ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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漸く、最初にちょこっと出てきていたシルベストリア……シア姉ちゃんが登場です(笑)

遅れてすみません!


56話 シルベストリア

神々しい光が、轟音と共に森の中から天へと放たれて行くのが見てわかる。

これ程の光ならば、特大の落雷をも容易に上回ってる程の光の柱が天に昇った―――ともなれば、まだまだ光の技術が未発達なこの世界では猶更目立つ。音を響かせれば、直ぐにでも騒動になりそうなものなのだが、その様子は一切ない。

森を始め、周辺が静寂に包まれていた。

 

そんな場所の中心に、男女の姿があった。

 

そう、和樹とノワールの2人、そしてこの場所はグレイシオールの森奥深く。

 

 

暫くして光が音と共に消失し、再び場には静寂な夜の闇で覆われてゆく。

それでも完全に光が消えたりしないのは、ノワールが持っている松明の明かりのおかげだろう。

和樹はその松明の明かりを頼りに、右手に持ってる時計(セイローブランド時計 15諭吉さん)を見て改めて確認する。

 

 

「う~~ん、天岩(あまのいわ…)……ピカピカビーム空に向かって連続で放ったら、やっぱり丁度1時間で使えなくなる……か。使えなくなった今の身体も、光じゃなくて生身みたいだし。でもいまいち掴み切れてないんだよなぁ……。単純な天叢(あまのむら…)………ピカピカ剣術だったら、全然余裕で1時間超えちゃってるってのもあるし。クールタイム? もまだまだ把握出来ってないし……。ノワは何か解ったりする? これ」

「――――恐らく、ですが」

 

 

本日はノワールとのお約束の日。

グリセア村を守ってくれてるお礼をしたい~と言う話を和樹から聞いて、【逢瀬の機会が欲しい】とお願いをされた。

 

逢瀬とは、中々ハードルが高い言葉を使ってくるが、その辺りは華麗にスルー。ノワールとはグリセア村の周辺情報の確認やウリボウ繋がりでバルベール関係の話も聞いてみたかったりするので、逢引~を無視するだけで、会うのは当然OK。

 

特に、ピカピカの能力を把握する、と言うのはノワールが居る深い森の中がうってつけなのだ。それに日本へと続く―――一良の家に続く道は、こちら側の人間では通る事が出来ないので、ちょっとした実験をするにはここ以上に安全な場所はない。

 

因みに純粋に合いたい気持ちがあったノワールが、和樹のその動機を聞いて頬を膨らませたのは言うまでもないことだった。

 

 

 

そして今。

 

 

当初は純粋に和樹とノワールは和やかに話し相手となり笑顔や笑い声が絶えない~と言った感じだったが、後半からはピカピカの力の確認。ノワールの考えを聞いている。

人間よりも野生の勘の様なモノの方が優れているのでは? と言う少々浅はかな考えだったが、ノワールの意見を聞いてみたい、と思ったのだ。

 

 

「和樹様の中に備わってる光神(メルエム)の御業……、内なる力を全てを使いきり、枯渇すれば、一時的に使えなくなる、と言った感覚ではないでしょうか? だからこそ、最大規模での連続使用は8刻(1時間)程度、その規模を遥かに抑えた剣術時はほぼ無尽蔵に……。休憩を挟めば相応に延長される様ですが、見ている感じだけで、それを正確に推し量るのはほぼ不可能かと思われます」

「う~ん、やっぱしそんな感じかな? ノワの言う通りっぽいね。クールタイムとかタメに関しては身体で覚えるしかなさそう、か……」

 

ピカピカの実の力の実験。

 

それはこの世界に来て何度も何度も試している事。

調子に乗って墓穴を掘らない様にする。当然の備えだ。

 

力に酔った者の末路なんて、何度も読み漁った物語の定番の様になってるから。

それが如何に中世の世界が舞台で、殆ど現実的な法則の力、異能の様な力とは無縁な世界線だったとしても。

 

単純な話、敵国であるバルベールの方に攻め入って、最初の方は圧倒的な力で一方的に殲滅する事だって容易だろう。

そうなったら光の神様じゃなくて、破壊の神様になってしまいそうだが。

でも、危険がない訳じゃない。持久戦になったりすれば能力発動のリミットの事もある。移動手段も無くなり生身な状態になってしまう。

回復の時間もそれなりに必要であることを考慮すれば、……当然絶体絶命。

 

《天岩戸》と言ったピカピカ特大ビーム連発して大破壊~をすれば或いは……とも思う。確実に戦意を削ぐ事が出来るし、反対の立場だったら我先にと逃げる自信もある。某黄色いサルが追いかけてくるのだ。屈強な男たちでさえ逃げ一択。余程の大物や命知らず以外立ち向かうなんて選択肢をとる訳がないだろう。

 

―――が、そう単純な話ではない。主に精神面。

 

ジルコニアには申し訳ないが、敵国だからと言ってダース単位で無差別に虐殺する様な精神は流石に持ち合わせていないから、結局の所出来ない。

以前、一良に自分はゲーム脳だと伝えていたのだが、これほどまで長く没入した世界、ゲームとは思える訳がないリアルな世界にやってきて、ゲーム脳だから、オレTUEEE! を連発する~~~、なんて無理だ。

 

 

勿論、襲ってくる連中、これから攻め入ろうとする敵を返り討ちにする程度は訳ないのだが、やはり無差別な◎人厳しい。

 

 

それにもう1つ頭を悩ませているのが実に性質が悪いのは前世の記憶だ。

 

 

簡単に思い出せたら良いのに、本当に性質が悪いタイミングで記憶の扉が開くから、全て覚えている様で、覚えていないに等しい。

これまでもあの手この手で何とか思い出そう、思い出そう、としたのだが、縋る者には開かない扉? とでもいうのか、全く思い出せない。

 

 

「まぁ、皆を守る事。専守防衛を優先して気を配ること、かな。今は……」

 

 

何が最善なのか、それは自分の中で決める事ではない事も和樹は解っている。

とても頼りになる人達が多い事も和樹は解っている。

そして、如何に強大な力を持ったとしても、守れる範囲と言うものはある事も理解している。

 

 

だからこそ、過信はせずに、今は兎に角出来る事をしよう―――と心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もノワールとの蜜月は続く。

 

深夜の時間帯を使ったり、念には念を入れて、ノワールやオルマシオールに頼んだ催眠術を駆使し、万が一にでも視られない様に配慮はしているから、あまり遠慮が必要ないのは非常にありがたい。

 

ノワールとオルマシオール2人掛かりの催眠術? は、単独で行うよりも遥かに効果があるらしい。

あの催眠術に耐性? を持ってるバレッタであっても、堪える事は難しいとかなんとか。

和樹は、腰を掛けて夜の空を眺めながら呟く。

 

 

「やーそれにしても、今の状態でノワ達に襲われてたら、あっと言う間にゲームオーバーだったなぁ。この状態でノワに木剣で叩いて貰ったら透過しなかったし、ふつーに痛かったし。うんうん、やっぱどんな力にも弱点有り、と」

 

 

この世界に来たばかりの事を思い出してしまうのは、やっぱり森の中で、それもウリボウ達もいる中で色々と話をしているから、だろう。

あの時程恐怖を覚えた事は無いからだ。

今はトンデモナイ能力を得て、それでも油断と過信はしない様に、と戒めているが十分過ぎるオーバースペック。無敵感満載で今日まで過ごしてきたから。

 

だからこそ、より刻まれた恐怖は早々忘れれるものじゃない。

 

 

「……きゅーんきゅーん」

 

 

そんな話をしていると、いつの間にか傍に来ていたウリボウの内の1匹……ハクが来て鼻先をこすり付けて小さく鳴いていた。

 

耳も尻尾も垂れ下がり、悲しそうな表情にも見える。その所作だけであの時の後悔の事を気にしているのだろう、と和樹も読めた。

だからこそ、直ぐにハクの頭を撫でながら言う。

 

 

「あっはは! ごめんごめん、変に気にさせちゃった? もう良い思い出って自分の中で昇華出来てるから」

 

 

わしゃわしゃわしゃ~~と、やや乱暴気味に頭を撫でまわす。

ハク程の巨躯のウリボウは、このくらいが丁度良いのだ。ハク自身も気持ち良い様で、次第に尻尾が左右に揺れる様になり、耳も持ち上がり、完全に立ち直った。

 

だが、その横にいたノワールはと言うと。

 

 

「……ぅぅ、私はあの時本当に取り返しのつかない事を……」

「ああっ! ノワまで!? ごめんごめん、今のはオレの言い方が悪かったってば。ノワ達がそんな事する訳ない、ってもう解ってるから。いい加減長い付き合いになってきたでしょ?」

 

 

同様に悲痛な声を上げてたので、こちらもしっかりとフォロー。

でも、ハクと違いノワールは意気消沈していく。どよよん……と効果音をつけたくなるくらい沈んでいってるのが分かる。

 

なので、和樹は問題ない旨を再度、再再度伝えてどうにか元気になれ~と頑張ってるが……なかなかどうして。

ノワールは人間の状態なら間違いなく美女に入る分類。バレッタ、リーゼ、ジルコニアとはまた違うタイプ。ミステリアスさがあって、何処か妖艶な様子も見受けられる大人な女性だ。

そんなノワールが悲しそうな顔をしていて、平気でいられるわけがない。

 

 

 

「ほんと気にしないでってば! 気にするの禁止! って前に言ったでしょ? 元気出して!」

「ぅぅ…………………」

 

 

 

だが、それも終わり。

 

 

「……ん?」

 

 

違和感に気付いたからだ。

と言うか、どうして気付けなかったのか? とも言える。

それ程までに、あからさまだったから。

 

 

「ノワ、ひょっとして……オレの事からかってない?」

「!」

 

 

おぃおぃおぃ……と、顔を両手で覆ってるノワール。でも、その手の隙間からちらっと見えた目は、表情は何処となく笑ってる様に見えたのだ。

それも一瞬見えた、気のせい? といった事ではなく、適度な間隔でこちらを伺う様に? 或いは困ってる様子、揶揄えているかどうかの確認―――の様に見えなくもない。

 

そして、それが正解だと言う事もノワールの反応を見れば明らかなので……。

 

 

「………瞬間移動(やたのかがみ)

「ああっ!!?」

 

 

確信したと同時に、和樹はピカピカの能力で瞬間移動。

ある程度、回復出来たので移動するくらいなら問題なく出来た。

 

そして、想定外! と先ほどまで両手で顔を覆って悲しんでいた筈のノワールは直ぐに手を伸ばそうとするが、当然ながら光に追いつけるわけもなければ、光を掴む事なんて出来る訳がない。

 

 

「か、かずきさんっっ!! すみませんっ、ごめんなさいっっ!! わた、私もハクの様に頭を撫でて貰いたかっただけなんですぅぅっ!! 元気つけて貰いたかっただけなんですぅぅっ!! (最初は)か、からかうつもりじゃなかったんですぅぅっっ!!?」

 

 

折角の逢引の時間が短縮された。

ハク自身も、ノワールのせいで帰ってしまったんだ、と解ったのだろう、彼女を見る目が厳しい。

 

それ以上にノワールは悪手だったと後悔。

 

 

その後、暫く夜の森にノワールの嘆きが響き渡り――――今度は和樹に、焦らされて 暫くの間からかわれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――数日後。

 

 

 

 

 

「アイザックさんの従姉妹の人が、グリセア村を守ってくれる、って事ですか。それなら更に安心ですね。アイザックさんの身内ってだけでも」

 

 

和樹は一良から、報連相を受けた。

何でもアイザックから相談を受けて、その内容は グリセア村の守備隊のもとに少々滞在しても良いか? 代わりに他の人員を~と言う流れで、彼の従姉妹、シルベストリアと言う女性が来る事になったらしい。

 

 

「歳は24歳で若いけど、アイザックさんが太鼓判を押す程優秀な人だって。正義感も強くて不正も極度に嫌っているから、今回の任務にはうってつけだとか」

「へぇ……それはますます………、っというか、アイザックさんがそこまで太鼓判を押すって、物凄く、とてつもなくお堅い人って事じゃ? ちょっと想像したら、若干震えたんですが……」

「あ、それはオレも思ったよ……。でも、一生懸命否定してたから。村の皆ともきっと上手くやっていけるって。普段は気さくで朗らかな人らしいし。…………怒らなければ」

「……最後の方がすごーく不穏ですよ一良さん。軍の人を怒らせる人なんて、グリセア村にはいないと思うんですけど……、ヤンチャな子達は沢山いるから余計に」

 

 

シルベストリアの人物像を一生懸命思い出そうとする和樹。

名には覚えがある。でも、詳細は不明。ただ、ニーベルの時の様な不快感は一切しないのがせめてもの救い。

 

 

【怒ったら怖い。不正をしようとした同僚・上官を揃って半殺しにした】

 

 

とか聞いて、ぎょっとしたが……。

 

 

「でも、アイザックさんやルートさんを見てたら、きっと大丈夫ですよね。それにグリセア村だったら、怒る(・・)、じゃなくて叱る(・・)、と言う表現の方が正しそうじゃないですか?」

「……ですね」

 

 

と言う事で最終的には落ち着いた。

アイザックの家系……、あのイクシオスも含めて真面目な人が多いのは間違いない。

シルベストリアもきっと同じ分類に入るのだろう。

不正を許さず、毛嫌いし、少々やり過ぎな気がするが、時代背景が背景だ。現代日本・未来日本とは違う。

鉄拳制裁を以て相手を悪を罰する。

 

 

心情はさておき、信頼は出来るのには違いない。

 

 

「早めに会ってみたい、ですね」

「オレもそう思います」

 

 

そういって、話を締めた。

 

シルベストリアについては、もう直ぐ会えるから、そこからゆっくりと話をして親交を深めて、人柄を知っていけば良いと考えてる。

 

家系を考えたら、剣術の相手をしてくれ!! と言われるかもしれないな、と和樹は笑った。

 

 

 

「……さて、と」

 

 

 

一良との話を終えて、和樹は別の場所へと移動。

覚えていないことは仕方がないが、覚えている事はしっかりと把握している。

 

中でも、特に気にかけてる部分は猶更、記憶に、頭に刻み付けている。

 

 

それが、彼女――――マリーの家系の事。

 

 

 

兄のハベルとの仲は文句なしの一言だが、もう1人の兄(・・・・・・)はそうはいかない。

 

 

 

和樹は、視界の中に、マリーの姿を捕らえた。

それと同時に、もう1人の兄……アロンドの姿も。

皆作業に精を出してる事もあって、2人のやり取りは周りには聞こえてないようだ。ちょっとした2人きり状態、と言うのが正しい。

 

 

そういう場面を狙って(・・・・・・・・・・)接近したと考えられるが。

 

 

だが、お構いなく和樹は2人に近づく。

 

 

「アロンドさん、お疲れ様です。それにマリーちゃんも」

「ッッ!!?」

「カズキ様。おはようございます」

 

 

つい今し方まで、アロンドは険悪な雰囲気、表情だったのを和樹はしっかりと見ていたが、見てない様に、気づいてない様になるべく勤めつつ―――話しかけた。

 

 

「(おい。カズキ様の前だぞ。挨拶をしないか)」

 

 

マリーにとっては強烈で凶悪なアロンドの圧力を身体で感じ、震えつつも慌てて頭を下げた。

 

 

「ッ……!! お、おはよう、ございます。カズキ様っ」

「うん、おはよう。今日も朝から頑張ってくれてありがとう」

 

 

そういって、マリーの頭を撫でてあげた。

手から伝わってくる。震えてるのがよく解る。だから少しでも落ち着ける様に、少しだけ長めに撫でた。

 

そして、落ち着いてくれたのか、或いは彼と2人きりじゃなくなった事で緊張感から解放されたのか、マリーの震えが止まった。それを確認できた後に、和樹はマリーから手を離し、その笑顔のまま、アロンドの方を見る。

 

 

流石はアロンドだ。上辺を繕う術にかけては随一。

マリーとの険悪な間柄を全く噯にも出さず、愛想笑みを見せている。

 

和樹も当然それに気づいてるが、気づいてないフリを続行。

 

 

「マリーちゃんもハベルさんも……。本当に、ルーソン家の方々は皆優秀で、凄いですね。正直、私の中では飛び抜けて――――と言っても決して大袈裟ではないですよ」

「……はっ。ありがとうございます。そこまでの好評を頂けて、ルーソン家の長兄として鼻が高く、心より御礼を申し上げます。カズキ様」

「いえいえ。そう固くならないでください。それにあまり、固い雰囲気出しちゃったら、作業してる皆さんが緊張するかもしれませんし」

 

 

そういうと、和樹は回りに手を振った。

和樹の人柄は、皆知ってるからそれぞれが頭を下げたりして挨拶を返す。誰もが笑顔で。マリーの監督の下で作業をしている時も十分程穏やかだったが、それ以上に皆が力を抜けてるのを感じる。

勿論、メリハリはしっかりとしているので、その辺りは問題ない。

アロンドも最初こそ見えない所でマリーに圧を送ってたようだが、ここまで和やかな空気になったのを見て、これ以上は下手をすれば自分が壊すかもしれない状況になるのは不味いと自重を始める。

 

 

「あ、資材調達の方は問題なさそうですかね? 一良さんも確認したがってましたし」

「はい、そちらの方が概ね予定通りですよ。これからカズラ様にも報告へ向かおうと思っていた所です。その道中に……見知った者が働いておりましたから、ルーソン家の者として、少々確認の意味を込めてこちらに」

「評価は間違いなく最高位ですよ。個人的にボーナスを上げちゃいたいくらいで。……まぁ、余計な事しちゃったら、一良さんに迷惑掛かっちゃうかもだから、自重してますけどね」

 

 

ハベルの名はしっかり出すが、マリーの名は意地でも出したくない様子なのがよく伝わってくる。

それを感じつつも、マリーの事を大好評するモノだから、アロンドの表情もほんの僅かだが、口端が歪んで見えた気がした。

化かし合いの軍配は和樹側に有り、と言った所だろう。

 

 

その後、暫く談笑をして――――。

 

 

「一良さんは、A区画の現場に顔を出してる筈ですよ」

「ありがとうございます、カズキ様。大変有意義な時間でした。また、今後ともご指導ご鞭撻のほど、家族ともどもどうかよろしくお願いします」

「ええ、勿論です!」

 

 

最後は一礼をして、穏やかな空気のまま別れた。

マリーの事は最後まで見る事も褒める事もしなかったが、それを和樹の口からマリーに伝える事は無い。

ルーソン家の者を下げる様な事はせずに。

 

 

「お疲れ様、マリーちゃん。……大丈夫だからね」

「ッ、ッッ……!」

 

 

ただただ、マリーに大丈夫だ、と安心して貰える様にし続ける。

 

アロンドの姿を見るだけで身体が震えていた。

これまでは、アロンドが見えなくなっても暫く震えが止まらなかった。

止まるのは、兄のハベルが励ましてくれる時だけだった。

 

でも、今日からは違う。

 

マリーはきっとアロンドの姿を見ても、もう震える事はない。

 

そう、断言出来るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイザックは、件の従姉妹―――シルベストリアの元に居た。

ショートカットの金髪と活発そうな顔立ちが印象的な女性である。

 

申し送り事項を全て伝えて、万全の状態でグリセア村へと向かってもらう為に改めて説明に来ていた―――のだが、雲行きが怪しい。

 

ニコニコと笑い続ける彼女。

それを冷や汗が流れるのを感じながら相対するアイザック。

 

 

「……重ねて言いますが、これはとても重要な任務です。何があろうとも規律を徹底し、外部から村に接触しようとする者は必ず先にイステリアに向かわせてください」

「かしこまりましたアイザック様。このシルベストリア、完璧に任務を遂行して見せますわ」

 

 

朗らかに答えるシルベストリア。

確かに、アイザックは一良に説明する時、シルベストリアについて気さくで朗らかな者、と称したが、それは他者に向けてであり、ベクトルは自分に向いていない。

 

元々シルベストリアはアイザックよりも立場が上なのだが、現状として指示を出すのはこれまでの積み重ねもあり、アイザックの役目となってるからやりにくい……と言う事ではなく、兎に角不自然を通り越しているのだ。

 

 

 

「(……な、なんなんだ。オレに対するこの態度は!? 今まで敬語も様付けも使ってきたことなんてないのに、何より終始浮かべてるこの笑顔は……)」

 

 

 

漸く、アイザックはシルベストリアの様子を言葉にする事が出来そうだ。シルベストリアに対して、何を感じているのか、言語化できそうだ。

 

 

それは――――恐怖の2文字。

 

 

非常に怖い。身体が恐怖を覚えているのだ。

ある種、初めて光の神と相対したあの時の恐怖と同等レベル……と思ってしまうのは和樹の人柄、一良の人柄を知ってるからそう思うだけだとは思うが、それを差し引いても、この得も知れない恐怖はきついを通り越している。

 

 

「駐屯中は村の警備と、外部からの接触者の対応をすれば良いのですね。他は何もしなくて良いのですね?」

「はい……村の方に何か相談を受けたらその時は……あ、あの。もしかして怒ってます?」

 

 

あまりのプレッシャーに耐えかねたアイザックは直接聞く事にした。

それはそれで相応のプレッシャーと言う高い壁があった筈だが、この状態を延々と維持する方がもっときつい、との判断、英断だ。

 

 

「いいえ。そんなことありませんわアイザック様」

 

 

ニコニコニコ……と笑顔のままいうシルベストリア。

心なしか、その笑顔の質が……恐怖の割合が倍増しになった様な気がしてならない。

 

だが、何故か解らない。

何せ、話を持ち掛けた当初、彼女はアイザックの頼みならば、と2つ返事で任務を引き受けてくれた筈。だからこの様な笑顔の奥に潜む阿修羅……憤怒の化身の様にしてしまった理由が全く分からない。

 

 

だが、それは直ぐに判明する事になる。

 

 

笑顔のまま、シルベストリアはネタばらし。

 

 

 

「―――ただ、任務期間が無制限だなんて聞いておりませんでしたから。まさかアイザック様にこの様な仕打ちをされるとは夢にも思ってなかったので、少し驚いてしまっただけですよ」

「!!」

 

 

 

ここで、アイザックは自分自身の不手際を嘆く。

確かに事前に説明したし、了承もしてくれたし、その時は2つ返事で、それもいつも通りの応対だった―――が、その時は確かに任務の起源については何も話をしてなかった。

 

僻地へと左遷させた―――と思われても仕方ない。

何より、バルベールとの戦争が後数年後に起こる……砦の街でもまだまだやらなければならない事が多い最中に、戦線離脱とも言える場所に出張ともなれば、国の為人の為命賭して戦い続けてきた軍人であるシルベストリアにとって、耐えがたい仕打ちなのだ。

 

言葉にしなくとも、それを言葉の無い圧で発する程までに。

 

 

「ですから、アイザック様。シルベストリアからの忠告をひとつ。今後は夜の1人歩きには気を付けた方が良いかと存じます」

「えええ!? い、いや待ってください! そんなつもりでお願いした訳では……っ」

「いえいえ。別に良いのですよ。それよりアイザック様にはもう何年も剣の稽古をつけて頂いておりませんでしたね。久々に手合わせをお願いしたいのですが」

 

 

黒いオーラと共に、腰に掛けられた剣に手をかけられた。

光は和樹を通して何度も見た事があるが、この黒いオーラは初めてだった。

 

 

これまで何度も鍛錬に付き合って頂き、自分も上達している、まだまだ強くなってきてる事を実感させていただける程、光の神には感謝をしている。シルベストリアの実力は圧倒的に自分よりも高い。これまでの訓練でも何度も血反吐を吐き、地に叩き伏せられたことか、と思い出すだけでも辛く厳しい訓練だった。

 

だが、光の神の元、剣を磨き、鍛錬し、上達した自分であれば或いは――――と考えなかった事はないのだが、その淡い自信が一瞬でかき消されてしまう程に、シルベストリアの黒いオーラは凄まじかった。

 

 

「いやだから、本当にこれは重要な任務なんですよ! お願いしますっ! 話を聞いてください! それと敬語もどうかやめてください!!」

 

 

だから速攻で降参する様に両手を上げた。

無防備の人間を斬る訳にはいかないでしょう? と言わんばかりに。

 

 

真剣での手合わせなど、自分がなます切りにされてしまう未来しか見えない。

多少上達した所で、その差が縮まるモノか、と一蹴された気分だが、命を守る為の行動は、選択はこれしかない。

 

 

 

ここで漸くシルベストリアは笑顔を止めた。

 

 

「なら、ちゃんと説明して。国の未来を左右する重要な任務だとあなたは言っていたけど、寒村の警護にそんな価値があると本気で思っているの?」

 

 

漸く腹を割って話をする事が出来る……と何処か安堵するアイザック。

それ程までに、あの笑顔は怖かった。この怒った顔、圧とは比べ物にならない程に。

落ち着いて冷静に、全てを伝える為に口を開く。

 

 

「重要どころの話ではありません。あの村のおかげで今こうして領内は急速に復興し始めているのです」

「だから、その理由をさっさと話しなさいって言ってるのよ。要点以外の事言ったら斬り倒すよ」

 

 

非常に物騒な事を言われているが、アイザックは落ち着いている。

ひょっとしたら早く打ち明けたかったのかもしれない。

 

 

 

【交渉事で、必要なら私の名を使っても大丈夫ですよ。証明も後々に行いますから。あ、勿論誰でも何でも~~ってわけで言ってるんじゃないですからね? ……アイザックさんが、話しても大丈夫だって人なら、って事で。アイザックさんが信じてる人なら、私も信じられる。信じられるに値する、と思ってますので】

 

 

 

以前和樹に言われた事だ。

一良も同様にうなずいてくれたが、ここまで信頼してくれたことがどうしようもないくらいに嬉しかった。

 

そして今、目の前のシルベストリアは条件をクリアしている。

間違いなく信じられる人だと断言できるから。

 

 

 

「あの村には、カズラ様、カズキ様。……お二方にとっての大切な人達が暮らしている村だからです。その方たちを守っていただきたいのです」

 

 

真剣な表情で話すアイザックの顔を見て、シルベストリアは少しだけ怒気を下げた。

そして、じっと目を見据える。

 

 

「カズラ様、カズキ様……似た名を持つ他国の大貴族が復興の手助けをしてくれてる、って話は聞いていたけど、その人達の事?」

「ええ。そうです。あの方々は他国の貴族ではありません」

「……そう、本当はただの平民だったの」

「いいえ。それも違います」

 

 

アイザックはシルベストリアを真っ直ぐに見据えながら、核心部分を口にする。

 

 

「お二方は、この世に降臨召された、二柱の神――――グレイシオール様とメルエム様です」

 

 

 

一瞬、アイザックが何を言っているのかわからなかった。

だが、それは本当に一瞬だ。会話の流れが止まる様な時間でもない。

 

 

「グレイシオール様……、確か慈悲と豊穣の神様。メルエム様は……いえ、聞いたことのない神の名、光の総称だって言われてたから。リブラシオール様の伝承の中でよく見る単語ってイメージだったけど……、本当に?」

「はい。誓って嘘ではありません」

「…………そうなの。……そうなんだ」

 

 

アイザックが誓うと言った。

そこまで聞いたシルベストリアは身体から力を抜いた。先ほどまであった圧も、当然ながら黒いオーラ? も消失している。

 

 

「……あの、自分で言っておいてなんですが、疑わないのですか?」

「だって、そうなんでしょ? あなたのいう事なら信じるよ。あなたは嘘はつかないし」

「……そう、ですか。最終手段を用いなくてほっとしました」

「最終手段??」

 

 

アイザックの言葉に、シルベストリアは首を傾げる。

 

 

「会って頂けたら直ぐにでも理解できます。あの神の御業を目の当たりにすれば必ず。私自身がそうでしたから。……お優しいお2人ですが、手を煩わせる事なく信じて貰えて本当に良かった」

「……………そう。でも、それって基本的に機密中の機密、国家最高レベルの機密だったりするんじゃないの? 私に話しても良かったの?」

「ちゃんと話さなかったら、納得しなかったでしょう?」

「………それもそうだね。私の悪い癖だなー。反省する。ごめんね」

 

 

先ほどとは打って変わって、しおらしくなってしまった。

 

 

「ですが、先ほど申し上げた通り、私の口から言わなくとも、貴女も理解できると思います。……ただ、私が斬られた後になるかもしれないので、口に出してしまいましたが」

「もう。ほんと悪いと思ってるよ。……でも、グレイシオール様にメルエム様かぁ……、今度お話してみたいなぁ。その神の御業、と言うのも出来れば拝見したい……」

「メルエム様は武芸達者でもあらせます。私もルートも神の元、修業を積んでますので、あなたも気に入っていただければ直ぐにでも」

「何それ! ズルい!! 神様と一緒に訓練なんて、そんな神話みたいなのやってるのズルいじゃん! 私も一緒に訓練したい!! ……っとと、なら与えられた任務を完璧に、確実にこなさないと、だね。まずは謁見出来るくらいに信頼を勝ち取って見せるわ」

 

 

シルベストリアの力強い言葉に、アイザックは大きく頷いた。

シルベストリアもアイザックに向き合い、姿勢を正す。

 

 

 

 

「任務の目的了解致しました。早速現地に向かいます」

「よろしくお願いします。私も後から向かうので、村の人達には挨拶だけ済ませておいてください」

 

 

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