ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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44話 リーゼさんの愚痴

食事休憩を、川べりにて取っているリーゼ、カズキ、カズラの3人。

 

本来なら、天幕で取るのが通常なのだが、空が満天の星空だと言う事もあり、絶対に外で食べた方が気持ちが良い、と言う提案があって、こういう形になった。

 

川のせせらぎや星明り、そして近くて燃える焚火の炎。何とも風勢がある―――と言えなくもない空間なのだが、結構乱暴な言葉が飛び交っていた。

中でも一番キツイ言葉は【死ねば良い】だろう。

 

まぁ、詳しく理由を聞いてみると、仕方ない、と思うのはカズラとカズキ。

 

 

「なるほどなるほど……、それで【死ねば良いのに】か……確かに、言いたくもなるなぁ」

「でしょ!??」

「でも、クレアさんの店とはいえ、あーんな大声で言わなくても……、普段のリーゼ知ってる皆さんに、もし聞かれちゃったら、即倒ものだよ?」

「う゛……、そ、それは気を付けてるもん……。聞かれちゃったけど………」

 

 

カズラは、解る事は解る、と納得し、でも、気を付けた方が~と忠告するカズキも間違ってないだろう。

リーゼが一番迷惑を被ってる相手、それを思い出していると、相当むかっ腹が立つのか、カズキの指摘も忘れて、パンをちぎっては口に放り込み、頬を膨らませた。

 

 

「でもさ、そんなに嫌なら断っちゃえばよいんじゃないか? そいつと結婚するつもりないなら、別に無理して面会を続ける必要はないだろ?」

「あ、それオレも思いました。ジルコニアさんやナルソンさんに言えば、対応はしてくれると思うんだけど―――」

 

 

カズラとカズキが示し合わせてリーゼを見る。

ぷんすか! と怒っていたリーゼだったが、2人の提案については首を縦に振る事はなかった。

 

 

「んーん。そういうわけにもいかないの。簡単に断って悪い評判を広められるのは嫌だし。お父様とお母様は、私を第一に考えてくれてるんだけど、やっぱり私の行動が原因で迷惑かけちゃうのはもっと嫌。ほら、大抵の人は商業取引とか仕事の口利きとかで、イステール家を支援してくれてるから」

 

 

簡単に話をしているけれど……、リーゼにとってはそんな簡単な話じゃない。

もう慣れた、と言えばそうなのかもしれないが、彼女はまだ14だ。……そう言った事情に慣れてしまうのは如何なものかと思ってしまう。

もっと、年頃の……自由な………と頭の中に浮かぶが、それは封印する。彼女に対する失礼な事になるだろうし、上に立つ者としての覚悟はもう既に出来上がっている筈だから。

 

だからこそ、本当の意味で信用に足る者たちの前では、普段とは比べ物にならない程の仕草、態度で接するのだろう。

解放される機会を増やす手助けが出来ただけでも良い、とカズキは思えた。

 

 

「つまり、みんなリーゼ目当てで色々イステール家に気を使ってるも同然、って感じなのか……」

 

 

カズラもカズラで大分思う所がある様だ。

横目から見ても渋い表情をしているのがよく解ったから。

 

ただ、リーゼは何の感慨も無さげで、淡々と話しをした。

 

 

「領主の地位が目当て、って感じの人も沢山いるから、全員が私目当てって訳じゃないと思うよ。もう何年も前からずっとこんな感じだし」

 

 

ハードな話だ。当事者にしか分からないとは思うのだが、聞くだけで十分解るし、伝わる。

 

 

「だから、ある程度権力があって、お金持ちの相手とじゃないと結婚するつもりはないの。……とはいっても、ニーベルみたいな気持ち悪い奴とか、領主になって好き勝手にやってやろう、って考える様な奴は絶対に嫌。あ、後は逆にケチケチし過ぎてる人も嫌かな?」

 

 

指折りしながら、男のリクエスト、最低条件を口にしていくリーゼ。

 

 

「や、前言撤回するよ。リーゼ」

「え?」

 

 

カズキは、ぽんっ、と膝を叩いてリーゼに言う。

何を撤回なのか? とリーゼは勿論、カズラも興味がある様に視線をこちらへと向けた。

 

 

「オレ達の前じゃ、幾らでも大声あげて言っちゃって大丈夫! うんうん、言わなかったらやってらんない、ってのは十分解るし、エイラさんやクレアさん以外にも、息抜き出来る場所があっても良いと思うんだ。と言うか、それになれたらオレが嬉しい!」

 

 

腕を組んでうんうん頷きながら結論を出すカズキに、カズラも笑っていた。

 

 

「だよねぇ。リーゼだって相当苦労してるんだ、って分かるし。オレもカズキさんに賛成で! ……うーむ、結婚狙って最初から言い寄ってくるとか」

 

 

年端もいかない少女に対して一体……と言うのは、世界観の違い(ワールドギャップ)(造語)、と言うヤツだろうか?

 

領主の娘とはいえ、常識はずれの様な者もいる。間違いなく負担だ。軽減されたなら嬉しい。友達として、付き合っていくなら、友達の為なら。

 

 

「ふふ。ありがと。……でも、領主の娘なんてこんなものでしょ。まともに恋愛して結婚なんてできるわけがないよ」

 

 

もう割り切っている、と言わんばかりに普通にしながら、川に目を向けて、追加の料理を口に運んでいっている。

 

やはり、達観するには少々早過ぎる……と世界観の違いがあるとはいえ、そう感じてしまうカズキもカズラも仕方が無い事なのだ。

 

 

「んじゃ、2人の前じゃ、思いっきり愚痴聞いてもらうからね!」

「おっしゃ! よっしゃ! どーーんと来なさ~~い! オレ達、お兄さん2人、いつでもオープンだよ!」

「うんうん」

 

 

リーゼの宣言に大きく頷くカズラとカズキ。

にまっ! と口端を歪めながら、リーゼは追撃をする。

言質をとったのだから問題ない、と言わんばかりに。

 

 

「言い寄ってくるやつらから、色々もらえるし、それ売って美味しいもの食べたり、綺麗な服買ったりしてもぜーーったいバチあたらないと思うの」

「当たりません! ぜーーーーったい! メルエム様が保証します! あ、グレイシオール様も同じで」

「勿論! 面会のストレス発散くらい全くもって問題ないよ。お釣りがくる、ってもんだ」

 

 

2人の神様のお墨付きを貰ったのだ。

リーゼの笑顔は一段階増した様に花開いた。

 

 

「あ、でもさ、そんなに沢山の面会者が来るなら、良い人1人や2人、いたりしなかったのか?」

「え? ……いたらとっくに結婚してるよね」

「………そう言えば、もう適正年齢……だっけ」

 

 

14とくれば、まだ中学生。中学二年生。中二! 厨二!! と言った単語がある様に、実に多感な時期なのに、とまたまた世界観の違いに、違い過ぎる事に面食らう。

 

 

「あーあ、やーーっといい人見つけた、って思ったんだけどなぁ、その人には思いっきり引かれちゃったし。何なら実は嫌われてたり? もう、これからどうすれば良いんだろ? ねー、カズラー」

「だよなだよなぁ。可愛くて、可哀想なリーゼ。」

 

 

 

2人して、ジトォ~~と見てくる。

何だろ? 名指しされた訳じゃないのに、ここまで態度でハッキリわかっちゃうのも一周回って面白い。

 

 

「えぇ~~、引いたり嫌ったりしてる人を、夜空の世界に連れて言ってあげたりするのかなぁ―――、奮発したつもりなんだけどぉ、そうとっちゃうのかぁぁ、メルエム悲しいなぁ~~。今度からは、しない方が良いのかなぁ~~。じゃあ、他の―――」

 

 

しょんぼり、しょぼんぬ(´・ω・`)

 

と、これまたわざとらしく沈んで見せるカズキ。

すると、まさかの反撃を予見してなかったのか、リーゼは大慌てでパンをかじったまま、両手を上に上げてパタパタ、と振った。

 

 

「わーーー、待って待って!! じょーだん、じょーーーだんだからっっ!!」

 

 

どんな金銀財宝であっても、不可能である神秘の世界だ。

翼を授けてくれて、空を共に飛ぶ絵巻物の世界を体験出来た事はリーゼにとっては一生の宝物だし、何なら一定間隔で招待してもらおうと画策してる矢先。

あまりにも悪手な手だったので、急いで方向転換。

 

 

 

 

「「ぷくくくく」」

 

 

 

 

 

大慌てっぷりを見て、笑いに笑うのはカズラとカズキ。

どうやら、カズラはどっちつかずのスタンダードだった様で……。

 

 

「むむむ!! か、カズラにだって、色々聞くんだからねっ! 村に着いたら、紹介してもらうんだからねっ! そのバレッタって恋人のこと利かせて貰うんだからっ!!」

「ぶっ!?」

 

 

カズキは兎も角、カズラが笑ってるのはゆるせん! とばかりに、矛先をカズラへと向けた。

 

 

「ですねですね! 紹介してあげましょう! なんなら、婚礼の儀式を~~メルエム様()の前でどーぞ! こちらの形式いまいちわかってませんが!」

「な、何言ってんの!? ちがうちがう!!」

 

 

あまりにも年下だし、慕ってくれてるのは嬉しいカズラだが、流石に一足飛び足ではいけない。日本的な常識が染みついてる2人なので、中学生相手に結婚ともなると当然だが躊躇する。と言うか犯罪だ。

大人になって~~と言いたい所ではあるが、正直この世界は明日無事かも解らない部分も有るので、安易に先伸ばしな事を言うのもどうか、と思ったりもしているが。

 

 

因みにカズキはカズキで、どっちつかずな姿勢に罰を! と思っちゃったりしてるので、リーゼに便乗、である。

現在はカズキこそが、どっちつかずなポジションなのだが……、それはそれ、これはこれ、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一頻り笑った後、リーゼはカズキを見て言った。

 

 

「空を飛ぶ魔法をかけてくれた、って事は、私の事引いても嫌ってもない、って事で良いのよね?」

「うん。勿論!」

「―――じゃあ、私と結婚してくれる?」

「あはは……イコール結婚に結び付けるのあの店以来だね」

 

 

嫌いじゃないから結婚。

どうでしょう結婚。

クレアからも結婚。

 

散々押しに押されたあの店でのやり取りを思い返してカズキは笑う。

 

リーゼは美人だし、好ましいし、性格も全て含めて好印象しかない。メロメロばんばん事件だって、知った上で踏み込んだのだから、悪い風に感じるなんてあり得ない。

 

 

だが、それでも―――。

 

 

 

「オレが、普通の人(・・・・)だったら、その手を取ってたかもしれない、かな?」

「……………」

 

 

 

カズキはそう言って、軽くリーゼの頭を撫でて鋤いて上げた。

どうやら、トリートメント等はしっかり使ってる様で、非常にサラサラ。撫で心地は最高だ。

 

 

「ぶ~~。神様と人が結ばれる~~、なんて、絵巻物じゃ沢山あるんだよ~~」

「あっはっは! 絵巻物~って言うよりは、神話の一節になっちゃいそうだね?」

「そう考えたら、確かに面白いね。復興と同時に、だから。まさに神話そのものだし。……まぁ、当事者としては全然ピンときてないんだけど」

 

 

 

最初の愚痴ばかりな辛気臭い話題が続いたので、ふざけ合ったら、大分気持ちも晴れやかになってきた。

 

 

一頻り3人で笑った後―――話題に上がるのは、少し前に離れていったジルコニアの事。

 

 

 

 

「そう言えば、ジルコニアさん随分遅くない? 畑ってそんなにここから遠いのかな?」

「確かに。……んん、時計無いから、読めないんだけど体感的には小1時間? ひょっとしたら1時間以上?」

 

 

話が楽しくて時間を忘れてしまっていたが、それくらい話していてもおかしくない。

つまり、ジルコニアはそれほどまでに長い時間いなくなっている、と言う事にもなる。「

 

 

「えっと、イステリアを出発する前に、地図を見たんだけど、そんなに距離は無かったと思うよ。………でも、確かにちょっと遅いね」

 

 

 

リーゼは事前に地図を見て周辺地域の地形はしっかり頭の中に叩きこんでいた。

だからこそ、直ぐに解るのだが、周囲が暗いからと言っても、大体10分ほど歩いた場所。険しい道のりと言う訳でもない。

 

 

「向こうで何か問題があったんだろうか……、様子を見に行った方が良くないかな?」

「ジルコニアさんが凄く強いのは剣を交えてるオレが良く知ってる~……ケド、だから心配しなくて良いって訳にはならないし。賛成です。――確か、護衛はつけてなかった筈ですし」

 

 

カズラもカズキもジルコニアと別れた時のことは覚えている。

森の方へと足を踏み入れる彼女の後姿。そこには誰も護衛はつけていなかった筈だ。

 

この国でも指折りの剣の達人であり、紛れもなく最強クラスの武力の持ち主―――とは言っても夜遅くに、帰りが遅く、更には森の中、ともなれば……。

 

 

と、カズラがまず先に立ち上がったその時だ。

 

 

「ちょっと待って」

 

 

リーゼがカズラを制した。

 

 

「もう少しだけ、待って見ようよ。……ここって、多分お母様の故郷だと思うから」

 

 

リーゼの言葉に、慌てていたカズラは勿論、カズキも少しだけ固まってしまう。

 

 

「それって………」

「うん。……カズキは、知ってたみたい、だね」

「……うん。少しだけジルコニアさんと話をしたからね。―――(メルエム)として」

「それって一体……」

「すみません。妄りに話して良い内容じゃない、って判断したので、カズラさんには黙ってたんですよ」

 

 

カズラにカズキは説明をした。

ジルコニアの故郷は10年前に野盗に襲われて住人皆殺しにされたと言う事。

唯一の生き残りが彼女であり、家族は勿論、全て奪われたと。

 

 

その奪った相手が、敵国(バルベール)だと言う事も。

 

 

 

「……」

 

 

カズラも険しい表情をしたままだった。

気丈に振舞うジルコニア。

時にはお茶目な姿を見せるジルコニア。

訓練では鬼と形容される程の容赦を一切見せないジルコニア。

 

彼女と言う人格が形成される切っ掛けになったのは、恐らくはその事件のせいだろう、と断定するのは容易かった。

 

 

「だから、もう少しだけ、待って見よう?」

「……わかった」

 

 

リーゼの言葉に、カズラは納得するしかない。

 

だが、カズキは違った。

 

 

「リーゼ。ゴメン。……ちょっと、オレだけはいかせてくれないかな?」

「え?」

 

 

少しだけ、驚いた顔になったリーゼ。

カズキの顔を、姿を見ると、淡い光がぽつぽつと、その身体に瞬いているのが良く解る。

夜の闇に瞬く光。その黄金の輝き。―――神々しい、としか言い表す事が出来ない。

 

勉学にも励み続けてきたリーゼであっても、言葉で表す事が出来なくなってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

「光として、力になると彼女に約束をしたから」

 

 

 

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