ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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54話 ルーソン家の2人

 

 

「ここまでして貰っちゃったら……、もう、絶対あきらめられないよ。カズキの事」

「―――うん?」

 

 

暫くカズキの中で嗚咽を漏らしていたリーゼだったが、目に溜まった涙を拭い、カズキの顔を見上げながら、その目をハッキリと見据えて言う。

 

手を取ってくれる―――とは言ってもらえなかったかもしれない。

 

でも、絶対に守ると言う決意を見せてくれた。

傍で支えてくれた。

暖かい気持ちになった。

 

もう、無くてはならない。自分にとっては無くてはならない存在となった。

大きすぎる存在となった。

 

そして、それと同時に、チクリと針で刺される様な痛みもその胸の内にはある。

 

 

「カズキは、今……ここに居る。手だって取れる。触れられる」

 

 

カズキの手をリーゼは取った。

温もりを感じる。間違いなくそこに居る事を実感できる。

彼は人じゃないのかもしれないが、それでも今リーゼにとっては愛しい人だ。それ以外の言葉が見つからないのだ。

言葉の真意をハッキリとリーゼは意識している訳ではないが、それでも思う所はある。

カズキが言わんとしている意味……何となくではあるが、解る部分はある。

それは決して認めたくない部分で――――。

 

 

「ほ~らほら、やっぱ無理してたんだろ? あれじゃん。生理的に受け付けないヤツ、って顔してる?」

「! ぶ~~~! そんな顔してないもんっ! 私はカズキの事が好き! だーい好き!! って顔だもんっ!」

「ははははっ。つまり、まだ俺の事 メロメロばんばんに―――ぶっっ!?」

「黒歴史出すの禁止っ!!」

 

 

リーゼはカズキの口を手のひらで抑えた。

やっぱり触れるのを実感する。ふっくらとした唇が手のひらに当たってるのを感じる。

男性のモノは、ごわごわ~と言うかゴツゴツ~と言うか、柔らかいとか考えた事も無かったが……とても柔らかかった。

 

ひょいっ、とリーゼは離れると。

 

 

「……でも、ほんとありがとね カズキ。でも、あんまり急に面会拒否にすると相手の顔潰しちゃうし、後々の繋がりも厄介な事になるから、向こうの顔を立てつつ上手くあしらってみるよ」

「それこそ ほんとに大丈夫? 今なら神様()権限全開しちゃっても……」

「だいじょーぶ! カズキに頼らないとやっていけない次期領主、なんてダメダメでしょ? 愛想つかされちゃうのも嫌だし。それに護衛だってつけるから、任せて大丈夫!」

「……そっか」

 

 

カズキはリーゼの言葉を噛み締める。

確かに、この世界において……いわばファンタジー要素がほぼ無い普通の古い時代の世界において、光の力は絶大であり、運用次第では直ぐにでも世界の覇権を握れるだけの力を秘めているだろう。それを利用しようと考えたら、幾らでも使いようはあるし、頭がまだまだ弱い部分はあるが、それでも軍師の様な人、ナルソンもそうだが、頭の回転が早く、キレる人に任せれば、補ってもらえればどうとでもなる。最速で握れる。

 

 

でも、カズキ自身は圧倒的に異端であり異質であり異常な存在だ。カズラとの違いはそこにある。

どうやってここに来たのか? そもそも、何でこのような能力を得て世界を超えたのか? いや、或いは今もVRゲーム中なだけなのか?

 

解らない事が多すぎる。

 

だからこそ、リーゼの様な考え方が好ましく、何よりも重宝されるだろう。

光に頼るのではなく、自分達の足をしっかり地につけ、歩く。……いつか光は消えてしまう。そんな可能性だって十分過ぎる程あるのだから。

 

そして、その考えはリーゼだけでなく、このイステール家の重鎮たちは皆等しく同じだ。媚びをうってきたり、過剰に取り繕ったり……はない。……少々ジルコニアが過剰気味だったかもしれないが、味方であると言う事を告げると頻度は激減した。

悲願を遂げるまでは仕方がないが、永劫ともなれば話は別かもしれないから。

 

 

「? 不安な顔してるぞ? カズキっ! 私の事、信じられない?」

「あ、いやいや。そんな事ないって。それこそ、そんな顔してないよ。だって、リーゼの事信じられない訳ないし」

「そっか! あーーーほっとした。カズキと話せて本当によかった。すっきり出来た!」

 

 

リーゼは背伸びをして、身体をゆっくり回して解す。

 

 

「いつでも、カズキさんの相談教室は開いてるから。今後とも是非に~! ね?」

「うん! ―――ありがとっ」

 

 

リーゼはそういうと、カズキに抱き着いた。

その身を包んでしまいたい衝動に苛まれる。

こんな小さな身体で、どれ程まで今まで抱え込み、そして苦労してきたのか………と思う事は沢山ある。

 

だから、カズキはリーゼの頭をそっと撫でた。

 

 

「いつでも頼ってきて」

 

 

光が光であれる内は。

 

 

 

「俺は、味方だから」

 

 

 

自分が自分でいられる間は。

 

 

 

「にひひっ」

 

 

 

この腕の中の娘を、必ず守る。

 

 

 

 

 

リーゼはその後、自分の手のひらにそっとキスを交わして、カズキをウインク。

その意味は一瞬解らなかったが……よくよく考えたら間接キスになるな、と思い直し、カズキは自身の光に仄かな赤の色が加わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数日後。

 

ジルコニアはナルソン邸の一室で2人の男と面会をしていた。

クレイラッツの軍司令官、そして外交担当官の肩書を持つ2人だ。 

他国との交渉の席に立つ者らしく、相応の身形・身のこなしであり、一切の隙が見えにくい――――のが、軍司令官のカーネリアン、と言う男。

もう1人の外交官は名乗られてはいないが、見たところ……恐らく若手。緊張しているのが一目で解るし、額の汗の量がそれを物語っている。

演技の可能性も捨てきれないが、これを意図的に演出できるとなれば、見抜くのは無理だ、と思える。

 

 

そして、ジルコニア側―――即ちアルカディア・イステール領側には更に両脇に2名座っている。

初老の男たちではあるが、その様相は百戦錬磨を彷彿とさせるもの。

1人は第2軍団 副将のマクレガー、そしてもう1人は第1軍団 副将であるイクシオス・スラン。

 

スラン―――つまり、イクシオスは、アイザックの父親にあたる存在。厳格な風貌から、普段の様子がよく解ると言うもの。仮にイクシオスと言う男を知らなかったとしても、たたずまいの全てが歴史を物語っている、と言える程のものだった。

 

 

恐らく、外交官はこの威圧感満載の2人を前にしているからか、委縮してしまっている……のかもしれない。

だが、カーネリアンは一切動じた様子はなく淡々と話しを切り出してきた。

 

 

「……軍隊進駐権?」

 

 

その申し出に、怪訝な表情を隠せれないのはジルコニアである。

確かに共通の敵国バルベールの存在を考えれば選択肢の1つである事は間違いないが……。

 

 

「有事に備え、互いの軍が円滑に連携をとれるように今のうちから一定数イステール領に駐屯させていただきたい。後日、グレゴルン領にも駐屯権のお願いに伺う予定です。無論、了承いただいた折には王都へも出向かわせていただきます」

 

 

改めて整理すれば、つまりイステール……アルカディアにクレイラッツの軍隊が居座る事が出来る権利を欲していると言う事。

同盟関係になっているが、今は平時。先ほどのバルベールの存在を考えれば選択肢に、と一瞬頭を過ったが、あくまで今は休戦中。

簡単に答えを出せる協定じゃなく、今後武力衝突で起こる事態も考慮すればデメリット以外のなにものでもない。

 

 

「せっかくの申し出だが、お断りさせていただく」

 

 

ジルコニアではなく、真っ先に返答を返したのはイクシオスである。

全く淀みなく、それでいて射貫く様な眼光を向けて。……完全に威圧する勢いだ。

だが、やはりカーネリアンは一切動じる様子はない。

 

 

「円滑な連携と言うが、我らとて、国境線の守備は固めている。時がくれば援軍を要請することもあるかもしれんが、前もってクレイラッツの手を借りなければならないような状況ではない」

「いえ、一方的にと言う訳ではありません。イステール領軍も我が国に進駐していただきたいのです」

「それはなぜだ? 費用がかさむばかりで益などなかろう」

「いいえ。ありますとも。先に進駐軍がいるともなれば、援軍を送った際の移動もスムーズになります。慣れない土地での戦闘ともなれば本来の力を発揮できない……と言った事も起こりえる。それを緩和し、少しでも力を……と言う理由ではいかがでしょうか?」

 

 

腹の探り合い、とはこの事なのだろう。

いや、一方的に探ってきているのがカーネリアンだから、探り合いとは少し違う。

 

一見すれば、理由になっている……とも思うが、言い方、雰囲気、それらがあまりにもカーネリアンはおかしいの一言だ。

それに、視線を向けているのは話を切り出したイクシオスではなくジルコニアの方だ。まるで、彼女の様子、出方を伺う、細部まで読み取ろう、と言わんばかりに。

 

片や、イクシオスはまるで動じた様子はなく、表情は一切変わってない。

 

 

「全てを否定するつもりはない。……が、多額の費用を割いてまで行うほどの事ではない、と判断する」

 

 

カーネリアンはただただ、ジルコニアを見ていた。決定権は彼女にあり、彼女の口から聞きたい、と言わんばかりに。

 

 

「……申し訳ありませんが、進駐を許可するわけにはいきません」

「そうですか。残念ですが仕方がありませんね。急なお願いをしてしまい、大変失礼いたしました」

 

 

カーネリアンは残念がる―――と言った様子も一切なく、ただ手をつき、頭をさげる、と言った行動とまるで台本があったかの様な文章を読み上げただけ……の様な印象。

 

 

「では、本題に移りましょう。バルベールの動きについてなのですが、近々国内で軍団の配置換えが行われる兆しがありそうです」

 

 

そして、何事も無かったかの様に本題へと入る。

全てが胡散臭い……それがこの面会でのジルコニアの感想だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

面会が終了した後、3人はカーネリアン達が出て行ったのを確認すると互いに顔を見合わせる。

 

 

「……何やら探りを入れられたようですな」

 

 

ぽつり、と漏らすマクレガーにジルコニアは目を向けた。

イクシオスは腕組をしたまま、考えを纏めているのか黙って扉をにらみ続けている。

 

 

「それは私も感じたわ。……正直、ハッキリとした内容の検討は出来ると言い難いけど」

 

 

ジルコニアの言葉を聞き、そしてもう暫く黙った後にイクシオスが口を開いた。

 

 

 

「………メルエム様(・・・・・)は、どう思われましたかな?」

「―――ここで俺に話を振りますか。まぁ、色々と候補はあると言えばあるんですが」

 

 

 

 

イクシオスの言葉に応える様に……何もいない場所に、淡い光が集中し始めると同時に声が聞こえてきた。

 

カーネリアン達もその場を過ぎ去った筈なのに、一切気付く事が出来なかったこの超常現象。

 

事前打ち合わせをしていたとはいえ、やはり襟を正される様子だ。

年の功があるであろうマクレガーやイクシオスも例外ではない。

初めて正体を本当の意味で明かした時、立ったまま気を失いかけたのは今となっては良い思い出。もう二度とはあの様なイクシオス、マクレガーの顔は見られないだろうな、とジルコニアは思ったりしていた。

 

 

軈て光は形となり、1人の男を形成する。

そう、メルエム基、カズキの降臨! である。

 

 

「取り合えず、イクシオスさんには カズキと呼んで貰いたい……って所から始めたいですが」

「―――どうか、それはご勘弁願いたい。話し方こそ、どうにか修正しておりますが……」

「うーん……ですよねー。大丈夫ですよ言ってみただけです。そっちの方が大変そうなので、無理にとは言いません」

 

 

何せイクシオスはあの生真面目アイザックの父親だ。

ハベルは何となく合わせることが出来ているのだが、アイザックは未だに出来る様な気がしない。……と言うより未来永劫主従関係の様に付き従う事だろう。

 

非常に真面目、ド真面目。悪く言えば頭が固い。その上この歳まで積み上げてきたモノがある。今更どうこう出来る様な事でもないし、そこまで意識するつもりもないが。

 

 

「私は―――」

「あ、マクレガーさんは頑張ってください! 是非是非」

「ぅ……しょ、承知、致しました……カズキ殿」

 

 

マクレガーとは結構密な付き合いをしている。

一緒に軍部を見学させてもらった事もあり、部下たちと剣術稽古もしており、イクシオスよりも付き合いがどちらかと言えば長い。

 

なので、頑張ってフランクに! とカズキは注文した。

 

思わず、マクレガーを除いた2人から笑みが出たのは言うまでもない。

 

 

「えっと、カズキさんの意見を聞いてみたいわ。―――本当、同席感謝しております」

 

 

一頻り笑った後に、ジルコニアはカズキの方を見た。

事前に、この面会を視させてもらいたい、と言われた時は驚いたが、今では感謝以外のなにものでもない。

カズキは、そこまでの過度な期待はやめてください、と一言添えた後。

 

 

「ジルコニアさんが彼らが求めるナニカ(・・・)について、知っているかどうか……、それを暗に探ろうとしていた、って感じですね。動揺を誘ってるって感じもしましたし、寧ろあからさまでした。―――マクレガーさんやイクシオスさんじゃなく、ジルコニアさんに対して含みのある言い方を選んだ、と言う事は、内容は恐らくバルベール関係、と推察出来ます。………以上が私が感じた事ではありますが」

「お見事――の一言ですな。メルエム様。一言一句、私と考えが同じです」

「それは光栄」

 

 

お辞儀をし、頭を綺麗に下げるイクシオス。

頭下げなくても~~と、と思うがマクレガーとは違うイクシオスはこれでヨシ。

 

 

 

「―――バルベール関係……」

 

 

そんな中、ジルコニアは口元に手を当てて考えていた。

その可能性は考えてなかったわけではない。だが、それでもその名を聞くとどうしても殺気立ってしまう。抑えられない。カーネリアンがその名を出してきていたら、それもジルコニアを挑発するかの様にふるまってきていたら、憤怒の化身と化す事間違いないだろう。

 

 

「前ばかり、気にし過ぎるのも良くないかもしれませんね」

「……ええ。敵は正面だけとは限らないかもしれない。……ですが、正面だけだと良いのは間違いないですな」

「そうですね。―――無論、最悪の場合、私も出来うる限り手を貸したい、と思ってますよ」

 

 

マクレガー、イクシオスには 人と人との争いごとに、神が介入するのはヨシとしない存在が~~~とそれっぽい事を匂わせたりして、頼り過ぎない様に、と釘をさした事も何度かあった。

カズラの様に間接的に支援するのなら目立ちにくいかもしれないが、ピカピカの光は当然ながら目立ちすぎる。そういう方面でも強大な力に依存し過ぎない様にしないと、と思っていた。

 

でも、以前リーゼの時にもあった様に、彼らは、その様な事を言う必要は端から無かった。

彼ら自身も頼り過ぎるつもりは更々ない。

カズキは、皆の事を見縊ってしまっていた自分自身を恥じる思いだ。

 

 

 

彼らは自分の足で歩く。生きていく。

光の神の力を以て、敵を殲滅し、その力に胡坐をかく気はないのだから。

 

 

 

でも―――とてつもない安心感だけは感じる。過剰にかかった力を抜く事が出来る。自分の、自分達の100%、120%を出せる様な気がする。

 

 

それでも、出すべき所では絶対に出す。

それをカズキは忘れない。

 

 

 

 

 

「トモダチですから」

 

 

 

 

 

無邪気な笑みを見せるこの神様を背に、全力で抗う事が、生きることが出来る。

そう、確信できる。

 

 

「では、我らはその友と呼ばれるに見合う様になる為―――しっかりと致す事にしましょうか」

 

 

イクシオスはゆっくりとそう告げる。

マクレガーもジルコニアも同感だ、と言わんばかりに大きく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――と言った事がありまして」

「なるほど……、カズキさんやイクシオスさんの言う通り、警戒はしておくに越したことはない、か……」

 

 

別室でカズラとカズキが何やら話をしていた。

無論、先ほどの文官、外交官たちとのやり取り、その内容についての説明だ。

 

なんと言っても、こちらには秘密兵器(笑)が存在するので説明も容易。

 

 

「ICレコーダー! 十分オーバーテクノロジーですねぇ……。一言一句、覚えておく必要がないのが嬉しい! 正直、そこまで記憶力が良いとは言えないので……」

「ですねぇ。俺もリーマン時代は大分世話になってましたよ……」

 

 

ぱぱぱぱっぱぱぁ~~♪

 

と取り出したるは、手のひらサイズの機器ICレコーダー。

これが有れば、会話の録音は容易。流石に映像を残すともなれば、電気の無い世界だからバッテリー式の監視カメラ等、相応な準備が必要になってくるが、流石にその辺りはプライバシーの侵害! と言うのもあれば、皆に機械についての説明もまだ出来てないので、導入は見送っている。

 

でも、今後この手の話し合いがある時の為の備えとして、用意しておいた方が良いかもしれない、と思うカズラだった。

 

 

「更に更に、俺の特殊な身体はこうやって、同化させちゃう事も可能! 盗聴し放題! ……って、自分で言ってても嫌なヤツですね。勿論、TPOは弁えますから」

「カズキさんを信頼してない訳ないじゃないですか。今更な宣言ですよ、ソレ」

 

 

わっはっは、と腰に手を当てて笑うカズラ。

そうこうしている内に、リーゼやナルソン達との会合の時間が迫っている事に気付き、部屋の外へと出る2人。

 

時間はすっかりと夕刻だ。

 

これは夕食の時間も近いな、と思いながら歩いていると、まずはリーゼと合流。

少々心臓に悪い過剰気味なスキンシップをしてこられるのは、如何に神様(笑)なカズキでもなれるのは難しい……と、赤い光に成りそうだった時に後ろから声が聞こえてきた。

 

 

「これはリーゼ様!」

「お久しぶりでございます」

 

 

正面からやってきたのは、ハベルの父親であるノール・ルーソン。そしてその長男であるアロンド・ルーソンの2名。

どうやら、ナルソンとの話が終わり帰る所の様だ。

 

 

「お久しぶりです。ノール様、アロン度様もお変わりありませんか?」

「毎日父にこき使われておりますが、何とかやっております。リーゼ様もお元気そうでなによりです」

 

 

リーゼが笑顔で応えると2人とも頭を下げて微笑をたたえる。

まさに営業スマイル。この手の笑顔はよーーーく知っている、と言うものだ。素晴らしい100点満点。

 

 

「カズキ様、カズラ様、こちらはルーソン家の御当主であられるノール様とそのご子息のアロン度様です。お2人はグレゴルン領との取引全般を担当している文官です」

「お初にお目にかかります。カズラと申します」

「私はカズキ、と申します」

 

 

紹介を受けて、2人とも笑顔で頭を下げる。

 

 

「おおお、あなた方がカズキ様、カズラ様のお二方でしたか。国の発展に多大なる力をお貸し頂けている方々だと拝聴しております。……都合が合わず、今までご挨拶出来ずにいた事をお許しください」

 

 

ノールは恐縮した様子で頭を下げ、アロンドもそれに続いた。

 

 

「いえいえ、そんな。当日は、私達も留守にしていた為、仕方のない事ですよ」

「こちらも領地の重鎮の方々全てに挨拶が回れてないので……お互い様、ですね? 今後ともよろしくお願いします」

 

「そう言って頂けて光栄極まれりでございます」

 

 

お互いにぺこぺこ、と頭を下げ合う社交辞令の応酬。培われてきた社会人スキルの1つが遺憾なく発揮できるのは良い事だろう……と思いながら、暫くして話題はルーソン家の次男ハベルの話になる。

 

 

「私の弟が御二方には大変よくしていただいていると伺っております。弟はお役に立ててますでしょうか?」

「勿論ですよ! ハベルさんには本当にお世話になってます。主に私についてくれるのですが、会う度会う度~って言っても大袈裟ではないですよ? 剣の腕もそうですが、文武両道とは彼を差すのでしょうね」

「―――おおお、これは失礼致しました。弟には剣の訓練にも施してもらっている、と聞いていたのを忘れておりました。文武共に、ご指導ご鞭撻、本当にありがとうございます」

 

 

ハベルの優秀さは、ここ最近では拍車がかかっている。

その理由は勿論カズキの下に付けた事、そして何よりカズキが【全て解っている】と言う事に尽きるだろう。

あれこれ、頭で考え画策し、そして上に行く為に、目標を達する為に、行動に移していたハベルだったが、良い意味で身体の力を、頭の力を抜く事が出来たのだ。

 

自分の力を最大限に、100%出し続けて居れば、必ず望む未来をつかめると解った今、彼のポテンシャルは最大限に発動された、と言って良い。

 

それは上司でもあるアイザックも目を見張るもので、彼自身も嫉妬の類は一切見せず、自らも向上心を持ち、隊長・副隊長共に切磋琢磨し合っていくと言う間柄となっていて、良い所尽くし、なのである。

 

 

後ほんの少しだけ談笑をし合った後に、最後に深々と頭を下げて2人は屋敷の入口へと去っていった。

 

 

「あの人達がハベルさんのお父さんとお兄さんかぁ。感じの良い人たちだな」

「………ですね」

 

 

彼らの背を見送り、思った事を素直に口にするカズラと少しだけ間をおいて同意するカズキ。

思うところが無い訳ではない。

カズキは知っているから。

事細かな事は思い出せてはいないが、カズキにはハベル以外にももう一人ついてくれている娘がいる。

 

そう―――マリーのことだ。

 

 

マリーについては、専属メイドとなったこと、当然知っている筈なのだ。なのに話題すら出さない。

ある程度の風向きが良くなれば、と思っていたが、重んじる血筋。その重さはやはり相当なモノなのだと実感している。

 

 

 

「――――」

 

 

ルーソン家は、何よりも注視しなければならない。

都合が良い事に、自分の記憶力は起きてしまった後に、その固く閉じていた記憶の扉がバンッ! と開くのだ。最初から開いてくれていたら、どんなに……と嘆く事もあるが、もう仕方がない。

 

 

「……ひょっとして、カズキも感じた?」

「……んん?? ごめん、リーゼ。俺がなんだって?」

「あの2人の事。私と同じ感想を持ったのかなぁ、って」

「へ? 2人とも何かあるの? ノールさん達の事」

 

 

リーゼとカズキは思うところがあり、カズラはただ優秀な人達で、人間性も良い人達、と評価していたが……どうやら、2人の考えは違う様だ、と目を丸くしていた。

 

 

「いや、会うのは初めてですし、第一印象はカズラさんと同じですよ? ただ、ちょっぴり……何だか引っかかるって言うか、思う所があって……、上手く言葉にできないんで、ぶっちゃけ聞き流してくれても良いレベルです」

「引っかかる? ……う~~ん……、聞き流すにしても、気になっちゃったから難しいかも……。リーゼの方は?」

「私の方も話半分に聞いておいて欲しい。まぁ、ズバッと言わせてもらうけど」

 

 

取り繕う必要が無くなったリーゼ。

そもそも、もう素の自分を見せても良い2人を前にしているのだ。何を綺麗に言い着飾る必要があろうか。

 

 

「ノールは、正直解りやすい性格。でも、アロンドの方は何を考えてるかわからないって言うか、近づきたくないタイプって言うか……」

「おお……ズバッと言っちゃったね」

 

 

リーゼに面会に来たことがあるであろうアロンドに対して近づきたくないタイプ、と切って捨てる。なかなか可哀想な気もしなくもないが……。

 

 

「リーゼはアロンドさんとは面識は?」

「えっと、何回か面会した事はあるよ? それでその時思ったのよ。―――この人、自分以外の誰も信用してないな―――って」

「それはまた……ズバッ! どころかドスンッ!! って衝撃来たよ」

「逆にリーゼの口からそこまで聞かされたら、本性が出るのかもね。アロンドさんの」

 

 

アロンド下げ下げ話になっちゃってるので、一応諸悪っぽい自分が取り合えず軌道修正。

 

 

「あ、でも話上手だし、気遣いも出来る人で、文官としては有能って評価は貰ってる人だから、そこまで警戒する必要は無いと思うよ。お父様も評価してるみたいだし」

「なるほど―――。総括すると、リーゼとカズキさんは、苦手なタイプって事かな?」

「……まぁ、そんな感じ、かな?」

「殆ど直感ですからね。それだけで評価しちゃうのは流石に職権乱用になっちゃうので、今後改めて、って感じでもあります」

 

 

直感だけで評価を決めること程ヒドイ事はない。

 

大体のブラックな会社は上司に嫌われたら、ではなく直感的に嫌い! で評価される事だってある事はある。容姿だったりステータスだったり、色々な理由で。仕事を視ずに評価は極めて最悪だ。

 

 

「アロンドさんは優秀な人って言うのはハベルさんを見てれば解る気がするし、人のあうあわない、相性って問題は仕方がない面もあるよ」

「そうそう、私としてはそんな感じで考えておいて欲しい」

「右に同じ!」

 

 

そんな話をしあいながら、3人は歩き続けるのだった。

 

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