ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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35話 娘の恋路を邪魔? するのは……

遡る事数分前――――。

 

 

 

 

場所は資料室。

 

 

重要な書類は、ナルソンの執務室に主に保管されているが、それ以外の全てはこの資料室に保管されているとの事。

 

兎に角広いし、兎に角 多い。ちょっとした図書館だ。カズキの世代では主に電子書籍、デジタル化が主流になっているが、歴史博物館や、昔ながらの図書館など、紙が主流な所も当然あり、足を運んだ事があるが………、公共施設と比べて全く引けを取らないのが驚きモノ。

 

全ての棚には綺麗に収められており、しっかりと管理されているのがよく解る。

だが、リーゼもこれだけの量の資料だから、何が何処に有るか詳しく把握は出来てないらしい。――――当然の事だ。覚えきれる者が居たとすれば、文句なしの天才だと言える。

 

 

重要なモノが保管されている事も有り、ある程度厳重に管理している部屋だからか、窓が無く日の光も入らない。蝋燭の灯り、燭台を頼りに進み 奥の机で資料を広げて確認をしていた。

 

 

最初はリーゼ・カズラ・カズキの3名で水車の設計図を確認していた。

 

それは、カズラが日本から持ち込んだ日本製ものではなく、ここイステリアの職人たちが手直しして拵えた設計図。

車輪や水を汲み上げる木箱の強度を上げて、破損しにくく、更に効率よくをコンセプトとして、手直ししてくれたは良いが、生憎未知の道具である事は間違いないので、善し悪しの判断が難しかったとの事。

 

 

 

結果はカズラのお墨付き。

 

試作品を作り、順調にいけたなら量産化、と先々まで見据えて太鼓判を貰えた。

当然リーゼの顔には安堵の表情が浮かんでいる。

職人たちの頑張りや家族の皆の頑張り……、そしてイステール領で暮らす全ての人達、皆が報われた、と思えたから。

 

 

リーゼは深く頭を下げて、家族を、このイステール領で暮らす者代表として、感謝の意をカズラとカズキに伝えた。

 

 

この領土内の状況は年々悪くなる一方。

加えて敵国バルベールの不穏な動き。砦の建設。果てには天に見放されたかの様な大飢饉。

 

泣き言は一切言わないナルソンもジルコニアも……限界に近かったかもしれない。

だが、2人が来て、未来に希望が持てる様になった、と。

 

 

これからも一緒に手伝いをさせて欲しい、と懇願された。

 

 

勿論、カズラもカズキも笑顔で了承。

リーゼの様な美しい女性にここまで懇願されて、断れる男が居るだろうか? いいや、いない! と断言できる、とカズラは思い、そしてカズキも同じだった。

 

それにカズキは 早朝、時には夜。

 

剣の鍛錬をリーゼと共に行っており、色々知ってはいても(・・・・・・・・・) 情と言うモノは当然ながら出てくる。

 

特に訓練に限っては例え裏で何を考えて様が、その一撃一撃に乗せる想いに一遍の曇り無しだ。

何事も全力で取り組んでいるという事がよく解ると言うモノだ。……だから、休日の気が休まる時間くらいは……、ああ(・・)なったとしても仕方ないだろう、とカズキは改めて考えなおしていたその時だった。

 

 

資料室を出て―――と言う所でリーゼに呼び止められたのは。

 

 

「カズキ様。その、訓練の件なのですが、少し宜しいでしょうか?」

「! はい、大丈夫ですよ」

 

少々驚いた。

木剣での訓練の事を思い返していた矢先のリーゼのこの言葉だったから。

 

カズラは、武術面においては完全素人な上に、軍事関係ならまだしも、個々の力に重きを置く剣術指導となると正直付いて行き難く……更に空気の読める男である事も意識し出してるので。

 

 

【ここは、カズキとリーゼを2人きりにさせなければ!】

 

 

と思ったとか思わなかったとか。

大切な領主の娘に何を!? と思う自分も何処かで居たが、リーゼの両親であるジルコニアやナルソン、特にジルコニアは許容しそうな気がする、と言うのがカズラの意見だったりする。

 

 

直接聞いた訳ではないが……、時折 そう言った類の事に関して 推しが強い傾向がみられるから。

 

 

付け加えて、カズキがカズラとバレッタを妙にくっつけようとしてきてる事に対するお返し、と言うカズラの悪戯心も有ったりしている。

 

 

色々と重なった結果―――――リーゼとカズキの2人きり(前話のラスト)シーンに繋がるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はカズキ様の技量に、そして優しさに、心から尊敬し、敬愛しております………」

「は、はい! それはその……身に余る程光栄で……」

「そうご謙遜なさらずに。……その、先ほど カズラ様にも申し上げましたが……、どうか私にもお手伝いをさせて下さい」

「勿論ですよ。リーゼさんはとても頼りにしてます! その辺りはカズラさんも同じで、すっごく助かってて……」

 

 

と言っていた間に、リーゼは間合いを一歩更に詰めた。

訓練の時でも、ここまで深くに切り込まれた事は無い。赤くに染まる頬。艶のある唇。室内だと言うのに靡く見事な茶髪(ブラウン)

仄かに花のような香りがするのは……、恐らくリーゼの香りなのだろう。変態、と思われるのは勘弁なので、嗅ぎつくような真似はしないが、極端に匂いを付ける香水のような代物が無いこの世界だから、よりリーゼ自身の香りが鼻腔の奥にまで駆け上がってきた。

 

まるで酔ってしまったかの様に、視界が歪む。

 

嘗てのトラウマでさえ、裸足で逃げ出しそうな程の魅力をリーゼに感じていた。

 

 

「これからも……、カズキ様の御傍(・・・・・・・)で………。私、私は…………っ」

 

 

その小さな手が、自身の胸に当たる。

衣服で隔てているのにも関わらず、その温もりを感じる。

 

女の子を象徴するリーゼの少々控えめな……ゲフンッ! サイズは兎も角として、柔らかく温かく心地良く、理性を崩壊させかねない威力を兼ね備えていたリーゼの(膨らみ)が、カズキを捕らえて離さない。

 

 

「あ、いえ、その……っ! えと……」 

 

 

 

カズキは 顔を真っ赤にさせて口が回らなくなっていた。

 

 

――――後ほんの1歩、後ほんの1歩。

 

 

その姿を見たリーゼの頭。

ただただ只管に、後1歩だと連呼していた。

リーゼとて、ここまで異性に迫るのは初めての事だ。……後に起こる輝かしい未来の為に、国の為に、……そして やはり自分の為にも、ここだけは退いてはいけない、と言う並々ならぬ決意と覚悟を併せ持っている。

 

だが、だと言っても………、初めてなのだ。話には聞いていた。経験のあるコに話を聞いた。心構えも聞いていた。……だが、百聞は一見ともいうべきか、何度聞いても1度目と言うのは やはりかなり恥ずかしい。

 

 

「(もう少し……)」

 

 

リーゼの腕にかかる力が上がってきていたその時だ。

 

 

ギィ………ッ、とこの外界から遮断されたかのような空間に、外からの来訪者を告げる音が響く。

それは、部屋の入口の扉が開く時の擦れた音である……と言う事は 瞬時に悟れた。

 

 

それを聞き咄嗟に2人同時に距離を取る。

 

 

「ん? カズラ殿が戻ってこられていたのですが、まだカズキ殿はリーゼとこちらにおられたのですか?」

 

最早誰にも止められない、と思われていたリーゼの進撃が止まった瞬間だった。

 

入り口から顔を覗かせたのはナルソン。

棚の間から部屋の奥に居るカズキ、そしてリーゼを見つけると意外そうな表情を見せていた。

 

何より、ここに来る前にカズラと接触していた。2人でリーゼの案内によって資料室へと行く、と言う話は聞いていたので、もうそれも終わり、仕事を開始――――と思っていたから。

 

 

「はい。カズラ様とカズキ様には、水車の設計図を見て貰って、太鼓判を頂けました。その、カズキ様には、早朝訓練の件について、少々議論を重ねてまして……」

 

 

リーゼはほんのつい先ほどまで、室内が薄暗いのにも関わらず、頬が紅潮していた様な気がしたのだが、それさえ 気合? で身体の奥へと引っ込め、切なげな表情を完全に消し去り、声がしたナルソンの方へと振り返る時は、もういつもの穏やかな表情そのものに戻っていて対応を交わしていた。

 

その姿を見れば、若い(カズキは不明だが)男女が密室で2人切り―――と言う誰もが思い浮かべそうな展開、誰もが想像しそうな事柄、逢引の類ではない、と言うのは直ぐに解ると言うモノ。

それ程の演技力を兼ね備えているのは、脱帽モノである。

 

如何に相手が相手とはいえ、ナルソンにとってリーゼはたった1人の娘だ。例え相手が神だったとしても 父親の前で異性と――――ともなると、少なからず表情に動揺の色が出そうなモノだが、リーゼの返答と表情もあってか、その可能性は瞬時に消し去ると。

 

 

「何もそんな薄暗い所でやり取りをしなくとも、すぐそこにある談話室でも使えばいいじゃないか」

「いえ。ほんの少しの内容でしたので。細かな擦り合わせは、実際に訓練場で指導して頂ける事でしたので。……お父様は、何の資料をお探しに?」

「うむ。徴兵関連の資料を取りにな。領民の資産をもう一度洗い直して、徴兵時の装備と編成の区分を分けなおさなければならん。最近は様々な事が上昇傾向にあるとはいえ、忙しくて、途中まで手を付けて残りは放置していた状態だったからな」

 

 

そのナルソンの話に、次に喰いつくのはリーゼではなくカズキ。

 

 

「ナルソンさん。その仕事の内容を少し見せて貰える事は出来ますか?」

「よろしいのですか?」

「はい。ジルコニアさんとは約束をしています。カズラさんにも了承済みの事ですし、今後カズラさんの知識や道具をお借りする事は多いでしょう。……ですが、私自身が最初に約束をした事柄なので。今の内に頭に入れれるだけ入れておこうかと」

 

 

軍事関係に関して、一番声を上げていたのは、カズキの方だ。

カズラは当初は 農業関係、自給率の向上、財政状況の改善などを主として対応していくつもりだったが、早朝訓練、更には夜の訓練まで一緒に行うカズキはまた別。

 

そして、カズラ自身も軍事関係に手を貸す事に今は抵抗はない。

 

色々な可能性を危惧して、軍事面はオーバーテクノロジーでもある日本製の道具一式は準備するのは止しておこうと思っていたのだが、そこはカズキに後押しされた形でもある。

 

敵国家であり、国力に大きく差を付けられ、必ず戦争が起こる事まで危惧されている現状。

戦力、と言うよりは 主に防衛力の方向性で力を貸せたなら、と言う考えだ。

 

平和な現代日本において、戦争と言う言葉は馴染みが無いから、浮世絵した話に聞こえるかもしれないが、本当に失う時はあっという間である、と言う事もカズキ自身から聞いている。

 

ゲームの世界とはいえ、限りなく現実に近付いた仮想の世界、数多の世界を旅してきた男の話だ。

失ってから後悔しない様に、と何処かで考える様にしていた。

 

 

「解りました。それでは早速執務室に参りましょう。リーゼ、書類を運ぶのを手伝ってくれ」

「あ、私も手伝います!」

「はい。お任せください。(………もう少しだったのに!!)」

 

 

最高のタイミングだった。

カズラとカズキの2人で、カズキに狙いを絞ったリーゼ。

元々、カズラには女性の影がちらほらと見えており、時折カズキ自身が それを匂わせる発言も幾つかしていたので、確信に変わっていたのだが、カズキは対照的に、女性の影は一切ない。

 

更には、付き合ってくれた早朝訓練での神業とも言って良い剣術を体感し、これ以上ない程の充実した訓練を受け続ける事が出来ている所にもある。

 

――――ただ、落とす! せめてせめてメロメロにして、惚れ込ませる!

 

と、意気込んでいたリーゼだったが、その姿には一定以上の好感度は持っている。凄まじい動きは、訓練をして、まだ未熟ではるものの、一剣士として 見惚れてしまうのは当然だと言える。

 

 

そして、更に更に、隣国の有力者。ジルコニアからも絶大な信頼を得ているのも見て解る上に、想像を絶する程の金持ち。カズラとカズキの共通点。性格は穏やかで優しい、周りに気遣いが出来る、分け隔てなく接する事が出来る上に働き者。

 

正直、違う意味でバケモノの様に見えなくもない。

 

力があり、金もあり、権力も、在れば 何処か醜い部分が1つ2つでも見えてきそうなモノなのだが、2人にはその影も片鱗さえも見えない。

長年人を見る目を長けさせてきたリーゼ自身の目をもってしても見る事が出来ない。100%とは言えないかもだが、それでも十分過ぎる程だ。

 

 

だから、今回攻めに攻めてみた。

大貴族でもあるイステール領主の娘である自分と一度関係を持ってしまえば、いくら隣国クレイラッツの有力者とはいえ、責任は取らざるを得なくなるだろう。……元々の性格を考えれば、責任を取らず逃げ出す様な男ではない、と言う事も承知済み。

 

このまま、めでたくイステール家の婿養子、結婚一直線。

 

カズラが選ばれなかった、と気分を害する可能性も少しは考えているが、後々そちら方面も全力でバックアップしていくつもりだった。

 

その大きな一歩、自分にとっても国にとっても、重要な第一歩をよりにもよって自分の父親に邪魔されるとは夢にも思わなかっただろう。

 

 

「?? どうかしたのか? リーゼ」

 

 

心の表情は兎も角、実際の現実の表情は変わっていないが、言葉数が明らかに少なくなったのを気にしたナルソンは首を傾げたが、リーゼは笑顔をつくって。

 

 

「いえ、なんでもありません」

 

 

全く読ませないその表情に、多少の身震いを覚えるのは 頭が冷えてきたカズキの方だった。

リーゼが考えている事………、自分が もう朧気で霞んでさえいるが、僅かな情報を手繰り寄せ、形にしたリーゼの人物像、そして この世界観から 推理すれば……容易に行きつく。

確かに下心はあるだろう。と言うより、リーゼ自身に下心で近付く輩の方が圧倒的に多いのだから、彼女自身がそう(・・)なったとしても、罰は当たらない。……それを圧倒すると言って良い程、大変な仕事量を熟しているのだから。

 

 

カズキはナルソンとリーゼと一緒に執務室へと向かっていたが、ゆっくりと歩く速度を緩め、後ろからついてきているリーゼと並ぶ形になった。

 

リーゼ自身は、ナルソンに邪魔された事もそうだが、今後の計画を考えていて、少し油断していた様で、解らない様だった。

 

でも、ふとした時カズキが直ぐ横に来ているのが解って、目が合う。

 

 

「!」

 

 

パチンっ、と片目を瞑るカズキ。軽く照れくさそうな表情こそ残っているが、ニコっと笑顔を見せるカズキに……リーゼはドキッ! と心臓を高く跳ね上がらせた。

 

 

いつも、自身が受けるのは、思わせぶりを少しでもした相手だったなら、更に一歩、また一歩深く踏み込み、少しでも深い仲になろうと取り入ろうとする表情だったのだが、カズキのソレ(・・)は、今まで感じてきた男達、誰とも違った。

 

心の内を見られたような感覚がしつつ、まるで【ゆっくりで良いから落ち着いて】とあやされている様な感覚もしていた。

 

 

様々な事で培ってきた演技力(猫かぶり)には絶対の自信があったリーゼだが、剣術と同じく 何処か底知れない姿を見た気がしたのだった。

だが、カズキの照れた顔はしっかりと見れたので よりリーゼを前向きに、より攻勢に出させる結果にも繋がったのである。

 

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