「さて、ハベルさん」
「………はッ。私の処罰はカズキ様にお任せ致します。理由はどうあれ、カズキ様を……メルエム様欺いていたのですから。……どう、罰して頂いてもかまいません。……ただ、妹だけは どうか、どうか。………私の首1つで御許しを……」
マリーと別れて、兵士たちからも離れた場所、川辺の所までカズキとハベルが歩いてきていて………、誰も居ないのを確認した所でカズキが振り返ってハベルと話をしようとした時だ。
ハベルは跪き、首を垂れ、剣を抜き……… つまり、首を差し出そうとしている。
結構久しぶりの光景ではあるが(見たいとは決して思わない)、かなりのデジャヴュを覚えるのは仕方が無い事である。
何せ、ハベルで3人目だから。
でもまさかハベルからこの様な発言を貰うとは思っても無く、完全に油断していたカズキ。生真面目過ぎるアイザックを反面教師にしつつ―――己が目的の為に色々と手を尽くしている参謀……の様なキャラだと思っていたからだ。
だから一瞬呆気に取られていたカズキだが………、勿論直ぐに正気を取り戻してハベルの両肩を思いっきり揺する。
アイザックの様に、自決行為こそはしないと思うが……万が一に備えてしっかりと抑える為にも。
「だぁぁぁ―――! ハベルさんまでアイザックさん化しないでください!! そんなの受け取って喜ぶ私じゃない事くらい、ハベルさん解ってるでしょ!!?」
がっくんがっくん、とハベルの頭を揺らす。
流石に知的クールなハベルは、揺らされる事で、ベタな【あばばばば】や【やめめめめてててて】の様な悲鳴を上げる事なく、ただ揺らされながらもしっかりとカズキの目を見ようとしていた。
暫くして 揺さぶり攻撃? が収まったのを見計らいハベルが口を開いた。
「しかし……、私はカズキ様や………カズラ様にも、そのお優しい寛大なお心に付け込み、色々と手を回すような真似を……」
「家族を助ける為なんです! その位当然だと思いますよ!? マリーちゃんは、ハベルさんにとってそれほどまでに大切な存在だった。
視線が落ちてるハベルにカズキは言葉で前を向かせようとする。
確かに、裏で自分の思惑通りに事を運ぶ様に手を回す事。
それをされた側は、例え実害が無かったとしても 良い気はしないだろう。この王族貴族な世界においては 特にその手のモノには敏感に反応しそうな為政者が居そうだ、と言うのが率直な感想。
だが、カズキはそれ以上に知っているのだ。
マリーの働き、ハベルの働き。
マリー自身の性格を考えたら、自分よりも兄を……と思っている節が必ずある。
ひょっとしたら、この一連の流れに関しても、利用していると思ってしまい、心を痛めてるかもしれない。
先ほどのハベルとのやり取りを見ていたら、それが良く解る。
カズキが歌をうたい、それを聞いていた時は笑顔だった。緊張している面持ちが完全に消えさり、自然な笑顔を出す事が出来ていた。
だが、カズキの一言で空気が変わり、その表情が完全に消え、真っ青になっていたのだから。
―――それに関しては、実はカズキの方が申し訳ない気持ちになっちゃったりしているのは、別の話。
だが、まさかハベルがここまでアイザック化してしまうとは、カズキにとって想定外……なのだが、それ程までに、
そもそも、
「っよし、なら こうしましょうか」
「………?」
「腹割って話ましょう! それっぽく匂わせるつもりでしたが、ハベルさんとは今後も良いお付き合いをしていきたいので。私が考えてる事を、ズバリ! いっていきます」
ハベルは、一瞬身震いするが それでも今は しっかりとカズキの方を見ていた。
色々自身の責任は感じているものの、カズキの口から【良いお付き合い】と言う言葉を貰えたと言うのが甚だ大きいと言える。
そして、カズキの次の言葉で 自身のが如何に甘い考えだったのかを痛感させられる事になるのである。
「ハベルさんは、マリーちゃんをどうにか ナルソンさんの所へと。延いては、私若しくはカズラさんの傍に、と画策してました。ですね?」
「……はい」
「マリーちゃんとハベルさんはルーソン家の兄妹。でも、マリーちゃんの扱いは侍女。……恐らくは奴隷の身分となってる様です。……つまり、
「っ…………」
天より見透かされている様な感覚になるのは仕方のない事。
カズキの考え――――と言っているが、全て当たっているのだ。あまりに的中し過ぎていて、神の前でたかが人間が欺いたり、裏で手を…… なんて、実に無意味である事を思い知らされた瞬間だった。
「―――沈黙は肯定と取ります。……そして、此処からが本筋。ハベルさん。貴方の望みは、【マリーを奴隷の身分から解放する事】………違いますか?」
「は、い……。その、通りです」
ハベルはガクッ、と肩を落としつつも訥々と話を続けた。
カズキの言う事は全て当たっているという事。
腹違いは腹違いでも、母親が奴隷だった事。そして、その子供であるマリーは奴隷から生まれた子供故に、生まれた瞬間から奴隷身分。所有権もハベルの父親 ノールにあると言う事。
血筋を何よりも重んじる、アロンドと言う名のハベルの兄が、心底毛嫌いをしており、毎日毎日終わりのない辛く苦しい日常を過ごしていた事。
軍部で昇格し、ルーソン家に益を齎す様になれば、ハベルは マリーの所有権を父ノールから譲り受ける事。多額の奴隷解放金を添えて。
そこからは、マリーの為に粉骨砕身…… 働き続けた事。
以前、カズキやカズラを自身の家に招き入れたのも、口八丁に言い包めて 誘導したと言う事。
裏で手を回そうとした事を挙げだしたら本当にキリが無い。
ハベルは、あの時の…… 自身とマリーが兄妹である事が知られていたあの時のマリーの様に身体を震わせていた。
「……ハベルさん。1つ言っておきますよ」
「――――……はっ」
カズキは、深く、深く深呼吸をした後……今の今まで真顔でシリアスな雰囲気を存分に作り上げていたのにも関わらず、その空気が弛緩する様に、させる様に表情を緩め、声色も緩めて、告げた。
「私は、マリーちゃんを解放する事に対して、大賛成です。寧ろ私から告げても良い」
「―――――………え?」
何を言っているのか、理解出来なかった。
本当に理解出来なかった。
だが、先ほどのカズキの話を聴いて、聞いて……頭の中へ入れて。何度も何度もリピートさせて、漸く理解が追いついた。
追い求めて、追い求めて……、長く苦しい時間だった。
軍内部で昇格し、益を齎す為に働き続けた。
鬼のようなジルコニアとの訓練も最後の1人になろうと、気絶するまでたち続けた。全ては見初められる為に。……全ては、マリーの解放の為に。
「ほ、本当でしょうか……!?」
ハベルの目が涙で潤んでいる様に見える。
そんなハベルにカズキは微笑み返すと続けた。
「もちろん、条件はありますよ? ……条件、とはやや大袈裟な表現になりますが。私としては、身内になるべく不和を生みたくない、と思ってるんです。……だからこそ、ハベルさんの力をお借りしたい」
「は、はっ! 何なりと!!」
「マリーちゃんを解放するのは、正直全く難しい事ではない筈です。私が一声かければそれだけで解放されると思います………が、あまりに時期尚早だと思います。結果……ハベルさんの父。つまり ノールさんとの不和が貴方たちの間に生まれる事は良しとしたくないんです」
カズキは、ハベルの生い立ちや家柄、内部事情について。
朧気ではあるが、覚えがある。
後々に―――ルーソン家は問題行動を起こす。
それをカズキが追及した所で、確信はないし、100%とは言えないし、行動する事によって不信感が顕わになるだけの可能性だって0ではない。
カズキ自身の
少なくとも、結果ブレーキとなれば、結果カズキが知っている未来とは違う形になる。それが一番だ。
「……身を粉にして、粉骨砕身の精神を持って働かせて頂きます。私に出来る事なら何なりと、お申し付けください」
ハベルは、カズキの言葉にやや意気消沈を禁じえなかったが、なるべく表情には出さない様に務める。
如何なる行動も思考も、カズキの意に沿わない形にしない事を第一に掲げているから。
それは、カズキにとって非常に好ましくない事なのだが……、今はそれで良い。
カズキは、笑顔で告げた。
「難しく言い繕いましたが、つまり 表向きはマリーちゃんの身分は変わらず現状のまま。………でも 実質は解放されているも同然。と言う形が良いかと思いまして。あ、勿論 マリーちゃんの意思も尊重したいとは思ってますよ。今の職場が好ましくない、と言うなら、それはそれでまた考えますから」
「っっ……!?」
ハベルは、目を見開いた。
つまり―――もうそれはマリーは解放されたも同然だと言う事だから。
カズキの庇護の元であれば、父のノールも決して手は出せないだろう。
現状でもナルソン家に貸し出し状態になっているとはいえ、領主であるナルソンの意に反する事は出来ないので、実質手は出せない状況に加えて、更に神の庇護……と言うのは……。
だが、ここで1つ疑問が浮かんだ。
ハベルは、自分自身はどうすれば良いのだろうか? と言う点だ。
力を借りたいと言う話だが―――どんな事でもする所存ではあるモノの、その内容の輪郭すら思い浮かばなかったが……。
その疑問も解消された。
目の前の心優しき神の神託により。
「ハベルさんに力を借りたい、と言ったのは、厳密に言えば【今のまま頑張ってほしい】、って意味ですね。あ、勿論 今まで以上に頑張って貰っても嬉しいですよ! ……少なくともノールさんが、ハベルさんに
つまり、これまで通りで構わない、と言う事なのだ。
それで、何年も何年もかかると思っていたマリーの解放が、念願が叶うのだ。
涙が零れそうになるのを懸命に堪え、ハベルは土下座をした。地に頭を擦り付けて、嗚咽を漏らす様に礼の言葉を続ける。
「あ、頭を上げて下さい!」
「ありがとう、ありがとうございます、ありがとう、ございます………」
「私は、頑張ってる人の味方ですから! ね? ね? ハベルさん?? とりあえず頭を上げましょ! ほ、ほら、誰かに見られちゃったら厄介ですから!」
土下座をされるのは、目の前で首を差し出されるのに比べたら遥かにマシだとは言え……、それでも見ていられなくなるので、カズキは何度も何度もハベルに声を掛けてどうにか起きて貰うのだった。
―――だが、その後も。
ハベルがマリー共々 カズキの元へと馳せ参じ、再び兄妹揃っての涙ながらの土下座大会&カズキのストップ土下座の繰り返しになるのだった。
その後も暫くグリセア村で滞在。
カズキは、カズラとバレッタに配慮して、ロズルー家にて泊めて貰える事になっていた。
バリンがこの村の村長であり、村の中では一番の家だと言う事で、バリンを始め、ロズルーにも かなり焦られたが……、そこは しれっとカズキが バレッタとカズラの名を出して、大人同士結託。2人を温かく見守る会が出来上がった。
ロズルーは、バレッタとカズラの件はさておき、カズキが泊まる事が決定するや否や、ロズルーの妻、ターナと共に恐縮しっぱなし。
カズキが幾ら大丈夫だと言った所で、なかなか変わるものではなく、ひっきりなしに何度も何度も掃除を実行し、部屋の隅々まで綺麗にしていた。
その間、カズキは ミュラと遊んでいたのは別の話。
「えへへ~。ただいま~ あなたー!」
「おかえり! 大丈夫だったかい?」
「うんっ!」
ただいま絶賛おままごと中。
カズキが旦那役、ミュラが妻役。
日本では、男女平等が訴えられてきて、垣根はあるモノの、女性が社会進出をしつつある世界……ではあるが、この世界では 基本的に母親が家を守り、父親が働きに出るのが主流。
グリセア村の様に、畑仕事や狩猟等が仕事の場合はその限りではなく、女性でも戦場に兵士として駆り立てられるので、一概には当てはまらないが、現在 カズキは所謂主夫な旦那役なのである。
おままごとも進行していき、軈て ターナが作ってくれた夕食の匂いが鼻腔を刺激しだした頃、終焉を迎え――― 一家仲良く夕食タイム。
「わたしっ、しょうらい、カズキ様のお嫁さんになるっっ!」
その席で、ミュラが高らかに嫁入り宣言を果たした。
おままごとの影響もあってか、今日のミュラはカズキにベッタリ、である。
「こ、これこれ。ミュラ」
ロズルーが恐れ多い、と言わんばかりにミュラを牽制するが、カズキはただただ笑っていて手で制するので、あまり表立っては止めに入ってはいない。
ターナの方は最初こそ、ロズルーの様に 気が気じゃない様子だったが、流石 母は強し、順応してくれて、自然に笑っていた。
「えー、でもなぁ~。コルツ君に恨まれちゃうかもしれないしなぁ~?」
「え? コルツが? うー、でもわたし―――カズキ様が……」
「あっははは。ミュラちゃんは、まだまだ明るい未来が先に待ってるんだよ? 後々にもっともっと凄い男の人がミュラちゃんの前に現れるかもしれない。将来設計はまだ早すぎるよ。……この国も、グリセア村も、きっと大丈夫だから」
それとなく、ミュラの求婚を交わすカズキ。
それを見ていたロズルーは、落ち着きを取り戻した様に一息し。
「はっはっは。それにミュラ? カズキ様を見初めて貰おうモノなら大変だぞ? 何せ、リーゼ様と言うお方がいらっしゃるワケだからな」
「! リーゼさまがっ!?」
因みに、リーゼはこのグリセア村に来た時に 一通りの村人とは面識を持っている。
彼女の社交性の高さ、身分関係なく、分け隔てなく接する姿勢、そしてその美しい容姿。全てを兼ね備えていると言っても過言ではなく、つまり―――あっという間に、本当の意味で村で大人気な存在になったのである。
ミュラは、国が落ち着いたら、平和になったらリーゼと遊ぶ約束を、村の子供たちと結託して行っている。
つまり、それだけリーゼの事が好きになっているのである。
「うーん、うーーん…… リーゼさまとカズキさまなら………」
「おいおい、なんか、すっごく上からの目線で語ってないか?」
「あははは………」
ロズルーやミュラの方を見ながらカズキも苦笑い。
そんな時、ターナからそっと耳打ちを。
「リーゼ様とは、どうなのでしょう? カズキ様」
母と言えど女。それなりに色恋沙汰には興味津々なご様子。
カズキはそれを聞いて、特に慌てる事もなく苦笑い。
「あははは……。良くして頂いてる~のと 時折 早朝の剣の訓練に付き合う~くらいですかね? 実際リーゼさんには、イステリアでは、スゴクお世話になってます」
「まぁっ!」
ターナは、手をぽんっ、と合わせてはち切れんばかりの笑顔。
カズキが
神話の一ページ目とも言って良い。
そんなターナの喜び様を目の当たりにしたカズキは、流石に苦笑いを止めて、やんわり制止。
「ま、まぁ リーゼさんも色々と多忙ですからね?
リーゼの年齢は14、15だった筈だ。
つまり、この村のバレッタと同年代。
カズキは、厳密には不明かもしれないが、現在24歳。10程度の歳の差は、何処にでも存在すると思うが………、流石に日本で言えば中学生な彼女だから。
ターナはそれを聞いて、一瞬きょとんとした後、視線をカズキが伸ばした手に、裾から見えている手首に着けられた
ターナは、気付いていた。
ロズルーやミュラは見落としていた様だが、時折 ちらちらと見えるその手首に着けられているモノを。
「ふふふ。リーゼ様は待っているかもしれませんよ? ……
「え?」
「つかぬ事をお聞きしますが、そのブレスレットはリーゼ様からの贈り物では?」
「あ、はい。グリセア村に帰ってくる時に……」
ブレスレットの話をしたら、またまた大騒ぎ。
親愛のブレスレットであると言う事をターナが説明。カズキは知らなくても不思議ではないから、改めて説明して、お祭り騒ぎになった。
【あなたに好意を持っています】
の意が込められたブレスレットを渡されたのだ。……間違いなくリーゼはカズキを待っている、と言っても良いだろう。
その後、ミュラが眠ってしまうまで、ドンチャン賑やかなまま―――グリセア村の夜が過ぎていくのだった。
そしてロズルー達が眠ったのを見計らうと、カズキはゆっくりと起き上がる。
グリセア村の皆は、日本食の影響で 常人では考えられない程の力をつけている神兵。
特に夜に野盗に襲われてからと言うモノ、疲れて寝てしまっていても、頭の一部は起きていると言う離れ業をやってのけている。
それが証拠に、トイレに目を覚ましたカズキの抜き足にも余裕で気付いていたりしていた。
なので、今回は絶対にバレない様に……、起こさない様に……、余計な心労をかけない様に、薄ら月明りが照らしている光に紛れながら……カズキは外へと出た。
「……参ったなぁ……」
月明りの下、カズキは1人愚痴る。
キラキラと輝いている身体は完全に月が照らす光と同化しており、グリセア村の住人の常人離れな視力をもってしても、見分ける事は出来ないだろう。
「(やっぱ、
カズキは苦笑いをする。
ここで一応説明しておくが、カズキがリーゼを嫌っていたりはしていない。
彼女の本性がもしも、知った通りだったとしても、それは同じ。日頃の働きは十分過ぎる程観ているし、合間合間の極々少ない時間を活用して、領主の娘としての嗜み、今後軍を率いる立場であろうそれらの学も只管学んでいる直向きな姿を見ている。
忘れそうになるが、彼女はまだまだ10代。
様々な負担が、その小さな身体に重圧としてのしかかっている状態なのだから、愚痴りたくなる時は盛大に愚痴って良いし、ストレス解消できるのなら、周りに迷惑がほぼ掛かってないところを見ても、十分推奨する気持ちだ。
―――が、自身に好意を持たれる事に関しては話は別。
過去のトラウマ―――云々は最早言い訳。
ちゃんとした理由があるのだ。
「……ノワ?」
「はい」
そんなこんなで、チラッ、と背後を確認してみると……ノワールがやってきていた。
外に出て、森の方まで来たら大体ノワールは一目散に駆けつけてくるので、最早驚いたりはしない。
「求婚を申し込まれた様ですね? とても可愛らしい子から」
「……はは。凄いな。聞こえてたの?」
「はい。……ふふ。それに 凄く大きな声でしたからね。……後ブレスレットのお話も聞いてます。…………何だかちょっぴり妬けちゃってたりもしてます」
ノワールは、カズキの姿が光状態であっても、嗅ぎ付けるだけの力を身に着けていたりしている。何度も何度もカズキに接してきて、見てきて、それで積み上げてきた力である。
元が1000年も生きている獣―――精霊の様な存在だから,夜目が効いたり、聴力もずば抜けてたり、は別段不思議ではない事ではある、が。少々こっぱずかしいのも仕方ない。
「カズキ様、何かお悩みでしょうか? 私で良ければ…… 何でもお話ください。言ってしまって楽になる事だってあると思いますから」
「ん………バレちゃってるかぁ……」
「あ、勿論 無理にとは言いませんよ」
最近のブームになっていたのか、何処となくカズキをからかったりする様なちょっとした悪戯や意地悪をするような仕草は身を潜め、ただただ、カズキの傍に寄り添っている。
純粋に、カズキを思っての事だ。
「―――オレとカズラさんでは その……ある意味では同じなんだけど、
その夜……カズキはノワールに想いの内を全て話した。
ノワール自身も、気が付いてなかったカズキの葛藤。
気付けなかった自分自身が情けなく、許せなくもなったが、そういった仕草や表情だけは、決して見せない様に――――ただただ、カズキの傍にいる。
こうやって会える間。カズキの負担にならないのなら。傍に居る。
それで気が少しでも晴れて、紛れてくれたならこれ以上ない幸せだ。
そして、その後……カズキは笑顔のまま ノワールと別れる。
その背を見ながら、その光を見ながら―――いつか、本当の意味で心が晴れる様になる事をノワールは願うのだった。