ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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42話 にゅふふ、と笑う

 

 

いつまでも大空に舞い続けたい――――とリーゼは思っていたが、夢とは必ず覚めるモノ。

 

自分にはやらなければならない事も多くあるし、何時までも夢に甘え続ける訳にはいかない……と、まだまだ飛んでいたい気分をどうにか押し殺して地上に降りたのは、実に1時間後の事だった。

 

その後、十分な準備期間でカズラはリーゼにプレゼント企画を遂行。

……でも、1時間も当然ながら要らないので、屋上にまでやって来て下からカズラは眺めていたくらい時間を持て余していたりする。

 

 

勿論、プレゼントの内容は ジルコニアに渡した物と同質。化粧品類。

―――リーゼが益々笑顔になり、世の男を虜にするのでは? と思う程の輝く笑顔を魅せ続けるのだった。

 

 

 

 

 

そして、やってきたのは夕食時間。

神々とイステール一家が揃って食事を口へと運んでいたのだが、あまりにも不自然? なので、ジルコニアは首を捻る。

 

 

「にゅふふふ………」

「(えぇ……? 何なの、これ……)」

 

 

物凄く上機嫌なリーゼがそこに居たから。

それこそ、普段はやらない様な……、寧ろ出してはいけないのでは? と思える小さな笑い声? を出しつつ、緩み切った頬をしている。

 

リーゼは可愛い、美人だが、それでも絵になるにはなる――――が、普段の彼女を良く知っているジルコニアやナルソンからすれば、違和感満載だ。

 

ナルソンは、特に問題視してなく、ジルコニアが問題視して、凝視していたのは、昼間の一件があるからだろう。

 

 

「(正直、お通夜みたいになっちゃう事覚悟してたけど………)」

 

 

メロメロばんばん発言を聞き、血の気が引いたあの時は一体何だったんだろうか?

 

カズキが大丈夫だ、と何度も言っていたが、正直気が気じゃない。

 

優しい人だから、気を使ってくれてる程度にしか思っておらず、心証回復には途方もない時間を要する、とも思っていたのに。

優しいからこそ、ジルコニア自身も解っているからこそ、その仕草や余計な気遣いが正直辛くもあった。

 

でも、当のカズキは混じりっけ無し、掛け値なしの笑顔。リーゼは破顔。

その横でカズラも、2人を見守るかの様に微笑ましそうに見てる。

 

 

―――いくら考えてみても意味が解らない。

 

 

従者であるエイラも、リーゼの様子には困惑している様で、目が点になってしまっていた。

 

 

「リーゼ。何やら随分機嫌がいいようだが、何かいい事でもあったのか?」

 

 

問題視していない、、が、それでもやっぱり自分の娘が嬉しそうな表情をしていれば喜ばしいものだ。

何せ気苦労を絶えずかけており、更に最近では面会機関も増えて更に負担をかけてしまっていると言う自覚がナルソンにはあったから。

 

 

「はいっ、とてもいいことがありました。……うふふ」

「ほう、何があったのか、教えてはくれないかな?」

「先ほど、カズキ様ととても素敵な一時を過ごす事が出来ました。それと、カズキ様、カズラ様からお肌のお手入れ用の化粧品や洗髪剤を頂いたんです。それが使うのも楽しみで」

「! カズキ殿とカズラ殿から?」

 

 

ナルソンが2人に目を向けると、カズキは勿論、カズラも笑みを浮かべた。

 

素敵な一時を過ごせた―――と言う面に着目もしている。

 

 

「(やっぱし、娘さんを持つ親だもんなぁ、……怒られちゃうかな? そんな風に言わせちゃったら……)」

 

 

―――オレの娘に手ぇ出しやがって!!

 

と、世間一般的にはなりそうな気がする。

お付き合いさせて頂いてます! みたいな挨拶してないし。

 

 

だが、その心配は全くの杞憂と言うモノだ。

言うなら世界観―――と言うモノがあるだろうか。日本的なモノとはまた違うのだ。

 

それでも共通しているのは、娘の幸せを嬉しく思わないワケが無い、と言う面だろう。

 

 

「リーゼさんにはとても助けて貰ってますから。以前、ジルコニアさんへ、カズキさんから渡してもらった物と同じ物を」

「あ、それともう話をしてますんで。―――私達の事」

 

 

事情を説明する流れで、カズキがカズラの説明が終わったのを見計らって、指先を光に変えて、周囲を彩った。蝋燭の火が光源である食堂が一際鮮やかに光輝く光景。

 

初めてではないにしろ、自己紹介をした時以来なので、ナルソンは当然ながら、ジルコニアも、リーゼもエイラも、皆目を見開いていた。

 

驚かせるつもりは無かったので、カズキは直ぐに光を引っ込める。

 

ピカピカの力は、妄りに披露したりしていない。

この様な場ではあの初めてナルソン達と会った時以来だ。

 

 

「おぉぉ……、何とも神々しい……。カズキ殿、カズラ殿、ありがとうございます」

 

 

改めて、ナルソンはその神々しい光を見て跪きそうになる……が、それをするとカズキが止めに入るので、どうにか堪えた。

 

普段の接し方や話し方、どう見ても、どう接しても人間のソレにしか見えない感じないのだが、改めて見せられると、彼が人を超越した神、メルエムであると言う事を認識させられると言うものだ。

 

そして、リーゼに関しては、実をいうとそろそろ2人の素性を話していいかを相談しようと思っていた矢先だった事もあり、願ったり叶ったり。

 

だが、相談するまでも無く、自らが明かした現状は好ましい以外の何物でもない。

自分自身の娘も、神々に認められたも同然なのだから。

 

 

「リーゼ、よかったな。今後もしっかり頼むぞ」

「はい、頑張ります。……にゅふふふ」

「(これは、餌付けされて……? いや、でも何だかそれ以上な感じが……)」

 

 

化粧品については、ジルコニア自身も良く知っている。

常日頃気にかけているリーゼだ。魔法と見紛う変化を見せる化粧品など喉から手が出る程欲している事だろう。

 

それを餌に釣られた……? と一瞬考えてみたが、リーゼのその表情はまた何処か違った。

いや、確かに緩み切った姿は、日頃見せない。凛とした佇まいは何処行った? と聞きたくなる。

 

 

でも、リーゼのその表情は…… 言うなら恋する乙女の様な――――。

 

 

 

 

 

 

「ところで、そろそろ北西の山岳地帯に製氷用の溜め池をつくる場所を探しに行きたいと思うんです。造るのは人払いが済めば直ぐに出来るんですが、やはり立地条件等になると、ナルソンさん達に声をかけておかないといけませんから」

「私も、10日くらいで一度グリセア村へ戻らなければならないので、その位を目安にして頂けると助かりますが」

「では、近日中に迎える様に予定を整理しておきますね。リーゼも同行させてよろしいですか?」

 

 

ナルソンの言葉を聞いて、リーゼはカズキ、カズラの方を見た。

連れて行って‼ と言っているかの様。聞くまでも無くOKを出すのはカズキだ。

 

無論、カズラとアイコンタクトはしっかりとって。

 

 

「グリセア村には、イステリアの職人さんたちにも同行して貰いたいので、リーゼが一緒だととても助かります。それで良いよね?」

「任せて! 大丈夫! エイラ、後で私の予定を調整して置いて。この際、断られそうな面会は断っちゃって良いから」

「か、かしこまりました……」

 

 

「……………ぉぉぅ」

 

 

砕けた会話だった。

神々と、光の神とまさかの砕けた会話。

 

それ程までにリーゼが踏み込み、そして受け入れて貰えた事に、ナルソンは天にも昇る思いだ。

 

ジルコニア程ではないが、情に訴える、と言う小賢しいマネを考えた事など幾らもある。カズキが大丈夫、力になる、助けると言ってくれているのにも関わらず、念には念を、と言わんばかりに詰め込んだ事だって何度かある。

 

国の為、民の為……と言い聞かせて。

 

 

何とも罰当たりな事かと一日の終わりにいつも自責の念に駆られるが、それらが払拭した思いだった。

もしや、リーゼが娶られる事があるなら……? 神の国へと向かわれてしまうのだろうか?

 

別の心配事が増えてしまいそうだが、カズキの人柄を考えたら、そんなことはしないだろう、と希望的観測がやや大きいにしても、そう確信してしまう。

 

娘と離れ離れになるのは寂しいモノだから。……いずれは、離れる定めだとしても。

 

 

 

ナルソンが色々と復興とは全く関係ない事まで考えに耽っていたその時だ。

 

 

「あ、モルタルと言う建築材料を作るので、石灰や砂、他にも幾つか材料を用意して欲しいです。後で、必要なものを紙に書いて渡しますね」

 

 

正直、心ここにあらずだったかもしれないが、そこは敏腕領主。

直ぐにスイッチを切り替える術は持っている。

 

 

「……解りました。直ぐに用意させます。カズラ殿、そのモルタルと言う建築材料ですが、石膏とはどの様に違うのですか?」

「使い方は同じようなものですよ。ですが、石膏に比べたら水に強くて頑丈なんです。なので、カズキさんに穴をあけて貰って、その穴をモルタルで敷き詰める事が出来たら、水が地面に抜けてしまう心配もなくなります」

「あははは……、加減はしてるんですが、地面が脆くなっちゃう可能性はありますからね。それをモルタルでカバーして貰うんですよ」

 

 

ナルソンはそれを聞くと《おお!》と声を漏らした。

 

 

「石膏よりも丈夫で水に強く、材料は石灰と砂ですか……。それは使い勝手が良さそうですな。何より安価で行えそうです」

「はい! 財政事情にも効果的かと。安くて大量に作れて、丈夫、ですからね。至れり尽くせり。ですが、あちこちで使う事になるので専門の業種を立ち上げないといけないですね」

「ふむ。石膏職人に兼任させるのはどうでしょうか。作業内容が似ていれば、モルタルの仕様になれるのも早いかと」

 

 

細かな内容が、決まっていく。

着実に国の未来を明るく照らしてくれるのを、より強く感じる事がリーゼには出来ている。

 

カズキと言う人の事を知って。……本当の意味で知って、より強く想えて来る。

 

 

「―――ふむ。リーゼ、石膏職人や陶器職人たちに顔は利くか?」

「はい!」

 

 

リーゼは大きく、笑顔で返事を返した。

どうにか頼み込んでみる。この日の為に、今日と言う日の為に、頑張って来たんだ、とリーゼは思える程になってきていた。

 

 

 

「うむ。人数などの詳細は、また後でまとめて伝えよう」

「解りました。お任せください!」

 

 

リーゼの元気の良い返事は、こちらも笑顔にしてくれると言うモノだ。

ふと、カズキと眼が合うリーゼ。

 

ニッ、と笑顔で片目を瞑ってウインクしつつ、親指を持ち上げるサムズアップ。

サムズアップの意味は正確にはリーゼは解っていないのだが、それが何を意味しているのか、本質は解る。

頼りにしてくれていると言う事が良く解る。

 

 

「頑張りますね! ……にゅふふふふ」

「(ま、まぁ……何はともあれ、安心……ね)」

 

 

ジルコニアは、正直、あの笑い方は、普段のリーゼのソレとは全く違うので、公私で弁えた方が良い気がするが……、心から笑っているので、ヨシとする事にした。

 

そもそも、この場は会議とはいえ、家族と近しい者、カズキとカズラだけだ。

 

自然体なリーゼを見られる事は良い事だと、カズキやカズラもそう思ってくれていると、ジルコニアは感じるのだった。

 

 

 

 

 

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