ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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51話 天国と地獄

 

 

今日も今日とて、カズキはグリセア村の子供たちの相手をしつつ、しっかりと復興業務も熟している。

 

そして相棒? 雇用主? のカズラは日本との往復に精を出している。

 

あの濃霧の件もあって大丈夫か? と渋っていた様だが、発生源はオルマシオール、ノワールたちが原因だから、基本的には大丈夫―――と言う話を聞いてるので、特に問題なく日本とアルカディアの行き来をしている。

 

今回は問題なかったが、もしもの時の為、無線機の類は必要になるだろう、と調べて購入する予定だ。

 

他にも大きな買い物で言えばエアコンやノートパソコン。頼まれものの化粧品・酒類・食料と沢山買い物が控えているが、その辺りは通販でも十分補えるのでカズラ一人で大丈夫なのだ。

 

 

 

「カズキ様……、ほんともう直ぐ行っちゃうの?」

「寂しいよぅ。もっと一緒にいたいよぅ……」

 

 

村へとやってきたら、帰る時期を絶対に先に告げている。

故に、その日が近づくにつれて、子供たちの顔が解りやすく曇り始めるのだ。

 

 

「大丈夫大丈夫。また遊びに戻ってくるから。そんな心配しないで。……それに、このグリセア村みたいに、他の村や町を元気にしないといけないからね?」

「ぅぅ……」

「そしたら、他の子達と友達になったりできるかもしれないよ? もっともっと沢山集まって遊んだり、勉強だってしたり、楽しい事が沢山待ってるかもしれない。だから、皆もグリセア村で頑張って欲しいんだ」

「ッ――――うんっ、わたし、わたしがんばるっ! カズキさまのためにも、がんばるっ!」

 

 

村で一番しっかりしている子供の一人でもあるミュラが半べそかいている皆の間を縫って縫って、カズキの傍でしっかりと宣言した。

その目にはやっぱり寂しさからか、涙がにじみ出て居るが、それをぐっと我慢して、堪えて。

 

それにカズキは必ず戻ってきてくれるから。約束したら、違えたりしないから。短い時間だけど、合間合間で会いに来てくれるから。……だからこそ、いなくなったら寂しさが増してしまうのだが、それはもう仕方がない。

我儘を言うのは子供の特権の1つ。ある程度聞きつつ、ある程度我慢も覚えるのも大切な事。

ミュラを筆頭に、頑張れる子達だ。

 

だから、きっとこの村の未来は明るいし、安泰だ。

 

 

「カズキ、凄く子供の相手が上手だね。優しい旦那様って感じがするよ」

「あっははは。俺が遊ばれてる感じがするけどね。……この村の子供たちは皆逞しいよ。大変な時代に生まれて、大変な事も経験してきてるのに、前を向いてる。子供たちは、明日の世界の主役。……イステリアの明日はまさに安泰」

 

 

ニッ、と笑うカズキを見て同じく微笑むのはリーゼ。

 

子供たちの間ですっかり人気者になっているリーゼに対しても、子供たちは半べそかいて帰らないで、と懇願してきたのは言う間でもなく、それをギョッとして止めていた親御さんたちもいて大変だった、と言うのは当然の話だ。

 

 

「――――私も、あの子達が安心して暮らせる国を作る責任がある」

 

 

子供たちの背中をリーゼは目で追いかけ、それを焼き付けた。

楽しそうに遊んでる子供たち。

これが、この国の何処でもある日常にするのだと。必ずやって見せると。まずはイステリアから、小さな一歩かもしれないが、それでも必ずやり遂げる、と。

 

心優しい神々が傍に居てくれるのだから、なんの不安があろうか。

 

 

 

「リーゼは普段から頑張ってくれてるよ。そーんな肘肩張らずにさ? 俺やカズラさんの前じゃリラックスしてくれて良いから」

 

 

安心出来て、心穏やかになる。

何にも代えられない至福の時。独り占めしたくなるし、その温もりを傍でいつまでも感じて居たい。

 

リーゼは、そっとカズキの肩に自身の頭を乗せた。

 

 

「んっ。……そうしてるよ。時々、頼っちゃうって決めちゃったんだし」

「よっしゃ。メルエムさん頑張りますよー」

 

 

 

穏やかな時間はカズラが戻るその時まで続いた。

カズラはカズラで、バレッタと2人でこのグリセア村をのんびりと見て回り、時折定時連絡を受けつつ、穏やかにのどかに、グリセア村での生活を満喫するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――数日後。

 

 

 

 

 

名残惜しいが、出発日だ。

ジルコニア・リーゼ組は、他業務があった為、一足先にイステリアへと戻っているので、後は残っているのはカズラとカズキ、アイザック・ハベル、マリー、そして全体の半数の護衛のみ。

 

 

朝早くに起きて、全ての準備を終えて村の入り口へと向かったのだが、皆待っていた。

一体いつから待っているのかわからないが、村人全員が集まっている事くらい、カズラは勿論、カズキだってわかっている。

 

 

「皆さん、ありがとうございます。こんな朝早くに……」

 

 

思わず頭を下げてしまうのはカズキ。

如何に神だ神だと言っても、中身は彼女にフラれてゲームに走って、陰キャ気質が増し増しだった所にモテる様になって困惑してる――――――兎も角、一般的な男子だ。

ある程度キャラを演じる覚悟を持ち合わせた場面ならまだしも、不意打ち気味なこの見送りにはヤッパリ心に来るものがある。

 

 

「オレからも。朝早くからすみません。集まってくれてありがとうございます。――――次に戻ってくるのは恐らく3か月後になると思います。時間に余裕が出来たら、早めに戻りますから心配しないでくださいね」

 

 

カズラの口から今後の事を説明。

光に成れるカズキと違い、カズラはそんな超光速で村に戻ってきたりは出来ない。なので、長期の別れともなれば、村の皆に不安を与えてしまう事に成ろう事は解っている。

子供たちの様にとはいかないが、村人全員が惜しんでくれているのは、正直嬉しい気分になるが、ここは堪えて貰いたい。

 

 

「はいっ、わかりました。村はきっと大丈夫です。ですから、カズラさんもカズキさんも、無理はしないでくださいね。健康第一ですっ!」

 

 

そんな中で、最も予想外だったのがバレッタの反応だ。

長期に渡る別れ――――最初の時は目に涙を浮かべ、別れを惜しんでいた彼女の姿とは思えない程、明るく陽気な声。

 

その反応は正直嬉しさ半分――――逆にカズラの方が寂しく感じてしまう。

 

 

「(……カズラさん、バレッタさんと、ナニかしたんですか?)」

「(い、いや、そんな何もしてないよっ!?)」

「(えぇ、だってあのバレッタさん(・・・・・・・・)ですよ? フォローの言葉色々考えてたのが肩透かしになっちゃって、取り越し苦労なのは良かったんですが……、ここまで爽やかだったら何かあったとしか……。焚きつけちゃった事もありますし、俺は聞いておくべきかな、と。――――ここだけの話にしますから、後で教えてくださいね?)」

「(いやいやいやいや、ほんと何にもないから! 変な事してないし、やってないから!)」

 

 

カズラ&カズキの内緒話もそこそこに、アイザックやハベルがやってきた。

もう、戻る時間だ。

 

 

「こほんっ。ではバレッタさんも元気で。カズラさんの事はしっかり今まで通りフォローしておきますんで」

「っ! は、はいぃ……」

 

 

ぐっ、と親指立てて女気がないようにする、と言った類の話にバレッタは顔を赤くさせた。

この辺りは変わってない。……つまり、カズラと何かあった訳ではなさそうだ。

 

覚えてない事が多いから新鮮である意味良いのかもしれないが……、その分バレッタの様子が気になってしまったりするジレンマもある。

 

 

「何もしてないですからね!?」

「あははは。解りましたよ。では行きましょう」

「もう、勘弁してくださいよ……。っとと、それより。バレッタさん無理し過ぎない様にしてくださいね? 毎日殆ど休まないで動き回ってるってニィナさんからタレコミがありましたよ?」

「ぅ……気を付けます」

「本当に?」

「ほ、本当です!」

 

 

この辺りもいつも通りのバレッタだ。

頑張り屋で、頑張り過ぎて身体を壊してしまわないか心配になってしまうバレッタだ。

 

なのに、カズラと離れる事に関しては問題なさそうにしているのがやっぱり解せない……が、カズラは知らないと言い、バレッタから聞くのもマズそうだから、何れ解る時までの我慢だ、とカズキは自分を納得させた。

 

 

「では―――行ってきますね」

「行ってきます!」

 

 

2人で手を振り、村人皆も手を振り返して、歓声も上がり、応えてくれた。

 

 

 

「きっと―――――」

 

 

 

そんな時だ。

バレッタと目が合ったのは。

 

 

「きっと、きっと、もっと早くに会えます」

「――――え?」

「??」

 

 

少し距離が離れてしまった事もあり、バレッタが何を言ったのかハッキリ聞き取る事が出来なかった。

だから、首をかしげていたのだが、そんな2人にバレッタは笑顔で言った。

 

 

「いってらっしゃい。お元気で」

 

 

頭に沢山の疑問符を浮かべながらもカズラとカズキはグリセア村を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道中での事。

 

荒れた地を走り続けるので、強烈な揺れを何とか酔い止めで持ちこたえようとカズラは躍起になっていた。

 

 

「それでは、辛そうな皆さんの為、秘密兵器をお魅せましょうか!」

「ぅぉぇ……んん?」

 

 

正直、話すのも億劫だから、言葉・会話は最小限度にしていたいのだが、突然のカズキの言葉が気になったので、その脳内取り決め? で決まった法案は、いったん廃棄。

 

 

「あ、でもリーゼには内緒にしててくださいね? カズラさんも、マリーちゃんも」

「………………ぅぅ、は、はぃ、りょうかい、いたしまし……た」

「ぅ、うん? そ、それってどう、いう……?」

 

 

マリーもこの悪路には四苦八苦。

でも、気分が悪くなったら直ぐに薬、香油を使う様に、と渡しているからこちら側の世界の人間に対する効果を考えたら、十分イステリアにつくまで位は持ちこたえられる筈、と思っていたのだが、どうやらそうはいかない様だ。

 

でも、それは仕方がない。

高価なもの(と認識)している薬をそう易々と使う訳にはいかない、と懸命に堪えていたから。カズキやカズラの従者となり、超高待遇+高給取りになったからと言って、これまでの事が消えてなくなる訳ではない。

元々奴隷だったマリーからすれば、本当に仕方がない。

 

だから、無理にとは言わないが―――――、ここからはカズキが勝手にする事なのだ。

 

 

 

「ほいほいほいっと。光絨毯っ!」

 

 

パっ、と手を翳すと――――馬車内の底部が淡い光で包まれた。

 

その光は軈て馬車内全体を包み込み……。

 

 

「ひゃぁっ!?」

「おっ、あ? お?? うわっっ こ、これって、ひょっとして、身体が浮いてる!?」

 

マリーやカズラの身体を包み込んだ状態でほんの僅かだが宙にその光を浮かせる。

 

 

「これだったら、例え悪路だったとしても、身体に影響はゼロでしょ?? どうです?? 俺が考案した光絨毯っ! 快適な旅をお約束致しますよ~」

「す、すごい! これ、マジ浮いてる。ほんのちょっとだけど浮いてるよ! ………あ、でも今の今まで気持ち悪かったから………」

 

 

カズラは興奮しつつも顔を青くさせる。

何せ、今の今まで吐き気を催していた事実が消えた訳でも治った訳でもないから。

 

 

「はいはーい、マリーちゃんも我慢は身体に毒だよ。ほら、酔い止めと香油使って」

「あ、は、はい……、申し訳ありません、カズキ様……」

「良いの良いの。好きでやってる事だから、マリーちゃんは気にしなくて問題なし。元気でいてくれた方が、俺も気分が良いしさ?」

「は、はいっ……」

 

 

恥ずかしくなってしまうが、カズキの厚意に甘える事にした。

無論、カズキもタダでとは言わない。

 

 

「戻ったら、とびっきり美味しいお菓子をまた振舞って貰いたい、かな? それが条件って事で。ね?」

「っ! は、はい! 任せてくださいっ!」

 

 

マリーの美味しいお菓子の為にガンバル! と言う口実。

 

カズキの優しさにマリーは思わず涙ぐみそうになりながら、受け取った香油をハンカチにしみ込ませ、口と鼻に充てるのだった。

 

 

「やっぱり、マリーちゃんには正体教えてて正解だった、でしょ? そうじゃなかったら、これ出来なかったんだし」

「――――だよねぇ……。エイラさんにも話したし、同じ侍女でマリーさんだけ知らない、って言うのはアレだったし? それに冷蔵庫活用してくれてる時点で半分は教えてたも同然だけど」

「わ、私なんかに、とても恐れ多くて……」

 

 

 

マリーは、カズラやカズキ専属の料理人として起用した面もある。

故に日本食を扱ってもらう為に、結構早い段階から冷蔵庫の使い方を教え込んでいた。

 

それに、エアコンがある部屋にも行き来しているし、夏なのに氷があるし、で、これなら別に正体を話しても特に混乱せずに、スムーズに行けるだろう、と思っていたのだが―――――、マリーにカズキのピカピカを説明した所、エイラ同様に立ったまま気絶してしまった。

 

バリンやバレッタ、そしてイステリア組で言えばジルコニア、ナルソン、そしてリーゼが凄かっただけで、マリーやエイラの様な反応をする者が一般的なのかもしれない。

 

自分なんかが、と卑下にし続けるマリーの頭を軽く撫でると。

 

 

「メルエム様やグレイシオール様は、頑張ってる子の味方なのです。ね? そうですよね?」

「――――――……ええ、勿論ですとも」

 

 

どう見てもピカピカしてるカズキの方が圧倒的神様オーラを見せているのだが、一応同格と言う事でそれっぽく返事をして見せるカズラ。

もう、吐き気やらなんやらは気合で何処かに吹き飛ばした。

 

心優しい2人に囲まれたマリー。

思わず目に涙を浮かべる。

 

それと同時に、これまで大変だった過去が一気に頭の中を駆け巡った。

全ては、この時の為に。この二柱の神様に仕える為に、今までの苦しみがあったのだ、と思える様に。

 

 

 

「あ、ただ……その、リーゼには内緒にしておいてくださいね? 最初に言った様に。光で他の誰かと飛ぶのは駄目! って凄く言われちゃったので」

「あははは……、ん、でも これはちょっと違うと思うけどね? リーゼの時は夜空を飛んだんでしょ?」

「や、それはそーなんだけど、光で飛んだ、って言う意味じゃ同じな気がして……」

 

 

 

そして、マリーはこうも想う。

 

また、恐れ多いかもしれないが、どうしても思ってしまう。

 

 

リーゼの事が羨ましい……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、イステリアまでの長旅を終えた深夜。

一行がナルソン邸の広場に到着すると、ナルソン・ジルコニアの2人が出迎えてくれた。

 

 

「カズラ殿、カズキ殿、長旅お疲れ様でした。首尾はどうでしたかな?」

「ただいま戻りました。必要なものはすべて揃いましたよ。工事計画書も用意できたので、早急に工事を開始できるかと」

「こちらは、オルマシオールとの接触は問題なく。―――ちょっぴり、向こうが渋っちゃいましたが、何とか一緒に撮るから、って条件で写真も撮ってきたので、証拠にもなりますよ」

 

 

2人の報告を聞いて、相も変わらず成す事が凄いとナルソンは目を見張った。

この短期間で、河川工事の計画書が出来上がり、早急に出来る様にしたのに加えて、戦いの神であるオルマシオールとの接触、未知の技術である写真を見せられて驚愕する。

 

何せ、ウリボウ達と戯れているカズキ、カズラの姿があり、中の1頭は更に一際大きく、まさに神を関するのにふさわしい体躯の持ち主だったから。

 

 

 

「お疲れ様でございました」

 

 

 

だからこそ、ナルソンは改めて労いの言葉を贈る。

ジルコニアも驚いてはいたが、この2人が成す事なのだから当然と直ぐにいつも通りの様子に戻っていた。

 

 

「あ、工事の件ですけど、人員の確保の方はどうでしょう?」

「そちらは滞りなく。お二方が出発した直ぐ後にガラスの売り上げの一部が入ってきましたので、初期費用として、それを用いました」

「おおお! クレアさんがやってくれたようですね。まだ半月くらいしか経ってないのに」

「流石敏腕……【これが年の功ってヤツさね】って言ってる顔が目に浮かびますねぇ」

 

 

幾ら敏腕―――――とは言っても、この世界には無い宝石、ガラス細工。定価も相場も定まってない状態で売りさばくなんて並大抵じゃできやしない。

感心しつつも、ある意味脅威に思えていた時、ジルコニアが種を明かしてくれた。

 

 

「実は、リーゼが頻繁にせっついていた様で。村に行く前にはもう解っていたようですよ。取り合えず工事費用は大急ぎで売却して、後はもう少し待ってくれといってました」

 

 

リーゼは、クレアのお得意様で付き合いも相応に長い。

そんな彼女が頼み込めば、如何にクレアであったとしても、無下には出来ないだろう。それは、例のメロメロばんばん事件の時のやり取りでもよく解る。

 

それにしても、加工済みガラス玉数十個をこんな短期間で……、やっぱりイステール家お抱え商人となってくれれば良いのに、と改めて思えてきた。

 

 

「その売り上げで大丈夫そうですかね?」

「初期費用としては十分ですが、長期間持たせることはできませんな。一応別枠で予算は組んであるのですが、資金不足になる心配はありませんが」

 

 

それなりの額が入ってきたようだが、大人数を動員した工事費用としてはやはり心もとない様だ。

定期的にクレアが資金調達をしてくれれば良いのだろうが、安定性があるか? と問われれば頷けない。

 

 

「ガラス玉もまとめて売却~出来たら楽で大金だと思いますが、それやっちゃったら、価格暴落しそうですしね。それに何処から流れてくるのか、探りを入れる輩も多くなりそうです」

 

 

カズキが言う様に、市場価格が暴落に繋がる恐れだ十分ある。その辺りを見極めつつ、商品を流すのもクレアの腕の見せ所、なのだろう。

だからこそ安定性は頷けないのだ。そして、もう1つ……カズキが言う様に、変な探りも入れてくる可能性だってある。

 

あまりにも質が良いモノが出回れば、これまで売れていたモノが一切売れなくなる。その理由は? 絶対に追及するモノだと思われるから。

 

 

「ええ。彼女に渡すのもある程度調整した方が良いかと思われますな。小粒のものを小出しし、時折大粒のガラスを用意して、数ではなく質で売却価格を調整する、と。こうすれば、利益が多少下がったとしても、探りを入れてくる者も少ないでしょうな」

「成程……確かにそれがよさそうですね」

 

 

ポケットの中や自室にはそれなりにあるが、あまりにやり過ぎてしまうとナルソンやカズキが言う様に色々と面倒な事になるから、必要に応じて必要なモノを作る、と言う事にした方が経済的で安全だ。

 

 

「明日の準備もありますし、今日は休ませてもらおうかと思うんですが、良いですかね?」

「あっ……、そういえばルートさんと戻った後に、って約束があったんだった」

 

 

カズラは休みを、カズキはルートとの約束(夜の訓練)がある事を思いだし、切り上げても良いか?と暗に告げるが。

 

 

「それが、その前に少しご相談したいことがありまして……」

「ん? 何かあったのですか?」

 

 

ナルソンから、ではなくジルコニアが一歩前に出た。どうやら、彼女から何かある様だ。

急を要する雰囲気の様なので、カズキもルートには申し訳ないが少し待ってもらおう、とジルコニアに向き直った。

 

 

「……実は面会の申し入れに使者がやってきました。王都、グレゴルン領、フライス領、そしてクレイラッツから。どうやら、彼らもついに耳にしてしまった様なのです。……水車の噂を――――」

 

 

それを聞いて、カズラは一瞬顔を顰めた――――が、直ぐに平静を取り戻していた。

想定内の話だ。何れは来るであろうと思っていた。それが遅いか早いかの違いに過ぎない。

 

相手方は恐らくは情報源の特定と真偽の確認も済んでいるとみて間違いない。

だが、神云々の話は恐らく伝わってないだろう。復興速度が目を見張ると言う意味ではイステール領はとんでもない速度だ。

注目を集めてもおかしくない。

 

 

「領内は兎も角、クレイラッツですか、確かアルカディアの隣の国、ですよね?」

「はい。ただ、クレイラッツからは水車よりも軍事関連でについてを重点的に、と言う内容でした。そちら側は私が対応致しますわ」

「……成る程。あ、ジルコニアさん。少し相談なのですが――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りの話を終えたカズラとカズキ。

ただ、直ぐに休憩と言う訳にはいかない。カズキに関してはルートとの約束(夜の訓練)があるし、カズラは運んできた荷物の荷解きとパソコンの設定などでまだまだ夜は長く、御就寝と言う訳にはいかない。

 

 

「色々と話し合ってた事(・・・・・・・)、そろそろ実行に移した方が良い時期かもですね」

「ええ。効果は絶対に覿面だと思いますよ? 信仰心の深いこの世界なら猶更で、おれのピカピカと合わされば、効果は倍増所じゃありません。後の問題はそのクオリティ(・・・・・)でしょうね。上手くできる人がいたら丁度良いんですが……」

「うーん、この手の話は何処に相談すれば良いのか、何処に依頼すれば良いのかいまいちわかんないからなぁ。……でも、いろんな所が探りを入れてきてる以上、【邪な考えで近づいてきて、悪事でも働いたら大変だぞっ!!】って、ちょっと乱暴かもだけど、周囲に解らせないと……」

 

 

色んな所から探りが入ってきて尚、カズラとカズキ……特にカズラがそれ程気にしていなかったのには理由がある。

 

以前より、2人で話をしていた事、云わばウルトラCだ。使い方次第では、ひょっとしたら戦争を回避する事だって出来るかもしれない。

 

 

名づけるなら

【天国と地獄】作戦、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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