ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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28話 2つのブレスレット

 

 

「う~~ん……、改めて見てみると……これ、めっちゃ時間かかりそうだなぁ……」

「ですね……。ああーーー、こう言う時こそ身分が無い事を恨みますよーー! 車の免許とかその他諸々!! 手分けしたら、半分の時間で済むかもしれないのに……」

「あはは。まぁ、それは仕方ない事だし、カズキさんは、それ以上の事をしてくれてるからさ。と言うか、計り知れない程の事してるって自覚してるよね? (ピカピカ)人間!」

「うー、そう言ってくれるのは有難いんですが……、こういう性分なんで……。もしも、ここがゲームの世界だ、っていうなら、思う存分遊んで回るんですけどね?」

 

 

カズキとカズラは、昨日 ナルソン達と話をして 日本で調達する者の一覧を眺めていた。

日本に戻れば、全く問題なく調達できるものであり、資金も無尽蔵で問題なし。……だが、流石に時間ばかりは金に換えるのは非常に難しいので困りものだ。

 

カズキとカズラの二手で、と言うのもあるが、前々から話してる通り、身分の無いカズキが分かれて行動した時、もしも―――の時がかなり厄介な事になるのだ。

 

持ち前の(ピカピカ)で、どんな窮地でも打破・脱出! くらいは余裕だと思うが…………、それを行った日には、直ぐにとは言わないが、日本の日常が崩れてしまうコースにまっしぐら、な気がする。

 

 

カズキが言う通り、この世界もカズラの故郷の日本も、全てがゲームだと言うのなら……。

 

 

「ぶ、物騒な事はしないでね……? ゲームとは違うからね??」

「あ、あははは。だいじょーぶですって。指振ってもメニュー・ウィンドウ出ませんし、NPCのカーソルとかも有りません。限りなく現実に近い完成度を再現して、遊べれてましたが………、流石にそこまでのゲーム脳ではないつもりなので」

 

 

右手のひとさし指を 上から下へ、ひゅんっ、と振る所作をするカズキを見て、カズラは 朧気だが、ゲーム設定画面? の様なものが目に浮かぶ感覚がした。

 

間違いなく無理だろうが……。

 

 

「VRゲームかぁ…… やってみたい気はするんだよねぇ」

「カズラさんの財力なら揃えるのは余裕ですね! ……ただ、時間だけは進めれませんから………。オレが居た日本でもタイムマシンみたいなのは無いです」

「うぅむ」

 

 

こう色々と談笑を重ねていると……時間が立つのは早いモノで。

馬車の準備が全て完了していた。

馬車の方を見ていると、視線に気づいたリーゼがこちら側へと歩いてくる。

 

完了したことを知らせに来てくれてるのだろう、と言う事は簡単に予想出来た。

 

 

「―――っとと、そろそろ出発しないと」

「了解です」

 

 

リーゼを待つ……のではなく、こちら側からも歩み寄る為、歩を進める2人。

数秒後、予想通り 準備完了の報告を頂いたので、カズラも返す。懸念事項が幾つかあるからだ。

 

 

「予定より時間がかかるかもしれませんが……、色々と品物を用意して戻ります。リーゼさんにはその間の水車の設置作業を宜しくお願いしますね」

「はい。頑張ります」

 

リーゼはぺこっ、とお辞儀を1つ。

そしてカズキも一言。

 

 

「あ、しばらくは 朝の鍛錬は付き合えそうに無いですね。すみません」

 

 

あの初めて剣の練習の際に見てからと言うモノ、ほぼ毎日の早朝トレーニングをカズキは付き合ってきていた。

こちら側の世界は、生きるか死ぬかの世界。如何に女性であったとしても、男顔負けの実力を持っているのだと言う事は、リーゼの真剣な姿、そして打ち込む強さを見ても十分解る。

 

年齢は10代前半だと言うのに。

 

 

リーゼは、カズキの言葉を聞いて慌てて両手を前に出して、左右に振った。

 

 

「い、いえいえ。こちらこそ。毎日お付き合いして頂いて、本当にすみません。おかげで、物凄く充実してます。カズキ様のおかげです」

「いやー、朝のってアレ(・・)でしょ? リーゼさんもすっげー強くて強くて。オレだったら、コテンパンにやられそうですね」

「あははは。確かに。カズラさんも運動しておかないと、ですね。次回、何なら一緒にやってみますか?」

「うへぇ……、武力関係は カズキさんにお任せしますよ……。身体を鍛える、と言う点は同意しますが、流石に剣道は……」

 

 

 

リーゼは2人の話を聴いて、あたふたしながらも、強いと言う事を褒めてもらって(あまりうれしいとは思えない褒め部分ではあるが)、顔を仄かに赤く染めていた。

 

 

「あ、あのっ、お2人にこれを――――」

 

 

そして、話題を変えるべく…… 否、本日の大本命部分を取り出した。

 

 

カズラとカズキの2人に差し出すのは手のひらサイズの布袋。

礼を言いつつ……2人は中身を開ける。

 

中に収められていたのは―――。

 

「ブレスレット……? 黄色い刺繍で縫われた……」

「凄く細かに縫ってありますよ、この辺りとか……。うわ…… 凄く綺麗」

 

 

カズラには黄色の刺繍が施されたブレスレット。

カズキには赤色の刺繍が施されたブレスレット。

 

どちらも店先で置かれていても何ら不思議ではない程の完成度であり、リーゼの手先の器用さがよく解る程だ。

 

 

「これはリーゼさんが?」

「はい。あまり上手には作れませんでしたけど……」

「いえいえ。町の露店を見せて貰った時にも色々と見ましたけど……、十分凄いですよ、これ。職人技? 大切に使わせてもらいます」

「うん、オレもそう思う。作る時間なんて、中々取れなかったと思います。ありがとうございます。大切にしますね」

 

 

2人の返事に微笑みを返して頭を下げるリーゼ。

穏やかで、微笑ましい空気が流れていたのだが―――約1名固まってしまっていた。

 

 

それも、この世の終わりの様な顔をして―――。

 

 

「――――」

「…………」

 

 

その固まってしまった人の反応は……勿論、リーゼは解ってる。

解っているが、特に何か弁明をするワケでも無く、微笑みを返すだけだった。

 

その笑みを見た彼は――――つまり、そう言う事(・・・・・)なのだ、と理解。理解したくないが……、自身のせいで遅れるワケにはいかない。

 

固まっていた身体を、体内の時間を、どうにか強引に動かす。

物凄く不自然な歩き方で、ヨタヨタ、と馬車の方へ。

 

 

「?? アイザックさん?? 大丈夫ですか??」

 

 

その様子に気付いたカズラが声を掛ける。

1度かけたくらいじゃ気付かない。

2度目、声を掛けた所で漸く気付いた様で振り返った。

 

 

「うわっ、顔色凄く悪いですよ?? ひょっとして……疲れが祟ったのでは?」

「い、いえ……。だいじょうぶです。だいじょうぶ」

「……(以前の時よりもヒドイ気がするけど………)」

 

 

以前、ナルソンに厳命された時。自身の想いとは裏腹に、カズラやカズキ、神々から裏工作をしろ、国の為だ、と厳命された時。自らの使命、国に身を捧げた時から誓ってきた使命と神々に対する不敬の板挟みになってしまっていて、窶れてしまった時があった。

 

あの時は、カズラもそれに気づいてお茶を振舞う……事で、どうにか復活してくれたが、今回はどうだろうか。

 

「(馬車の中でアロマでも使ってみようかな? 落ち着くタイプのヤツ……。マリーさんの車酔いには効いたし……)」

 

カズラは、手荷物を確認し、ヨタヨタふらふらと歩いていくアイザックの元へと駆け寄るのだった。

 

 

 

「じゃあ、マリーさんは、こっちに……」

「はい、かしこまりました」

 

 

因みに、カズキも胸中穏やか……と言うワケではなく、アイザックには同情している。

これは、記憶の中に覚えがあるブレスレットだった。数種の色の刺繍が施してあり、それぞれで意味合いが変わってくる、と言う事も朧気だが解っている。

 

 

「(うーん……、黄色と赤……、どっちがどうとか、細かな事までは解んない……。流石に、他人に聞くっていうのも……。知らずにつけてた体の方が色々と都合が良いし……)」

「あ、あのカズキ様、こちらに……」

「おおっと、ごめんごめん。ありがとう」

 

 

色々と考えすぎていて、目の前が見えてなかった。馬車に乗らなければならないのに、その馬車を引っ張るラタの方へと向かっていたみたいだ。

気を取り直して、カズキは馬車の中へ。遅れてマリーも入った。

馬車内で腰掛けると、カズキは カズラから渡された青い小瓶を取り出すと。

 

「長い移動になるからさ。また気分が悪くなったりしたら言ってね? もう知ってると思うケド、これ物凄く効くからさ」

 

小瓶に入っている液体は、乗り物酔いに効くとされるラベンダー、ペパーミント、柑橘系等のモノがずらり。どれもこれも、こちらの世界の人たちには効果は抜群である、と言う事はカズラにお墨付きをもらっている。

あの後、何人かで試した結果との事。

 

「い、いけません! 私なんかの為に、そのような高価なお薬を……」

 

以前もマリーは負い目に感じていた。

 

カズラと共に馬車に乗り……酔ってしまった。当初はカズラの事もカズキの事も、そこまでよく知る間柄では無かった。カズキに関しては、ハベル邸で優しくしてもらったという事も有ったが、カズラとは特に話はしていない。

 

信頼は寄せていても……心からの安心に繋がるか? と問われれば疑問だった。

でも、そんな後ろめたい気持ちは、カズラの優しさに、露と消え、かき消される。

 

2人の優しさは身をもって知っている……が、それに甘えるワケにはいかない、とマリーは強く思っているのだ。

 

 

そんな想いもある程度はカズキに伝わった様だ。

どうすれば良いか……と思案していた所。

ぽんっ、と右拳を左手のひらに充てて閃いた。

 

 

「じゃあ、こうします。これは命令(・・)です! ジルコニアさんからは、【何でも指示してくださって構いません】と言うお墨付きを頂きました! 断れませんよね?」

「あ、あぅっ…… そ、そのっ………」

「ね?」

「はぃ……」

 

 

マリーは困った様にパタパタと手を上下に動かしていたが、最後には顔を赤くさせて、観念した様に頷いた。

あまりにも優しい。優しすぎます、と心の中で何度も何度もリピートさせながら。

 

 

「と言うワケでマリーちゃん? 辛くなったら言う事。しっかり体調を万全にさせる事。………それと」

 

 

最後に、ニコッと笑って告げる。

 

 

「私の前では、あまり緊張せず、自然に接してくれると嬉しい、かな? 従者だから、って畏まらないでくれると嬉しい。勿論、場を弁える事も必要だからいつどこででも、とは言わないからね。……それにハベルさんとの事も色々聞きたいし。なんでも話して欲しい。相談とかも聞きたい。私も相談したい事を気軽にマリーちゃんと話ししたい」

 

 

マリーの顔が、再び茹蛸の様に真っ赤に染まったのは言うまでも無く……。

そして、いきなりは当然ながら難しいので、徐々に頑張っていこう、と言う事になるのだった。

 

 

――――カズキの従者なので。命令となれば仕方ない、と。……割り切るには中々に経験値が足りないので、いつまでかかるかは解らない。

 

 

だが、その道中もカズキは楽しむ事にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方……リーゼはと言うと。

 

目的の物を渡せた事に満足し、落ち着いた様で、軽く深呼吸をしていた。

だが、まだすべき事は山の様にある。一段落ついたとはいえ、復興の方はまだまだ先が不透明なのだ。

 

今日も一日やりきらなければならない。

 

全力でやりぬいた後に――――自分へのご褒美タイムだ。

 

 

「さてと、私達は水車の設置に行こっか。帰りに買い物もしたいから、今日は早めに」

 

 

色んな人物からアプローチが日々絶えないリーゼ。

国の懐事情は思わしくないが、リーゼ自身は実はそうでもない。

 

望んでなくても、どんどん高価な物を貢いでくれるから、ある程度の(アル)は溜まっているのだ。面会に大分神経使っているし、好きでも無い相手とも笑顔を絶やさない様にし、最大限に相手に気を使ってきているのだから、これくらいは許してもらいたい。……と言うより十分すぎる程許容範囲内だ。当然の権利だ。

 

 

と言うワケで、今日もしっかりと復興事業を進めて、後は自身のストレス発散に――――と、思っていた時、エイラの顔を見た。

 

 

「……エイラ? どうしたの?」

 

 

何処か神妙な顔つきで、去っていく馬車を眺めながら……エイラは続ける。

 

 

「……リーゼ様……、あれではアイザック様があまりにも………」

 

 

そう、それは先ほどのブレスレットのやり取りの1件。

アイザックがリーゼに好意を抱いているのは周囲が知る所であり、そのアイザックの目の前で、あのブレスレットを手渡した。それを見てアイザックは固まった。リーゼの顔を見て更に固まった。

 

それら一部始終全てエイラは見ていたのだ。

 

あまりに報われない話で、思わず同情を隠せれない。

アイザックは本当に好青年であり、家柄もよく、それに胡坐をかく事もせず……兎に角、真面目過ぎる、と言う所くらいしか欠点が無いのだ。だからこそ、エイラは深く同情した。

 

どうでも良い相手なら、ここまで考えない。

 

 

……が、当の好意を寄せられ、それを十二分に理解していたリーゼはそうでもない様子。

 

 

 

「だって、仕方ないじゃない。だらだら希望を持たせるままにするより、よっぽど優しいでしょ?」

 

 

生殺しにするくらいなら、スパッと男らしく切る! なんと逞しい! ……と、思えなくもないが、あまりにもエグイ、と思ってしまうエイラは止まらない。

主従関係ではあるが、それ以上に心を通わせている者同士……と言う面もあるから。

 

 

「そ、それにしてもあんな…… 目の前で【親愛のブレスレット】をカズキ様にお渡しするのは………。せめて、カズラ様の【信頼のブレスレット】の方をお渡しした方がまだ………、えぐくない、と言うか……」

 

 

 

【親愛のブレスレット】

 

 

それは3種存在する。

色は白・赤・黒。

 

それぞれに深い意味が存在する。

 

 

◇白:【糸に色がついてしまう前に早く帰ってきて欲しい】 別れ際の告白・出征する恋人に送る物。

 

 

◇赤:【あなたに好意を持っています】それが意味する表現の範囲は広い。

 

 

◇黒:【今夜あなたを待っています】 所謂オトナのブレスレット。

 

 

 

【信頼のブレスレット】

 

 

こちらは1種のみ存在する。

 

◇黄:【あなたの事を尊敬しています。今後ともよろしくお願いします】教授を願う相手や恩ある相手に送られる物。

 

 

 

 

カズラとカズキで、違う種類と言う事は――――つまり、そう言う事である。

 

 

 

「でも、アイザックには告白されてもないのよ? なのに面と向かって【お断り】するよりマシじゃない? これでも一応アイザックやお父様の顔を潰さない様に考えたつもりなんだけど。私にとって、カズキ様は剣の師でもあるし、(アレ)を渡しても不自然じゃない筈だし」

 

 

と、後半部分は完全に建前。

 

リーゼは、カズラとカズキの2人をしっかりと吟味した上で決めた。

 

 

―――未来の夫に予約済みである、と。

 

 

決め手は幾つかある……が、やはり一番は先ほどにも上がった通り、朝の稽古だろう。

 

剣の腕は結構自信があった。

まだまだ手の届かない相手も多数いる事は事実だが、それでも どちらかと言えば学者肌だと思っていたカズキに、実力の差を魅せられて、今は建前では無く、社交辞令でもなく、心から師と仰いでいる。

だから、それとなく続いているのだ。

 

因みにジルコニアも共に―――と思っていたのだが、リーゼとの仲睦まじそう……と言う雰囲気は読取ったので、今は遠慮してる。

 

 

カズラも優しく、信じられない程のお金持ちで、カズキとカズラでは、どちらかと言えばカズラの方が上司の様な感じはするが――――何処となく、女の影を感じていた。

 

親しくなる事もワケ無いし、そのまま先まで―――と言うのも自信はある、が、ある程度のリスクを考えれば カズキに軍配があがるのだ。

 

 

「うん。外堀は埋めすぎるってことはないもんね。かなり親しくなれたと思うから、もうちょっと素性についても探りを入れたい………」

 

 

と、今後の事も視野に入れて、色々と模索していた。

エイラも解ってくれるだろう、ここまで言えば、と思っていたのだが……。

 

 

「たしかにそうですが……、アイザック様がおいたわしいです……」

「む…………」

 

 

 

まだまだアイザックの肩を持つ様子。

ここまで言われてしまえば、自分が悪い事をしたように思ってしまう。そんなつもりは無い、寧ろ気を利かせた最善行為なのに、と 。

 

 

流石のエイラも、言いすぎた、と思ったのか。

 

 

「もっ、申し訳ございません!! そのようなつもりではなくてですね!??」

 

 

リーゼを責めてる訳ではない。

如何にアイザックとは付き合いが長く、親しみやすく、優しい……とはいっても、如何にリーゼとは幼少期から長く従者として付き合い、心を開いてくれている……とはいっても、何処まで言っても、エイラは従者。

 

主であるリーゼに逆らうワケにはいかないのだ。……それに、リーゼの事をそこまで責めてるつもりもない。アイザックが可哀想なだけ、で。……でも、それが繋がる事なのだが、なかなか難しい問題なのだ。

 

 

リーゼもそれを悟っているのか、エイラが謝ってくれた事も有り。

 

 

「いいのよべつに。ほら、そろそろ作業に向かいましょ」

 

 

これ以上は終わり、と言わんばかりに話を締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――時は流れ――――

 

 

 

 

2日後。

 

 

 

カズラたちを乗せた馬車がグリセア村へと到着した。

そして、カズラ達は、グリセア村(そこ)で、とんでもないモノを見るのだった。

 

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