「―――では、あとは東と南の水路に水車を設置しましょう。明日以降もリーゼさんに手伝いをお願いしても構いませんかね?」
復興作業も順調そのもの。
作業環境は決して良いとは言えないが、イステール家が全面バックアップしてくれると言う事、水車と言うこの世界で言えば大発明品を目の当たりにして、先々のビジョンが見えたという事が大きい。
いや 何よりも大きいのはやはり リーゼの存在だ。
「もちろんです。他の予定は私のほうで調整しておきますわ」
「順調の様ですな……。本当に助かります」
作業が進んでいる、と言う事はそれだけ国が助かる、と言う事。
領主を預かる身である2人にとっては、悲願の1つ。滞りなく進む事が出来た結果を重々に噛みしめ、そして頭を下げた。
「いえいえ。ぜーーったい、作業効率が格段に上がったのは、リーゼさんのおかげですね。間違いないです」
「あははは。ですね。作業員さん達、目の色を変えて頑張ってくれてますから。水車の設置も肥料の散布も。良いトコ見せたい、って気持ちが凄く伝わってきて」
カズキもカズラもリーゼ推し推しである。
これは含みの一切ない事実であり、民に人気があるリーゼが直々に現場にて立ち会うとなると、それだけで元気がもらえる、とか何とかで気合が入っているのだ。
ありきたりな事を考えてみれば、ここまで人気があれば妬みの1つや2つ、有りそうなモノなのだが、今の所は 一切聞こえてこない。
お忍びで、カズキが しれっと町の食堂に立ち寄った時。リーゼの話題を度々耳にしていたが……、本当にその手のモノは一切なかった。老若男女問わずとはこの事だ。
「(……まぁ、
因みに、べた褒めされているリーゼはと言うと、現在入浴中の為 席を外している。
カズキは、リーゼとは何度か早朝練習を共にしているし、この復興作業中、穀倉地帯の肥料散布・水車の設置等も共に行動していたので、カズラよりもリーゼと接する時間は長いと言える。
非の打ちどころのない才色兼備なご令嬢……、そして ありきたりな傲慢な態度は一切見せない姿……、普通に接し、感じたなら リーゼの評価はうなぎ上り、ストップ高と言えるが…………、十中八九、記憶に間違いない、とカズキは思ってるので、ある程度の心構え? はしてたりする。
「……恥ずかしながら、私もこれには驚きました」
「ええ……。ここまで民の人気があるとは……。でも、私は、民に活気、元気があるのは カズラさんとカズキさんのお2人のお陰でもあると思いますわ」
ジルコニアは、リーゼの人気っぷりには驚きを隠せれない様子で、それが表情に出ていたのだが、何か思い出したかの様に表情を変えると、笑顔でカズラやカズキを見た。
「あははは。私―――と言うより、カズキさんの方でしょうね。凄く楽しそうに仕事をしてくれてまして……」
「え?」
「それもそうですわね。時折競争を、と疲れている筈な所に娯楽を交えてみたり、民の皆さんと笑顔で接して頂けてる姿を目の当たりにしてますので。ふふ。最後はカズラさんも一緒に、でしたわ」
本当に楽しそうに話すジルコニアを見て、少々恥ずかしくなったカズキは頭を掻く。
カズラもカズラで、色々と調整をしつつも、カズキの頑張りには触発された様子。ただ、流石に体力の限界値と言うモノは存在しているので、最後の最後までは付いて行けず、リタイアする事もシバシバ。
だが、それはカズキの異様なまでの体力がモノを言う事であり、作業員の皆は カズキに挑むような形になって………、皆敗北しているのだ。
熱射病、熱中症になっても危ないので、勿論ある程度の所でやめたりはしているが。
「そ、それはそうと、ジルコニアさんは体調良さそうですね!! ちゃんと夜は休めてますか??」
やや強引ではあるが、話題逸らし兼、以前にも会ったジルコニアの過労負担の件の再確認。
夜寝られず星を……と言う場面は、カズキも見ているので 話題逸らしに使った内容とはいえ、実際に心配はしている。
カズラも、それは同じだ。
ジルコニアのあの上の空――――空をじっと眺め、リーゼやナルソンの問いにも答えない疲労困憊、睡眠不足な姿を目の当たりにしているのだから。
笑ってはいたが、改めてジルコニアの事を見てみた。
そして、ジルコニアは、それを聞いて カズラの視線にも気づいて……きょとん、としたが直ぐに微笑みを返した。
「ふふふ。勿論です。ありがとうございました」
「「ほっ」」
リーゼもジルコニアも、当然ナルソンも、誰一人倒れた!なんて事になってはならない。
民を導く役目を担っている責任が本人たちにはあるから、ある程度の過労は仕方が無いと思っている筈だけれど、それで倒れてしまったらまさに本末転倒。
基本的には自分達で体調管理を徹底してもらいたいが、いざとなれば、
穀倉地帯の目処は十分たっている。
だが、それに匹敵―――否、それ以上とも言える問題がまだあるのだ。
「―――ナルソンさん。領内の財政事情の方は……?」
そう、金の問題である。
どの世界だろうが、金の問題は甚だ大きい。
労働に対し、十分な報酬を与えるのは当然の事。何処か1つでもそれが滞れば……冗談抜きで破綻・破滅し、労働力、その質が低下。……それは、そのまま国の文字通り死活問題に繋がるから。
人員に関してもカツカツなイステリア。
余裕は微塵も無いのだ。
だけど、実は 事前にカズラとカズキも話し合っていて、大体察していた。……ナルソンの表情を見ると、予想通り……と言うのがよく解る。正直嬉しくない予想的中ではあるが、仕方が無い。
ナルソンは顔を顰めながら答える。
「……どうにか回していますが……、このままですよ、事業をどれか一旦止めて、予算を絞り出すことになるかと」
「………どれもこれも、少しでも止めたら、大分後に響きますね……」
「ですよね。……食糧事情が改善すればなんとかなりそうですか?」
イステリアの復興関係は、どの事案も待ったなし、の一言だ。
現実世界の日本であれば、ダラダラふにゃふにゃ国会でその議員たちが意味の無いやり取りを延々として、意味なく伸ばしていたとしても、ある程度の地盤が出来上がっているから、国民の暮らしが逼迫してしまう様な事は無いが(カズラ・カズキどちらの日本でも同じ)
ここイステリアでは そうはいかない。
一先ず穀倉地帯をよみがえらせ、食糧自給率が上がれば……と考えたが、そう甘いものではなかった。
「なにかしらの金策が無ければ、大きな改善は厳しいでしょう。作物が実るまでにも、基金による被害の立ち直りにも、時間がかかりますから」
「……や、全くです」
「そーですよね。……そりゃそうだ……」
水車で、水を汲み上げたからと言って、あっ! と言うまでに復活するワケが無い。
あのグリセア村の様に、100%日本製の肥料を使えば、あっ! という間に実ってオバケ作物が発生、新種の誕生! 大分回復するのは目に見えてくるが、それはそれで国中、果ては外にまで大パニックになってしまう可能性があるので、余程の事が無い限り実行には移さない。
基本、ある程度の効力を出しつつ~とやる為に、大体50倍程、希釈して使っているのが現状。
それでも十分効力は見込めるものの――――今日明日、と言った話になるワケが無いので、目の前の財政問題改善にはどうしても繋がらないのだ。
「他に、何か案は残されてますかね?」
うーん、うーん、と考え込むカズキ。
こちら側にはウルトラCとも言える 【とっておき】はあるにはある……が、あくまでこちら側の世界の人間が~ と言う体で行っているので、あまり好ましいモノではない。
オバケ作物程では無いにしろ、大なり小なりは内外に出回ってしまう事間違いないからだ。
カズキは、カズラの方を見て、軽く首を捻る。
素人頭ではあるが……、現状を打破する様な案が有れば、もう既に使っているだろ、とも思うので、やはりウルトラCに頼った方が早く・確実では? と。
軽く頷いていたので、口には出さずとも、カズラ自身にも伝わった様だ。
「そうですな……。王都から支援金を増額してもらうか、周辺の森を伐採して、木材を大量生産するか……、鉱物資源の採掘も有りますが……生産性はそこまででは……」
ある程度の案はある様だが、ナルソンの顔を見れば それが有効・有用だ、と言える程の結果を残せないであろう事は解る。
「鉱物……因みに金は採れないんですか?」
「イステール領では採れませんな。金鉱はわが国では王都のみです」
「そうですか……」
「採れてたら、栄えてそうですもんね。ある程度は、財政のゴリ押しで賄えそうですし」
「う~ん、それもそうか」
悪いイメージだと、悪い領主が金を独占し、民から貪り~ と金鉱脈の話を聴くと容易に連想できるが、ここイステール領においては、ナルソンが領主を務めている以上、その様な事は起こらない、と断言出来そうだ。
ただ、グリセア村での伝承、グレイシオールの話に出てくる領主は、清々しい程の悪党なので、
「やっぱ、カズラさん、
「う~ん……だよね。他にも塩とか石灰とか考えてみたケド、位置的にも時間的にも厳しいのは目に見えてるよね」
「状況が状況ですし、もう出し惜しみ無しで行きましょう。―――と言うワケで、オプションって事で
「うん。了解」
カズラは、ニヤッ、とカズキと共に笑うと、ごそごそ、とポケットに入れていた布袋を取り出すと、そこから何かを取り出した。
カズキは、カズキで、カズラが取り出したその瞬間の刹那、狙い定めて 光の粒子を文字通り目にもとまらぬ速さで、取り出したそれにぶつける。
すると……カズラが取り出し、手のひらに乗せた
「どうですかね? コレ。いくらで売れますかね?」
「神の涙(仮名) と言うヤツですね! キラキラ光ってて綺麗な方が良いかな? と」
ネタの様に、わはは、と腰に両手を当てて、カズキは笑いながら胸を張る。
カズラもカズラで、少々悪戯心に身を任せている面もあった。
財政問題の中、少々暗くなっていた表情を少しでも明るく……と思っての事だったのだが。
【!!!!】
想像以上に一同驚愕してしまった……。
アイザックに至っては、片膝をつき、思わず首を垂れている。
神の一部を……、とでも思ったのだろう。ただのピカピカの悪戯! なのだが。
それを理解出来る者は、この場には皆無である。
「こ、これは…… これほど、これほど美しい光を放つ石とは見た事がありません………。あ、あまりにも恐れ多く、値がつけられない、と言うのが心情で……」
ナルソンもこの時ばかりは普段の平静を装っておけれなかった様子。
これは神話に出てくる神具、聖具、―――最早空想上の宝石。
カズキが初めてピカピカの力を披露した時程とは言わないが、それに近しい程驚きを見せていて……
「ッ………こ、このようなものを………わ、われわれに……??」
ジルコニア自身もナルソンに負けない程動揺しきっている。
カズキが【涙】と誇張して言っちゃったおかげで、神の一部を授けてくれる、と思ったのだろう。……そんなモノ売れるワケが無い。
国宝…… いや、国と国とのいざこざを考えたら、永世中立か何かを建国し、そこに崇めなければならない……とさえ思っていた。流石に
ちょっとした悪戯のつもりだったのだが、思いのほか 動揺が……凄い勢いで広がっていきそうなので、直ぐに軌道修正。
「な、涙云々は、冗談ですよ冗談! 綺麗な石に、
「す、少し悪ふざけが過ぎました! これは、神の国で作られるビー玉と言うガラスです! カズキさんの、メルエムの光を宿す神具~! とかじゃないので、落ち着いてください! アイザックさんも!!」
カズキが言う様に、込めた光はあっという間に消失した。
それでも十分過ぎる程 綺麗なガラスなので大丈夫だろう。
アイザックは、首を垂れ、カズラが言う様に神具と崇めていたので、思わず声に力を入れて諫めるカズラ。
ピカピカの光を消失させた所に出てきたのは……所謂 パワーストーン。(\250 日本の石屋で購入。因みに、カズキにも幾つか見繕って贈呈済み)
カズラも悪戯が過ぎたか、と少々自身を諫める。自分達は神様ポジションなのだから、何か分け与えるともなれば、このくらいの反応はするだろう、と改めて頭の中へといれた。
少しして、落ち着きを取り戻したナルソンは、もう一度パワーストーンをじっ、と見て確認。先ほどの光に目を奪われがちだが、光が消失しても、美しい形状、色、全てが一級品だと目を見開く。
「……おそらく、ひとつ1万アル以上の価値があるのではないでしょうか……? 宝石にはあまり詳しくありませんが……」
「ええっ! マジで???」
「(……あ、確か、安くされた~ って言ってたっけ……?)」
以前の質屋騒動の話は聞いている。
老獪な老婆に、ものの見事にしてやられたらしい。グリセア村の娘の1人、ミュラが居てくれたおかげで何とかなったとの事。
まだ、換金にはカズキは行ってないので肝に銘じる事にした。
「こ、こほんっ、えっと、因みにそういう宝石ってどっちの方が価値があります? 色が濃い方ですか? 透明度のある方ですか??」
取り合えず、過去は過去、と割り切ったカズラは前へと進む為、相場について聞いてみる。
ナルソンは、宝石には詳しくない、とは言いつつも、高価なモノゆえ、大体の相場は解っている様だ。少し考えた後。
「一般的には透き通った方の様ですな。まれに出回る美しく透き通った黒曜石の価値は凄まじいモノです」
「! 黒曜石ですか。それなら……」
パワーストーンとしても広く流通している黒曜石。
そう言う指定があれば、有難い、と言わんばかりにカズラは再び袋の中に手を入れ、手の中に納まるだけの黒曜石の球を取り出し………。
「黒曜石のバーゲンセールだ! ……なーんて」
【!!!!】
本日、二度目の驚愕タイム、である。
流石に一度目の神様の涙(笑)程の衝撃は無かった様だが、それでも十分衝撃である。
「カズラさん、このバーゲンセールと言う黒曜石は………?」
だが、あまりにも高価なモノゆえ、声が裏返ってしまうのも無理はない。
「あははは、バーゲンと言えばそーなんですけど」
「わ、わーーー! そのくだりは止め止め! 無し無し! 忘れて下さい!! これも、アレです! さっきのと一緒で、ビー玉と言う神の国で作られたガラスです!」
非常に賑やかになった。
衝撃的な事が多すぎる様だが、カズキの光同様、財政に物凄い光が差し込んだのは間違いない。
「それだけあれば直近の財源はなんとかなりそうですか??」
「は、はい。かなりの高額で売れるでしょうが……、あまりに珍しくて売り方が難しそうですな……」
「そうね……、あとあと探りを入れてくる輩が現れそう……わぁ、透明な中に色の帯が……」
如何に流通させるか、と言う問題点は残っているが、それは贅沢な問題だと言えるだろう。
殆ど見る事が叶わない、一部の富裕層、何処にでもいる財を貪る貴族たちなら見るかもしれないが、ナルソン家では 程遠いモノ。
ジルコニアもナルソンも、あまりの美しさ故に、暫く目が離せなかった。
「色付きの方が良さそうなので、色ガラスの方が良いって事になりません?」
「むっ、それもそうだね……。ビー玉よりそっちの方が良いかな」
「色のついたガラスもあるんですか?」
「はい。ありますよ。おそらくこの国で出回る黒曜石と同様のモノかと。今度神の国に戻った時に調達しておきます。―――色の希望はあります?」
直近の財源の確保は、これで恐らくは解決。
余りにも凄過ぎるモノは後々の問題になりかねないので、高価なのは高価でも、世界に1つだけの黒曜石、な代物をイキナリ市場に流通させるのではなく、元来、この国でも出回る色に近しいモノを用意する、と言う事で話はまとまった。
「さてと。次はこっちですね」
カズキがクリアファイルに閉じていた資料を取り出した。
とある道具の設計完成図、そして 使用用途などの説明書である。
「慢性的な資金不足と人口増加………、農地を拡張させる為に、手押しポンプと言う道具を作ろう、ってなったんです」
勿論、これもカズラと試行錯誤を重ねた末での案である。
こちらの世界ででも使える鉱物を利用して作成でき、且つ人員削減にも繋がり、作業効率も大幅にアップする事が見込める。
その道具の名前を知らない2人は首を傾げていた。
だから、カズキは四つ折りにしていた紙を広げて、説明。
「水車は大きさや、設置の条件等で、色々と限られてしまうんですけど、こちらは少し違います。まず、小型である為、設置しやすいと言う利点がありまして、水を汲み上げられる高さが凄く高い、と言う利点もありますね。井戸等に設置して貰えれば、格段に作業効率が良くなりますよ。小さな子でも、レバーに届けば汲み上げる事が可能ですから」
まだ、紙の上での説明だから、実践してみせてみるのが一番説得力がある。……が、水車等の道具を見せられた今、説明だけでも十分過ぎる程の道具なのである事は2人にも十分理解出来ていた。
「素晴らしい道具ですね! 人員も道具も最優先で手配いたします!」
「………ふむ」
ナルソンは、少し考えた後……ジルコニアが話し終えたのを見計らってカズキに聞く。
「カズキ殿、ひとつ質問なのですが……、その手押しポンプ、と言う道具は狭い場所への設置も可能でしょうか? 例えば坑道の様な」
「えっと、はい。恐らくできると思いますよ。
「では……完成した折には、鉱山でも使わせていただいても?」
ナルソンの言葉に、カズキはちらっ、とカズラを見た。
一応、2人の提案と言う事にもなってるので、それぞれの同意は必要儀式だろう、と言う事でだ。
無論、カズラが否定するワケは無く……ただ、理由だけは聞いておきたかったようだ。
「えっと、問題ありませんが、理由を聞いても? 何に使うんです?」
カズラがそう聞き返す。
その間、カズキは周囲をチラリとみていたが、他の者たちは ナルソンが意図する事に気付いたのだろう、少しだけ驚いた様な、それでいて その手があった! と言わんばかりの顔になっていた。
「地下水の排水です。山岳地帯では、真横に坑道を掘り進める最中に地下水が湧き出る事があり、水量があまりに多いと、その場はあきらめざるを得なかったのです」
「! 成程……、水没してしまった場所の功績が全て採掘可能になる……と」
「確かに、坑道で地下水脈に突き当たったら厄介ですよね。単純に、水の勢い次第では、重大な事故にも繋がりかねませんし。少量でも溜まったら溜まっただけ、厄介ですから。――――そこに、手押しポンプを、と」
「はい。それにポンプを経由し、大量の水を1ヶ所に集める事が出来れば。その水を利用し、露天採掘が出来そうな一帯を洗い流す事で、新たな鉱床の発見も可能でしょう」
「「おお……」」
矢継ぎ早に、手押しポンプの可能性を飛躍させていくナルソンの頭の回転の速さには舌を巻く。
未知の技術・道具の筈なのに、直ぐに自分達の問題点に当てはめて、その解決策まで模索し、更に発展へと導く。
まさに、大都市の領主の御業、と言っても差し支えない。
「(ピカピカなだけの自分が小さく感じます……)」
「(それ言うなら、オレなんてただの成金だよ……? そもそも、ピカピカだけでも凄過ぎるからね?? チートって言って良いからね?? 世界征服とかよゆーで出来そうだからね???)」
「(いえいえ、確かにフィクションな
ぼしょぼしょ、と2人でやり取りするのだった。
「あ、カズラさん。以前おっしゃっていた【良い考え】と言うのは……?」
「え? あ――― はい。そうでしたね。市民の食生活改善とお金儲けを同時にってヤツでしたっけ。それは――――えっと、【氷室】と言う建物を聞いたことは?」
ナルソンとジルコニアは カズラの言葉を聞いて、記憶を手繰ってみるが、どれだけ頭を捻っても解らないので首を左右に振る。
「(氷室の件、すっかり忘れてた。詳しく調べてる訳じゃないけど……確か)簡単に言うと氷の貯蔵庫です。冬に保管し、夏に取り出して使用する、と言う感じで」
「冬にため池などから、氷を沢山採取して、その氷室、と言う建物で保管しておくと………、この猛暑の夏には最高ですよ! 氷ですからね、火照った身体に、ひんやりと。タオルに包んで、首に巻くとまさに生き返る! そんな氷にありつけるってワケです。商業用としても良いと思いますし、熱中症対策……暑さ対策にも使えますから、作業効率が上がる事間違いないです」
と、カズラとカズキが説明したが……流石にジルコニアは懐疑的。
それも当然だ。当然の感性だ。
数日間~ならまだしも―――……。
「……冬の氷を夏まで……? 溶けますよね??」
そうである。
冷蔵庫の無いこの世界で、夏にまで氷を取っておくと言うのは限りなく不可能だ。何処かの北方から輸入でもしない限り。
そして、位置的には北の国が
「あははは。溶かさずに長期保存できる方法もあるんですよ」
「論より証拠、もし作れた時のお楽しみにしましょう」
「は、はい………」
疑うワケではないし、最早疑う余地のない所まで来ているのだが……、ジルコニアは流石に気持ち的には直ぐに信じる事は出来ないのだった。
「……なるほど、氷そのものを利用する他に、 その氷室の中に、肉や魚を保管し、保存する事も出来る……と言う事ですかな?」
「考え方的にはそんな感じですね。商業用、とカズキさんも言ってましたが、私も同意見です。夏場に売る事が出来れば流行ると思いますから。冷蔵庫も同時に制作して販売すれば、氷の需要も尽きませんし」
「ですね。タンスくらいの大きさですから、一家に一台、ともなれば、生活必需品になると思いますよ」
「なるほど……、その程度の大きさなら確かに一般家庭にも置けますね。現実的に。……そして、氷は冬場に切り出しておけば、人件費等を省いたならば、元はタダ同然………」
復興作業は、順調に見えて、まだまだ薄氷の上を歩いている様な印象だったナルソン達だったが、今日の話で それらは一蹴された。
財政難から新たなる商いまで、未来は明るい―――とさえ思った程だ。
そして、何より――――その明るい未来に必ず立ち塞がるであろう、バルベールとも、国力が違えど、国を貧困から救う事が出来たなら、確実に立ち上がり、勝利を収める事だってできる筈だ。
「で、問題はその氷を切り出す池が必要なんです。穀倉地帯にあるため池って、氷を作るには………」
「……ちょっと
「……はい。カズキさんの言う通り、斬り出す程となると少し厳しいかと思います……。山の上に、新たにため池を作っておくのが良いかもですね」
「あ、ちょっとした穴なら、雑で良ければ私、簡単に作れると思いますんで。使ってくださいね」
「……え?」
山にため池を―――と言う件に来たら、手を上げようと思っていたカズキ。
勿論、ピカピカレーザー! を遺憾なく発揮すれば、十分可能である。
問題点である、目立ちすぎる……と言う面は、山の上であれば殆ど解決するから。
と言う事で、カズキの能力? の1つ、その詳細を話してみる。
ナルソンは、やや引きつっていた。
アイザックは目を輝かせていた。
ハベルは祀り上げるかの様に拝んでいた。
そして、ジルコニアは アイザック同様目を光らせていた。………正直違う意味で、ではあるが。
「とまぁ、一夜に大きな穴が出来てた! ともなれば、変な噂が立つかもしれませんので、ナルソンさん達が、発見して そこを使う――――と言う体にして頂けるのが助かるかな? と思いますね」
「もちろんそれは構いません。……ありがとうございます。早急に場所を選定いたします」
ぺこり、ともう何度目になるか解らない程、ナルソンは頭を下げる。
カズキに掛かってくる負担が大きすぎるのではないか、と思う今日この頃だが、カズキ自身が、どんな事でも楽しんでやっている様に見えるので、その部分でも本当に助かっている。
後ろで色々と画策している身とすれば、正直心苦しさもナルソンは覚えていた。
以前、アイザックに国の為だと、諫め 技術や知識を少しでも多く――――と言い聞かせていたのだが、本当の意味でナルソンはアイザックの気持ちが解ると言うモノだ。
アイザックが超がつく程 生真面目だから……と言う理由だけではない。
このカズラとカズキ……、グレイシオールとメルエムの二柱の神は、心の底から優しいと思える。
「――――……では、次にこちらの方を……」
だが、ナルソンとて 領主を任された立場。
国の為に命を捧げる覚悟を持っている。
多くの人間の命を背負っている。
自身の感情と言う不確かなモノだけでは足りない、と感じている。
例え地獄行だと言われたとしても………もう引き返す事は出来ないのだ。
少なくとも、全ての憂いを断ち切るまでは。
そして、願わくば――――。
「そう言えば、カズキさんはリーゼさんとも早朝トレしてるんですよね? アイザックさんやハベルさんも一緒に居て」
「あははは………、ほんっと、皆さんの意識が高いと言うか、凄い人達が集まったものですね。日に日に別人になっていく!? みたいになっちゃってるんで」
「おおっ…… か、
「……これからも、日々、精進いたします。どうかご指導ご鞭撻のほど……」
ナルソンにとっての宝である、亡き妻の忘れ形見。……そして妻ジルコニアの最愛の娘。
例え自身は地獄に落ちても、リーゼだけでも幸せにしてもらいたい。
ナルソンはそう考えながら、楽しそうに話をする二柱の神々を見つめ続けるのだった。