ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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37話 井戸掘り

 

 

 

「……絶対、エイラ何かあったでしょ? あからさまに変だし」

「そそ、そんな事無いですよ!! ほんとです! 何にもないですっ!!」

 

 

事ある事に問い詰められるのはエイラ。

相手はリーゼである。

 

 

あのトンデモお茶会の時……エイラは生まれて初めて立ったまま気絶、それも外傷一切なく、驚きの光景、視覚だけで気絶と言う極めてレアな体験をしてしまった。

このご時世、凄惨な光景、悲劇など何時起こっても不思議じゃ無く、戦争が始まるやもしれない、と言う事も相まって、相応に心根は持ち合わせていたつもりだったが……、1発昏倒である。

 

だが、それも仕方ないのだ。

 

 

あの超常的な存在を目の当たりにしたら――――。

 

 

 

だが、だからと言って日々の御勤めを疎かにしたり、休んだりして良いワケが無い。

不甲斐ない自分にフォローをしてくれた2人の神々に報いる為にも……、と頑張って見たのだが、長い付き合い、幼少期より付き合いの長いリーゼには見破られてしまった様だ。

 

 

「そう? ……まさかとは思うけど、変な事したり、されたりしてないわよね? その、カズラ様やカズキ様に」

「そんな滅相も有りません! ……それだけは断じてない、とだけお伝えしておきます」

「そ、そう? なら良いけど」

 

 

畏れ多い! とエイラは鬼気迫るかの如く、否定した。

リーゼもこの時ばかりの剣幕は、気圧されてしまう程だから、信じて良いだろう、と思う。

 

そもそも、カズラとカズキ。似た名を持つあの2人に限って、それは無いだろう事は端から解っていた。エイラを揶揄っていた割合の方が大きいのだ。

 

ただ、エイラの事を気に掛けたのも本当の事だから、リーゼは今後もよく見ている事にするのだった。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……取り合えず、早朝訓練はお疲れ様。カズキさん」

「いえ……。こちらもリーゼさんの反応から察するに、エイラさんは何も言ってないみたいでしたね……。なんか、こう―――普段の倍は疲れました」

 

 

朝の訓練、リーゼとの剣の訓練を終えて、カズキはカズラとまず合流した。

昨日の一件が、まだまだ尾を引いている様子であり、少々安易すぎたとやや後悔もしている。

 

 

「てっきり、エイラさんはオレの事まで聴いてる、って思ったんですが……」

「多分、ジルコニアさん達は、カズキさんの場合、論より証拠。余計な事は言わず、来たるべき時に自身の目で見て判断~~と言った感じだったんだろうね……」

「ぅぅ……自分が浅はかでした……」

「あっ、いやいや、別にカズキさんを責めてる訳じゃないよ!? オレもジルコニアさんから、祝福の力まで聴いてるのなら、カズキさんの力だって聴いてるだろう、って思ってたし! それに、カズキさんが気に病む事無いと思う。神様なんだから、もっと堂々としてても良いって」

 

 

エイラに光を披露し、気絶させてしまった件。

当然慌てたのは言うまでも無く、余計な事まで披露してしまった感が拭えない。

 

 

 

「そう、ですね。終わった事でもありますし、ウジウジ考えてても仕方ない。……と言うより、そんな事してる神様(メルエム)って、もの凄くシュールな気もします」

「あはは……。まぁ、オレも神様(グレイシオール)に見えない、って思われてても不思議じゃないよね」

 

 

神様らしくない神様たち。

どちらかと言えば、どうにも人間臭いと思われても不思議じゃない、と言うのが率直な感想である。

 

 

「またタイミングを見て、祝福の力についてはジルコニアさんに聞いてみますね」

「あ、それはオレも思ってた。今日1日は井戸掘りで大変だから、終わってゆっくりした時にでも……」

 

 

話をしている2人を見て、客観的に見て、……どうみても人間のそれだろう。

そんな2人を、神様足らしめているのは、どう考えてもカズラの数々の道具(アイテム)とカズキの超常的(ピカピカ)な力。

 

 

それぞれの力や道具に見合うだけの人格者になろう、恥ずかしくない様に……と、この後も人知れず思い馳せる2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その後。

 

本日は水源調査用の試掘道具紹介日。

 

イステリアのとある街中の一角にて、井戸掘り職人たちに小型井戸掘り機の使い方を紹介するのだ。

 

正直、エンジンブレーカーの方が圧倒的に早く終わるし、更に更に上を言うなら、カズキのピカピカのドリル!! ピカピカのビーム!! で、あっさり大穴が相手更に時短になる―――が、あまりにも目立ちすぎるので、それは却下だ。

 

急を要する場合や、同じく試験的な井戸掘り(これまでピカピカを井戸掘りに使ってないので)でイステール家が秘密裏に処理をして、拵えた~ と言う名目でカズキの力を思う存分発揮する所存ではある。

 

 

「カズラ様はもう現場の方に?」

「はい。ちょっと私は用事を済ませてからだったので、遅れる旨を伝えてます。2人して遅刻しちゃいそうですね? 後でしっかり謝っておかないと……」

「そ、それなら謝るのは私の方で!! こんなにスケジュールが推してしまったのは管理責任者である私自身の不手際で!!」

「え? あああ、いえいえいえ、冗談です冗談です! ジルコニアさん達も業務で忙しいんですから、開いた時間に、って考えたら仕方ない事だってカズラさん言ってましたよ!」

 

 

そのイステリアの一角目指して、ジルコニアと共に向かってるのはカズキである。

ちょっとした冗談のつもりで、謝罪を~~と口にしたら、取り乱す様にジルコニアが反応したので、どうにか諫めた。

 

ちょっとしたお茶目な所があるカズキの言動には、ジルコニアはまだまだ慣れきってない様である。

護る、と言ってくれたいわば守護神も同然な存在なので、中々心情的には難しいのだろうが、その辺りはしっかりと慣れて貰う他無いだろう。

 

 

「うぅ……、カズキさん何だかイジワルしてません?」

「あはは……、そんな事は無いですよ? ただ、私の冗談はジルコニアさんにはまだまだ刺激が強過ぎる、って事なんでしょうか。もうちょっと頑張ってくださいね」

「し、心臓にかかる負担が半端ないのですが……」

 

 

頬を膨らませて、頬を赤らませるジルコニア。何処か幼さが垣間見えるその姿こそが、ジルコニアの本当の姿なのだ、と言う事はカズキも段々解ってきている。

 

あの惨劇の夜。バルベールと言う国に、人生を歪まされていなければ、恐らくジルコニアは………。

 

 

「―――――んっ」

「? どうかしましたか?」

「いえいえ、何でもないですよ」

 

 

知っている限りを思い出せば思い出す程、怒りと言う感情が煮えたぎってくるものだが、ジルコニアにそれを悟らせない様にカズキは咳払いをして気を落ち着かせた。

 

色々と事情があり、絡み合ってる事も朧気ではあるが それが解っている分、単に怒りを、その矛先を相手に向けて、打ち滅ぼして終わり―――と言う訳にはいかない。

 

それに、何より……カズキと言う存在(・・・・・・・・)の事を考えれば、安易な決断や行動は正直慎まなければならない。

メルエム・グレイシオールの名の元に集ったアルカディアの勇士たちが、国の自由の為に、自由を勝ち取る為に、敵国を打ち負かす。

 

それが一番の形だ。

 

 

 

―――人間の力ではなく、メルエムと言う光で全てを塗りつぶして訪れた平和は、……綻びが、最悪の綻びが生じかねない、と言う強い懸念をカズキは想っているから。

 

 

 

「あ、そう言えばジルコニアさん。薬や化粧品はどうですか? 見た感じですが、凄く調子良さそうだ、とは思いますが。実体験上の感想などは?」

「! はい。飲んで一晩経たないうちに疲れが吹き飛びました。神の国の秘薬はすさまじい効能だと思います。それに化粧品も、肌が透き通る様に綺麗になって―――まるで魔法をかけられたみたいですよ」

 

 

笑顔で答えてくれるジルコニアを見て、今し方の表情は、読取られてない、と思い一先ず安堵。

そして、相変わらずリポD……栄養ドリンクの効能の凄まじさを垣間見た。

 

 

「そちらの分野はカズラさんなんですが、私も色々と融通が利く様になってます。勿論、カズラさんに直接お願いしても問題ないですよ。ですから、身体がつらくなったら直ぐに言ってくださいね?」

「ありがとうございます。今後は無理し過ぎない様に気を付けますわ。ぁ……、カズキさん。1つ、宜しいでしょうか?」

「? はいはい大丈夫ですよー。1つと言わず、2つでも3つでも」

 

 

カズキの笑顔を見て、ジルコニアはニコリっ、と同じく笑みを浮かべて告げた。

 

 

「リーゼの事ですが、カズキさん的にどう思いますか?」

「へ? リーゼさんですか?」

 

 

予想外の問いかけに対して、完全に不意打ちだった様で、素っ頓狂な顔を思わずカズキはしてしまった。

だが、直ぐに気を取り直す。

 

 

「んー……、毎朝、私と一緒に剣の練習をして、国の勉強をして、時間余す事なくいつも全力で。……ほんと凄い人だと思ってますよ。……でも、あまりに仕事量が凄い気がするので、何処かでお休みが必要では? とも思ったりしてます」

「お気遣いをありがとうございます。リーゼは先週の面会があまりに根を詰め過ぎていたので、もうそろそろお休みを、と計画を立てていますよ。リーゼに求婚をしてくる貴族は、他領からも後を絶ちませんからね」

「成る程。それなら安心―――ですかね? うぅん。私も仕事頑張らないと………、とと、やっぱりリーゼさんには、求婚してくる相手がそんなに大勢いるんですねー……」

 

 

本人から、今のジルコニアからの様に、直接話を聞いた訳ではないが、リーゼの求婚の話は知っている。あまりに大人数である、と言う事と……やはり、中でも嫌な気がするのが、豪商ニーベルだ。嫌気がまるで粘液の様に具現化し、身体に纏わりついてくる様な、それでいて思い出せないもどかしさもある。

 

 

「カズキさんも気になっちゃいます?」

「そりゃ、そうですね。実際非の打ちどころがない、って思いますよ? 真面目で容姿端麗で、分け隔てなく優しくて――――市政の話を見て聞いてれば、人成りは解りますし。何と言ってもリーゼさんとはもう、剣を交えて語ってますからね! ~なんちゃって」

 

 

軽く素振りして、笑って見せるカズキ。

 

何だか、ちょっと方向性が違う―――と思ったジルコニアだが、此処こそが勝機! と言わんばかりに目を輝かせて、急接近。

 

 

「でしょう!? そうでしょう!? リーゼは努力家でいつも頑張ってる自慢の娘です。どうです? 一度お付き合いをしてみると言うのは?」

「え、えええ!? いきなりなにを……!??」

「きっと更に気に入ってくれると思うんですよー!」

「それは、今も……。って、いえいえ、ほら ジルコニアさん。オレ……私は、ほら。所謂メルエムでして。そんなよくわかんない存在がリーゼさんに~~と言うのは……」

 

 

この言葉を聞いてジルコニアは笑っていた顔が真顔に変化していく。

 

 

「カズキさん。……いえ、メルエム様。差し出がましい物言いかと存じ上げますが、ご自身を卑下にするような言葉は、およしになった方がよろしいかと」

「え……?」

「ふふ、いつも普通に接して欲しい、と仰ってますので、元に戻しますね」

 

 

ジルコニアが引っかかったのは、カズキの一言。

《よく解らない存在》である、と言う所だ。

 

 

「……カズキさんは、私達にとっても掛けがえの無い人ですよ。《よくわからない》なんて、口が裂けても言いたくありませんし、カズキさん自身にも言って欲しくないんです。それは正体は神様である、とか、とてつもない力を持っている、とか、カズラさんと助けてくれる、だけではありません。……貴方の人柄に。……その誠実さに私は惹かれています。きっとカズキさんを知る皆も同じでしょう」

「それは……」

 

 

少し、言葉に詰まるカズキ。

そんなカズキの顔を覗き込む様に、ニコリと微笑んだ。

 

 

「カズキさんは、カズキさんですよ。私にとっても掛け替えのない大切な人です」

 

 

顔が赤くなるのを感じた。

 

神としてではなく、ただ1人の人間(普通)として扱って欲しい。

それはカズキが皆に願っていた事ではある。

 

 

「ふふ、お顔。赤いですよ?」

「っ~~、そ、それは仕方ないじゃないですかー!」

「ふふふ」

 

 

頬を膨らませて怒るカズキを見て、ジルコニアはより強く思う。

 

確かに、人外の力を有しているのは間違いない。

だが、何処かにやはり違和感は残っていた。

 

 

カズキと接していく内に、朧気に……そして確実に、その違和感は形を帯びていき、輪郭まではっきりと見え始める。

 

 

その身に窶す能力は確かに神そのもの。

 

だけど―――カズキは、普通の人間でもある。

普通の心の優しい人。

 

 

 

―――心の優しい人が、ある日突然力に目覚めた、或いはメルエムとして選ばれた。

 

 

 

そう思う様になった。

 

 

 

それと同時にカズキの本当に凄い部分も見える様になる。

 

人間と言うモノは、欲の塊である事はジルコニアもよく知っている。

 

強い力を持てば持つ程、その欲は加速させていく。

国として縛る。法としてしっかりと縛っているからこそ、無法地帯にならずに済んでいるのだが、それを余裕で破る事が出来る力を、有する事が出来たならどうなるか?

 

欲の限りを発し続けるだろう事は簡単に想像できる。

 

仮にバルベールの様な敵国の人間が、更に強大な力を得たらどうするだろうか?

その欲のままに世界を蹂躙し尽すだろう。……最後は自身の国さえも呑みこむだろう。

 

 

だが、カズキはそう言った類のモノは一切見せない。

 

 

その気になれば、この国の頂点に君臨して、いや この世界の覇権すら握れる力である筈なのに、この小さな場所に留まり、力を貸してくれている。

皆と笑い合っている。

 

 

 

「カズキさん」

「はい?」

 

 

 

少し話をした後、ジルコニアはまた、笑顔で言った。

 

 

 

「リーゼの事、正直半分冗談でしたけど……、やっぱり真剣に考えてみてくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々と疲れが見えてきたかもしれないが、取り合えず目的地へと到着。

もう既にカズラを始め、他の職人たちが集まってきていたので、ジルコニアもカズキも小走りで駆け寄った。

 

国の極秘扱いをされている様に、周囲には作業風景を覗き見られない様に目隠しがされており、他の電子機器の存在が無い世界だから、これで情報漏洩、機密漏洩対策は万全。

 

 

「――――で、このように先端を地面に突き刺したら、ハンドルを捻じって地面に食い込ませてください。掘った土は先端に溜まるので、ある程度掘ったら井戸掘り機を引き上げて土を掻きだします。これをひたすら繰り返します」

 

 

カズラの手に握られているのは、小型井戸掘り機。T字型のハンドルの先端に筒状の容器が取り付けられたもの、である。

 

現代日本の事を考えれば、聊か原始的過ぎる、と思いガチになるが、これでもこの世界ではかなりの高性能なのだ。鉄の無い世界では、この固い固い金属(ステンレス)、おまけに軽量の道具は、技術革新へと繋がりかねない……と言っても決して大袈裟ではないだろう。

 

他の金属を代用して~と考えてはいるが、量産化は現時点では出来ないから、機密、内密に、なのである。

 

 

 

だが、勿論ながら悠長に構えてられる状態でもない。

日照り、大干ばつ、大飢饉が広がったアルカディアおい国だ。多くの井戸が枯れている状態なので、急ぐ必要のある事案。

だが、ある程度進み、岩盤に当たったら……、その先までくりぬく作業ともなれば、手作業では心許ない。

 

 

……とは言っても、その辺りは、カズラもカズキもしっかり対策済みだ。

 

現代技術、オーバーテクノロジーとチートスキルの組み合わせ。である。

 

 

 

「―――と言う訳で、急を要するポイントに関しては、私とカズキさんで、手分けして何とか水脈まで迅速~と言う形をとります。その地点のある程度の人払いや区画などを宜しくお願いしたいかと」

「了解致しましたわ。お任せください!」

「取り合えず、ため池作成とはちょっと勝手の違う井戸掘りなんで、一応1つ目は立ち会ってもらおうとは思ってますよ。カズラさんとオレ、どっちにします?」

「うーん……、じゃあ、エンジンブレーカーの方を先に(実際使った事無いから、なー。まずはお試しって意味でも……)」

 

 

 

 

木製井戸が出来上がっている場所へと案内されて、後は水が湧き出れば万事解決。

 

最後の一押し、トドメを現代科学の結晶であるエンジンブレーカーで一刺し。

勿論、しっかりと事前対策・安全確認は怠らない。

 

この世界観では正直浮いてしまっている装備にカズラは着替える。

 

 

ヘルメット、保護眼鏡、防塵マスク、軍手……などなど。

更に当然だが、酸素欠乏症対策もバッチリ。井戸の中に入っての作業なのだから、当然空気を送り込むブロアーも設置。

 

 

初めて見る者であれば、頭の中にいくつも《??》が浮かんでいる事だろう。

 

 

「では、準備万端って事で、さっそく岩盤くりぬき作業ですね。ちょいとやかましくなりますよー」

「しんどくなったら、直ぐ言ってくださいね? 熱中症とかシャレじゃすまされないですから」

「勿論。とりあえず1時間程度の目安でいきます」

 

 

カズラは、井戸にはしごに足をかけて、一緒に付き添ってくれているアイザックに声をかける。

 

 

「アイザックさん、先に私が下りるので、あとからそれを縄につるして下ろしてくださいね」

「かしこまりました」

 

 

重量物なので、しっかりと縄で固定。

カズラの声に合わせて慎重に、ゆっくりと井戸の中まで下ろす。

 

 

反響音はそれなりにあるものの、やはり音そのものが少ない世界だ。静寂に包まれている―――と言っても大袈裟じゃない。

 

 

 

「ふぅ……、思ったよりも深かったなぁ」

 

 

 

中に降りてカズラは井戸の中は1人きり。

正直心細くもあるが、情けない事を言ってもいられない。

 

手分けして分担作業、目立つ事を考慮すると、カズキの行動範囲・速度もそれなりに限られてくるし、何より世話になりっぱなし、頼りっぱなし、と言うのは一応神様仲間なので、立つ瀬無い。

 

 

「……っし! ここは一発で温泉掘りあてるみたいにやって見せますか!」

 

 

 

 

―――と、意気込んでいたのだが。

 

 

早くも1時間。

 

 

 

「………つ、疲れる……、握力持ってかれる……」

 

 

掘って掘って掘って、まだ水の気配は皆無。

何より岩盤が想定していた以上に固い。

 

 

『カズラさーーーん、だいじょうぶですかーーー!!』

 

 

上から心配する声が聞こえてくる。

これが女性の声援だったらなぁ……と、何処か下世話な考えが頭に過っていたが、馬鹿な事を、と一蹴。

 

 

「だいじょうぶですよーー! なんとなーーく、もうちょっとで出そうな気もするので、まだ連続で」

『りょうかいでーーす!! 何かあったら、というか、なにかある前に声かけてくださいよーー!』

「はーーい!」

 

 

と言う訳で、トライアゲイン。

 

声を掛けられる、大丈夫と返事する、を幾度か繰り返し―――そして合計3時間。

 

頑張りに頑張ったと思うが、想定をはるかに上回る程、時間がかかってしまっている。

まだまだ頑張れるとは思うが……、あまりに時間をかけ過ぎて、他の業務に支障をきたすのは頂けない。

 

それなりに時間をとってもらっているものの、やはりまだまだやるべき事は多く、多忙極まっているから。

 

 

「―――もうちょっと、って感じなんです」

「了解しました! なんだか、良いトコどり、って感じがしちゃいますが……、カズラさんが頑張ってくれたおかげ、って事は忘れませんからね」

 

 

カズキが、グッ、と親指を立てて笑顔で降りていく。

その光景を見て、周りも同じく笑顔になる。

 

 

カズキが使用するのは、当然エンジンブレーカー……ではなく、ピカピカな力だ。

 

 

 

「―――あんまし、目立たない様に、光度、光度を落として………、うぅ~~ん………」

 

 

右手、人差し指に力を籠める。

『ま、眩しい!!』 と某アニメ・漫画の様に思われてしまわない様に。

 

 

そして、岩盤をも貫くイメージを持って、光の槍を作り上げて……地面に突き刺す。

爆発はしない方向で。

 

 

「うはっっ、マジで!? 手にかかる負担がヤバイ。………こんなのと3時間も格闘してたんだ、カズラさん」

 

 

ピカピカの身体になっても、ある程度の負荷と言うものは感じ取る事が出来る。

どういう理屈かは知らないが、実体のない流動する光の身体にはなれるが、だからと言って、質量が無い、と言う訳ではない様なので。

 

ピカピカビームを打って、そのビーム以上の強度で押し返されたら、手に伝わってくるのである。

 

だからこそ、カズキも岩盤の固さと言うモノがしっかりと理解出来た。

 

 

「……こりゃ、ちょっと気を使って少しずつ、なんて言ってたら日が暮れちゃう、か」

 

 

カズキは意を決した。

 

指先の光を周囲の土砂を利用して、手に盛り上げると、それで光を遮る役目、カーテンにする。木の板も大活躍をしてくれた。

 

後は、当然だが日中作業にしたと言うのも功を成す。

井戸の中に覗き込むのは大体カズラだから、直視される事も無いだろう。……目に良くないと思うし。

 

 

 

と言う訳で、最低限の処置を施した後、先ほどの出力を上回るピカピカビームを指先から発射。―――当然爆発はしない方向で。

 

 

ドスンッ!! と言う中々豪快な音と振動が井戸に伝わり、上にも伝わってくる。

先ほどのエンジンブレーカーの音をカムフラージュに使っていたが、それでも届く程の轟音。

 

ぎょっっ!? とさせてしまったが、功を成した。

 

 

 

じゃぶじゃぶじゃぶ~~~ と水脈に直撃した様で、水が湧いて出てくれたのだから。

 

 

ガッツポーズをしつつ、井戸掘り作業終了である。

 

 

 

カズラ作業時間3時間

カズキ作業時間3分間

 

 

 

 

―――カズラが苦い顔をしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数十分後。

 

井戸から出て、アイザック・ハベルに指示。井戸の上に手押しポンプを設置。

落下しない様に蓋をするような形で。

 

 

当然固定も強固なものにする。

インパクトドライバーを用いて、凡そ人力では解放出来ない様にしっかりと固定。

 

全てを終えた後に、ポンプに呼び水を入れて、ハンドル上下作業。何度も往復すると――――。

 

 

 

「すごい……! こんなに簡単に水が汲み上げられるのなら、農民たちもかなり楽になりますね!」

 

 

 

最初は濁った水が出てきたが、直ぐに綺麗な水に変わった。

更に言うなら勢いも、皆から見れば物凄い。

人力でこれまで汲み上げてきたその辛さを、農民出身であるジルコニアは良く知っていたからこその感動である。

 

周囲も、負けずと劣らず、『おお!』と声を漏らしていた。

 

何となくではあるが、オーバーテクノロジーである発電機・コンプレッサー・エンジンブレーカーよりも水の方に着目している様だ。

 

だが、それも当然と言えばそう。……命の源であると言って良いのが水。

それを簡単に汲み上げる事が出来る様になったのだから、これもジルコニア風に言えば『魔法』だ、と称しても不思議じゃない。

 

 

「おっ、水も大丈夫そうですね、冷たくて綺麗で、気持ち良いですよ」

 

 

カズキもポンプの出口から水を確認していて、目視で問題なし、触覚で冷たい、飲んでみて美味しい、と◎。

 

カズキの言葉にカズラは手を上げて答えつつ、ジルコニアにも答えた。

 

 

「作業効率が全然違いますからね。それに力もほとんどいりませんから、女性の方でも簡単に水が汲めると思いますよ」

「! あ、あの私もやってみていいですか?」

「どうぞどうぞ」

 

 

カズラが快諾すると、ジルコニアは場所を代わり、慎重にハンドルを漕ぎ始めた。

 

すると、本当に僅かな力で水が出てくるので、驚き目を見開き、歓声を上げかけているジルコニアの姿がそこにはある。

 

宛ら、初めて玩具を見る子供の様……、或いは、周りの皆の反応をも考慮すると、まさしく温泉を掘り当てた時の感覚にも近いかもしれない。

 

 

「あぁぁ、火照った身体に丁度良いですよぉ」

 

 

両手で水を汲み、ぱしゃんっ! と顔に掛けるカズキ。

肉体労働はカズラに比べたら、文字通り皆無な時間だが、この日照りの下だから。

 

 

「ですね。折角だから、皆さんも体験してもらうついでに、水浴びもすると良いかな? カズキさんが言う様に冷たくて気持ち良いですよ」

「バッチリです! 最高ですよー」

 

 

しっとり、と濡れた身体のまま、手招きしつつ、場を開けるカズキ。

 

 

いそいそとしつつも、我先に、と水に向かってくるかな? と思ったのだが、予想に反して、人気だったのは手押しポンプの方だ。

 

 

 

 

「私が扱ぐから皆飲んでいいわよ」

「ジルコニア様、それは私がやりますので先に休んでください」

「いや、ハベルも疲れているだろう。オレが先にやるから水浴びして一息ついていいぞ」

「いえ、カズラ様とカズキ様が殆どやってくださって、私は水桶を引っ張り上げただけですので、全然疲れてませんよ。ここは下っ端の私の出番です」

「アイザック様、ハベル様、そのような作業は我々がやりますから、皆さまと一緒に水浴びをなさってください。ささ、ジルコニア様」

「別に気にしないで良いのよ。私がやるから先に水浴びを皆と――」

「ジルコニア様、私がやりますから」

「いえいえ、ここは私が」

「いいから! 私がやるから!!」

 

 

 

 

何故だろう。

水を掘り当てて感動している―――と思っていたのに、大人気になったのはポンプの方だ。

 

カズラとカズキは顔を見合わせながら吹き出しそうになり、落ち着いた所で。

 

 

 

 

 

「もう、皆で変わるばんこに扱げば良いんじゃないですか?」

「あははは。焦らなくても、水は無くなったりしませんし、ポンプも何処かに行ったりしませんよー」

 

 

 

 

 

ポンプの奪い合いをしていた一同は、2人の言葉を聞き、ハッ! と我に返った様で、気恥ずかしそうにするのだった。

 

 

 

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