ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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40話 待ってましたのメロメロばんばん! ……アレ?

「リーゼさんですね」

「はい……。え、あ、いえ、そのっっ」

 

 

ジルコニアは、店にやってきた声から誰が来たのかを悟った。

思わずカズキとハモる形で断言しつつ、改めて聞き返された時も頷いて……、これで良かったのか? 肯定してはまずいのでは? と思い直した様で、手をぶんぶん、と振っていた。

 

 

「あ、エイラさんの声も聞こえてきた。間違いないですって」

「あ、あの。まだわかりませんし、ほ、ほら。動かないでよ言われましたから、もう少し奥の方へ―――」

 

 

あからさまに、遠ざけようとするジルコニア。

当然ながら、カズキはこの対応をとろうとする意味も理由も解っているつもりだ。

 

リーゼの声……、普段のソレとは全然違う。

 

言うならば、元気ハツラツ、と言った印象が強い。

日頃も元気が無い……と言う訳ではない。凛として、芯が通った素敵な女性―――をイメージしやすいのだが、この感じは活発なお嬢様、と言った印象を持つ。

 

エイラも自然に会話に入ってるので、これが普段のリーゼと言うものなのだろう。

 

 

「まぁまぁ、そう慌てなくても―――」

 

 

と、カズキはジルコニアを逆に落ち着かせようとしていたその時だ。

一際声が大きくなったリーゼの言葉が聞こえてくるのは。……大きく、と表現するよりは、何処となく怒気が籠った、と言った方が良いだろうか。

 

 

 

「それがさ! 聞いてよ、クレア! あのバカ商人がしつこくて。何度も何度も面会捻じ込んでくるし、隙あれば身体触ってくるし……、この間なんて、危うく夜の屋敷の外に連れ出されそうになったのよ? あのまま連れていかれたら、何をされたか解ったものじゃ無いわ。本当、アイツ死ねば良いのに」

「……まぁ、ご苦労さんとだけ言っとくよ。今日はそいつから貰った物の換金かい?」

 

 

 

あの老婦人―――クレア。相当なやり手な商売人。

会話を重要視するのは勿論であり、時には詐欺まがいな真似にまで発展する事だってしばしば……なのに、どっしりと店を構えて、イステリアで生き抜く手腕。どれをとっても特上の者だと言えるクレアが……、思わず同情を禁じえない程のリーゼの言葉。

 

クレアの口ぶりだけで、色々と察する事が出来ると言うものだ。

 

様々な重圧から解放されて、素の自分を出す事が出来る場所が、此処だと言う事。

 

 

「あのエロオヤジ、贈り物だけはいつも一級品なのよね。そこだけは感心するわ」

「そうしておきな。今回も少し色を付けておいてやるからね。……ところで、前言ってた男達の身分ははっきりしたのかい? どっちを狙うとかも」

「ええ、勿論決めてるわ。素性は、クレイラッツの有力者だと思う。……で、身分は平民かな」

「ほほう、クレイラッツか。聴く限りじゃ、どっちも性格良いし、かなりの金持ち、更にもう1人の方は腕も立つんだろ? 天は幾つの才能をその男に与えたのかねぇより取り見取りじゃないかい。そりゃ、悪い気だって近付きたくなる、ってもんさね」

「近付いてほしくない! あんなエロオヤジはごめんよ、もぅ!」

 

 

ジルコニアにしてみれば、聞けば聴くほど、心臓の鼓動が早まり、寿命が縮みあがる思いだ。

ちらり、とカズキを見てみると……。

 

 

「―――――――」

「ひっ……」

 

 

 

 

 

ニコニコニコニコニコニコニコニコ…………。

 

 

 

 

物凄い笑顔で見入っている。聴いている。不自然? って思ってしまいかねない程、裏表のない笑顔。

会話の内容を聞いていれば、リーゼがカズラかカズキのどちらかを狙う、みたいな話を、このクレアと言う老婦人に伝えていたという事が解る。はっきりと名を口に出していないが、容易に連想出来る。

 

だが、全くを持って予想も想像も出来ないのが、今のカズキの様子だ。

兎に角笑顔。……あまりの笑顔は、何処か狂気にも見えてしまうから、ジルコニアは更に気が気じゃない。思わず小さく悲鳴を上げてしまう程に。

 

 

「まぁまぁ。それで? 結婚相手として決めた、って事でもいいのかい?」

「うん。剣の訓練も重ねたのもあると思う。私のこと大分気に入って貰えたと思うし、今夜あたり行っちゃおうかな、って。もう1人の人は、本国に恋人っぽい人がいるみたいで、それとなく教えて貰ったから解ったんだけど、最初から狙いを絞ってて良かった、って思ってるわ」

「えと……、リーゼ様。それって、カズキ様の事、ですよね? 夜這いをかけるって事ですか……?」

「ええ。丁度夜間訓練の時間も取ってるし、部屋に入れて貰って自然な流れで、って出来そうじゃない?」

 

 

とうとう名前まで判明した。

あまりに凄まじい内容の会話に、ジルコニアは身体をプルプルと震えさせてしまっている。顔は真っ赤だ。曲りなりにも、自身の娘が……普段のそれとは人格が変わったかの様になっているだけに飽き足らず、あまりにも過激で生々しい内容を口にしているのだから、それも仕方ない事だろう。

 

 

「成る程――――」

「な、なるほど……?」

「あ、ほら。リーゼさんからのスキンシップがちょっと最近増えてるな、とは思ってたんです。ブレスレットを2人分頂けた事も有るので、カズラさんの方を―――と思わなかった事も無いですし。……正直、私の方か、と驚きの方が大きいですが、納得出来た、とも思いまして」

「い、いえいえいえいえいえいえいえい!! きっと、声色が似てるだけの同姓同名の別人ですよ!」

「ええぇ……? 流石にエイラさんの名前も呼んでますし、こんな近くに同姓同名の人が揃うなんて、実際に街で居たら、きっと有名になってますよ? リーゼさんなんですから」

 

 

ニコニコ顔で笑っているのが、もう一蹴回って怖くなってきたジルコニア。

カズラもそうだが、カズキが怒ってる所は見た事が無い。いつも笑っているイメージで、とても好印象、好感が持てる―――――神様(メルエム様)なのだが、今回は怖い。怖すぎる。

 

 

「じゃ、そろそろジルコニアさんも、ほら」

「えええ!! ま、まって。何処へ行くつもりですか!? とりあえず座ってください! 出るな、って言われてたでしょっ!?」

 

 

ひょい、と立ち上がるカズキに纏わりつくジルコニア。

ピカピカな身体故に、透き通す事も出来たが、それはしなかった。

 

さっきまでは、ジルコニアに引っ付かれて、胸を押し付けられて―――と、赤面する想いだったが、今はただただ綺麗な笑顔。

 

 

そのまま、ジルコニアが引きずられる形で、2人は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの数秒前。

 

 

「それに身分は平民だけど、あの器量は絶対に超有力者。……だけど、領主の娘相手に既成事実作っちゃったら、結婚せざるをえないでしょ? カズラ様は恋人がいるッポイから、手を出さないにしても、カズキ様はその気配見えないし、でも、出来ないとも限らない。いや、出来ない方が絶対おかしいよ。―――だからこそ、先手はうつもの。先手必勝」

「……何ともまぁ、随分と逞しくなったもんだね」

 

 

エイラの質問に自信ありげに答えるリーゼに、クレアは半ば呆れた表情で苦笑いしていた。

 

初めてリーゼと出会った時は、完全なる猫を被っていて、訝しんだものだ。

あの手の演技は、狡猾な――――それも女には効果は薄い。商売柄、人をよく見てきたクレアにしてみれば、云わば天敵とも言われてもおかしくない。

 

なので、あっさり見抜かれた――――が、此処から面白いのは、それでもリーゼは構わない、と素の状態を見せる様になったのだ。

 

いわば、エイラ以外にも、自身を解放出来る所。――素の自分を出せる所だと重宝しているのかもしれない。本心を曝け出せる友達だと。……歳は相応に離れている様だが。

 

 

「絶対よ、絶対! ものにしてみせるわ! あんな優良物件、他にあるわけないもん。―――あぁ、でも何か緊張してきた。上手くできるかな……。カズキ様、体力は有り余ってそうだから、ちょっぴり怖くなってきたかも……」

「なんだ。ちゃんと予習してる訳じゃないのかい?」

「経験のある娘から、時々話は聞いてるけど、雑談で出る程度の知識しかないのよね……。武力で皆の上を行く。お母様でさえ上回る力を持つカズキ様だもん。やっぱり、ね……。優しくしてくれると良いんだけどなぁ。……優しい人程は、夜は豹変! 凄い! みたいなのも聞いた事あるし……」

「ほう、それならエイラちゃんに教えて貰えばいいじゃないか。男の1人や2人、経験してるだろ?」

「…………」

 

 

まさか、突然話を振られると思わなかったエイラ。

この手の話になると、それとなくフェードアウトするか、気配断ち! とまではいかずとも、周囲に溶け込むが如くにしてるのだが、クレアは堂々と乗り込んできて―――言葉を失っていた。

 

 

「え、まさかお前さん。その歳で処女なのかい?」

 

 

そして、歳の功。デリカシーが! と言いたくなるかもしれないが、同性であり、年配の先輩。……踏み込み方がえげつないが、それでも何とかエイラは表情を保ち、ゆっくりとした口調で告げる。

 

 

「…………お付き合いすらした事ない、です……」

 

 

その絞りだすかの様な言葉にクレアは、少々聞いたのを後悔した後。

 

 

「ま、まぁ、人それぞれだからね……。とまぁ、それはそうと、嬢ちゃんには期待してるよ。この前のペンダントも売ってくれると嬉しいんだけどねぇ……」

「ええ!? あ、アレは……うぅ……、カズキ様じゃなく、カズラ様から頂いたモノだから……、これからの事を考えても、手放すのは……、でも、凄く気に入ってるのも事実で……。ぅぅぅ、アレはやっぱ勘弁して、クレア。でも、約束するわ」

 

 

リーゼは、やや弱々しかった様子を払拭。

胸に手を当てて、ぐっっ、と拳を握り込みながら大宣言した。

 

 

 

 

「恋人になれたら、もうメロメロにさせて、ばんばん貢いでもらうから!! 期待してて良いよ―――!」

 

 

 

件の名台詞。

正直 朧気で、輪郭も薄れてて、細かい所は当然思い出せなくて……、今も現在進行形で忘れそうになっている過去、前の世界の記憶。

 

でも、リーゼのあのセリフだけは、不思議な事にはっきりと覚えていた。

その姿まではっきりと。

 

 

だから、ついつい、声だけでなく姿も拝見しようとして、扉を開け―――。

 

 

「そうかいそうかい。期待しとくよ」

「あ、あはははは……………はぁっ!??」

 

 

 

エイラとしっかり目があった。

見た瞬間、身体が固まる。

 

それにジルコニアの姿もはっきり見えた。何故か肩で息してる様だ。

 

エイラの只ならぬ様子に、リーゼも思わず振り返り――――そして、エイラ同様に固まった。

 

 

「ん? あ! コラ!! こっちに来るなと言っただろ! ………おや? お前さんたち、知り合いかい?」

 

 

 

クレアは夫々の顔を見比べて、顔見知りであると判断する。

そして―――どういう関係なのかも知るのだった。

 

 

更に言えば―――カズキも思い知る事になる。

 

 

 

「―――――――ぁ」

 

 

ほんの一瞬だけ……観客(・・)気分で見ていた自分が居た事。

そして今はまさに、当事者であると言う事に。

 

 

 

 

 

 

 

カズキは大変だった。

いわば現実逃避? してたも同然だった所に戻されたから。

 

勿論、ジルコニア・リーゼ・エイラも大変だった。

最悪な場面を見られてしまったから、聞かれてしまったから。

 

リーゼは勿論だが……、それと同等か、若しくはそれ以上に顔を青くさせているのがエイラとジルコニアだ。

カズキとリーゼをくっつけようとしていた。画策していた。

 

カズキが神である事を考慮したら、普通はここまでリーゼを宛がわせようなんて思わないし、思えないのだが、カズキがあまりにも人間らしすぎた。

もう1人の人間、男のコ。それもとびっきり優しい男のコとしてしか見られなくなりつつあった。

 

古来の文献……御伽噺では、神々と人間が結ばれる感動的秘話など幾つも存在するし、それが現実に起こった事、神話の一節がイステリアで始まった、などと盛り上がっていただけに、それが足元から崩れ落ちる様を目撃させられている様で、気が気じゃない。

 

 

 

固まっている内に、色々と査問会? 尋問会? 

でもするかの様に、先ほどの奥の部屋で、行われた。

 

 

 

 

 

「(……そう、じゃん、そうじゃん! カズラさんじゃなくて、オレのトコに来ちゃったんじゃん……!! ブレスレットの件やバレッタさんくっつけようとした事とか……、色々合わさって、方向性が変わっちゃった……? ね、狙ってやったわけじゃないのに、いざこうなったら、う、うぅぅぅ、目、目をみれない……)」

 

 

 

 

 

腕を組み、表情を俯かせているカズキ。

滅茶苦茶動揺している。リーゼが夜這いを掛けようとした事、結婚狙った事、色々と客観的に見てみれば、面白い展開だったのだが、その想いのベクトルが全て自分に向けられてしまった時に、そのベクトルが槍となり、突き刺されて、そのまま引き摺り返されたのである。

 

 

メロメロばんばん、で最高潮まで言ったかと思えば………アレ? である。

これって自分? である。

 

 

 

なので、色々悶々としているカズキだったが、周囲にはそれは全く……ま~~~~~~~ったく伝わらない。

 

 

 

何故なら、カズキのその表情からは完全に笑みが消えてしまっているからだ。

それがジルコニアにとっては何よりもキツイ時間を演出していた。

 

先ほどまでは、物凄い笑顔だったのにも関わらずの豹変だ。

 

 

―――カズキの顔が赤くなってしまっているのだが、そんな色は一切見れない、感じられない様になってしまってる。

 

 

クレアの店の奥は、蝋燭の火の灯りで照明としているから、顔色などは、火の色ではっきりと解らない、と言うのが拍車をかけてしまっている。

後は先入観……だろうか。

 

 

「あ、あの……カズキ様。リーゼ様も悪気があったわけじゃなくて、ですね……」

 

 

等々沈黙に逆らえなくなってしまったエイラが口を開いた。

相手は光の神。

以前、その正体をハッキリと顕わにされて、確認して、実演されて――――これは現実なのか? とそれこそ逃避しそうになった程の衝撃の元で、明らかにされた事実。

 

だが、エイラもジルコニア同様だ。

あまりにも人間臭いカズキ。その光の能力を見せられたからと言って、これまでの印象が完璧に変わってしまう程では無かった。

 

それ程までに、カズキには恩義があり、世話になり、大切な人である、と言う事を認識し出しているから。

 

 

だからこそ、この状況は駄目だ、と先陣を切ったのである。

 

 

「え……っと、なに、かな?」

「ぅぅぅぅ……」

 

 

ただ、よく聞いてなかったので、もう一度―――と言った様に聞き返したつもりだったが、そう言うニュアンスには伝わらなかった様子。

 

 

「ちょ、ちょっと! 何で黙っちゃうの!?」

「…………」

「――――ぅぅぅ」

 

 

リーゼも、カズキの沈黙には堪えてしまう。

あれだけ陽気に、朗らかに、そして手取り足取りと稽古をつけてくれたのがカズキだ。話も面白い、何なら、気を逆に使ってくれる程。

 

クレアの手前、失礼な物言いをしてしまったが、それでもカズキに対しての想いは決して嘘ではない。

 

 

だけど――――今の会話を全部聞かれてしまったのなら、リーゼ自身の口から、何を弁解しても、逆効果にしかなり得ないと思ってしまっているのだ。

 

 

「あ、いや、泣かないで良いですよ。リーゼさん」

 

 

とうとう泣き出してしまったリーゼ。

流石に彼女の涙(例え演技だったとしても)は、高威力。

恥ずかしくて、これ以上聞けない、見れない、なんて感性は跳んでいった。

 

 

「せっかく、せっかく……カズキさまと……っ」

「え? 何? もう一回……」

「………何でもないです」

 

 

本当に聞こえなかった。

それ程までに小さい声だったから。

 

だけど、リーゼには本当に聞こえなかったから聞き返された、とは思えなかった様子。

 

 

「カズキ様、リーゼ様がお慕いしているのは本当の事なのです。毎日、私と話をしている時も、カズキ様の話題が多かったです。カズラ様とカズキ様では2:8程の割合で……」

「え、えっと…… 流石にカズラさんを巻き込む様な感じの説明は止めて置いた方が……」

「し、失礼しました!!」

 

 

完全に恐縮しっぱなし。畏縮されてしまった。

 

 

 

 

「……メロメロ、ばんばん」

 

 

 

 

それをナマで聴けた事に対して、あんなに面白かった感情も完全に消え去っていた。

 

 

「ぅぅぅ……」

「お、お金の話はその……、リーゼ様は少しお金にがめつい所がありますが、人を見る目は確かですよ! 悪意を持って人を騙す様な方ではありません。その、結婚したら少し豪華な生活を夢見て……、その想いが思わず漏れたと言うか……」

 

 

メロメロばんばん、の名台詞を思わず口ずさんだのを聞かれた様だ。

そして、その部分に対して怒っている、とも思われた様子。

 

カズキは、少し頭と両手を振って応えた。

 

 

「それは勿論、えと……リーゼさんが日頃から頑張ってるのは解ってますし、まだまだ沢山してみたい事や遊んでみたい事もあるなか、国の為にと頑張ってるのはしっかり見てます。解ってます解ってます。なので、そこまで落ち込まず、一度落ち着きません? 正直、おれ……私も途中から頭の中が真っ白になった、と言うか……。正直展開に追いつけてないだけですので」

「そ、それでは不問にして頂けるのですか!? リーゼ様とお付き合いを!?」

「いや、めちゃくちゃ飛躍しましたね!? 落ち着きましょうとお付き合いしましょう、は同類項じゃありませんよ??」

 

 

ぽんぽんっ、と手を叩いた。

先ほどまで畏縮し、涙を目に溜めていたリーゼが顔を上げる。

 

 

でも、最後の言葉で再び沈んだ。

 

赦してくれたとは思ったが、駄目だと言われたも同然だったから。

 

 

「……もう一度、リーゼ様にチャンスを、とは駄目でしょうか……?」

「へ、返答に困りますよ、それも。そもそもリーゼさんにチャンス与えて~~なんて、考えても無かった事なので」

「……カズキ様はリーゼ様の事がお嫌いですか?」

「嫌いな人達を手伝ったり、稽古に付き合ったり、そんな事しませんよ?」

「で、でしたらお付き合いを……」

「き、嫌いじゃないイコールお付き合い、ですか……今度は」

 

 

あまりにも積極的過ぎるエイラに度胆抜かれるのはカズキである。

以前メルエムの力―――ピカピカの力を披露してから、畏怖されるのでは? 敬遠されて、疎遠になってしまうのでは? と危惧していたのだが、それもどうやら要らぬ心配だったらしい。懸念事項はきれいさっぱり消え去った―――が、あまりにも肉食系? 過ぎて……。

 

従者が主の為に頑張るのは解るのだが、これでもエイラはまだ色々と未経験者なのか……? と疑ってしまいたくなる。

 

 

「あのカズキさん。一度、落ち着いて考えてみたのですが……」

「あ、はい。何でしょう? ジルコニアさん」

「失礼な物言いをしてしまったのは事実です……。お優しいカズキさんは、咎めたりしないかもしれませんが。―――私達の気がすみません。リーゼには、反省させる為にも、きつく言い聞かせておきます。……どうか、あまり嫌わないで上げてください」

「いえ、嫌ってはいないんですよ。これは本当です!! 話が物凄すぎて、追いついてないだけで、追いついたとしても嫌ったりしませんから、安心してください!」

 

 

これまでの表情の全てが思い過ごし、取り越し苦労なのか?と一瞬思ったジルコニアだったが、安易にそれを信じて、選択・行動する事は止めにした。

 

カズキが優しい事は解っているからだ。

でも、ほんの些細な切っ掛けでも、心に棘が刺さってしまえば今後どうなるか解ったものではない。言質取ったとはいえ、慎重を心掛けるのも当然。

 

リーゼの本性については、思う所はあっても、まさかここまで積極的だとは思ってなかった、と言うのも有る。

今は気落ちしている様だが、1度転んだ程度でへこたれる性格じゃない事は解っているからそこまでの心配はしていない。

 

癖のある相手と長く付き合っていく忍耐力も持ち合わせているのだから。

 

 

「―――リーゼ。とりあえず、もう一度誠意ある謝罪を」

「……はい。本当に、申し訳ありませんでした……」

 

 

リーゼはペコリ、と頭を90度以上下げて謝罪をした。

謝って欲しい訳じゃない。

 

寧ろ、何処か楽しんでた節の有る、現実逃避して、ゲームを楽しむかの様にしていた自分にも嫌悪感が生まれてしまっているので、どうしたものか、どう返事をしたものか、と考えていた矢先だ。

 

 

「お前さんも、それ以上その娘を問い詰める気はないんだろ? じゃあ、ここで終わりにしときな。その娘だって、連日好きでもない男と面会させられて、気苦労が絶えない筈なんだ。そこに漸く気に入った男が現れたとなったら、多少は強引な手を使おうとしても仕方ないだろう?」

 

 

そこへやってきたのはクレアだ。

お茶のお代わりを~~ と持ってきた矢先に、リーゼの謝罪が聞こえてきたから、口を出した形である。

 

 

「そうですよね。あの会話を聞いていても、何だか怪しからん男が居る事は解りましたから」

「ほう! そう思ってんなら、お前さんが今後も隣で守ってやれば良いじゃないかい」

「ややや、だから、飛躍しすぎですってば! 隣って!」

「良いじゃないか。お前さんは、寧ろこの娘の何処が気に喰わない、気後れするってんだい? こんなに美人で、家柄も申し分なく、更には貴族と市民の両方からも支持されてる。そんな女国中探したって他にはいないよ」

「いえ、気に喰わない、なんてことは……」

 

 

何故だか、クレアには怒られてる気分になってきてしまった。

 

 

「嬢ちゃんがおまえさんの前で偽ってた、って事が気になるのなら、アタシがお前さんを赦すから」

「……へ?」

 

 

どういう事か? と首を傾げた所で、畳みかけられる。

 

 

「お前さんだって、嘘をついてたろ? 細かい事言う気は無かったが、気にするようじゃ、私が言ってやるよ。ついさっき、私にこの姉さんを妻だとか、言って嘘ついてたじゃないか! つまり、嘘つき同士のお互い様って事だよ! 姉さんも、まさか嬢ちゃんの母親だったとはねぇ!」

「ふぐっ……!」

「っ………」

 

 

それはぐうの音も出ない。

確かにあの嘘はジルコニアが咄嗟に着いたとはいえ、カズキも加担しているも同然だ。

もし、事前打ち合わせしていたとしても、身分は隠そうとしているし、現在でも カズラ以外には本当の意味での本当の事は話していないから、嘘継続中だと言ってもおかしくない。

 

 

「クレイラッツの有力者だったら、嬢ちゃんと結婚する事でどんな利益が得られるか。どれ程大きいか解るだろ? 将来的にはイステール領の領主様じゃないか。こんないい話を断ってたら、お前さん、後で絶対後悔するよ!」

「え? あー――そう言えば、それもありましたね……」

「そう言えばそれも、じゃないさ! どんだけ、お気楽な性格してるんだい!?」

 

 

思わずツッコミを入れるクレア。

カズキは苦笑いをした。

クレイラッツの有力者だと言うのは、リーゼの推測であり、推理。

金持ちであり、地理的にどこが一番近いのか、そして当然敵国(バルベール)は除外。ならば、消去法でクレイラッツ、なのである。

 

 

そして、こうなたら仕方ない。

自分自身が、彩らなければならないだろう。どういう道に通じるのかは検討もつかない。

 

ただ、自分とカズラでは絶対的に違う物があるのも事実。

 

 

それを考えて……どうするのか。

 

 

「解りましたクレアさん。ご忠告の件も考慮して、しっかり話をしておきますので、取り合えず今は――――」

 

 

兎に角話をする、と言う事で落ち着いた。

問題を先送りにしてるだけの様に思えるが、仕方ない。

今日、此処に持ってきた話の内容だって十分過ぎる程重要だから。(殆ど言い訳)

 

 

カズキはそう言うとジルコニアの方を見た。

すると、その意図が解ったのか、まだ表情を歪ませているジルコニアだったが、小さく頷くとクレアと本題に入るのだった。

 

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