ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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45話 幸せに

 

 

雲一つない夜空の下。

三日月が綺麗に顔を出しており、星々の輝きが満天の空を演出していた。

 

ジルコニアは、そんな夜空の下で、腰を下ろしていた。

 

丁度、土が盛られて積まれた3つの石。―――墓石。

1つは小さな墓、もう2つは少し大きな墓。

 

両親の間に挟まれていれば、2人が傍にいてくれるなら―――妹も寂しく無いだろう、と思い、彼女が手掛けたのだ。

 

それぞれの墓の前にはジルコニアが道すがら摘んできた山花がいくつも供えられており、小さい墓、妹の墓の前には、毛糸で作られた女の子の恰好をした小さな人形も置かれている。

 

 

「………もう、少し。もう少し……だから」

 

 

不意に、そう呟く。

両親の、妹の、……村の仇を討つ為に、ナルソンの元に嫁いだ。政略結婚ではあるが、それ以上に自分の願いを叶える為に、彼の妻となり、リーゼの母となったのだ。

農民と貴族が結ばれ、身分関係なく、一丸となって敵に抗う。―――士気向上は、これ以上ない程だった。

 

ジルコニア自身も、破竹の勢いで敵を薙ぎ倒し、常勝将軍とまで呼ばれて、王都では舞台の主人公として一大披露をされた事もある。

 

上々の滑り出しだった。……だが、それでも故郷を滅ぼした奴らの手がかりが全くつかめない。

 

それこそ、雲を掴むかの様だった。……口には決して出さないが、半ばあきらめかけていた自分も間違いなくいた。

 

そんな時に―――彼に、彼らに出会ったのだ。

 

1人は、大飢饉から民を救ってくれた。

御伽噺の通りに、慈悲と豊穣を与えてくれたグレイシオ―ル。

 

そしてもう1人……、全てを包み込み、全てを照らす光であるメルエム。

伝承は殆ど残ってない。ただ、光の総称がメルエム。そこに人格や神が居た……と言う記述は一切ない。神々の頂点に位置するリブラシオールの神話の中でさえ、光以上の伝承が無いのだ。

 

 

神話の一節に、自分は、自分達はまさにいるのかもしれない。

光の神は、誰よりも優しい。

彼と一緒に居る時は、心が穏やかになっていく。温かくなっていく。

心の奥では、諦めかけたとはいえ、いまだに復讐心に捕らわれた自分を優しく包み込んでくれる様に。

 

 

 

「―――でも、ね。こうも……思っちゃうんだ」

 

 

 

ジルコニアは、まるで幼子になったかの様な声色で、墓石に……恐らくは彼女の目の前には居るであろう両親と妹に語り掛ける。

 

 

 

「………あんな優しい神様に……、私は何てことをしてるんだろう、って。……ゴメン、ごめん、なさい。みんな………。かならず、って約束……したのに。私は……」

 

 

 

どんな手を使ってでも、仇を討つ気持ちだった。

それこそ悪魔に魂を捧げたとしても。

 

だが、ここへきて心が揺らぐ

 

安らぎを知り、心が揺らぐ。

光明が見えたが故に。

 

光は全てを優しく包み込んでくれるから。

 

 

―――そう、今もまた、光が……。

 

 

 

「ッ――――!!」

 

 

 

一体いつからだっただろうか。

気付いたら、温かな光の中に居た。

 

 

 

「おれ………私は、ジルコニアさんの味方ですからね」

 

 

 

光の中から、声が聞こえてきた。

とても優しい声。心が洗われる……そんな声が。

 

 

 

「メルエム……さま……」

「カズキ、でお願いしますよ。ジルコニアさん」

 

 

 

振り返ると、そこには彼と―――もう1人?

いや、カズキだけでは無かった。

大きな黒い獣―――ウリボウが居た。

 

 

 

「ッ―――う、ウリ……!!」

「し―――……」

 

 

 

ここまでの接近を赦してしまい、一瞬パニックに陥りかけたが、カズキがウインクをして、人差し指を口元に置き、落ち着く様に、としてくれたおかげで、冷静さを取り戻す。

 

最初から慌てる必要などない。カズキと共にいるのだから。

 

 

「ノワール。―――よろしく頼むよ」

「――――――」

 

 

ノワールと呼ばれた黒いウリボウは、ゆっくりと頷くと、ジルコニアの傍にまで移動した。

かなり大きな黒いウリボウだが、不思議と恐ろしさと言った類の感情を持てなかった。

 

それは、カズキと共にいたから等ではない。

 

 

 

「この村に留まっている魂を、送ってあげれるそうです。……これは、光の私には出来ない御業です」

「え」

 

 

 

ジルコニアは一体何を言っているのか理解出来なかった様だ。

だが、ほんの数秒後に―――景色が一変する。

 

 

廃村と化した村。

住人の最後の1人まで、墓を作り弔い……この場所には全員が云わば集まっている墓地だ。

 

その墓地から―――淡い光がたちまち現れた。瞬いては消え、瞬いては消え……それを繰り返している。

周囲を明るく照らす程の光。……その輝きはきっとメルエムの光にも負けていない。

 

 

 

「これ、これは…………」

 

 

 

何が起きているのか理解が追いつかない。

カズキの存在を知って尚、理解が追いつかない。

 

だが―――頭で理解するよりも身体が先に、本能が先に、これらの光が一体なんなのか―――ハッキリした。

 

ジルコニアの目から、自然に涙が流れ続けているからだ。

人前では決して見せない。1人の時だけは、どうしても止める事が出来ないが、想いを遂げるまで、決して弱い所を見せまいとしていたジルコニアだったが、止めどなく、涙が流れ続けていた。

 

 

 

 

「ノワ。大丈夫?」

「―――――」

 

 

 

 

ぺこり、と頭を下げて大丈夫である所作をするのを確認した後。

カズキもノワールの傍に立った。

 

 

 

 

 

「ジルコニアさんは、頑張ってます。……私も傍にいます。どうか、ご安心を」

 

 

 

 

 

光たちに一礼する様に、胸に手を当てて頭を下げる。

カズキが光りの神メルエムである事は、光たちも解っていた様で、まるで慌てている? かの様に忙しなく動いていたが、ノワールが軽く目を細めて、小さく頷くと……どうにか落ち着いた。

 

 

 

 

 

「おと……さん? おかあ、……さん?」

 

 

 

 

 

光たちがジルコニアの周囲で瞬き、1つ、また1つ―――と消失していき、軈て光は3つだけ残った。

小さな光が1つと、少し大きな光が2つ。3つの光がジルコニアを包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィリ……ア………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大粒の涙をこぼしながら、ジルコニアは地に手を付けて張り裂けんばかりの胸の内を吐き出した。

 

 

「ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい、おとうさん、おかあさん、フィリア、ごめん、ごめんなさい――――ッッ」

 

 

身体の震えが止まらず、ただただ泣きながら許しを請うジルコニア。

そんなジルコニアに、優しい声が響く。

 

 

 

 

 

 

「おねえちゃん」

「「ジルコニア」」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

3人の姿が、ハッキリと見えた。

そこにあるのは笑顔だけだった。赦し,赦される、懺悔をする必要などない、と言わんばかりだった。

 

一頻りの笑顔を見せた後に、再び淡く光だし、その表情が消えかかる所で。

光たちの、父と母、妹の3人の願いを、ジルコニアに……。

 

 

 

【―――――幸せに】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノワ。ありがとう。……また、後で」

「――――――」

 

 

カズキは暫くジルコニアの傍に。

ノワールは役目を終えた、と言わんばかりにカズキからゆっくりと離れようとした。それをカズキが先に気付いて、頭を下げたのである。

 

事前に確認していたとはいえ、カズキからの礼と言うのは、ノワールにとっては格別なモノがあるのだろう。

 

死者の魂を可視化させる。

ノワール自身の魂を使って可視化させる。

かなりの負担のかかる御業を、使ってくれたのだ。

 

カズキ自身は、正直な所……ノワールに負担を強いる事を是としなかったので、首を横に振ったが、ノワールは する、と言った。ジルコニアの話は知っているが、やはりカズキの力になりたい、と言う気持ちが強かったのだろう。

 

 

「―――また、約束を」

「ん。了解。……それくらいで良かったら幾らでも」

 

 

カズキがそういうと、ノワールは光の領域から外へと出て、闇の中へと消えていった。

 

ノワールを見送った後、カズキはジルコニアの方を見る。

まるで子供の様に泣き続ける彼女を、見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日―――同刻。

 

野営地・ジルコニアの故郷から数キロ離れた山の中にバレッタはいた。

静まり返った山の中で、ドーム状の炭窯の前で膝を抱えて座り、うつらうつらと襲ってくる眠気と戦っていた。

 

直ぐ隣にはニィナが眠っている。今交代しながら睡眠休憩を取り、炭窯を監視しているのだ。

 

カズラが日本から持ち帰ってくれた書物の中で、こちらの世界でも出来る、応用が利く技術を勉強し、実現するにまで至っている。

 

炭窯の中で燃えている薪は、今回税としてイステール家に納めていないものだから、ある意味丁度良かったのかもしれない。税を納めていない……と言う負い目は少なからずあるが、それを挽回する、挽回できる程の成果を上げるべく、夜も頑張っているのだ。

 

 

「………ん」

 

 

睡魔と戦い、半分以上は夢の中の住人になりかけていたバレッタだった。

そんな夢現かと思わしき景色の中に―――自分を真っ直ぐ見つめてくる獣が居た。

 

 

「(あ、ウリボウ……だ)」

 

 

自分よりも遥かに大きく、そして真っ直ぐ見据えてくるウリボウ。

肉食獣であり、遠出する時も決して油断してはならない大型の獣……が、こんなに近くに。

それも見た事の無い程の巨躯で――――――。

 

 

数秒。漸く自分が何と対峙しているのかを理解し、一気に全身が総毛だった。何故悠長にウリボウだ、などと寝惚けていられたのか、と自分自身が腹立たしく思うが、今はそれどころじゃない。

 

 

「ッッ―――!!」

 

 

兎に角デカい。巨大なのだ。自身が見た事のあるウリボウより二回り―――はデカいだろうか。

 

群生地でもあるが、猟師であるロズルーから、炎を焚いていれば、ウリボウは寄ってこないと話には聞いていたので、完全に油断をしていた結果ではある。

 

バレッタは、直ぐに立ち上がり、護身用に持ってきていた長槍を構えようとしたが、この時―――彼の声が頭の中で響いてきた、そんな感じがした。

 

 

【ノワール、って言います。オルマシオールの友、って感じでしょうか? ノワールは他のウリボウとは黒い毛で解り易くて、もう1人は、兎に角大きな体なので、会う時はビックリしますよ】

 

 

以前、カズキが話してくれた神オルマシオール。

会う……かも? と言う話もしていたが、正直話半分だった。会うにしても、恐らくはカズキと一緒か、もしくはカズラとだろう、と思っていたから、尚の事驚きだ。

 

 

 

「オルマシオール……様、でしょうか」

 

 

 

もしも違ったなら。突然変異体のウリボウであったなら、……命懸けの戦いになってしまうが、神オルマシオールであれば、神に対して武器を向けると言う不敬を買ってしまう。

バレッタは、極限の場面に出くわして、どうすれば正解なのか、解らずにいたが、兎にも角にも、声を先にかけたのは良かった。

 

 

「カズキさん……、メルエム様から、お話を―――」

「………ふむ」

「!!」

 

 

声が響いてきた。

ウリボウが口を開いた。

カズキが言っていたオルマシオールだと、バレッタは確信した。同時に、長槍を向けなくて良かった、と身体から冷や汗が出そうになるが、まだまだ気は抜けない。

 

 

 

「お前は、かの御方の……なんなのだ?」

「ッ……わ、わたし、私は………」

 

 

 

カズキの何なのか?

自分はカズキとどういう関係?

 

助けてくれている。

勇気づけてくれている。

沢山楽しい話をしてくれている。

 

 

それらを、合わせて考えてみると――――。

 

 

 

「大恩のある……方です。私達を救ってくれている、光の神様……」

「――――………成る程」

 

 

ゆっくりと、頷いて見せると巨躯のウリボウ……オルマシオールは座った。

 

 

 

「かの御方にもお伝えする事ではあるが、お前も聞くが良い。……やつらは、手当たり次第に目の突くすべての木を切り倒している」

「……やつら?」

「……大恩の方、と言ったが、意に添わぬ事はしないであろうな? この山を、お前達はやつらの様に全て切り開く、と言うのか?」

「そのような事は致しません。……メルエム様に、グレイシオール様に誓います」

「………ほう、ならば切った後どうする?」

 

 

オルマシオールとのやり取りは神経を使う―――と思っていたが、バレッタ自身も驚く程スムーズに話をする事が出来た。

最初から、誰なのか解った時点で、嘘をつくつもりは毛頭ないが、この存在の前では思った事、問われた事、その本心をそのまま口に出されるのだとバレッタは思った。

 

だから、ハッキリと答える。

 

 

「禿山にならない様に、木を切った跡地に、植林を行います。……山を切り開いた結果、何を齎すのか、自然の恐ろしさは、カズラさん……グレイシオール様から学びました」

「……」

 

 

正確には歴史書等を見せて貰っただけであり、カズラ自身がそこまで細かく教えた訳ではない……のだが、バレッタにとっては同じ事なのだ。

 

 

「強く硬い木を切ってはならぬ。……乾いて死にたくなければな。………だが、心配はしておらぬぞ」

「……え?」

 

 

起き上がると、背を向けたままバレッタに言った。

 

 

「かの御方が、お前達を信じているからだ。……ならば、我々も信じるに値する」

 

 

そういうと、ゆっくりと森へと帰っていった。

カズキに信頼されている? いや、ハッキリとカズキと言う名を聞いてはいないが……。

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待ってください。御方と言うのは、カズキさんの――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バレッタがそう叫んだ時には、もうあのウリボウの姿はどこにもなかった。

炭窯で燃えている炎が揺れているだけであり、まるで夢でも見ていたかの様。

 

 

「ど……どうしたの? 急に大声出して」

 

 

眠りこけていたニィナも流石にバレッタの大声を聞いて目を覚ました様だ。

まだ眠たいのか、目元を何度も擦っている。

 

 

「今、今ね。とても大きなウリボウが……」

「えええ!!?」

 

 

ウリボウ、の名を聞いた途端、完璧に目が覚めたニィナは弾かれた様に起き上がると、護身の武器を構える。……が、何処にもいない。

 

 

「………なにも居ないけど、本当に見たの?」

「え? うん。……ウリボウ、じゃない。オルマシオール様が」

「―――え?」

 

 

オルマシオール、の名を聞いてぎょっとするのはニィナだ。

グレイシオール、メルエムと来て、オルマシオールが降臨したとしても不思議ではないのだが。

 

 

「オルマシオール様って、ウリボウだったって事……?」

「あ、いや。実は前にカズキさんから少し聞いてて。……それに、話しをする事も出来たから」

「…………バレッタ。疲れてる、って訳じゃないわよね?」

「だ、大丈夫大丈夫。……オルマシオール様、カズキさんの事も言ってて、私達の事も信頼してる、って言ってくれたよ」

「!! 3、3人の神様に信頼されてる……って凄い事じゃない?」

 

 

あまりの展開にただただ唖然とするしかない。

少し前までなら、夢でも見たんだろう、と笑うのだが カズラを始めとして、カズキと出会い、色々な事が起き過ぎてて、最早疑うと言う考えが消し飛んでしまっているからだ。

 

 

騙しに来る人がいたら、簡単に騙されてしまいそう…………なので、人選はしっかりするが。

 

 

 

「また、カズキ様が戻ってきたら、今日の事ちゃんと伝えておきましょ」

「うん」

 

 

 

完全に目が冴えてしまった2人。

本当なら、交代で眠る筈―――だったのだが、朝まで今の事を語り明かすのだった。

 

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