえ あんまりやらないでおこう。自然破壊になっちゃう」

 

試しに目の前にある木を斬ってみたら……、まるで豆腐? かなにかみたいにスパっと斬れた。続いてもう1本、もう1本、切れ味も凄まじいの一言だ。あのアイザックにカズラが借りていた剣、即ちこの世界の剣とこの光の剣が当たったらどうなるのか……。

 

「(相手の剣ごとたたっ切ってしまいそうで怖いな。……うーん、剣の訓練とか見てみたり、一緒にやってみたりしたいんだけど……、光の出力とか抑えたり、意識的に抑えたりすればいけるかな? んっーー こうかな?)」

 

何度か剣を振るってみる。

勿論、新たな木々に対して試し切りするワケではなく、一度切ってしまって倒れた木に対して、剣の強度を確かめているのだ。

数度試し切りしてみて、手にかかる重さを比べてみると、確かに意識的に……所謂 手加減攻撃をしようしようと考えてやってみると、その通りの強度になった。その逆に最高光度を意識して斬ってみたら、……斬る、と言うより光の剣を木の上に置いたら、殆ど抵抗なく通り抜けた。

 

その後も暫く光の剣の練習を続ける事数十分。

 

「よし!(実験はこの位にしよ。制約の1時間着そうだし。……うぅ~ん、やっぱり練習相手とかいてくれた方が助かるかなぁ。対人戦の感覚は残ってるッポイから色々と出来そうな気もするし……)」

 

VRゲームをやってきて、最後に熱中したゲームの世界で当、【世界一の剣豪!】と一戦交える等のイベントを数多く熟してきた経験がある。あの時のアバターの反射速度、超反応は流石に無いし、覇気の様な力も当然ながら無いが、アバターとはいえ仮想世界での自分の経験だから、ある程度の【剣術の型】や【格闘術】みたいなのは修めているつもりだ。

 

 

「……………あの、ウリボウ達を相手にした時はこっぴどくやられそうになったけど、アレはノーカンで」

「あのウリボウ、とは私たちの事でしょうか……?」

「どわぁぁっ!!」

 

 

本当に突然の事だった。

光の剣の扱い方を確認していて、剣術や格闘についても嘗てのVRゲームの世界で学んだ事を思いだしていて、……この世界で初めての戦闘? の時に 結構な醜態をさらしてしまった事を思いだしていた時だ。

 

突如、後ろから声を掛けられた。

 

驚きで思わず倒れそうになったが、どうにか堪える。

 

「び、びっくりした! な、なに??」

「も、申し訳ありません! まさか、そこまで驚かれるとは……」

 

ビックリして背後を振り返ってみると……、そこにはあの時の黒髪の女の人が立っていた。

そう、正体はウリボウの女性である。……イキナリ首を差し出そうとしてきた最初の人? だ。

 

「驚かせないでよ……。幾らオレでもビックリくらいはするから」

「すみません!」

 

勢いよく頭を下げて謝る彼女を見て、カズキは軽く苦笑いとため息をして向き直った。

 

「それで? 何か用でも……って、そうか。此処が住処だから、騒がしくしてたオレが悪いか……」

「あ、いえ、そんな事はありませんよ。逆に皆喜んでましたから。【また、来てくれた】と」

 

森の中でピカピカしてたり、一本とはいえ大きな木を切り倒して騒いでいたと言うのに、喜ばれるとはなかなか複雑なものがある。

でも、カズキはある意味歓迎されている様なモノだと納得した。

 

「カズキ様がお困りの様でしたので、私で良ければお相手をさせていただこうかな、と」

 

そう言うと、彼女の体躯に負けないくらいの大きな剣を取り出していた。

ゲームの世界で言う【大剣】と言う名のカテゴリーに入る重量武器だ。

 

「……武器もって背後からやってきたら、正直 お相手、と言うより襲いに、って思うんだけど……」

「っっ!! いえ! そんなつもりは毛頭!!」

「あー、うそうそ。冗談だって。ほら、前にあった時みたいに固くなってるみたいだからさ。自然に自然に。崇め奉り~みたいなの禁止だって言ったデショ?」

 

カズキはジト目で言っていたが、慌てだしたのを見てコロッ、と笑顔に戻した。

実際な話。大きな大きな剣を持って後ろから来られたら……、例え声を先にかけてからと言っても、背後から襲われる!? って思ってしまっても不思議ではないだろう。

 

でも、この女性は カズキ自身の身体の仕組み? についてはある程度判っている筈。物理的な攻撃の類は一切通じない事も判っている筈なので、背後からの奇襲! と言う線は 最初から無かったりしている。

……彼女は この森と、自然と通じている部分があるのだろう。だからここにカズキが居た事も判ったし、何をしているのかもわかった様だった。

 

「そう言えばさ。君の名はなんていうの? こうやって相手してもらうんなら名前くらい知っといた方が言いやすいって思うんだけど」

「私には名はありません。………ただの長生きな獣に過ぎませんから」

「へぇ……、長生きってどのくらい?」

「かれこれ……1000年程」

「………………」

「………カズキ、様?」

 

 

さらっと気が遠くなり過ぎて放心しそうな事を言ってのけた彼女。

と言うより、実際に放心している。そして そんなカズキを見て心配している様子。超常的な存在なのはカズキも同じなので、人間相手に話している、とは彼女も思っていないのだろう。

 

 

「あ、いや。何でもない。……んー、でも名が無いっていうのはちょっと不便だよなぁ。(あのでっかいボスウリボウや、子ウリボウらと違って、彼女は結構頻繁に接触しそうだし)」

「では、カズキ様の好きな様に呼んでいただいても……。……寧ろ、名を頂けるのは嬉しいです」

 

彼女は、今まで恐縮しっぱなし、何処か()あった事に負い目を感じているのだろうか、表情が固いものだったが、今 何処となく表情が柔らかく、何より期待に満ちている様子が受けて取れる。

もし、彼女が人間化、変化を解いて獣に戻ったら さぞ忙しなく尻尾をぶんぶんと振っているだろう事が目に見えて解る程だ。

 

「名付けか……、う~む…… 別に良いけど、あんまり期待はしないでよ? ていうか嫌だったら直に言って。獣って言っても見た目完全な女の人に対しての名付けなんて、オレも何か恥ずかしいから」

「ふふ。畏まりました」

 

そういうと、カズキは考え込んだ。

見た目は確実に美人に入る分類の女性だ。リーゼやジルコニアとはまた違った何処かミステリアスさも醸し出しているので、妖艶な美女? とも連想出来る。

何より、この世界ではまだお目にかかっていない程の綺麗な黒い髪が特徴的。獣の状態に戻った時もそう。他のウリボウとは違って綺麗な黒い毛並みだった。……つまり。

 

 

「ノワール……」

「え?」

 

 

ふと、口にしたのはノワールと言う単語だ。

何の捻りもない、ただ【黒】をフランス語で訳しただけだ。

 

「あ、いや、今のなし」

 

安直すぎるだろ、と思いカズキは考えを改める。

黒っぽい犬や猫に、【クロ】と名付ける様なものだと思えたからだ。

 

でも、当の彼女はと言うと……。

 

「ノワール……、良い響きですね。とても、とても気に入りました。ありがとうございます! カズキ様」

「あ、え?」

 

今のなし! と言った部分は全然聞き入ってくれていなかった様子。

ノワール、と言う言葉の流れ、響きを感じ取っていたようなので。

 

そして、満面の笑みで【ありがとう】と続ける彼女に、【もう一回考えさせて? 今のなしの方向で】等と改めて言うのも気が退けてしまったので、その名で決定した。

 

「ふぅ……。妙に緊張したよ……。あ、後他の皆も名前つけて~ とかならもう勘弁してね。存外プレッシャーがかかるもんだってのがわかったし」

 

親が最初に子にプレゼントするのが、名前、と言うものだ。

小動物、つまりペットに名前をつけるのとは訳が違う。ウリボウ達もかなり賢いし、あの中の長ともなれば尚更。歳も900歳以上うえの相手。

……あんまりホイホイ請け負ったりしたくないな、とカズキは思った。

 

 

「わかりました。私だけのモノ、ですね。大事に、大事にします! ありがとうございました!」

「っ……」

 

 

満面の笑みで、そこまで喜ばれたら……、流石に照れる。

彼女……ノワール程美人なら尚更だ。

 

「え、えっと、んじゃ とりあえず宜しく。剣じゃなくて棒で相手するよ」

「はい!」

 

カズキは、天叢雲剣(あまのむらくも)じゃなく、天叢雲棍棒(あまの…略こんぼう)に変えた。 ノワールの実力は……正直判らない。思い出せない。

でも、こちらは物理攻撃一切遮断するので、問題ないが 剣状の攻撃でもしもノワールを傷つけるような事になるのはゴメンだった。自信過剰である、と言う訳ではないが、万が一にでも、だ。

 

 

 

 

その後、数合打ち合って打ち合って……一息つく。

 

 

 

「凄いです。カズキ様は武芸も達者であられたのですね?」

「あー、いや まぁ。そんな感じかな? と言うか 一応オレに関しては説明はしたけど、理解出来た?」

「……はい。私も一応……ですが。はっきりと理解しきれてなかったので。【げぇむ】と言う世界で鍛えた、と言う事で宜しいですか?」

「そっ! そんな感じ。まぁ、こっちの世界じゃ無い娯楽だから仕様がないって。オーバーテクノロジーも良いトコだし」

 

そもそも文明レベルが低い世界。電気も無いというのに、一足も二足も飛び越えた技術、仮想現実世界について話をするというのが無茶な話だ。

 

 

その後、暫く談笑した後。

 

「本日はありがとうございました。素敵な名まで頂きまして……」

「いやいや。オレの方も有意義な時間だったよ。ノワも随分打ち解けてくれてるみたいだし」

「あ、はははは……。私たちは大変な無礼を働いてしまいましたから……。気にするな、と仰られても中々難しかったのです」

「そりゃそーだけどさ。ま、これで終わり終わり。……グリセア村に戻ってきた時くらいに、ここで色々と練習はすると思うからさ。気が向いたら付き合ってくれたら嬉しいかな? まぁオレとノワが来るタイミングが合わないと難しいと思うけど」

「それは是非! バッチリタイミング合わせますので、ご心配いりません!」

「ん。ありがとう。それじゃあ」

 

ひょい、と立ち上がるとカズキは、ヒラヒラと手を振りながら離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見えなくなるまで、ノワールは手を振り続け……カズキが見えなくなった所で獣の姿へと変える。

 

「……まさか、またあのお方に接触するとは。貴様はいったい何がしたいのだ?」

 

そんな時だ。

いつの間にか、背後には大きな大きなウリボウが姿をあらわしていた。

それに気づいた様で、そっとそのウリボウの隣に並ぶノワール。

 

「あの方こそが、この国に()を齎してくれると信じているからです。……メルエム様のお役に立てる事があるのであれば、私は厭わないつもりですよ。……勿論、メルエム様が私を迷惑だ、と捉えられてしまえば、もう二度と接触するつもりは無かったのですが……、本当に良かった」

 

ほうっ、と軽く息を吐く。

獣同士だからこそ解る、お互いの表情。長い付き合いだからこそだ、と言う見方もあるが、大体の心情は察する事が出来るのだ。

 

「名を貰い、意気揚々か。普段より割り増しで機嫌が良さそうだな」

「ふふっ。そうですね。貴方もお願いしてみましょうか? カズキ様はきっと断らないと思いますよ」

「まさか。……いらぬ心労をかけようとは思わん」

 

ぷいっ、と顔を背けるウリボウ。何処となく、羨ましそうにしているのを知っているノワールは、やれやれ、とため息を吐きつつ、並走して走り去っていくのだった。

 

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