ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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29話 グリセア村の夜

 

「うっひゃぁ……、マジですか……。軍隊の駐屯地? これだけ立派だと、()から見下ろす時、凄く楽になりそうですね………。気付かれちゃう可能性も上がっちゃいますが」

「それも10日くらいでだよ? たった……。これ程変わるなんて、どうやっても想像出来なかったよ……」

 

 

 

それは グリセア村に到着した時の事。

 

村の入り口にたち、まだ深夜だし、全容こそは見えないが……カズラとカズキは、村の変わりように思わず唖然としていた。

 

本当につい最近だ。

 

野盗に襲われて急いで駆け付けた時。

光となって上空から接近する時にカズキはあまり目立たない様に高度を上げて移動していた。そのせいもあって、見つけるのには一苦労したのだが……、ここまで見事な変貌を遂げると、次は苦労する事は無いだろう、と断言できる。

 

 

村の周囲には、先の尖った太い木の柵が槍の様に外側に向けて付き立っている。余程訓練されてる軍隊とかなら別として、そんじょそこらに湧いて出るらしい野盗程度では、乗り越えようとなんて思わない筈。寧ろ、野盗程度であればこの村はスルー案件だろう。攻めれば間違いなく()られる、と本能的に察するに違いない。

そのくらいの危機管理能力くらい持ち合わせていなければ、死罪確定である野盗家業などやってられないとも思われる。

 

 

何せ、まだ木の柵は序の口なのだから。

 

 

村に1歩踏み入り、よーく確認。

周囲には急勾配の堀まで掘られていて、更に柵の四隅には見張り塔の様な木製の櫓が作られている。大きさから鑑みても、相当遠い位置まで見渡せるだろう事は自明の理だ。

グリセア村の住人達の身体機能は皆超人化しているから尚更。

 

双眼鏡と言った文明の利器なんぞ必要としない程だと思われるから。

 

裏を返せば、文明の利器を手にした時の彼らの戦闘能力は一体如何ほどか………、と思っちゃうのは別の話。

 

 

村の入り口のわきにはつい最近切ったばかりと思われる丸太が山積みになってるので……、ここから更に改良を加えていくのだろう、と言う事は考えなくても解る。

 

木製の要塞でも作る気だろうか……、これで製鉄技術が確立すれば、マジモンの鉄壁要塞の出来上がり、な気がする。……そう遠く無い未来で。

 

 

無論、ハベルやアイザックも絶句していた。

 

何せ2人ともこのグリセア村については、他の近衛兵たちよりはよく知っているからだ。

 

 

【あれ? こんな村だったっけ? 来る場所間違えた?】

 

 

と軽く受け流せるワケも無い。進化に進化し続けている。それも物凄い速さで。

 

こうなれば、国境の砦に派遣してもらいたいと思う程だ。

 

 

そうこう話をしている内に、村の入り口からバレッタが歩いてきた。

 

 

「おかえりなさい! カズラさん、カズキさん! お待ちしておりました!」

「「ただいまです」」

 

 

苦笑いしながらも2人は挨拶を返した後……カズラは再び村の見える範囲を一頻り見た後。

 

 

 

「あの、これは随分と凄い事になってますね……? 前に工事の概要は聴きましたけど、まさかここまでするとは………」

「え? カズラさんは聞いていたんですか?」

「う、うん。丁度 堆肥の下ろし作業終えた時……だったかな。あのまま、カズキさんは戻っちゃったから、バレッタさんから聞く機会が無かったんだった。概要はオレも伝えようと思ってたんだけど、色々と忙しくて……」

「あ、ははは。じゃあ、一番驚いちゃったりしてるのは、自分って事かな?」

 

 

カズキはちらちら、と周りを見渡す。

バレッタが恥ずかしそうに笑顔を見せている傍らで……、まだアイザックやハベル、そしてその他の兵たちも唖然としている様なので、どうやら一番驚いているのは自分……とは言えない様だ。

 

 

「えっと、本当はもっと早くに工事を進めてしまいたかったのですが、思ったより作業に手間取ったのと足りない材料が幾つかあって……、あの、前は偉そうに自分で何とかするだなんて言ってしまいましたが、少し材料と道具の調達をお願いしても良いですか?」

 

 

バレッタからの懇願―――ともなれば、ぴくりっ、と耳が動く。

バレッタは勿論、その他の皆も願い事なんて 早々口にしないから。本当に自分達で、あまりお手を煩わせずに、と言う気持ちが犇々と伝わってきている。

 

遠慮なく色々と要求してくるのは、ここの子供たちくらいのモノだ。

 

 

なので、待ってました、と言わんばかりにカズキが、そしてカズラも頷く。

 

 

「大丈夫ですよ、なんでも用意しますので、どんどん頼ってくださいね」

「さてさて、働きますよーーー! どんとこい、です!」

 

 

手をぐるぐる、と回しながら笑うカズキ。

カズラも手にあるボストンバックからノートを取り出した。メモを取るつもりだろう事はバレッタも解るのだが……。

 

 

「ありがとうございます! あ、あの、続きは家で……」

 

 

とても嬉しそうに笑っていた……が、流石に時間も時間だ。こんな深夜にでも、今にでも駆け出してしまいそうなカズキだから思わず両手を前に出して止める姿勢になるバレッタ。

 

カズキはカズキで、ゆらりゆられた馬車の中での長時間の移動。身体がなまってしまっていたのだろう。動かしたい気満々だったのだが………、色々察して断念した。

 

 

「そうですね、そうしましょうか」

「りょ、了解です! あっ」

 

 

カズキは、何かを思い出したかの様に左掌に右拳をぽんっ、と置いて(少々わざとらしい)告げた。バレッタとカズラの2人に伝わる程度の声の大きさで。

 

 

「カズラさんカズラさん。ちょっと、今夜は森に行ってきますね? 約束(・・)してましたんで。詳細は明日、という事で大丈夫ですか?」

「あ、はい。了解です」

 

 

カズキの突然の言葉に驚く―――が、この話は昨日の内に行っているので、カズラも思い出した様子。夜中に森の中に行くなんて―――と普通なら思うかもしれないが、生憎普通な事情ではない。

 

グリセア村を守護してくれている、と言うカズキが言う【ノワール】達の事をカズラも知っているから。感謝のしるしに、差し入れの1つや2つ、持っていかなければ罰が当たると言うモノだ。

 

自分達の様に、いや、寧ろそれ以上。文句なしに、彼女たちはこの世界で言う()に分類されてもおかしくない存在だから。

 

なので、とりあえずお土産(果物等の日本製の食べ物)を両手の袋にいっぱいに詰めて持っていくのだ。

 

 

―――だが、実はカズキにはまた違う狙いも有ったりする。それはカズラには内緒にしているモノ。

 

 

「バレッタさん、ひょっとして……ですけど、見張りは24時か……、夜中もずっと、って感じでしょうか?」

「あ、はい。村人が交代で立つ様にしてます」

 

 

その後も少々聞いたが……、どうやら パワー漲ってる皆様。

子どもたちでさえ、遊びの追いかけっこでは、凄まじい膂力を発揮している。常人が見れば消えたかと思う程素早く、野山を駆け上がる時は、殆ど数秒で帰ってきた。簡単な獣を狩るくらいなら出来る様で、視認したら空でも飛ばない限りもう逃がさない……と来るから、今後の生態系が心配になってくる程。……無論、その辺りは大人たちがしっかりしているので、大丈夫そうだが。

 

つまり、グリセア村の皆様方は、もはや神兵と言って良い。

老若男女、関係なくとってもパワフルの様で……、流石に村の子供に見張りを任せたりしないが、若い女性でも見張りに立つとの事だ。

 

まだまだ拙いかもしれないが、護身術、武具の扱いは多少は出来るらしく、そして 多少(・・)であっても十分過ぎる程の効力を与える事が出来る。

 

 

それこそが、カズラが授けた日本食パワーであり、裏ではナルソン・ジルコニアが喉から手が出るほど欲している力。

 

 

その力は、例え武器の取り扱いがヘタクソであっても、力にものを言わせて全て解決、出来る程のもの。武芸を収めた者が食事パワーを得たなら……正直怖い程。

 

 

因みに、今夜見張り番に立つのは全員女性。南側にニィナが立つらしい。中でも顔見知りなのはニィナなので、終わった後に 安心してグリセア村に戻る為に、ニィナの所へと寄る事にしている。

 

 

「じゃあ、カズラさん。後はよろしく(・・・・)お願いしますね。また、明日。頑張りましょう」

「! はい」

 

 

カズキの不自然にならない程度の微笑みを受けて、カズラは何の疑いも無く手を振って返す。

 

 

そして、森へと向かう前に……バレッタに一言。

 

 

「(カズラさんは大丈夫です。ちゃんと、私は 約束(・・)守ってますからね? ですから、バレッタさん、ふぁいとふぁいと、です)」

「え? ……あっっっ!!?」

 

 

空気を読める男、空気を読む光、カズキは そう告げると茹蛸の様に 真っ赤になったバレッタに笑顔で手を振り、バリンにもよろしく伝える様告げて、グレイシオールの森へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレイシオールの森にて。

 

カズキは、奥へ奥へと歩き出し……とりあえず光が漏れない程度の場所にまでやって来た。

以前、ノワールと鍛錬をした所であり、自然破壊はどうかと思ったが、相応の広さにした場所である。

 

※勿論、斬った木々は 木材資材として有効利用させていただいてます。

 

 

「カズラさんには、バレッタさんが居る~、みたいな直接的な事は言ってないケド、匂わせたし、それにジルコニアさんは知ってるし。まぁ大丈夫でしょ!」

 

 

カズキは 口々で、ファイト! と呟く……が、肝心な所も思い返す。

 

「………カズラさんがその気になるかどうかは………ちょっと保証出来ないけどねぇ……。絶対好意は持ってると思うケド……、ちょっぴり歳、離れてるから」

 

 

聞いたところによると、バレッタの年齢は15歳。因みにリーゼも同い年。

日本世界で言えば中高生。方やカズラもカズキも余裕で20を超えている年齢。日本の世の常識を照らし合わせると……なかなか難しい。

 

バレッタが好意を持つのは最早必然。

 

死にかけていた村を復活させた大恩人であり、神様だと思っていたのだが、自分達と同じ人間。ただ、住む世界が違うだけの人間と知り………手を伸ばせば間違いなく届く距離にいる事を知った。

その結果恋に落ちた。

必ず守る、と言う庇護欲もあるだろうけれど、それ以上に人として恋に落ちた。

 

 

「……バレッタさんは、良い子だから、幸せになってもらいたいなぁ………。殺伐とした世界だって、解っていても……さ。……ってな訳で、久しぶりノワ」

「ッッ!」

 

 

バレッタとカズラの未来を思い馳せていた時。

図ったかのように、くるり、と振り返ったカズキ。

その目と鼻の先にはノワールが居た。

 

 

「こ、こんばんはーー」

「はい、こんばんは。オレだって学習するから。流石に市街地に出てきたら無理かもだけど、ほれ、オレ式、ぴかぴか簡易結界!」

 

 

カズキがひょい、と手を翳すと……月明りに紛れていた光の粒子の粒たちが集ってきた。

これらが全てカズキと感覚で繋がっており、広範囲にバラまかれている。

つまり、接触があれば察知できる、と言う事である。そこから色々攻勢に出たり、ビーム出したりサーベル出したり、と幅広く使えそうだが、生憎この森で敵の様なモノが出てくる事はない。

 

 

「きゅんきゅんっ!!」

「おおっと、悪い悪い。ハクも来てたんだな」

 

 

ノワールを横切り、勢いよくカズキの傍にやってきて、頬ずりをするウリボウ―――ハク。

見分けがつける事が出来るのは、額の部分の傷。カズキを以前襲ってきた時に返り討ちにした時についた傷であり……、ここまで懐かれてしまって、名付けまでしてしまうと、それなりに罪悪感が合ったりするが、口に出すと ノワールも含め、ハクたち全員が大変な事になってしまうので、言わないつもりだ。(懺悔、大謝罪大会開催、である)

 

 

「むぅ……」

 

 

ノワールは、可愛がってもらえてるハクに少なからずヤキモチを妬く。

不意打ちも失敗し、今後も難しくなっちゃった事に対しての八つ当たりもあるかもしれない。

 

 

「さて、今日はお土産があるんだ」

「あ、えと……、はい!?」

 

 

ハクを撫でながらノワールの方を見るカズキ。

ノワールは頬を膨らませていたのを直ぐに止めて慌ててカズキに近づいた。

 

 

「はい、果物詰め合わせセット。カズラさんもお礼を、って言ってたから、またカズラさんにも会いに来て欲しいかな? あ、いや こっちから向かった方が良い? 今のトコ、オレがアポ取る、って事にしてるんだけど」

 

 

カズキは、ノワールを、そしてハクたち(・・)を見ながら、聞いた。

 

ノワールたちに会って欲しいとは思っているが、今の所 街中(以前のナルソン邸)を除き、基本的にノワール1人で会っていない。必ず? と言って良い程、ハクが、そして 引き連れた獣たちが同行している。一番大きな喋るウリボウ(オルマシオール)は、会う事そのものが恐れ多い、不敬だと捉えている様で、こちらが言わない限り出てこないが、それでも、ハク達を始め、ウリボウ達の体躯を考えたら………安易に決めて良いのか憚れる。

 

何せ、ハクは非常に人懐っこく、見る者が見れば愛玩動物の様に見えなくもない………が、先ほど言った通り、それはハク達の体躯を無視すれば、である。

 

一番小さい個体でも日本で言うトラやライオンクラスに大きく、牙や爪と言ったモノも見せる時があるので、尚更大変。

 

 

「大丈夫ですよ。カズラ様とは また私の方から出向きますので、ご心配成されぬようにお願いします。こんな素敵なモノを沢山いただけましたから」

 

 

ノワールは、カズキが考えていた事を大体悟ったのか、慌てていた様子は鳴りを潜め、笑顔になっていた。

大きな袋の中には見た事無い果物が多数揃っている。似ているモノなら幾つかあるが、どれもこれもやはり見た事が無い。

匂いもそうだ。美味しそうだと言うのが一目で……一嗅ぎで解ると言うものだ。

 

 

「そっか。カズラさんもお礼をしたい、って言ってたから。なるべく早くに会ってもらいたいかな?」

「承りました。カズラ様には 私達の方も、助けて下さっているので」

 

 

ノワールはそう言うと、カズキからあの袋を2つ受け取った。

それをハクに渡すと、器用に口で加えてぶら下げる。

 

 

 

その後も、暫く談笑をした後…… ノワールは意を決する様に言った。

 

 

 

 

「さぁ、今日もご一緒にシテ頂けるのでしょうか? 夜のお相手(・・・・・)を……望んでも?」

「………ノワが言うと、なんか別な意味で聞こえてくる……ってか、ぜーーったい狙って言ってるだろ?」

「うふふ。どうでしょうか? ただ、言えるのは 私の方はいつでも(・・・・)どちらでも(・・・・)―――」

「剣の方をお願いします。と言うか、今日はお礼と土産くらいしか考えてなかったケド、折角だから。勿論、剣の方ね??」

「………はい」

 

 

ノワールはまた頬を膨らませる。

 

ノワールは確かに美人だ。見た感じ、年上の美人なお姉さん、と言う印象。

でも異種族間の求愛は……一先ずカズキは遠慮をしている……と言うより1歩、2歩と退いてみている。

 

彼女と自分達が暮らす場所……世界は異なっているのだし、そして、何よりもカズキにも色々と事情(・・)がある。

それは、トラウマ~ の様なモノではなく………。

 

 

「さてさて、今日のオレは ちと激しく行くから、覚悟しとかないと大変だぞ?」

 

 

カズキはぶんぶん、と首を振ってノワールを見た。

ノワールは、一瞬赤くなるが……、先ほどのお返しか? と思うと同時に、カズキの真剣な顔も見て、ふざけるのは止めにした。

 

 

「……はいっ」

 

 

武の面でも頼って貰えている。それだけでも、ノワールは嬉しいから。

カズキの反応が可愛らしくて可愛らしくて、いつの間にか自分の方が夢中になってしまったとも思うが、今は一介の戦士として、お相手する、と集中。

 

 

 

「さっきの結界の応用。危険を察知して、攻撃に移る~ 練習をさせてくれ。波状攻撃だから、勿論加減はするよ」

「もちろん……。それと、攻撃の手は、私が根を上げるまでで。それでお願い致します」

「――――むぅ。ノワは一度言いだしたら聞かないからなぁ……。解った解った。」

 

 

 

まさに 女は強し、である。

 

カズキは宙に光の粒子をばらまく様に、右手・左手を扇状に左右にスライドさせた。

光が瞬いたかと思った瞬間、様々な場所から光の剣が出てきた。

 

 

「んん、全部自分の意思で動く――――ケド、こりゃ、練習しないと頭がパンクしそうだ……。ノワ、行くよ?」

「っ! はい!!」

 

 

四方八方、光の全てが自身の感覚に繋がっているのは間違いないのだが、生憎考える頭まで増えた分けではない。自動攻撃(オート)手動攻撃(マニュアル)にも切り替える事は出来そうだが、自動攻撃(オート)時の力加減がよく解ってないし、ノワールに怪我でもさせたら大変なので、(来てほしくはないが)実戦の時にしか使わないでおこう、とカズキは思った。

 

一先ず、ノワールの前方180度、視界の中の全てに剣や槍やらを再現。刃先は潰すイメージで行っているので、切れ味は皆無。叩かれても居たくない程度の柔らかさをもイメージ。

 

 

 

「っ、ん! はぁっ!! ッッ!!」

 

 

ノワールは懸命に防いではいる、が 所々当たっているのは間違いない。

カズキの攻撃が当たった箇所が光る様になっているから。

 

右肩、左腕、左大腿部、左脛……、痛みは無い。だが、突破されてしまった事実が可視化された事、それがノワールを更に気合を入れさせる結果になった。

もしも、本物の攻撃であったなら、頭部・胴体は無事でも四肢が裂かれ、致命傷となるのは目に見えていたから。

 

 

カズキは頭を悩ませながらも、技を練習。ノワールは必死に防ぎ続け、隙あらばカズキにも一手入れようとする。

ハク達は、両方を応援でもしているのか、時折遠吠えの様な鳴き声が聞こえてくる。

 

 

その攻防は一刻程続き―――、ノワールが片膝を付き、剣を支えだした所で終了。

 

 

ノワールと打ち合っていた光の武器が形を変え、カズキの掌を顕現すると、息を切らせているノワールの頭にそっと手が乗った。

 

 

 

「本当に色々とありがとな。ノワ。オレたち……、オレの方が沢山、助けられてるよ」

 

 

 

カズキの微笑みに、ノワールも微笑みで返す。

全てはこの笑顔が見たいが為の行動だった、と言っても決して過言ではない、とノワールは改めて思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜のグリセア村。

かがり火はいつまでも燃えていて、暗闇になる――――と言う事は無いが、人は当然全くいない。

時折巡回に回っている村人には何人か目にするが、その程度。

見分けれるだけの視力を持ち合わせてなければ驚いてしまうだろう。

 

 

そして、まだまだ夜は長い……。

 

 

後どのくらいしたら太陽が、光が顔を出すのだろう。

南側の見張り役が回ってきたニィナは、太陽が必ず顔を出す東の空を眺めながら思う。

 

「ふぅ……。(星がすっごく綺麗なんだけど、1人じゃどーもなー……)」

 

ムードと言うモノが一切ないではないか、とニィナは一人愚痴っていた。

勿論、あの野盗騒動の件もある。グレイシオール、メルエムであるカズラやカズキにも心配をかけた事だってある。

自分達の村は自分達で守る、と言う使命感も持っている。

 

でも、こんな深夜に、女1人起きて見張りだなんて……… と少しくらい何処かで思ってしまったって別に罰は当たらないだろう。

 

 

「(っと、そう言えばバレッタは、カズラ様と一緒に泊まってるって話だから…………、あの子、しっかり出来てるのかしらね~。ひょっとしたら、夜遅くだし、男女2人で。ムフフ、な展開になる様に頑張ってる? …………)な分け無いか。バレッタだし。ヘタレるし」

 

 

ニィナは、カラカラと笑いながら 手槍を地面に刺して背伸びを1つ入れた。

カズラとカズキが戻ってきてくれてる事は、当然聞いているし、明日は挨拶を~ とも考えている。

 

 

「カズキ様も一緒、なんだよね~。うんうん」

 

 

ニィナもお年頃な乙女。

バレッタの世話ばかりだけじゃなく、自分の事も考えなければ、と思っているのである。

無論……難易度はかなり高いと思うが。

 

何せ、カズキの事を見ていたから。

 

彼の事を気に掛ける切っ掛けになったのは、子供たちに…… いや、村人全員に振舞ってくれた【歌】だった。

歌を聞いて……心が震えると言うのは、こういう事を言うんだ、とニィナは実感出来た。感動した。

 

カズキが披露してくれた歌は、聞いたことの無いものだったけれど、聞いたことも意味もよく解らない言語だと思っていたけれど、心に響いた。

 

そのこともあってニィナは、カズキの事をよく見て、接する事になったのだが……、これがバレッタと同じモノか? と問われれば、正直まだ解らない、と言うのが正しい。

でも、じっとしているのもどうなのか、とも思ってしまう。

 

何せ、カズキはカズラと一緒にイステリアで復興作業の手助けをしてくれてるから。今回の様に返ってきてくれてはいるものの、大半がイステリアだと言って良いから。

 

そして、何よりも考えてしまうのが…… やはり、イステリアにはナルソン領主が居て……国内外に有名なリーゼが居る事。

 

 

「(イステリアで仕事してるし……、やっぱリーゼ様とかとお話したりしてる……よね? リーゼ様とても美人だし……、カズキ様がメルエム様だって解ったら、きっと……… アプローチ? とかしてきそう。………バレッタの様にヘタレるとは到底思えないし)」

 

 

好いた惚れた、その相手を巡って骨肉の争い……なんてしたいとは到底思えない。

でも、本気で好きだったらどうか? バレッタの様に傍から見てみて、明らかな程に好きだったらどうか?

 

 

「……うーむ、負けたくない、って思うんだけど………。やっぱバレッタの様に、っていうのはまだ、なんだかなぁ……。確かに すっごく感謝もしてるし、カズラ様のみたいに優しくて、子供たちにも人気がある家庭的で、憧れてもいるし。………んん? 憧れ? あ、一番しっくりくるかも」

 

 

自問自答を繰り返していた時の事。

 

 

 

「こんばんは」

 

「うひゃいっっ!!?」

 

 

下から声が聞こえてきたのである。

 

 

「ただいま戻りました、ニィナさん」

「あ、あっ、カズキ様っ!? わわ、こんな高い所からっ!?? 今直ぐおります!!」

「いえいえ。仕事中ですし、そのままで良いですよ。……っとと、と言うより、私がそっちに行った方が早いですね」

「へ? ――――ッッ!!?」

 

 

ニィナは、見張り塔の上から見ていたカズキの姿に唖然とする。

突如、徐々に身体が光り出したからだ。

 

キラキラと光り輝く粒子は、まるで空に瞬く星々のよう。幻想的な空間を演出し、その光たちが ゆっくりと上へ上へと昇っていき……ニィナの前でカズキの姿になった。

 

 

「っっ!!?」

「あははは……。ゴメンなさい。まだ慣れませんかね?」

「い、いえいえいえ!! すみませんっっ! ちょっぴり驚いちゃっただけで! あ、あれ? カズキさん、それは……」

 

 

思わず倒れ込みそうになったニィナだったが、どうにか堪える。堪えた後は、両手を振って大丈夫の旨を伝えた後、カズキの手首に巻かれているモノに注目した。

そう―――赤のブレスレットである。

 

 

「あ、これですか? イステリアでリーゼさんから頂いたモノですよ」

「そ、そうなんですね。(やっぱり、リーゼ様は………)」

 

 

ニィナは自身の考えが間違えてなかった事を確信した。

そして、同時に……。

 

 

「綺麗な色ですよね、これって。御守か何かの効力があるんでしょうか? ()と合わされば、向かうトコ敵無し、って感じですね」

「え? あ、ああ。そうですね! 確かに!」

 

 

 

カズキが、そのブレスレットの意味を理解していない事にも気づく。

 

 

「カズキ様に御守……何だか凄い事になりそうです」

「あははは。普段より更に光っちゃったりして、こんなな感じで」

 

 

 

 

ぴかっ! と空に向かって一筋の光が伸びる。

 

 

 

そうだ―――彼は、超常的な存在。カズラとはまた一味違った存在だ。

 

 

 

2人に序列をつけるつもりは無いが、やはりインパクトがあまりにもデカすぎるのが、このカズキの光だから。だから、バレッタの様に安易に、容易に 迫ったりするのが憚れると言うものだ。

 

恐らくはリーゼも知らないカズキのこの正体。それが判明した時―――――リーゼは同じ様に接する事が出来るのだろうか。

 

 

 

 

「(…………私が考える事じゃない、かな。私は自然にカズキ様やカズラ様に接するだけ。……うん。それだけ。―――――先の事なんか、わかんないんだし……)」

 

 

 

 

当のカズキは 神であったとしても、崇め奉る(そう言う)感じを好んでいない様で、普通に接する事を願いとしている。だから、ニィナも頑張ってそれに応えよう! と思い続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今接していても、先ほどの光の件を省いたとするならば、やはり普通の好青年にしか見えない。とても優しくて、面白くて、……色んな意味で趣味が合う。

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ。バレッタさんが無理無茶をしてないか見張っていても、口に出してもなかなか難しい……と」

「ええ。私達も手伝ってはいるんですけどねぇ……。あの子ってば、休むって事を知らないみたいで……」

「解りました! 私の方からカズラさんに密告しておきますよ。大好きな人からのドクターストップ的な指示を受けたら、ちょっとは効くでしょう?」

「どくたー? すとっぷ? とは何でしょう??」

「ああ、しっかり身体を休めなさいよ~~、って感じの意味です。バレッタさんもそうですが、グリセア村の皆さんほんとに頑張り過ぎてる様な気がしてならないので……」

 

 

 

バレッタとカズラのくっつけ大作戦に関しても、前のめりで賛同してくれてるから。

そう言う時のカズキは、人間より人間らしい、と言うのがニィナの感想だ。

 

 

「私達は大丈夫ですよっ! 何せ、カズラ様やカズキ様から頂いた力がありますからっ!」

「あははは……。凄いのは勿論知ってます。こんな短期間で村を駐屯地みたいに改造しちゃう所を見ても。でもまぁ、バレッタさんやニィナさんを含め、女の子ですから」

 

 

カズキはそう言うと、手を光に代えた。

仄かに温度を上げて、人肌よりもやや暖かい程の温度に上げて、ニィナの頭を撫でる。

 

 

「私達に、もっともっと頼ってくれても良いですからね? 光の神様は、頑張り屋さんの味方です!」

 

 

カズキは、ぎゅっ、と拳を握って力こぶを作るポーズをとる。

ニィナは、きょとん……としていたが、直ぐに笑顔になって頭を下げていた。

 

 

 

 

 

 

復興現場でもそうだが、グリセア村もそうだ。

余りにも皆が皆、頑張っているのが目に入る。

それなりに人数が居るなら、何処かでサボったりする人が居そうな所だが…… 今の所見えない。見えていない。巧妙に隠している可能性も0ではないが。

何はともあれ、頑張っている人には手助けをしてあげたい、と言う気持ちは嘘ではない。

 

自己満足と言われるかもしれないし、傲慢だと思われるかもしれないが……、何の因果か、この世界に来たからには。この世界で強大な力を手に、来れたのだから。

 

(メルエム)を名乗っても許される世界ならば、自分達を慕う人達を守りたい。笑顔を守りたい。

 

カズキは、笑顔で話すニィナを、そして勿論グリセア村の皆、イステリアの皆、偶然が紡いでくれた皆の笑顔を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バレッタは、カズラ様に告白できたでしょうか……?」

「うう~~ん、申し訳ないですが、できてない方に、有り金 全部使っておきましょう!」

「うわぁっ、随分辛辣なご意見を……」

「バレッタさんが バシッ! と決めてくれるなら、何度か2人きりにさせた時に、進展有りそうだと思うんです。………今の所、皆無みたいなので」

「うぅ~~ん……。素直になる、って言ってましたし。この間なんか【ぎゅっとして欲しい】って言ったらしいですが」

「おおっ、それはそれは! ………ん? それって確か精油(アロマ)の……」

「カズキ様! 絶対に断られないですよね? カズラ様は! バレッタが迫れば絶対!!」

「もも、勿論ですよ! きっと!」

きっと(・・・)じゃなく、絶対(・・)!」

「は、はい!」

 

 

ニィナは、バレッタ恋愛事情の話になると、どんどん声のトーンが増していく。

カズキはカズキで、最初こそは楽しそうにしていたのだが、だんだんニィナの圧に負けそうになっていたのだった。

 

 

 

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