ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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17話 マリーのお仕事

 

 

 

コトコト……と煮込んでる鍋を背に、少しぎこちない手付きで食材の下ごしらえをしているのはカズラとカズキの専属料理人として任命されたハベルの屋敷で働いている侍女 マリー。

 

 

徐々に美味しそうな香りが鼻腔に届いてくる。そして――食欲を誘ってくる。

 

 

腹が減っては戦は出来ぬ、と言うことわざがある通り、空腹では満足な仕事を行う事が出来ないので、疲れてお腹が空いた時の食事は本当に楽しみだ。

 

カズキは兎も角、カズラは日本食じゃないと空腹しっぱなしになる、と言う問題を抱えていたが、ハベルの計らいでその問題も解消された。

 

 

計らいとは、カズラに出す食事は神の世界からの食糧をベースに、自分達の用意する食糧と合わせて提供する、と言うもの。意見があればその都度要望には応える、との事だ。

 

 

この粋な計らいを聞いて、カズラの中でハベルの株がどんどん急上昇し、ストップ高となった。

何故なら、この極めて特殊としか言えない食事問題の解決策としてカズラが考えていたのは、1日5~6食、最悪食事は別、と言う手段しか思い浮かばなかったから。

 

満腹感は得られないが、腹に何かを詰めている圧迫感は感じると言う何とも不可思議で厄介な現象が起きてしまうのが、カズラにとってのこちらの食事だ。

カズキは何故だか違うのが羨ましい事ではある、がこればかりは仕方がない。

カズラの体内に収まる体積は決まっているので、無理矢理食べても吐き出しかねないから、食事は別々(カズキも付き合うと言っていたが、そこまでしてもらうのは悪い、と断ったりしている)に泣く泣く……と思った矢先の出来事である。

 

だが、日本食をこちらの人間が食する危険性もついて回るので、その辺りはしっかり約束させた。神様権限を存分に使って。それを破るような真似はハベルは絶対にしないと思えるのでそれで安心だ。

 

 

そして、ハベルにとっては逆にもっともっと礼を言いたいくらいだった。

 

専属の料理人を出す様に、とジルコニアから依頼された。

カズキが言っていた通りに。

 

そこで、ハベルが用意した専属料理人がこのマリーである。

 

「ああっ!?」

 

マリーは、基本家事全般なんでも仕込まれている有能な侍女。

歳を考えたら尚更有能。

……こんな小さな子に仕事をさせるなんて……とも思えたが、世界が違うので一先ず目を瞑った。ヒドイ事をされていないから、と言う理由もある。行き過ぎる様なら制止をかけるつもりだが、ナルソンの屋敷ではそれは無いだろう。―――神である2人が不満に思う、不敬に感じる事は一切行わないと徹底している筈だから。

 

 

話は逸れたのでもとに戻そう。

マリーは有能である。……でも、今の給仕ではミスが目立っている。

 

ものを落としたり、やけどしかけたり、と見ていて怖い!と思ってしまう程だ。

 

 

「(多分、オレ達が見てるせいかな……?)」

「(はい……そうですね。間違いないと思います)」

 

 

この場に居るカズラとカズキ、そしてハベル。

ハベルが一緒とはいえ、明らかに身分が違うと思っているカズラとカズキの2人に見られながら……と言うのは、緊張をさせてしまうのだろう。

 

 

「では、そのへんを一回りしてきますので、ハベルさん。あとはよろしくお願いします」

「あ、私も少しバリンさんとお話がありますので……」

 

 

そそくさと、緊張をほぐす為に、2人は離れていった。

申し訳なさそうにハベルは頭を下げるが、笑顔で首と手を振るカズラとカズキ。

 

気にしていない様子なのは、2人をみてよく解ったが、注意はしておかなければ、とハベルはマリーの隣に来た。

 

 

「……マリー」

「も、申し訳ございません!!」

 

マリーも解っていたのだろう。

ハベルが何かを言う前に、勢いよく頭をさげて謝罪をした。

 

「緊張してしまって……。わ、私の様なモノがお二方の専属料理人だなんて本当に……」

 

何故自分が選ばれたのか……、ハベルの計らいではある、と言うのは理解しているが、マリーにとってはいきなりすぎるのだ。段階を1も2も……それどころか10くらい飛び越している、と思えてしまう。

領主であるナルソンの友人なのだから。マリーは、ルーソン家の奴隷の身分。最下層。天地の隔たりがある、と感じ、委縮してしまうのだ。

 

 

「不安なのはわかるよ。でも、これはお前がルーソン家を出ることが出来る絶好の機会でもあるんだ。……お前もいつまでもあんなところには……」

 

周囲の目を気にし、誰も見ていない、聞いていない事を確認しながらマリーに耳打ちをするハベル。

それを聞いて、理解はしているし、望んでいる事でもある、がどうしても心の引っかかりが取れないのがマリー。

 

「はい……。ですが、これでは……その、お二方をだましているようで……。それに、あの約束(・・・・)の事も……」

「人聞きが悪いな。誰も騙してないし、嘘もついていないよ。父上とのオレの約束も大丈夫だ。……安心して良いんだマリー」

 

ハベルは、僅かに震えているマリーの頭をそっと撫でた。

 

「大丈夫なんだ。オレには、……カズキ様が、ついてくださっている。オレの働き次第では、と言ってくださってる。オレが粉骨砕身、誠意を尽くせば応えて下さる方だ。安心して良いんだ」

「あっ………」

 

 

マリーは、ハベルの顔を見て思った。

普段は奥に隠している―――出さない様にしている自然の表情。

いつも自分に向けてくれる時以外、それも仕事が終わり、兄妹として接してくれている時に見せてくれる顔。

 

今は2人きりとはいえ、仕事の最中。気を張りつめて集中している事が多いハベルがカズキの名を出して何かを言う時――綻ぶ。

 

それ程までに、信頼を、信用をしているのだと言う事が解る。

 

忠義は尽くしてはいても、その深奥にはアイザックやジルコニア、果てはナルソンまで、利用すると言う考えがあったハベル。

それが自分自身の為、ベクトルが自分に向いている事は知っている。物凄く嬉しいし、心休まる唯一の存在ともいえる兄。だからこそ 心を砕かないで欲しい、と願っていたマリー。

 

その懸念が、今少しだけ払拭した。そんな気がした。

 

 

ハベルは、マリーの目を表情を見て、何かを察したのだろうか。軽く深呼吸をしていった。

 

 

「だから、今は安心して料理の続きをしてくれ」

 

ハベルにそう言われ、マリーは少しだけ笑顔に戻る事が出来た。

 

 

「あ、はい。あの―――先ほど聞けなかったのですが、もととなる料理の味見はしてもよろしいでしょうか?」

「それくらいは良いんじゃないか? 流石に、味をみずに料理を出す方が失礼にあたるだろう」

「そうですよね。ではお野菜を入れる前に――――」

 

 

 

 

この後―――マリーは料理人として働く事になるのだが、味見をする為に、日本の食材をその都度摂取する事になり、グリセア村の住人の様に、即ちグレイシオールからの祝福の力を人知れず授かる事になるのだった。

 

 

尚、この事実は様子見に戻ってきたカズラとカズキ以外当然ながら知る由もない。

 

 

あの味見をそれとなく止めればよかったのだが。

 

【……美味しいです!】

 

と目を輝かせながら、年相応の愛らしい笑顔と共に、ハベルに言っている姿を見たので、止められなくなったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜―――イステリアに無事帰還する。

 

 

行きと同じ様に相応の時間がかかり、馬車にゆらりゆらりと長時間揺られ続け……へとへとになったカズラ。

 

誰にもバレない様に、時折しれっとピカピカの力を使って身体を浮かせてなるべく酔わない様にしていたカズキ。

 

この世界に来る前に表示されていたピカピカの実の力に対する注意事項の1つ、1日1時間と言う制約。

どうやら、某主人公のギ〇4の様に完全に暫く使えなくなってしまう覇〇の様にはならないらしい。

何処から何処までが正しいのかわからないのがネックだ。

実際にあのVRゲームの中では、アップデートしたばかりだからと色々と言い訳をつけて、実装サービスに制限があったのかもしれないが、確認の仕様が無いので想像の域を出ない。

イステリアでも色々と実験的なことをしよう、とカズキ

 

帰還報告をし、明日の予定とカズラの部屋周辺改造計画(発電機や燃料等置き場作成)を事前にナルソンに伝え、本日の御勤めは終了となった。

 

「それじゃあ、オレはお風呂に行ってくるよ……」

「お疲れ様です、カズラさん」

「あははは。何だか情けない気もするなぁ。ちょっとくらいは運動しないと」

 

カズラは、風呂を沸かしていただいているので、そのまま入浴~就寝の流れに。

カズキは、ここ数日身体を動かした事、森の中でノワールと一緒に剣の練習、訓練の様なのをしてから、夜は身体を動かしてから就寝したい、と言う事になったので、ちょっとした訓練タイムとなった。

 

そんなカズキを見て、カズラは少しばかり体力が少なくなってきている自分に鞭を打たねば、と思い始めたのである。

 

「何か運動するなら、いつでも付き合いますよ!」

「うん。その時が来たらお願いするよ。……今はとにかく復興準備に向けて頑張らないと、だからね。カズキさんも身体には十分注意してくださいね? その―――大丈夫とは思いますけど」

「あはは……。ありがとうございます」

 

ぐっ、と握り瘤を作るカズキ。

凄い能力・身体になっていると言うのに、心配してもらえるのは何だか嬉しい感じがする、と頬をポリポリ、とかくカズキ。

 

 

 

その後、カズラを見送った後に、カズキは部屋の直ぐ外、隣接する庭へと来ていた。

人通りも少ないし、この周囲には使用している部屋も無いとの事なので(日本食・電化製品等を隠すのにもってこいの場所)、多少剣を振ったりしても問題ないだろう。

 

 

その代わり――――自分で作る剣を使うのは本日は止めだ。

明らかに目立ってしまうし、一応正体は伏せている状態なので、バレてしまえば説明が面倒なのとナルソンに迷惑が掛かってしまうから。

 

なので、お借りした訓練用の木剣を手にしていた。

 

「よし………。一応、ノワにも剣は続けるって約束したしな」

 

重量感のある木剣を眺めながら、森で共に訓練に付き合ってくれたノワールの事を思いだす。途中、色々とからかわれたりしたこともあったが、訓練内容については真剣そのものだった。

数多の世界(仮想世界)を巡り、様々な強敵と一騎打ちをしてきた最強の男 カズキ!! ————と言うのは、こちらの世界ではない話。やはり、各世界で得たレベル。能力値は身体能力に相応の補正をかけてくれた様で、ピカピカの実の能力を除けば、海や山を割る一撃! みたいな無茶な力は出せない模様。

 

 

「―――でもまぁ、このすり抜ける身体で十分過ぎる程チートだけど」

 

 

たはは、と苦笑いするカズキ。

寝る間も惜しんで得た力が失われているのは思う所があるにはある。……が、ここは言わば現実だ。仮想世界とはまた違う第2の現実。ただ1つでも持ち込めただけでも十分過ぎる程幸運だし、人間の範囲内ではあるが、新たに鍛える事だって出来る。

これ以上高望みは贅沢過ぎるだろう。

 

カズキはそう考えを締めると、軽く呼吸をした後に、剣術の練習を始めるのだった。

 

 

 

ほっ、よっ、と小さく声を出しながら剣を振り、ステップを刻む事約小一時間。

 

「カズキ様。……ぁ」

「っと、あ、アイザックさん。どうかしましたか?」

 

不意に背後から声を掛けられた。

アイザックは慌てて頭を下げる。

 

「も、申し訳ございません! 訓練の邪魔をしてしまって………」

 

アイザックが出てきた場所を見てみると、丁度曲がり角になっていて、カズキが居る場所は完全な死角になっている。小さくとはいえ声を出していたので、アイザックが不審に思って此処へ見に来た―――と考えるのが自然だ。

 

それで、ついカズキに声を掛けて―――訓練している手を止めさせた事を悔いている様子だった。

 

それを見たカズキは、笑いながら手を振った。

 

「大丈夫大丈夫。少し手を止めようかな? って思ってた所ですから。その、うるさかったですかね?」

「あ、いえ。そんな事は無いです。丁度、カズラ様に渡すものを頼まれまして」

 

アイザックが差し出してきたのは、日本製品 ステンレス製の水筒だ。中にはスポーツドリンクが入っていて、昼間は結構活躍してくれた物でもある。

身体を動かしている、とカズラに伝えていた為、アイザック経由で気を遣わせて持ってきてくれた様だ。

 

「ありがとうございます」

 

カズキは、アイザックから水筒を受け取ると軽く礼を言いつつ、汗を拭った。

木剣を器用に回して、腰へと携え、水筒の蓋を回して開き―――流石だ。冷たい状態を保ってくれている中身のスポーツドリンクを勢いよく、胃の中に流し込んだ。

火照った身体に有難い水分、である。

 

ある程度飲み終えた時だ。アイザックが少なからず興味津々に見ているのに気付いたのは。……その視線は、水筒――――ではなく、木剣の方。

 

ここで、カズキはぴんっ! と来た。

 

アイザックは軍人だ。

そして、自分は自称神様(笑)

自称——と言っても、あの光を見せた今、アイザックにとってはカズキは神以外の何者でもないのは間違いない。無論カズラも疑う余地無しだ。

 

さて、そんなアイザックが興味津々に自分が持っている木剣を見ている理由は……? と考えると、とりあえず直ぐ浮かんできたのはコレ(・・)

 

 

「手合わせ、してみますか? アイザックさん」

「!! よ、よろしいのですか!?」

「ええ。良いですよ。……勿論、アイザックさんの体調を第一に考えて下さいね? 昼間は大変働いてくれていたので」

「はい! 私はまだまだ動けます! 大丈夫です!!」

 

 

水を得た魚―――と言うよりは、玩具を得た子犬の様にはしゃいでいるアイザックが何処か可愛く見えてしまうのは気のせいか。……若いとはいえ、20くらいはあると思うので、可愛い、と言う表現はちょっとアレだが。

 

 

その後―――アイザックは自分の練習用の木剣を取りに行く、と駆け出していったのだった。

 

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