「いやぁ~ カズキ様のお歌は最高でしたな!」
「や、もうその辺で終わりに………」
「はっはっは。それは難しいですな! この村に語り継がれる事になるでしょうから!」
「うぇぇ……、ま、マジっすか……」
お仕事中……ではなく、仕事の休憩時間を利用したコンサートは、かなり、大大大好評だった。バラード系ばかりを歌っていた為、殆どの人がほんわかと表情を緩ませ、うっとりとしているのが目に映り……正直、カズキは恥ずかしかった。
歌自体は嫌いではない。カラオケも
下手、音痴、と言われた事は無かったが……、此処まで褒めに褒め倒される事は無かったので、メチャクチャ驚いているのだ。
それがグリセア村の人達だけならまだ解るのだが(カズキ・カズラの正体を知っているので 接待的な意味で) イステリアよりこちらへ派遣で来ていた人達も等しく同じ反応。
ハベルの隣で聞いていたマリーに関しては、感極まったのか 目に涙まで浮かべて……、否、泣いていた程だ。一瞬ハベルは ぎょっ、としていたが マリーの視線がカズキから動かない事、歌に関しては自分も思う所があった事も有り、特に何も言わかったりする。
「実際ほんと上手でしたって。ね? バレッタさん」
「はい!」
「うぅぅ……、そ、その ありがとうございます……」
「あはは。カズキさんの弱点発見、みたいですね。ストレートな誉め言葉には弱い、と」
「いやいやいや、単純な物量の差で押し切られちゃったんですよ。あれだけの人達にここまで好評され、喝采までされちゃった日には、こうなっちゃいますって。(アイドル歌手じゃないんだし……)」
顔が赤くなったのを誤魔化す様にカズキは出された水をぐいっ、と飲み干した。
そんな仕草を見て、また笑いに包まれる。
「あはは。さぁ、カズラさん、カズキさん。たくさん食べて下さいね?」
「そうでしたね。折角作って頂いた料理が冷めちゃいますし」
「はい! その通りです! と言う訳でこの話題はそろそろ終わりで、美味しそうなご馳走を頂きましょう!」
目の前に並べられた1品1品の料理をじっくりと見ながら、カズキはやや過剰気味に話題を逸らした。
実際とても美味しそうな料理だから、冷めてしまうのはもったいないと言う気持ちも当然ある。
グリセア村で栽培された芋を利用した煮物、半分は日本製の冷凍野菜を利用した野菜の吸い物、グリセア村のゆで卵(根切り鳥と呼ばれる 日本で言う鶏の卵)、川で獲れた魚の混ぜご飯。
そして、デザート用にパイナップルの缶詰を横に据え、大分豪勢な夕食になった。
夕食を楽しんでいる時も――話題に上がるのはカズキの歌だったりするのは言うまでも無い事である。
そして、翌日も作業作業作業。
主に日本から持ち込んだ肥料の袋詰めだ。壊滅しかけの穀倉地帯用に急ピッチで行う作業に殆どの労力を注がれていた。
農業運搬車を使った肥料の持ち込み作業は昨日の内に全て終了しているので、今 この頼もしい味方は 別の代物を大量に運んでくれている。
別の代物とは、勿論イステリアへと持ち込む日本の家電製品だったり、食糧だったりだ。
こちらに関しては 精密機械も混ざっていると言う事もあり、カズラ・カズキを中心に、村人の皆にも手伝ってもらっている。
それらの作業を横目で見ていたジルコニアは、ふと疑問を口にした。
「……それにしても、凄い量ね。あの箱たち。……いったいあの中には何が入ってるのかしら?」
そのジルコニアの疑問に答えるのは、共に傍で作業をしていたアイザック。
「あれは、カズラ様、カズキ様の神の国での食べ物だったり、以前拝見したランタンなどの道具らしいです。あまり衝撃を与えすぎると、道具に込められた精霊が驚き、逃げてしまうとの事で、運ぶときは出来るだけ丁寧に、と指示されました」
「ふぅん……。まぁ道具はともかく、食べ物まで持ち込む……、って事は、私たちの出した料理は口に合わなかったのかしら? 確かに思い返してみれば、あの時試食した缶詰は少し濃い味付けだったものね……」
財政難ではある。食糧難でもあるが、その中でも出来る範囲で豪勢な食事を振舞った筈だった。……だが、食糧を持ち込む、と言う事になれば、口に合わなかったと考えるのが普通だろう。……料理人も一流と呼ばれる人達を雇っているのだが。
横で聞いていたアイザックは少し否定する。
「しかし、ハベルの屋敷で出された料理は、お二方とも非常に気に入った様子だったそうですが」
「あら。それならあとでハベルに相談しようかしら。いっそのこと、料理担当者を引き取れたら助かるわね」
「それが一番だと思われます。まだ日も浅く、味も覚えていると思いますから」
今後の方針がまとまる。
カズキに色々と言われたが、それでも注意すべきところ、注視すべきところで怠慢になる訳にはいかない。……まだまだ気が抜けない現状ではある、が 料理に関しては嬉しい誤算だと言えるだろう。
今後の事で 神の国と呼ばれる日本の食糧の味をこちらの世界で再現するのは非情に難しい、と考えていたから。ハベルの屋敷での料理を気に入ったのであれば、それで半ば解決だと言える。
と、色々話をしている間に、カズラとカズキは帰ってきた様だ。
地の底から発せられ、腹の底にまで響く様な重低音は、離れていても十分聞こえてくるから。
「カズラさーーん、オーライ! オーライです! はい、その辺で」
「ふぃ~…… やーーっと終わった」
「まだですよ~。荷物降ろさないと」
「うげっ、一番大変なの忘れてた」
カズキとカズラがせっせと仕事をしている時、バレッタが駆け寄っていた。
手に持っているのを見てぴんっ! と来たカズキは、そそくさと後ろの方へと移動。バレッタに目配せをして、カズラに向かう様に促した。
顔を赤らめたバレッタだったが、小さく頷く。
「お疲れ様でしたカズラさん!お水をどうぞ」
「おお、ありがとうございます。あ、カズキさんの分は……」
カズラは、ちらっ、とカズキが居た方を見た……が、いつの間にかそこにはおらず。いつの間にか農業運搬車の運転席にいた。ドリンクホルダーに刺してあったペットボトルを取って軽く飲んで……、カズラの方を見て 手をぱたぱた、と振る。
イステリアでも、カズラに女の子がつかない様に見る、と言っていたが、ここまであからさまに気を使わなくても……、と思いながらも カズラは満面の笑みのバレッタを見たらそれ以上は何も言わず、バレッタがカズキの事を呼ぶまでそのままだった。
その一連のやり取りを傍から見ていたジルコニアは頬杖を突きながらつぶやいた。
「ふーむ……。前々から思っていたけど、カズラさんはあの娘を気に入っていて、それを判ってるカズキさんも くっつけようと奔走してる……みたいね。あの娘もまんざらではなさそうだし」
バレッタの満面の笑みを見たら、カズラと他の人たちとの接し方の差を見れば大体わかる事だ。鈍感朴念仁でもない限り。
「そのようですね。イステリアで、野盗襲撃の知らせを聞いた時も、第一声がバレッタさんの事でしたし、カズキ様がいらっしゃらなければ、もっと気負いしていた可能性が高いと感じました」
「…………」
ジルコニアは、アイザックの言葉も頭に入れつつ――――あのアイザック天幕事件? の事を思い浮かべた。カズラの雰囲気やバレッタを見る表情は、異性として捉えているとはっきりわかる。……だが、アイザックとの蜜月? は……??
「……うーん……、つまり、♂♀ どちらでも良い………と? 神は色を好む…………、どちらでも……??」
顔を赤くさせながら考え込むジルコニア。
そんな姿を見たアイザックは、以前の事を思い返しているな、と悟ると どうしようもない現実にややげんなりしてしまうが、解決策が現時点では全くないので、これ以上は何も出来ない。
なので、触るな、危険! 触らぬ神に祟りなし、と言う事でそそくさと移動する事にした。
「………私は、袋を馬車に運んでまいります」
あの話題はもう忘れよう。……今の自分にはそれしかできない、と。
それを聞いたジルコニアも これ以上観察を続けて仕事を止める訳にはいかない、とはっ! と持ち直した。
「あ、私も後から行くから」
そうアイザックに告げると、カズラたちの元へ。
「荷物はそれで全部ですか?」
「あと、カズキさんの方に数点あるだけですかね。それを積み込めば終了です。……あとは荷馬車へと積み込みですが……、それは明日にして今日はもう休みましょう。暗くなってますから」
カズラの言葉を聞いて、直ぐ後ろに居た荷物を運んでいるカズキが一言。
「暗くても照らしてあげましょう、とか考えたんですが、労働時間が増えたら身体壊しそうですし、何より大パニックになりそうなので 止めてます」
とだ。
ピカピカの力を使えば、どの規模、範囲になるかは分からないが間違いなく眩い光に包まれる事は確かだろう。此処にいるメンバーは全員が体感しているからよくわかる。
「確かに、それは……」
「身分は あまり広めず隠してるので、カンベンですよカズキさん」
「あはは。わかってますよ」
一頻り笑った後、明日以降についての話し合いもした。
荷馬車の牽引を村人に手伝わせる話。事前の話では御者はグリセア村に入れない仕様になっているからだ。
それには大きな理由がある。不特定多数に、グリセア村で起こった現象の1つ、オバケ畑を安易に見せる訳にはいかないからだ。
一度でも外に漏れると、それを狙う輩が増えるリスクだって高まる。今回の野盗の様に。
成るべくグリセア村には迷惑をかけたくない気持ちが強いので、自然とそう収まったのである。
そして、日も完全に落ち、その夜―――。
「お時間を空けてもらったありがとうございます」
「いえいえ! とんでもございません。カズキ様のご命令であれば、何時如何なる時であっても!」
ビシッ! と敬礼されているカズキ。
しているのはハベルである。
実は、アイザックから話を聞いた事をハベルにそれとなく伝えに来ていたのである。
この流れであれば恐らく―――
「以前、ハベルさんの屋敷に招待された時の事を、ジルコニアさんにアイザックさんが説明したとの事で」
「私の屋敷に……?」
「はい。神の世界からの食糧を大量に持ってきている所をジルコニアさんが見て、アイザックさんに聞いた、と言うのが流れですね」
食糧の問題はカズキは何故だか問題ないのだが、カズラにとってはまさに死活問題だ。
難に直面する度に、グリセア村や日本へと帰還すれば対処は容易にできるが、イステリアから毎度毎度戻っていたら復興支援に来たのに、かなり遅れになってしまうのは目に見えている。
だからこその大量食糧の持ち込み。
当然、それを見たジルコニアが、自分達の食事では駄目だったのだろうか、と思うのは至極当然の事だ。
「……なるほど。私の屋敷で召し上がって頂いた食事、カズラ様は満足されたのですか。それは私としても非常に喜ばしい限りでございます。気に入って頂けたのであれば」
「あははは。私も同感ですよ。いきなりお邪魔の形になったのに、物凄いご馳走を振舞っていただきましたから。常に備蓄を怠らないんですね。立派だと思います」
「そこまでではありませんが、父の趣向の1つで一定量は常に持つようにしているのです」
一頻り笑った後カズキは続けて言った。
「ジルコニアさんは、恐らくハベルさんから食料に関しての話が行くと思います。主にハベルさんの屋敷での料理ですね。……食料の問題に関しては少々機密度合いが高い位になるので細かな説明までできなくて申し訳ありませんが、ハベルさんの所でまたお世話になるかもしれないので、事前に礼を、と思いまして」
「っ!?? そ、そんな滅相も無い。私はカズキ様、カズラ様の為に、盾となり剣となり、命を捧げる所存です! なので、どうか気になさらないでください」
「い、いのちは少々重たいのですが……。私としてもゆくゆくは、もっと軽い感じで接し合いたいと思ってます。……国を護る兵士、副隊長のハベルさんですから、ちょっぴり難しいかもですが」
「………………」
少々困った表情をしているハベル。
ハベルはアイザック程ではないにしろ、カズキが言う様な関係になるのはなかなかに難しい事なのは間違いない。上下関係がかなり厳しい身分制度であるこの国を考えたら、カズラやカズキは、間違いなく最高位。国のトップをも遥かに上回る存在だ。
軍隊で規律を学び、今も実践し続けているハベルには酷な話だろう。
……勿論。
「強制はしませんからね? どちらも。確かに私の希望はフランクに接する事ですが、それでハベルさんが気疲れしちゃったらまさに本末転倒。ハベルさんが楽な方で」
「は! ありがとうございます」
その後も色々と話をした後、カズキは天幕を後にした。
「……何だかんだで優遇、贔屓してるよなぁ……、オレって。主にマリーちゃんに」
天幕からバリン邸へと帰る道中、カズキは思わずそう呟いていた。
ハベルの行動理念については、最早確認するまでも無くマリーである事は判っている。マリーが自分の家で如何に不遇な扱いをされているのかも、裏を取るべく聞き出したのだ。
ハベルがどうにか軍で出世し、そしてマリーをこの環境から救い出そうとしているのも理解できる。
実際にマリーはしっかりと働いてくれているし、あの歳を考えたら、極めて優秀な分類に入るだろう。いつも一生懸命な彼女を見て、現状を知って、手助けしたいと思わない男などいない訳がない。(……ロリコンではないです)
「……流石に、余計な不和をオレのせいで齎す訳にはいかないからなぁ……、ハベルさんには申し訳ないけど順序を踏んでって説明したけど……。う~ん、オレも早く解放させてあげて、兄妹仲良く暮らす……っていうのを実現したいんだけどなぁ……」
今現在、カズキ自身の力……影響力を考えたらナルソン領主に頼めば確実に解放は出来るだろう。物凄く気に入ったから、と理由を付ければ間違いなく。
だが、権力だろうと純粋な力だろうと、それを強行的に使って何かを成したその後の展開は決して良い様にはならないと思うのだ。
少なくとも マリーを縛り付けているであろうハベルの父は間違いなく不信感を抱く筈。
それも纏めてピカピカでブットバス! と勢いよく行けば良いかもしれないんだけど……。
「穏便に、が一番だよ。ハベルさんの力で自然に。無用ないざこざ、諍いが間違いなく起きそうな強引な手は、急を要する時以外は一先ず保留」
少なくとも、マリーがナルソン邸で働く様になるのは恐らく間違いないだろう。
食事事情をハベルに聞く……となれば、食糧や料理人の話に十中八九行くはず。そこでハベルがマリーを派遣する様にするのは間違いない。
ナルソン邸で働く様になれば、間違いなく現環境は向上する筈。……勿論カズキは、何かあったら、告げ口する形で改善させる気も満々である。
決してロリコンではない。重要な事なのでもう一度明言したが、護りたい少女、だと言う事はカズキも認めるだろう。
「よしっ! さっさと戻って今日は寝るかな」
カズキは足早にバリンの家へと帰っていった。
「ただいま戻りま―――――……した?」
「ッッ!!!」
「すぅ……すぅ………」
そして、バリンの家にて不意打ちともいえる驚き発生。
完全に忘れていた。カズラがバレッタと抱き合っている姿を見て状況判断&記憶を手繰りながら――――。
「……失礼しました」
そそくさと外へと出たのは言うまでも無い。
「ま、まって……」
超小声で待つ様に言うカズラ。
フリーズしていたカズラは、カズキが静かに外へと出ていったのを確認すると、大慌て。
眠ってしまったバレッタをなるべく起こさない様に、それでいてこれ以上ない速度で寝床まで運んで寝させた後、少し遅れたがカズキを追いかけるのだった。
「そうだよそうだよ! バレッタさんが頑張ったんだよ! そういえば精油、アロマとかするって言ってたし、効力だって日本の何倍もこっちじゃある筈だし! ……ぁぁ、悪い事したなぁ」
カズキは、ついついピカピカの力を使ってしまって、森の中にまで来ていた。
バレッタの事はカズキも応援している。とても良い子だ。父親想いで村の為に駆け回って、いつも皆に気をかけて、優しい。だからこそ、応援したくもなる。背を押したくもなる。
それに、襲われたと聞いたら心配にもなる。
色々と助けてくれているから、こちらも助けれる事があれば助けたい。……カズラと早くくっついてほしい。
あんな良い子は他には居ないんだから。
「……いや、この世界には結構いるかも。バレッタさんに負けないくらい良い子。あ~、何だか羨ましくなっちゃったかなぁ……。オレ、
「羨ましくなった、とは 何がでしょうか?」
「うわぁっ!??」
突然、後ろから声が聞こえてきた。
バレッタとカズラの様子を見て、少なからず羨ましい、と言う想いも芽吹き始めていたカズキ。以前カズラにも話をしたが、向こうの日本……カズキが居た方の日本で 彼女にこっぴどくフラれた記憶はまだ新しい。―――長く付き合っていた筈なのに、あっさりと別の男の方に行って……、ゲーム三昧になる前にどれだけ泣いてしまったか覚えている。……思い出したくもないが。
そんな状態だったのに、あの2人を見たらやっぱり、ちょっぴり羨ましくなる。
そんな悶々としたり、複雑だったり、様々な事を考えていたら、少々注意散漫になってしまった様だ。
直ぐ後ろまで誰かが来ているのにも気づかないのだから。
「び、ビックリした……! ってノワ……!? ビックリさせないでよ」
「す、すみません。カズキ様がいらしたのが見えたので、嬉しくなってつい……」
「嬉しくなったら後ろから驚かすんだ!? うわーー、気を付けよ」
グレイシオールの森へとやって来たのだ。
だから、突然の来訪者、黒いウリボウ事ノワールが来ていても不思議じゃない。油断していたのはカズキの方である。
一頻り謝罪を受け入れた後、改めてノワは首を傾げた。
「この様な深夜にどうしたのですか?」
「あー、いや ちょっとね? と言うか、よくオレを見つけられたね。いつもこの森に居る訳じゃないでしょ?」
「はい。今日、此処にいたのは偶然です。沢山の人間の気配がしていたので、大丈夫とは思ってましたが、一応様子見に、と皆で来ていました」
ノワがそういうと、きゅんきゅん、鳴きながら数匹のウリボウが出てきた。
甘える様に纏わりついてくるんだけれど、彼らは自分の体躯を忘れてないだろうか? 人間など簡単に襤褸切れにしてしまいそうな大きく鋭い牙やら爪やらを持つトラサイズの狼だと言うことを。
上下関係を力ではっきりさせてしまったので仕方ないかもしれないが、あまりにギャップがあって思わず笑ってしまう。
「カズキ様の光が見えましたので。夜の闇に貴方様の光はとても目立ちますよ」
「……そりゃそっか。そうだよなぁ。……誰にも見られてないかな?」
「その辺りは大丈夫でしょう。村が騒がしくなればここに居ても感じ取れます。皆眠りに入る時間帯ですから」
「了解。ありがとね」
因みにカズラがカズキのことを探しているのは、2人とも知らない。
予想できそうな事だけれど、あまり考えない様にしたのかもしれない。カズラとバレッタの事が羨ましい、と思ってしまったが故に。
カズラも流石にこんな深夜、村の外まで範囲を広げて捜索はしない様だ。……カズキの移動範囲・移動時間を考慮すれば、それも容易に判断できる筈、である。
そして、その後。ノワは食いつき気味に聞いてきた。
それに呼応する様に、数匹のウリボウも近づいてくる。四方八方取り囲まれていて常人であれば絶対逃げ場無しな状況。
「羨ましいって何がでしょうか?」
「いやいや、近い近いって! もれなく皆近い!」
「何だかとても気になるんです。教えて頂けませんか?」
「わかったわかった。わかったからノワを含めた全員、ステイ! 落ち着きなさい」
その後――あまり言いふらして良いモノではないので絶対に内密にする、と言うのを条件にカズラとバレッタの事をつい話した。
男女の間柄、秘め事、逢引を見て羨ましい――と口にしたカズキを改めてみたノワは、何だか妖艶な仕草を、雰囲気を出し、そして静かに微笑むのだった。