ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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30話 兄妹

 

 

「くくく………っ、とうとう、オレは文明の利器を手にしたんだーーっ!!」

 

 

日本国、群馬県の山奥にある大きな屋敷前にて、大きくガッツポーズをする男が1名。

傍から見たら十分不審者の部類に見えるが、生憎この場所は山奥。 志野家、先祖代々から受け継がれている屋敷。俗世間からは隔離されたと言って良い立地。

 

現在、この場所に居るのはカズラとカズキの2名だけ。一体誰に不審者と呼ばれる心配があるだろうか。

 

 

「盲点だったよねー。色々と原始的な買い物が多かったからかな? 日本での活動時間の方が短くなってきてるからかな? すっげー便利なのにちょっとぬけてたよ」

 

 

苦笑いをしながらも、相槌を打ってくれているカズラ。

そう、ガッツポーズをしているのはカズキの方である。―――その手に握られているのはスマートフォン。

 

未来国からやってきた カズキからすれば、大分ジェネレーションギャップが満載な気もしていたカズラだったが、その辺りは何ら問題ないとの事。

 

 

「取り合えず、これである程度分かれて行動が出来ますね! 勿論、車移動とかまでは まだしませんが」

「免許はまだまだハードルが高いからね~。でも、色々と考えてみるつもりではあるけど」

「ありがとうございますっ! あ、でも カズラ運転以外は十分手伝えますし、麓に降りれば、徒歩圏内に大体揃ってますから、スマホだけでも十分ですよ! っとと、早速向こうにじゃんじゃん運びましょうか」

 

 

一応、カズキは周囲を再チェックした後に、ピカピカな姿になって 超高速移動。勿論、荷物に関しては最大限配慮しつつ。

 

色々と試してみたのだけれど、某国民的漫画ONE PIECE からやって来た? この力。物を運ぶのに物凄く便利だと判明した。

あの世界では 能力者が身に纏ってる衣服や武器に関して、本人の身体とは違って、実体のある物質の筈なのに、接触している間は どうやらある程度は同じ属性に変化させる事が出来てるらしい。

ピカピカを解除すると元に戻るので、物凄く便利である。

 

その後も色々と確認してみると、手で運べる様なモノに関しては問題なく(同じ)に出来る。(プロパンボンベと言う比較的大きなモノでも成功した)

 

但し、農業運搬車の様なある程度の規模がデカい物質に関しては、どうやら光化は出来ないようだった。

 

 

【能力は稀に覚醒し、己以外にも影響を与える!!】

 

 

的なセリフは聞いた事あるが、覚醒(それ)にまでは至ってないらしい。

でも、これでも本当に充分。

カズキが荷物を詰め込む作業をすると、本当に早く、カズラは運転するだけで済んでいるので、体力等の消費もなく運転するだけで大丈夫なのだ。

 

 

―――流石に、あまりにも目立つので 周囲の目もある事から、向こう側では この技は使わず、手作業で下ろす様にしているが。

 

 

「えっと、バーナーワークショップで買った一式、プロパンボンベ、銅やら錫やら…… ふむふむ」

 

 

カズキは積み込みながらも、しっかり中身をチェック。

同じ光に化けさせる事が出来るとはいえ、中身までスキャン? みたいには出来ないので、この辺りは目視確認だ。

 

色々と準備していると、外が賑やかになってきた。

 

どうやら、宅配業者たちが到着した様だ。

 

 

宅配業者たちに、ピカピカの力を見られたらちょっとまずいが、その辺りは勿論対処している。

 

 

「表はカズラさんが居るし、とりあえずオレはこっちを確認した後出ようかな(それにしても……ほんっとオレのピカピカ結界、便利っ)」

 

 

そう、光を目に見えない程の細かな粒子を飛ばしているのである。

あまりに広範囲だったら大変なのだが、生憎 このカズラの屋敷までの道は一本のみ。それ以外は森林に囲まれていて、獣道しかない。そんなトコを通ってやってくる業者は居ないので、整備されている道路に仕掛けていて、そこを数台通過したのである。

 

再三のチェックを終了させて、カズキは表へ。

もう業者たちが積み荷を降ろして帰宅された後だった。

 

「おお、多いですね。100万円分ともなれば当然かな…?? ああぁ、金銭感覚がマヒしちゃってます。オレ」

「あははは……。オレはもう慣れちゃったケドね」

 

 

散財っぷり~ とまでは思ってないが、思い切りよくさらっと高額な機器を買ってる姿を見て、カズキ自身もメモ帳通りの買い物をして、それなりに感覚は凄い事になってしまっていた。

成金なイメージは持ちやすいが、カズラは、高級外車やクルーザー、数々ブランド品~ とかで散財している分けではなく、異世界を救おうと言う崇高な目的があるから、超がつく程大金持ちだけど、イメージは真逆である。金で人が変わった―――と言った様子も見られないし。

 

それはそうと、中身チェック&詰め込み作業に移った。

 

 

「エアコンプレッサーに手押しポンプに、石ノミセット……、井戸掘り道具ですね」

「うん。向こうの街中ではこういうアナログな道具も必要だし、買っといて間違いないよ。……まぁ、買う時ちょっと変な目で見られちゃったケドね」

「あ――――……、ま、まぁ 仕方ないと思いますけど、上客って事になるんですから。そこまでは追及されたりはしないでしょうね」

 

 

あまりにも大量の道具に店員が怪訝そうにしていたのはこの際仕方ない。

カズラは弁解を図っていたが、店側とすれば 在庫が一気にはけた事と、追加で幾つも購入したので、最後にはホクホク笑顔になってたので良しとしよう。

 

 

 

 

そして、色々と整理したり、準備したりしている最中、話題は金属の話になった。

 

 

 

「カズラさん。以前話してた()の話ですが……」

「うん。覚えてるよ。ぶっちゃけ鉄が作れるようになったら作業がかなり楽になるし。良いトコだらけなんだけど……、カズキさんが言ってた様な事になっちゃったら、手放しで喜べないよねぇ……」

 

 

カズラは、続いて歴史博物館、そこの教授に話を通してもらい、明治時代に使われていた道具の設計図の購入にも取り付けていて、それを眺めながら…… カズキの言う鉄について、考える。

 

技術は進歩するもの。

それに鉄鉱石、鉱脈の様なモノが発見されて、鉄製品が普及してもおかしくない。

 

それはそれで万々歳、だと思う―――が、手放しで喜べるようなモノではない。

 

グリセア村では木製が多かったが、青銅のものもあった。イステリアでは青銅が主流である、と言うのも見ている。鉄についてナルソン達に直接聞いた分けではないので、確定している分けではないが、もし―――鉄と言うものが無く、これから発見、若しくは発明されるとすれば?

 

 

鉄は、青銅よりも強く、鋭く、軽い。そして何より安価で鉱脈さえ押さえて発掘に手を回せば量産も出来る。

間違いなく、文明レベルの低いと言わざるを得ないあの世界においては、世界を席巻する力を持つ、と言っても過言ではないだろう。

 

 

「――――まぁ、最悪な事態(・・・・・)になったら、オレが 行ってどうこうしようとは思ってるんですがね」

「……わーー、そうなったら 鉄なんてオモチャみたいなもんだよねー」

 

 

少々物騒な話をしたが、近年戦争をしていて、休戦協定が数年で切れる、と言う状況であれば、絵空事、戯言、で済む話ではない。

その点、カズキの存在は間違いなく、イステリアに、アルカディア王国にとって 福音そのもの。まさに神の所業……と言えるのだが、唯一絶対な力を大々的に使って繁栄したとして――――その先にあるモノは決して穏やかな平和な世界とは限らない、と言う事をカズキは知っているのだ。

 

それに、その話は以前カズラにもしていたから、カズラもある程度は解っているつもりである。

 

 

「あまり光の力で干渉を続けると、色々と均衡が崩れちゃうのは目に見えてるんですよね。陰謀やら何やら暗いモノが渦巻いちゃいます」

 

 

昔を思い返して、カズキは苦笑いをした。

VRMMOと言うゲームは、オンラインで遊ぶ事が主流ではあるが、オフラインで遊ぶゲームも出回っている。

いわば、自分だけの世界を自分が創造したも同然。オンラインじゃないから、外部からの接触や圧力等も無く、全ては自身の掌の出来事―――と言う事にもなる。

 

ある程度のレイティングは設けているが……、守られている様で守られてなかったりしているのが実情だ。

現実世界の、社会の不満のはけ口効果、と言うモノもあってある程度は許されている。

 

 

当然、カズキもした事はあった。

 

 

仮想世界(ゲーム)超能力(チート)を使って無双、みたいなのした事あるんですが………、AIのシミュレーションとはいえ、極めて現実に近しい世界で、ああ(・・)なったので……、こちらの世界では、大々的にはやらない方が良いかも、とは思ってるんですよ」

 

 

それは やって来たからこその感性である。

でも、だからと言って見捨てたり傍観に徹したりするつもりは毛頭ない。

 

 

「でも、勿論 今まで知り合ってきた皆の為になら、オレは幾らだって頑張れます。相手に鬼だと思われても。やります。………手出し無用って思ってても、最後の部分は抑えるつもり、無いです」

「……うん。凄く心強いと思う。バレッタさんやリーゼさん、ナルソンさん達はカズキさんが来てくれて幸せだな、って思うよ。そんな時は来ないのが一番良いんだけど……ね」

「カズラさんが齎した恩恵の方が凄いと思うんですけどね!」

 

 

カズラが言うそんな時(・・・・)

 

そう、敵国と言われてるバルベールとの戦争再開だ。

戦争と言うものは、歴史が証明している通り、敵も味方も多大なる犠牲者が出るから。今まで知り合ってきた人達が。笑いあった人達が。一緒に仕事をした人達が。

兵士として徴兵されて、戦場に駆り出され……命を落とすかもしれないのだ。

 

それは男女関係ない。

 

バレッタも次は呼ばれると覚悟をしていた。

 

 

 

来ない方が良い、と思うのは当然の感性。

 

そして、仮にカズラにカズキの力が宿ってたとすれば……、こちらも当然。カズキの様に、自分の知る人達の為になら、鬼にだってなれそうな気がする。

 

 

 

ちょっと暗い話になったので、カズラは気を紛らわせ、空気を弛緩させる為に、笑顔で言った。

 

 

「もっちろん、カズキさんの働きに対しての対価は支払うんで、よろしく」

「あっ! はい! 解りました!! すっごく期待してますんでっ!」

 

 

 

最後は笑顔で〆るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いざグリセア村へ。

 

農業運搬車二台! 大きな大きな騒音を奏でながら、世界を超えて突き進んで………到着して直ぐカズキは別行動。

 

ニィナを発見したからだ。それとバレッタとカズラを2人に~ と言う打算的な考えも有ったりする。

 

 

「どうでした???」

「うぅ……、カズキ様の言った通りでしたよぉ、あの子、さっそくカズラ様にウソ(・・)ついちゃったみたいで」

「ウソ??」

 

 

ニィナとは、あれから バレッタとカズラをくっつけよう会(仮名)を立ち上げ、その近況を話すのがマイブーム? みたいになってるのである。

 

「あ、いや…… その――――、アレですよ。自分の気持ちを抑えて抑えて、想いとは全然違う事をしちゃって」

「あー、成程……。目に浮かびますね」

「そうですよ! バリンさんも空気を読んで出て言ってくれて、2人きりだったらしいのに、買ってきて欲しいモノ一覧とか、カズラ様に注文してたりして……」

 

 

バレッタの事をヘタレ、と呼んでるニィナ。カズキもそう思うが、微笑ましさが勝ってるので、ゆっくりゆっくりで~~、と思っているのだが、ニィナは違う様子。

 

カズラの様な男性は、他の女性がほっとかない、と言う危機感をバレッタに与えている。与え続けている。

 

 

「【いきなりそんな事言えないよ~】って言ってたんですけど、あの子、こないだは【ぎゅっとしてほしい】って言ったんですよ?? なら、いきなりも何にもないと思いませんっ!??」

「あーー、いや、それはきっと……。あれですよ。カズラさんが前に渡してあげたらしいアロマって言う道具が……」

「はい! それも聞きました! 精油、って言う油の効果に催淫作用があるらしくって、その勢いで言っちゃった、と! なら、その勢いに任せてヤっちゃえば良かったんですよっっ!」

「お、漢らしいですね……、ニィナさん……」

 

 

中々に肉食系女子な所のあるニィナ。

ひけらかすつもりも無いし、フランクに接する~ と普段から言ってるからこっちの方が有難い……と思ってるカズキも、思わず仰け反ってしまう。

 

了承は得られたが、それでもカズキは一応神(笑)。

 

でも、こういう時のニィナの押しは物凄く強いのだ。

 

 

「カズキ様もぜーーーったい断られないって言ってくれた、って伝えたのに、あの子ったらウジウジふにゃふにゃしちゃって! 同じ精油で押し倒せ、って言ってきましたよ」

「わーーー、バレッタさん、真っ赤になって倒れちゃいそう……」

「倒れはしなかったですけど、全否定してましたね。恥ずかしくて死んじゃうとか何とか。だから、カズラ様、誰かに取られちゃうよ~、カズキ様も抑えてくれる、って言ってたケド、四六時中はきっと無理だよ~~、って感じで更に焚きつけました」

「それはGOODですね」

 

 

カズキはサムズアップする。

GOODとは聞いたことの無い言葉ではあるが………、通じるモノはあった様だ。ニィナも笑顔になっていたから。

 

 

「あの子は、カズラ様関係になると一気にヘタレるから、一応、手は個人的に打っておきました! これで、何処まで効果があるかは解りませんが、やらないよりはマシと思いまして!」

「おおおっ! 流石ニィナさんです! して、その手とは?」

「………ふふふ。カズキ様には秘密です。また、きっと結果はお話しますので、その時にでも!」

「むー、気になりますが……。楽しみにしておきましょう!」

 

 

 

と言うワケで、結果は何となくわかりそうな気もするが、野暮な事は言わず楽しみにすると言う事で話は終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。

 

 

日本に戻るのは買い物の規模が少ないので、カズラ1人で戻る事になり、カズキはグリセア村に残る事になった。

 

別にカズラも一緒に行っても問題ないし、邪魔にならないどころか 間違いなく早く終わるのだが……。

 

 

「カズキさまーー、こっちこっちーーー!」

「ああーー、ずっるーーい! 次、こっちきて、カズキさまーーー!」

「むむむ、メッチャ速いな! よっしゃー、皆捕まえちゃうぞーー!」

「「「きゃーー!」」」

 

 

仕事の合間、と言う条件で(カズキはいつでも良い、と言ったが、畏れ多くと言う事もあり、双方が納得出来る様にこの形に親たちが出した)村の子供たちの相手をする為に残っていたのである。

 

専ら今のトレンドは鬼ごっこが主流。

 

以前は、カズキに歌をねだっていたが、今は元気いっぱい外で遊ぶ事でいっぱいだ。

 

 

 

――――しかし子供だ、遊びだ、と決して侮る事なかれ。

 

 

 

彼らの身体能力は、そんじょそこらの大人とは分けが違う。

日本食で復活を果たし、現在もすくすくと成長していっている子供たちの身体能力は、神兵の子。

 

凄まじい敏捷性を、反射神経を見せつけて逃げる逃げる逃げる。

 

 

 

これは、カズラでは無理だ……とカズキは思いながら 子供たちの相手を心行くまで行っていたのである。

 

 

 

 

「やっぱ、げんきいっぱい過ぎるなぁ………」

 

幾らピカピカでも疲れる時は疲れるのだろう。

単純に気分の問題かもしれないが、カズキは結構疲れていた。

 

子供たちの体力は底なしだったからよりそう思ったのかもしれない。時間をしっかり守る所は凄いと思うんだけれど……、子供ならもうちょっと甘えても良いともカズキは思っていた。

 

その辺りは、親達にも要らぬ心労をかけてしまいそうなので、バランスが難しい所だ……。

 

 

「カズキさま~~っ!」

「っ、とと。ミュラちゃん? アレ? てっきり戻ったかと思ったんだけど」

 

 

背中に抱き着いてきたのは、わんぱく女の子の中でも随一の行動派、ミュラだった。

肩先まで伸びている綺麗なブラウンの髪を風になびかせて、走る姿は本当に絵になる。

母親も非常に美人さん。間違いなく、将来は美人さんになるだろう……と言う事もよく解る。(勿論 ロリコンではない)

 

 

「さいごに、おうた…… ききたい、って思って」

「んん?? アカペラで??」

「あかぺら??」

 

 

現在楽器の類は持ち合わせておらず。

アコギでもあれば、と思ったカズキだったが、取りに戻るには少々時間がかかるし、光に成るにも少々目立ちすぎる。

 

なので、伴奏無しつまりアカペラで歌うのか? とミュラに思わず表情で訴えかけていたが、アカペラの意味が理解出来ない様で、可愛らしく首を45度傾けていた。

 

 

伴奏無しでのアカペラは、正直初めてなのだが……村の皆は老若男女、分け隔てなく、付箋しているワケでもなく、強制しているワケでもなく…… 大絶賛してくれている。

 

恥ずかしさはあるが、子供たちがとても期待をしてくれるなら……吝かでは無い。

 

 

「よっしゃ。どんな歌がいい??」

「あっ、お魚さんのうた!!」

「僕、お空のうた!」

「あいのうた!!」

 

 

いつの間にやっていていたのやら……。

ミュラだけでなく、他の子どもたちも全員集まってきて、鬼ごっこの時とはまた違った大盛況になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アンコール? を何度か頂き、3~4曲披露した所で、親達もやってきて感謝の念と子供たちに切り上げる旨を伝えて終了となる。

 

 

「………カズキ様、お疲れ様です」

「あ、あははは……。ハベルさんも来てたんですね? 何だか恥ずかしいなぁ」

「いえ! 持ち合わせが有れば、お金をお支払いしたい程です!」

「いえいえいえいえ、頂くワケにはいきませんって。ッ皆で楽しく、がモットーなので、商売するつもりは無いです。……復興も進んで、平和になったあかつきには、そう言う娯楽も良いかな? って思っちゃったりはしてますけどね。趣味程度、最小料金で。皆さん、とても褒めてくれてるので」

 

 

気付いたら、ハベルも来ていた様だ。

直ぐ隣にはマリーも居て、何だか涙ぐんでいる。

どうしたのか……? と少し心配して見ていたら……。

 

 

「か、感動しました!」

「!!」

 

 

どうやら感動、感激して涙ぐんでいたとの事だった。

 

 

「あはは……、恐縮です。ありがとう、マリーちゃん」

「はい! い、いえ、こちらこそ素敵なお歌をありがとうございます!」

 

 

マリーは歌を聞く事、吟遊詩人の様な類が好きなのだろうか、普段より前のめりな気がするが、ここまでストレートに感激したと言ってくれるのはやっぱり嬉しい。……気恥ずかしいけれど。

 

取り合えず、カズキは恥ずかしさを紛らわせる為に、マリーやハベルが手に持っていたモノに着目して話題逸らし。

 

 

「2人は、釣りに行ってたんですね?」

 

 

そう、マリーとハベルの2人が持っていたのは釣り竿だ。木製の桶も持っている所を見ると、間違いない。覗き込むと大漁だった、と言うのが解る程魚が泳いでいる。

 

「カズキさんも是非、食べて下さい。頼むぞ、マリー」

「っ! はい! 了解です!!」

 

料理の腕は間違いないマリーは、張り切って返事を返し、ハベルもそんなマリーを見て微笑む。

 

そんな2人を見て―――カズキは考える前に意識せず、不意に口ずさんだ。

 

 

「仲の良い兄妹(・・)を見てたら、私も何だか嬉しい気持ちになりますね。これからもずっと仲良く過ごしてもらいたいです」

「「!!」」

 

 

カズキの言葉を聞いて、驚いた様に目を見開くのはハベルとマリーの2人。

カズキ自身も、その表情に気付いたので、一体何を驚くのか? と考えていて………先ほど不意に口にした言葉を思い返した。

 

 

そう、ハベルとマリーを仲の良い兄妹、と言ったのだから。

 

 

ハベルからは、マリーについては何も聞いていない。

以前、ルーソン家にて侍女……奴隷として働いている時に知り合い、カズラを宛がう時に、ハベルに指名してもらった人選も、【ハベルに近しい人】に留めていた。

 

親族とは一言もいっていない。

カズキも覚えている範囲内ではあるが、ハベルからは聞いていない。勿論、マリーからも。

 

 

「……き、気付いておられたのですか? 我々が兄妹である、と」

 

 

マリーよりも表情が険しく……いや、普段のハベルを見ていたら、まるでこの世の終わりの様な顔をしている、と表現できる程、暗く沈んでいた。

 

 

ハベルとマリーが兄妹である事は、カズキは元から知っていたので、中々難しい弁解ではあるが、ハベルは勿論、マリーも兄の様子に心を痛めたのだろう、感激していた時の顔とは180度変わって沈みかえっていた。

 

少々慌てていた(つもりだった)カズキは 対照的に 極めて陽気に、笑顔で話をするように努力する。

 

 

「ハベルさんとマリーさんは似てると思いましたから。加えて、慈愛の籠った目は、屋敷の侍女に向けられるモノにしては、少々大きいかな? とも思いました。それに今日、この瞬間の2人の様子を見て確信しました。カマかけたつもりは無かったんですが、結果としてみれば、カマかけになっちゃってますね」

「っ…………」

「か、カズキさま…… ハベルさま……っ」

 

 

マリーやハベルからしたら、カズキの事を騙していた様なモノだと思ったのだろう。

ハベルは顔を俯かせる。マリーも心配そうに交互を見合わせていた。

 

 

 

―――神の前で、不敬を働いた。

 

 

 

 

例え、カズキが心優しき神であったとしても……その事実は耐え難い。

自分自身の口から話をするつもりだったのに、ハベル自身の性格もあってか、先伸ばしにし過ぎてしまったのだ。

 

あわよくば、マリーがカズキの従者となったのだから、もっともっと接して、情を抱く程になってくれれば、自由にしてあげれる。……そんな打算が無かったか? と問われれば決してないとは言えない。

 

アイザック程ではないが、ハベルはカズキの事を尊敬し、目立ちはしないが崇拝もしている。

 

当初は冷めた目で見ていたハベルだったが、いざカズキを前に、この事実が露呈してしまった結果を見たら……神を利用すると判断したナルソンに、向かって異を唱えた時のアイザックの気持ちが解った気がした。

 

 

 

こうなったなら、あの時のアイザックの様に。……初めてカズラやカズキと出会い、不敬を働いたから、と首を差し出そうとしたアイザックの様に……、と悲痛な面持ちでハベルが意を決しようとしたその時だ。

 

 

「あっはっは。私の前で隠し事はできなーーい、って感じですね?? あ、マリーちゃん。バレッタさんの所に行ってもらえないかな? ちょっと聞きたい事がある、って言ってたんだ」

「え? ええ??」

「その~。アレだよ。マリーちゃんが今までカズラさんの料理を担当していたから。そのことをバレッタさんに話したら、――――料理の事色々聞きたい、との事だって。だから、頼めない……かな?」

 

 

カズキはウインクしてマリーにそう言うと。

 

 

「わ、わかりました!!」

 

 

マリーは勢いよく頭を下げた。

 

 

「今は村の入り口、ほら、あそこ南口の方に居るらしいから、宜しくね」

「はいっ!」

 

 

マリーは返事をすると、パタパタと世話しなく駆け出す。

走る必要はないのだが……カズキは止めようとはせず、カズキを横切る寸前の所で、そっとマリーに聞こえるだけの声量でカズキは呟いた。

 

 

 

「大丈夫だから。……安心して」

「っ……!」

 

 

ぴたっ、とマリーは一瞬足を止めて、カズキの顔を見る。

ニコリと笑うその顔を見て……、頭を撫でてくれて、とても安心出来たあの時と同じ気持ちになれた。

 

 

「じゃあ、ハベルさん。ちゃんと話、聞きますから」

「………は、はい」

 

 

マリーを放した、即ち人払いをした結果になったが、マリーの中にあった胸を締め付けられる様な心配は、解消されていたのである。

 

 

 

 

 

 

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