ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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24話 星に願いを

 

 

 

 

 

復興作業も順調そのものだ。

 

確かに水車の部品不良の件は、少々焦ったが 水車が全くない状態、0の状態だったことを考えれば何ら問題ない。

 

回転にムラがあっても今はしっかりと川の水を水路へと汲み上げてくれている。

仮に、破損したとしても、その場凌ぎだったとしても、土が……畑が息を吹き返してくれるだけでも十分だ。

 

 

大規模復興作業の初っ端のスタート。

 

 

そんな大掛かりなと言って良い作業に問題が無いと言う方がおかしい。

 

常に問題はある、解決しても新たな問題は直ぐにやってくる、と気構える事にしたのだ。

 

 

 

 

―――問題とは 皆が集まれば必ず解決できるものだと言う事も同時に思う様になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度太陽の光が真上に差し掛かった所で。

 

 

「―――さて、ちょうどキリも良いとこですし、そろそろ昼食にしましょう」

 

 

カズラの号令で、一同 作業を止めて昼の休憩……昼食休憩に入った。

 

今日はリーゼが付き添いで来ている事もあってか、作業員全員がいつも以上の働きを見せてくれている様に見える。

それだけでも、普段からリーゼの人気が高い、と言う事がよく解ると言うものだ。

 

カズラに至っては、明らかにやる気満々で張り切っているのが傍目から見てもよーく解ったから、カズキは苦笑いをしていた。

 

「(う~~ん……、記憶が正しければ、リーゼさんって……。いや、人間だれしも裏表はあるもんだし、こんな戦争やら食糧問題やら、色々と大変な事を抱えてる国の領主の娘ともなれば、ストレスだって相当……、想像以上にたまってる筈だし。……リーゼさんの知ってほしくない部分をほじくり返すのもなぁ……)」

 

 

カズキはリーゼの姿を見て、更に苦笑い。

傍から見ていても物凄く働いているのが解る。

 

勿論、作業員たちに混ざって……と言うワケではなく、ジルコニアの代わりの視察だ。

それぞれの担当者に労いの言葉や、進捗状況の確認など、てきぱきと熟しているのがよく解る。

 

流石に水車を実際に見た時は圧倒されていて、素の顔が出ていたが。

 

 

 

 

カズキが色々と考えている間にも、従者たちはせっせと昼食の準備を進めていた。

荷馬車から引っ張り出した組み立て式の簡易テーブルや椅子を取り出して、あっという間に綺麗な屋外ダイニングルームの出来上がり。

更に日傘もセット。テーブルクロスは純白。何処かの喫茶店のテラス席だ。食器も銀製で実に見栄えする。料理も彩り鮮やか。食欲をそそられる匂いもどんどん屋外なのに充満していき、お昼時だ、と言うのを 鼻腔を通じて 腹部の奥にまで届けてくれた。

 

 

カズラも、この世界の料理で満腹になれればもっと良いと思うんだけれど、こればかりは仕方ない。

従者の1人であり、カズラとカズキの好みの味? を知っている料理が出来る(とされている)マリー。

形式上では、カズキの従者となっているが、カズラとカズキの専属料理人でもあるのだ。

 

マリーは手際よく、クラムチャウダーと菓子パンを用意してくれた。

カズキはこちらの世界の料理でも問題ないが、流石に神様である2人の料理が分かれては不自然なので、カズキも日本製を頂いている。

以前は、無料飯(タダメシ)申し訳ない! と言う気持ちがあったのだが そこはカズラ。文字通り億万長者なので 痛くもかゆくもない、と笑い飛ばしてくれたので、今は感謝の念だけを送り、両手を合わせて頂いている。

 

こちらの料理では腹が膨れない、空腹感が満たされないと言う摩訶不思議とも言える状態のカズラに料理を用意するのは少々見た目的にも大変だけど、その辺りはマリーがよくやってくれているので大丈夫だ。

 

こちらの世界の人達が日本製の料理を食べたらどうなってしまうのか……、それはグリセア村の皆を見たら1発で解るので、要チェックポイントなのである。

 

無論、カズラやカズキの心証を悪くするワケにはいかないし、カズラ自身にもきつく言われているので(多少脅しあり)、その手のミスはナルソンを始め、ジルコニア達も犯さないだろう。

少なからず、食べ物の秘密を掴みつつあるようだが――――それでも。

 

 

 

「(なんだろ……? シチュー?? 暑さで悪くなってないのかな……?)」

 

 

リーゼも、自身に出された料理と別物にした事に少々疑問に思っていたが、今は好感度を上げる事に集中しているので、些細な違いは気にしない事にしている。

単純に、別の国の貴族なのだから、味の好みが違うとか、その辺りは理由を考えれば幾らでもあるから。

 

 

 

食事をしながら話題に上がるのはやはり、先ほど見た中で一番インパクトのある水車の話だろう。

あまりに圧倒されたので、カズキやカズラが【この水車には不具合・不備がある】と言う説明を聞いてもさっぱり理解出来なかった。

 

水を絶えず汲み上げ流し続けるのだから無理もない事だ。回転にムラがあるなんて、些細な事だと感じてしまうのだろう。……本来なら汲み上げるには莫大な人材・金銭が掛かりそうなのに、こうも迅速に水を供給できる設備。これで穀倉地帯も息を吹き返す事間違いないだろう、とこの時ばかりは、心の中でさえ、カズキやカズラ(主にカズキ狙い)も忘れて大いに喜んだものだ。

 

「そう言えば、カズラさんとは街中で会ったんですよね? リーゼさんって。よく出かけられるんですか?」

「ええ。気分転換でよく散歩に行きます。町ではいろんな人とお話が出来て、とても楽しくて市民の生活を直接見られて勉強にもなります」

「リーゼさんは、とても勉強熱心ですよね。それに とても優しい。あの時(・・・)、リーゼさんに助けられてなかったら、結構大変な事になってたかもですし」

 

カズラは苦笑いをしながら当初の事を思い返した。

 

それは、エイラとカズラが出合い頭にぶつかったのである。

当たったタイミングが悪かったのか、当たった場所が悪かったのか、女性であるエイラは倒れず、カズラは倒れてしまうと言う何とも情けない姿だった、とカズラは苦笑い。

 

あの時の事は、正直 リーゼは こちら側に非がある、と思っているので(エイラは自分と話をしていて余所見をしていたから)、当然の事をしたまでだ、と思っていて、正直蒸し返されるのには、若干の抵抗があったのだが、カズキに姿勢を見せるには好機。

 

「あの時は申し訳ありません。私達の不注意でした。……それに近衛兵たちも……」

 

陽気に笑っていたリーゼがしおらしく頭を下げる。

心から謝罪をしている姿勢を全面に出して見せた。

 

ぶつかった事に関しては、カズラに非がないとは正直言えないが、それでも こちらが悪いと全面的に認める。何せ、その後が大変だった。

 

カズラが倒れた時に落とした物を拾って返そうとした時、不意に気になってリーゼは突起部分を強く押し込んだのだ。

 

初めて見る形状の道具だったから、好奇心が出てしまった、と言うのが正しい。少し触るくらいなら問題ないだろう、直ぐ返却するから、と考えがあまかった。

 

「い、いえいえ。リーゼさんを護る為の行動です。なので、彼らを咎めてはいけませんよ?」

「……あ。っはい! ありがとうございます」

 

でも、考えがあまかったからと言って、流石にいきなり火が出てくるのは想像・想定の範疇を遥かに超えているだろう。

 

あの時、カズラが落とした物は、簡易ライター。

 

この世界では、火起こしは原始的な方法でしか存在しておらず、種火を確保しておかないとかなり大変なのだ。だからこそ、容易に火を生み出せる道具も当然オーバーテクノロジー。

 

石油燃料もこの世界では発見されていない代物なので、流石に水車の様に道具提供とはいかないから、ライターの件は有耶無耶にしている。リーゼも 話したくない部分である事はある程度察しているので、そこまで言及する事は無かった。好感度を上げる為にも がめつく、しつこい女は駄目だろう、と判断したから。

 

 

 

 

 

その後終始穏やかに、そして楽しく時が流れていく。

 

リーゼの人柄について、カズラはより深く知る結果にも繋がった。

控えめな所もあるが、予想外に積極的な発言をする事もあり、どこまでが本気なのか測りかねる部分はあったものの、仕事に対する姿勢を見れば、全力である事が容易にわかる。

 

社交辞令である笑顔――――と、ある一定の距離を置いていたカズラも、その笑顔には心打たれるモノがあり、市民の間で人気が高い理由、このエリアにリーゼが来た事で明らかに顔が変わった理由が解った。

 

給金を弾む、と言った発言と同等以上なのだから。彼女の為になるのなら――――と。

 

 

「(いやぁ、随分と社交的な人だよね、リーゼさんって。市民の間で人気があるのも納得できるよ)」

「(…………ですね)」

「?」

 

 

カズラのリーゼに対する評価、と言うか印象はかなり高い。高い、と言うよりもうMAXストップ高だ。市民に慕われる領主の娘。この国の問題点が改善されて行けば、より良い未来があるだろう、とカズラは思っていたのだが……、何やらカズキは歯切れが悪い。

 

その様子がちょっと気になった。

 

カズキは善し悪し両方とも、ある程度オブラートに包みはするものの、把握している範囲、解りやすい範囲では 殆ど即答しているからだ。

 

リーゼに関して言えば、まさに解りやすい話題。

無論、私生活の全てを見ている訳じゃないので、早計かもしれないが 現時点では問題ない、満点の働き。

 

作業員たちの士気向上にもつながっているので、かなり仕事が捗っているのは、午前中の業務を見ればよく解ると言うものだ。

 

何がひっかかるのだろう? とカズラは首を傾げていた。

 

 

「(あれ? 何かあった? リーゼさんと)」

「(?? あ、ああ、いえいえ。そういうワケではないですよ。ちょっと考え事をしてただけで。……リーゼさんについては非の打ち所がなく、まさに才色兼備って言葉がぴったりですし)」

「(……うん。だよね)」

 

 

カズキの女性観については、カズラも重々承知だ。

 

嘘か本当かは一先ず確認のしようがないので置いといて……、長く付き合っていた彼女が突然男を作って行方を晦ます。それも もうそろそろ結婚を……、とカズキが考えていた矢先にだ。

 

金銭面のやり取り等は特に無かったし、何より結婚したワケでも婚約をしていたワケでも無いので、訴えるなどの修羅場にはならなかった様だが……、それでも本人の心の内ではかなりの修羅場になっていたと言うのは容易に想像がつく。

 

そこから、一日の大半を 未来ゲームであるVR世界へと没頭していったらしいので、その点を考えても……。

 

 

だから、リーゼに関して 少なからず疑心暗鬼な部分でもあるのでは? と思ったが どうやらそう言うワケではないらしい。

……それによくよく考えてみれば、確かにリーゼは かなりの美少女なのは間違いないが、出会ってまだ数日。立場も柵も色々とある間柄のリーゼに 幾らトラウマがあったとしても そこまで警戒する必要はない筈だろう。

 

なら、何を考えていたのか、と少々気にはなったが 本人が話してくれるならまだしも、カズラ自身が根掘り葉掘り聞くつもりは無いので、それ以上触れない事にして、談笑を再開した。

 

 

 

 

色々とカズラやカズキが考えを張り巡らせている時、勿論 リーゼ自身も色々と考えている。

 

「(うーん……、カズラ様は たまにじっと見られてる事があるからある程度解りやすいんだけど……、何だかカズキ様は 違うのよね……。警戒してる? うぅん、変なボロは出してない筈だし、………)」

 

リーゼの本性に関しては、親であるナルソンは勿論の事、同姓のジルコニアでさえある程度は隠す事が出来ている。常に一緒にいる、と言っても良い家族相手にも 素顔を隠す事が出来ているのにも関わらず、昨日今日の付き合いの浅いカズキに考えが悟られるなんて、到底思えない。

 

これまでの実績を考えてもそうだ。

 

だから、ある程度はリーゼ自身も警戒しつつも―――手を緩める様な事は考えていない。

心の内を読めないのはリーゼも同じなのだ。実際は全く違う理由で警戒している様に見えるだけかもしれない。

カズキと話せば普通に、自然にやり取りが出来ているのも事実だし、その辺りに変な棘やしこりがあるワケでもない。

言うなら、直感に近い。……長年男を見てきたリーゼの経験則に基づくモノだから。

 

 

 

「(カズキ様に全力を出すのは変わらない。……勿論、カズラ様を蔑ろにしちゃったら、本末転倒になりかねないし、バランスを考えて……全力で……)」

 

 

カズキを狙うにしても、その過程でカズラの事を杜撰な扱いにしては、当然カズキにも心証最悪に映るだろうから、2人の事を立てつつも、徐々にカズキへとシフトしていく腹積もりである。

 

 

 

 

それぞれの心の内は穏やかとは言えないかもしれないが、傍目からは、微笑みが絶えない終始穏やかに過ごしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜――――。

 

今日も一日終わりをつげ、夜中はいわば自由時間だ。

カズキが剣を振るう様に、カズラも持ち込んだお茶で、ティータイムと洒落こんだりと、過ごし方は様々である。

 

 

「ふぅ……」

 

カズキは、一先ず今夜は剣の訓練はやめておいた。

約束の類があるのなら、するつもりだが ハベルにしろアイザックにしろ、またのお相手と言う話はしたが、正確な日時指定まではしていないので、本日は勝手ながらお休みと言う事にした。

 

「それにしても、まさかジルコニアさんまで伝わってるとはなぁ……。彼女、剣の腕は凄そうだし、軍部与ってる身だから、当然興味津々だよねぇ。……なんせオレ、神様だし?」

 

剣の相手の件でのジルコニアの表情は、これまで以上。

復興の手伝いをする事が正式に決まった時以上の表情だったので、彼女が軍部の強化を何よりも重要視しているのが、傍目からでもよく解った。口には出さないが、全てを後回しにしてでも、敵国であるバルベールとの戦争の準備をしておきたいと言うのが本音だろう。

 

何せ、仮に穀倉地帯を始め 国の問題を改善出来た所で、何れ間違いなく攻めてくるであろう、バルベールに敗北すれば 全てが終わってしまうのだから。

飢饉で滅びるか、敵国に滅ぼされるか、の違いだ。

 

……今回の干ばつの影響の凄まじさは流石に想定していなかったので、あのまま軍部強化ばかりしていたら、戦う前に干からびる事も間違いないので、表情にこそ決して出さないが、ある意味苦渋の決断でもある。

 

 

「あと、リーゼさんだよなぁ……」

 

 

カズキは、ジルコニアの事の次は、リーゼの事について……、親子の2人の事を考える。

それは、昼間 カズラが不思議に思ったあの時。カズキが考えていた事に直結する事でもある。

 

大きく大きく息を吸い込んで―――――――。

 

 

「―――――すっっっっごい可愛い!!」

 

 

 

盛大に吐き出した。

無論、周りに人が居ない自分が使わせてもらっている部屋とはいえ、ある程度配慮はしつつ、である。

リーゼの事を本当の意味で知っているカズキだが、色々と画策していても、裏があったとしても、接すれば接するほど、そう強く思ってしまうのだ。

 

 

「美人なのは間違いない。正直、解ってても惚れる。間違いない」

 

 

 

ストレートにカズキはそう愚痴り続ける。

 

カズキ自身が抱えているトラウマに関しては 嘘偽りない事だ。

多分 ほぼ間違いないリーゼの本性について考慮したとしても……、それを補って余りあるサービス精神の高さ。

 

好感度を上げる術、と言うモノを全て熟知していると言って良いやり取り。

ちょっとした仕草、気の使い方……、満点だ。100点どころか1万点だってつけられる。

 

世の男の全てを虜にすると言っても過言ではない。

 

 

が、問題は次の事。

 

 

「うぅ~ん……、やっぱりニーベルってヤツの事 全部は思い出せん。……嫌な奴って事以上に何かあった筈なのになぁ……、くそうっ。グリセア村襲撃の時もそうだけど、事が起こってから(・・・・・・・・)鮮明に思い出すの止めたいんだけど……こればっかりはなぁ………」

 

 

考えるのは、あの時言っていた【ニーベル】について。

覚えがあると言うのに、はっきりとまでは思い出せない。

不快な事だけは覚えているのだが……、それ以上は無理だった。

何だか嫌な予感もするし、ラノベにハマった時に もっとよく読み込んでいればよかったと、今更な後悔をする……が。

 

 

「良いヤツじゃなかったのは絶対間違いない。……出来る事だけはしっかりするか。本人に聞くワケにはいかないし」

 

ニーベルとは豪商だ。

下手に口出しをして、色々と歪ませるワケにはいかないのだ。

 

勿論、このピカピカの力を駆使すれば、普通の世界ならたった1人であっても使い方次第では余裕で覇権を握れるだろう。

 

もしも、そんな野心の塊のような男が、ピカピカの実を引っ提げて、この異世界へと転生させられたら、と思うと背筋が凍る想いだ。

 

自制するのが少々難しい時だってある。感情移入は元々し易い性質であることを理解しているから。

 

だけど、それでも深すぎず、浅すぎず……が一番ベストなんだ。何故なら…………。

 

 

オレはカズラさんとは違うから(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

カズキはそう口ずさむと、気分転換に部屋の外……、屋外へと出る事にした。

地球とはまた違った満天の星空でも眺めて、気を落ち着かせよう、と。

 

 

そして、外へと出た先にはもう既に先客がいた。

ジルコニアだ。

 

外に備え付けられているベンチに座って、何やら夜空を見上げている。

 

 

カズキの視線に気づいた様で、ジルコニアは ゆっくりとお辞儀をした。

 

 

「……出入口は遠いし……、まぁ 周囲には誰も居なさそうだ」

 

カズキはカズキで、淡い光の粒子状へと身体を変化させる。

ジルコニアが やはり驚愕しているのを見つつ、光の速さでジルコニアの傍へと到着。

 

「……驚かせちゃいましたかね?」

「あ、いえ! そんな事は……!!」

「ふふ。良いんですよ。私に気遣いは無用です。……本当に良くして頂いてるので。カズラさん共々、ありがとうございます」

 

ニコッ、と笑いかけるカズキを見て、驚いたり、焦ったりしているジルコニアは徐々に平静を保つ事が出来だした。

 

 

やっぱり驚くのも無理はない事だ。

 

カズキの力をまた目の当たりにしたから。

 

自分自身がメルエムである事を証明する為に、光に成った事は初対面のあの日以外は、本当にただの人間の様に過ごしていたから。

神様だと言うのに、人間の様に笑って、食べて、働いて……、そして何よりも、このアルカディア王国を助けてくれている。

 

本当にジルコニアの目には、好青年にしか見えていなかったのだが、やはり改めて光の力を見せられたら、この人は神様なんだと認識させられる。

 

でも、目の前で笑っている彼の姿は、やっぱり人間のソレだ。

まるで―――メルエムとカズキは別物なのではないか? と思ってしまう程に。

 

「歩いてきても良かったのですが、少々距離がありまして。横着しちゃいましたね」

「ふ、ふふふ。そうですね。カズキさんなら あっという間に移動出来ちゃいますから。足を使っての移動はやはり面倒ですか? 昼間のお仕事の方は……」

「いえいえ。大丈夫どころか充実してますよ。……人にとっての普通を満喫出来ているんですから。それに加えて カズラさんやリーゼさん達と共に復興も出来たなら最高だと思ってますよ」

 

 

カズキはそういうと、ジルコニアの隣に来た。

 

「横、座っても良いですか?」

「はい。勿論です。寧ろ、ありがとうございます。……なんだか眠れなくて。そう言えば、ほんの少し前、カズラさんも来てました。お茶をご馳走になりましたよ」

「ありゃりゃ、もうちょっと早かったら、一緒に夜のTパーティが出来た、って事ですかね? 少々惜しい事をしました」

「ふふふふ。カズキさんがやりたいとおっしゃるなら、私はいつでも参加しますよ。……勿論、なんの含みも有りません。心からそう思ってます」

「あははは。それは嬉しいですね。ありがとうございます」

 

ジルコニアは笑ってそう告げた。

どうやら、カズラもここに来ていた様だが、入れ違いになった様だ。昼間もかなり熱く、疲れも溜まっている様だから、眠たくなったのだろう。ジルコニアは1日1時間程しか寝ていないと言うのにも関わらず、意識を保てている程の体力の持ち主。今日からリーゼにある程度の仕事を任せ、自身は休む事が出来た様で、万全とは言えないかもしれないが、顔色を見る限り、あの目の下にクマが出来ていた時に比べたら断然良い。

 

そんな彼女に長く付き合うのは、カズラでもきつかったのだろう。

 

 

「寝られないのであれば、また私からもカズラさんに伝えておきましょうか? 安眠できるお茶等、持ち合わせてると思いますが(カズラさんなら、既に提案してそうだけど)」

「ふふふ。本当にお2人はお優しいですね」

 

 

ジルコニアの言葉から察するに、もう既にカズラからは提案されている様だ。

貰ったのか、遠慮したのかまでは解らないが。

 

 

「……後少し、ほんの少しだけ星を眺めたら眠るとカズラさんには伝えてます。本当にぐっすり寝ちゃいそうなので、今日は遠慮させて頂きました。……眠れないのですが、それ以上にこの夜空をもう少し見ていたい、と思いましたので」

 

 

すっ……と、視線を上へと戻す。

 

 

「………あの光の瞬き、その1つ1つがカズキさん……、メルエム様なのですよね?」

「………、そう、ですね。もう私の手からは離れてるので、独立したそれぞれの国である、と言う考えが一番近いかと思います」

 

 

不意にジルコニアに聞かれたが、どうにか言葉を詰まらす事なく返答が出来た。

 

あの星の光は……、まぁ 望遠鏡の様なモノや天文学が無い限りは絶対とはいえ無いが、地球と同じだろう。何万光年も向こうで燃えている星々なのだと。

 

流石にそんなものまで意識を飛ばせるワケは無いので、当たり障りのない言葉を選んで帰したのである。

あの光の全てをあつめてとかなんとか、な話になったら大変なので。

 

ジルコニアは、少し目を細めながら続けた。

 

 

「……この格言は、カズキさんに伝えて良いものかどうか……」

「全く問題ありませんよ?」

 

 

星に関する言い伝えの類を、言おうとしているのは、ジルコニアの口ぶりから直ぐに理解出来た。

そして、内容的にはあまりメルエムにとってはよろしくない意味、若しくは言い方なのだろう。

 

神様がそんな器の小さな存在じゃない、と笑い飛ばす様にカズキは問題ないと告げると、またジルコニアは微笑みを浮かべながら言った。

 

「【夜空に浮かぶ細い月は、若い兵士には毒と同じだ】と言う格言があります。……静かな夜に、か細い月を眺めていると、だんだん心細くなって、故郷に帰りたくてたまらなくなる。……それは、病気と同じ――――、一度取り憑かれたなら、なかなか治らない。……だから、毒と呼ばれる所以で……」

「………成る程。確かに、そうかもしれませんね。……(アレ)は人を惹きつける。それが惜しくなってしまう。……見上げる機会を失ってしまうのではないか、共に過ごした者たちと見た光。……もう元に戻らないのではないか、と恐怖も覚えてしまう事もあるでしょう。……自然な事です。何も畏まる事は無いと思いますよ」

「ありがとうございます……」

 

 

ジルコニアの心の中に直接入り込んでくるカズキの言葉。

 

【共に過ごした者たちと見た光。……もう元には戻らない】

 

それをまさにジルコニアは経験してきたのだから。

 

 

だが、この格言は メルエム様への冒涜になりかねないとも思っていた。例え自然な事だから、良いと言われても。

ただ、美しい星々の光に目を奪われた人間の自業自得。……失う原因も人間同士の争いなのだから。

 

 

「―――ジルコニアさん。流れ星と言うものは見た事は?」

「……え?」

「ほら、極稀に夜の空を流れる光です。目に映る時間はとても短く……なかなかお目にかかる事は無いと思いますが」

「あ……はい。最近ではめっきり……。昔、空を見上げていたあの頃は、何度か見た事はあります」

 

遠い昔を夜空に浮かべるジルコニア。

その言葉を聞いて、カズキはもう1つだけ質問する。

 

 

「―――その流れ星に、願い事を3度唱えると……願いが届く、と言うことは?」

「いえ、初耳ですね。その様な伝説があるのですか?」

「……ええ。まぁ一種の願掛けの様なモノです。100%叶うのであれば、世界は大変な事になっちゃいますからね」

「ふふ、なるほど。………たった一瞬しか見えない刹那の瞬間。その時に立ち会えた者に齎されるもの。……その光景を見た事そのものが、幸運に感じます。あ、でも私の記憶では、願い事を3度も言える暇は正直無いかと思いますが。……本当に一瞬ですから」

 

ジルコニアからの返答を聞くと、カズキは苦笑いをしていった。

 

無いとは思うが、メルエムであるカズキが言う伝説なのだから、これは今日から数名配備して、一瞬たりとも見逃さず、願いを唱えろ! と言う指令が飛ぶかもしれない、と言う予防策である。

 

 

「ふふふ。そうですね。とても難しい事だと思います。……神が気まぐれに運ぶ光の欠片なのですから。………………ん」

 

 

カズキは指先を空へと向けた。

それは小さな小さな光の粒子。肉眼では捕えられない程のもの。

 

ジルコニアは何か見えるのか? と首を傾げて指先をじっ、と見続けていると……。

 

 

 

遥か上空で、光が瞬いたかと思ったその瞬間、光の筋が、山岳地帯の方へと流れ―――消え去った。それも1つではなく2つ、3つ4つと。

 

 

「っ、っっ……!」

「これは ただの願掛けです。……ジルコニアさんの願いが全て行き届くかどうか、それを保証できる、とは言えません。……………」

 

カズキはジルコニアに笑いかけながら続けた。

 

 

 

 

 

「私は、ジルコニアさん達に。……皆さんとこの世界で 出会えたことに、……様々な巡り合わせの全てに感謝をしてます」

 

 

 

 

 

神々しいとはこの時に使うのだろう。

そして、ジルコニアは今日と言う日を一生忘れる事はないだろう。

 

 

とても驚き、驚愕し、そして何よりも優しく、慈愛に満ちた神との一夜を。

 

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