ゲームしてたら異世界に来てました。   作:ハイキューw

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58話 リーゼさんとデート②

 

 

「おおぅ……、オムレツパンにパン麦のサラダ……注文した時は解んなかったけど、これ結構多いな」

「ん。私もそー思った。けど大丈夫大丈夫。食べれるよっ」

 

 

予想以上の量の料理が目の前に運ばれてきて、目を白黒させてる和樹。

リーゼはそう思って無さそうだ。色々と優秀で人気もので正直忘れがちになりそうなのだが、リーゼはまだ14歳。日本で言えば中学生でまだまだ少年少女の分類だ。

つまり、育ち盛りだという事。沢山動いて沢山頭を働かせて、毎日を過ごしているのだ。沢山食べて大きくならなければならないだろう。

 

何だか、その後リーゼが胸元を抑えながら睨んできたけど……気のせいだと言う事にしておこう。そして断言しておくが、《大きくならなければ~》の部分は、リーゼが気にしている様な場所を意識した訳じゃないから悪しからず。

 

それにしても、簡単に心読まれては敵わないが……今後はそれなりには注意をしておかなければ、と和樹は思うのだった。

 

 

 

 

その後、食事を楽しみつつ、和樹は初めての店を堪能し、木板のメニュー表を再度見上げた。

 

次に頼むならどれが良いか……、と選んでいた候補が川魚のパン包み焼き、ポテトパンなどなどが掛かれており、どうやらこの店はパン麦を使った料理専門な様で、どれも食欲をそそられそうな名前ばかり。

 

一良には申し訳ないが、和樹はどういう身体の構造しているのか、こちらの世界の食べ物でもお腹いっぱい、栄養補給問題なし、なので十分に楽しめるのだ。……非常に申し訳ない。ほんと、どういう構造になっているのか、自分でも知りたい気分だったりする。

 

 

「美味しいねー」

「ん………。リーゼが御贔屓にしてる理由が解るよ。こりゃ美味しい。頬が緩む」

「でしょでしょ?? でももっと有名になっちゃうかもしれないなぁ。何せ、あのカズキ様(・・・・)が気に入っちゃってるお店になったんだし? ただでさえお昼時は混むお店がもっともっと~ってなるかも??」

「お店が繁盛してくれるならOK! って言いたいけど、繁盛し過ぎて中々通えなくなるのは嫌だなぁ……。特権みたいにするのも嫌だし。いやぁ、悩ましい」

「えへへ。カズキのそういう考え好きだな。だよね。市民皆のお店だし。……貴族だったら、欲しいモノ独占する、なんていうのもやっぱりいるし。皆の味方、って感じで好きっ」

 

 

イステリアでは少ないけど、とリーゼは言うと、配膳されたスープを口にする。

少々熱かったのか、軽く表情を顰めていたが、直ぐに美味しいと頬を緩める。

 

 

「そりゃそーでしょ。庶民あっての貴族だし、奴隷の人達が頑張ってるから、庶民の皆も生活を支えられてるんだし。国を護る兵士の皆が居るから安全は護られるんだし。……全部回ってるんだ。だから、誰にだって分け隔てなく~だよ。……まっ、だからと言って俺の価値観を押し付ける様な事はしないけどね」

 

 

神様権限を使えば、人類皆平等! 皆仲良く! そう言った国柄にする事は可能だろう。

 

だけど、それでは意味を成さない。

大きな力で無理矢理に変えていった所で意味はない。理想があるのなら自力達で変えていかないと絶対に長続きしないし、大きな隔たりや蟠りが出来るのが目に見えている。

未来永劫見守る事が可能なら何とか……と思わなくもないが、向こう100年、200年と長い年月を暮らせたとして………今の状態のまま、何も変わらず平和主義を貫けれるか? と問われれば正直解らない。

人間は変わるモノだから。それは自分も例外ではない、と思っているから。独裁的なピカピカの実の能力者……なんて、某国民的なアニメ・漫画内で暮らしてる皆にとっても最悪を通り越してる。

 

 

「皆に感謝……うん。私も心掛けてる。だからこそ、カズキもカズラも皆から支持されて、人気があるんだ、って思うわ。神様関係なく、ね?」

「それは光栄。……うん、こっちのスープ美味しいっ」

「ほんとっ? 私にも一口ちょうだい?」

「OKOK、シェアしよう」

 

 

ひょい、と差し出したスープが6割は残っている木製皿をリーゼに差し出した。

魚の出汁がよく出ていて、パンに浸して食べたらなお美味しいだろう。スープのままでも勿論美味しい。

リーゼも気に入るだろう、と差し出したスープを、何を思ったのか、少しだけ皿を回転させて……口に付けた。

リーゼの口が触れている部分は————。

 

 

「ほんとだ、美味しいね~」

 

 

狙っているのか偶然なのか……、明かに狙っているだろう間接キス。

頬を赤くさせながらスープを口に入れるリーゼ。それは身体が料理で温まったから、ではないだろう。

 

 

「大好評だよ。次にここに来た時も注文しよっと―――」

 

 

そんなリーゼに気付いてませんよ~、と言わんばかりに普通な対応をする和樹に少しだけリーゼはムッとして頬を膨らませた。

そして、皿をテーブルに置くと……。

 

 

「えへへ。関節キスだね」

「ちゅーがくせいか」

「ん?? ちゅーがくせいって?」

 

 

早速ネタ晴らし。

和樹はちょっとツッコミ。リーゼは中学生、の意味を当然解ってない。

 

 

「まだまだお子様だなぁ~~リーゼお姫様はってこと」

「ぶ~~~! お子様じゃないもんっ! と言うか、今こそ、もっと可愛らしい反応してくれても良いのにっ!」

 

 

そんなこんなで、2人は食事を心行くまで楽しみ、暫く店でだらだらと雑談をして過ごした。

話の内容は主に和樹について。まるで、普通の人間の様に話す内容。神様じゃない事をもう見破られた? と少なからず戸惑いや躊躇いも生まれた。

一良と明らかに違う光の身体をもってしても、人非ざるものじゃなく、人として認識しているリーゼは凄いと思う。

 

だからこそ、本当に本気で心から慕って、好意を抱いているのだろう事も同時に強く理解する。

 

楽しいひと時で、ついつい和樹もリーゼのその好意を受け取りたい……と思うのだが、まだまだ解らない事が多すぎるので、やっぱりその手を握る事は出来なかった。

 

 

 

そして昼近くになって店が混んできたので、お会計を済ませて街に繰り出した。

食事の代金(おごり)は男が払う! と言う聞く者が聞いたら盛大な罵詈雑言が聞こえてきそうだが、和樹はそういう精神な持ち主。にも拘わらず、らあるまじき事態……、リーゼが知らない内に払ってくれていた。

 

 

「へぇ……これ塩だね。《焼塩》?」

 

 

リーゼの行きたい店に向かっている最中の高級商業区画。

行商人が荷馬車の簡易露店で、塩を打っているのを見つけた。

今後、重要なモノになる塩だ。色々とリサーチしておくのは良い事だし、一良にも以前伝えていたので、これ幸いに、と和樹は塩を眺めていた。

 

更に盛られているのは純白の塩と壺に入れられた灰色の塩の2種。

 

純白の方が不純物が無さそうで当然高いだろうな……とある程度の予想を立ててみたらドンピシャリ。《焼塩》と書かれているのが、純白な塩の方で、圧倒的に灰色の塩に比べて値段が高い。

 

 

「うん。あれはフライス領の塩で、焼塩はグレゴルン領のものより高いけど、その他の塩は少し安いよ。その分、質は悪いけど」

「成る程—————あ、塩に関してはリーゼがムリする必要皆無だから。ニーベルだかサーベルだか知らん男の言いなりになる必要無しだから。我慢する必要もなし。再度、再三言っておくね。……いや、ほんと冗談抜きで、何かしようものなら、光の制裁喰らわすよ。命の保証は一応してあげるけど、もう二度と手を出さない~くらいはしたいな? ジルコニアさんに相談したら、諸手挙げてOKしてくれる筈」

「ッ…………」

 

 

今の今まで楽しそうに、時には冗談言ったり、拗ねて見せたり、泣き真似してみせたりと、喜怒哀楽愉快に表情を変えていた和樹だったが、怒の感情は全く表に出してなかった。

 

でも、今ハッキリと怒ってくれてるのがリーゼには解る。

それがどうしようもなく嬉しくて、物凄く愛おしいのだ。

 

 

「ありがと、凄く嬉しいよ。でも、ほんと心配しないで? カズキが無茶しちゃったら、皆大騒ぎになっちゃうし。大丈夫! 私の身体はカズキの予約で埋まってる、ってしっかり伝えておくから!」

「そうそう! そんな感じでよろしくどうぞ!」

「……もうっっ! 流石に今のは、絶対顔赤くさせる場面だよ!? 私だって恥ずかしいの我慢して頑張ったのにっ!」

「もうっ! 貞操なんてものは一番大事な時にとっとくモノなの、って前に教えたでしょっ! リーゼはもっと自分を大切にしなさいっ、ってば」

「だーかーらっ、カズキの事が本気で本当に好きなんだってばっ! 他の人に安売りなんて絶対にしないし、余所見もしないってば! ここが一番大事な場面なんだってばっ!」

 

 

高級商業区で一般的な庶民は(値段的に)近づけず、故に往来の場と言えどもここは比較的数は少ない場所。

だけど、いないという訳ではない。高級店が並んでいる以上、店員は要るし貴族の方々、マダムな方々もお買い物に来ているのだろう、少人数だがいる。

中には、それなりに見知った相手もいた……かもしれない。

 

そんな場所で、公開プロポーズをやってのけるリーゼの漢気には感服しかない……のだが、流石にここまで言われて強く拒絶なんてもってのほかだ。

両手をぎゅっ、と強く握ってプルプルと小刻みに震えてるリーゼを見てみても……。

 

 

「……リーゼ。嬉しいよ、ありがと。ほんとだよ? ほら」

「むー……」

 

 

頭を撫でてあげると、力を込めてた拳が緩まった様に感じた。

それを見た和樹は意を決して言う。

中途半端に誤魔化していたのが悪かったんだ。

 

リーゼが自分自身の事を人間じゃない、と言うのは間違いなく解っている。

そもそも、光な身体を見せた時点で、光の能力を駆使して空を飛んだ時点で否が応でも理解する筈。

その上で、ここまでの好意を抱いてくれるのだ。覚悟を以て、人と神が交わる覚悟を持っているのだ。元々、リーゼは領主の娘として様々な覚悟を以ている。それだけの器量を持ち合わせている。

だから、簡単に考えている訳じゃない、と言う事くらい和樹にも解る。

 

 

でも、情けないかな。和樹の方がまだまだ覚悟を持てていない。

 

 

「もう少し、待って欲しい……かな。大切な事だから。リーゼの告白をおざなりにするつもりは全くないんだ。……でも、悪い。もう少し、返事は待って欲しい。メルエム様からのお願い」

 

 

撫でる手に光が宿る。

街中だから目立たない程度に、正午の日光の光に溶け込む程度に。

 

その暖かな光がリーゼの身体を包み込んだ。

 

心地良い、気持ちが良い。日向ぼっことはまた違う。どう表現して良いか解らないが、リーゼには表現しようのない多幸感でいっぱいになっていた。

 

 

「んっ……待つよ。今のカズキは真剣に聞いてくれたもん。真剣には真剣で返さないと、だから……」

「普段、真剣な場面はいっぱいあるつもりなんだけどねぇ……」

「解ってるよ! でも、私の事に関しては、真剣じゃない事多かったりするもんっ! 茶化したり、揶揄ったりするもんっ! もしかして自覚してないのっ!? さっきの事とか今の事とか!」

「あい、おっしゃる通りで……。だって、リーゼが可愛いんだもん……ちょっと、ねぇ?」

「むーーーー! そ、そんな事言ったって駄目だからねっ」

 

 

ポカポカポカ、とリーゼは和樹の胸元を叩いた。

子供をあやす様に和樹はリーゼの頭を撫で続ける。

 

リーゼの人徳もあるのだろう、野次馬根性だった皆の衆からも、穏やかな、それでいて優しい笑みに包まれる。

何を言ったのかは、リーゼの大きな声以外はハッキリと解らないが、それでも雰囲気は良い。

だから、祝福をしたい――――……とばかりに拍手を送られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、グレゴルンとフライスの塩って、値段が違うけど、細かな詳細はどんな感じになってるの?」

「グレゴルン領の塩が2割引きになってからは、フライス領の商人も競争して値段を下げて来たんだ。……ただ、明らかにグレゴルン領の塩に比べて質が悪いから値段が安くても、あんまり人気はないんだけどね」

「成る程……。まぁ、色を見てもそんな感じだよねぇ。質が悪いって言うのはアレ? 砂利とか塵、虫みたいのが入ってたりって感じ?」

「そうそう。まぁ、《ヒドイのだと~》って文言を、頭に付けてね。全部がそうってわけじゃないから。質より量、一熟す為に雑に作ってるって感じだと思う」

「そりゃ人気ないのもうなずけるな。うんうん。後でカズラさんに伝えるべき点だ。覚えて

おくよ、ありがと」

「あ、これも言っておいて。グレゴルン領のものの中にはそういうの無いから。色が多少ついてても塵とかが混じってるのは殆どなくて、美味しいって」

「了解了解。……ふむふむ」

 

 

塩に関しては、一良とも話をしているが一応対策の様なのを考えている。

海に面してないから難しいのかもしれないが、塩が獲れるのは海だけだとは限らない。

 

地質学者、と言う訳ではないが、その辺の調査も和樹にとってみればお手の物。解らなかったら、ピャッと言って、ピャッと壊して、パパっと色々と回収して分析をかければ良い。

塩を取引している以上、実物が有れば調査は容易に出来るだろうから。

もしもムリなら日本に持ち込む~と言う手段もあるので大丈夫だ。

 

 

色々と今後の業務内容を更新・追加を頭の中でしていると―――リーゼが腕を絡ませた。

別の事を考えていたので、ちょっと驚きつつ、リーゼの方を見てみると、笑顔で指をさしながら、《あそこあそこ!》と絡ませた腕をひく。

 

リーゼの指の先にあるのは、高級商業区画の中の店にしては低価格だと思える小物店。

女性用のアクセサリーや雑貨が陳列されていて、確かに女の子ウケは間違いなくヨシ、と言える店だ。

 

 

腕を引かれて店の中に入ると棚の商品を見て目を輝かせた。

 

 

「ほらっ、これとか かわいくない?」

 

 

棚に飾られてる商品の1つを手に取って、和樹に見せてみる。

それは銀の耳飾りだ。ただ――――カワイイ?

銀加工で見事なモノだとは思うけれど、そのデザインが見事な毛並みの(ラタ)……若しくは獅子だ。

 

 

「カワイイ、よりカッコイイ、の方が似合わない? あ、カッコいい方が好きだったかな?」

「うん。私もカッコイイって思う」

「かわいくない? って聞いてて、カッコイイって思う~か。どう反応して良いのか困っちゃうけど、俺がリーゼに選んであげるとしたら――――」

 

 

1つのネックレスに目を向けた。

それは日本で言う四葉のクローバーに似た金加工したネックレスだ。

花より団子~とか日本でことわざがあるんだけど、リーゼには絶対に似合うと思う。

 

 

「おぉ~、カズキセンス良いね。それ、凄くかわいい」

「リーゼに認められちゃって、俺のカワイイセンス爆上がりだ」

「リーゼ試験管は結構厳しいよ? 次からもっと厳しくいくからね~」

 

 

厳しくいく、と言いつつも最終的い和樹が選んだのが一番気に入ったのか、リーゼはそれを手に取って目を輝かせた。

欲しそうにしているのが傍目から見てもよく解る。

 

 

「じゃ、それ買っちゃう?」

「うんっ、買っちゃう!」

「気に入ってくれて何より。センスって正直苦手な分類だったしさぁ」

「冗談抜きで、凄くカワイイと思うよ? カズキのセンス、開眼した! ってヤツじゃないかな?」

「そりゃ嬉しい。免許皆伝だ」

 

 

あはは、と笑い合いながらリーゼは完全に決めた、と言う様に手の中に収めた。

 

 

「それに、今日と言う日の思い出になるしね。形ある思い出がやっぱり良いから。……これを見て、いつでも思い出せるでしょ?」

「ん――――」

「おっ? ドキっ、とした?」

「ビクッ! としたかも?」

「なんでよっ!」

 

 

あはは、と笑いながらもお会計に向かう。

 

 

「……やっぱし、なかなか難しかったりするよね。リーゼ程の人になったらこういう買い物って。今みたいに絶対に従者とかついてくるだろうし」

「あ~~、やっぱり解っちゃう? どうしても出なきゃいけない相手って言うのはたまにいるから、そういう時は必ず従者をつける様にしてるんだ。……って言うか、2人だけで歩きたい人なんていないし、デートだって思いたくもないし」

 

 

街中だろうと警戒するに越したことはない。

元々、リーゼはナルソン家の御令嬢。この街中で危険に出くわすなんて事は早々あるモノじゃない。市政に幅広く人気のあるリーゼに好意こそ持てど、悪意を持つ者などならず者以外限られてくるからだ。

だから、常に従者だったり護衛だったりは必要となってくるのだが、今回に限っては、和樹と一緒に居るリーゼは絶対に安全だと言える。

 

傍に来ている従者にも気付く広範囲の光の能力は、こういう時でも万能気味に働くし、色々と無害なのか、力自体があまり使われてないのか、1時間制約に引っかかったりはしない。

ノワールの言う通り、力の使い方も色々あるし、今後とも検証をしていく必要あり、と一良への調査報告以外にも、頭の片隅に和樹は入れるのだった。

 

 

「まぁ、デートするって言うのもやっぱり……ねぇ?」

「うん。あの辺に居るの私服の護衛兵、でしょ?」

「御明察。ずっと一緒につかず離れず、だよ。凄く優秀な人だ。高評価を上げたい」

「……私としては、なーんか複雑なんですけど」

 

 

2人きりの街中デート。

憧れない訳がない。

だから、守ってくれるのは凄く有難い事なのだが、2人きりになれない現状を嘆きたい気分でもあるのだ。

 

そんな何処かふてくされてるリーゼに和樹は指で額を弾く。

 

 

「なーに言ってんのさ? 2人きり~って言うなら、夜空の旅なんか、間違いなく2人っきりでしょ? なに? もう忘れちゃった??」

「わ、忘れてる訳ないでしょっ! あんな素敵な夜……。でも、ほら。こうやって街中で一緒に歩いて、肩とか腕とかっ。……普通の恋人や家族がやってる事もその――――憧れるから」

「………」

 

 

ここでもちょっぴり茶化した事に対してばつが悪そうにする和樹。

2人きり~の演出はもれなくリーゼにしている。夜の空のデートなんて幻想的過ぎて、超高額な商売だって出来るイベントだ。

でも、あまりにも幻想過ぎるのも困りものなのだろうか。

 

リーゼにはその身分故に出来ない事だってある。そういう望みは贅沢、などとは中々言えないだろう。

 

 

「―――さてっ、記念にって言うなら、そのネックレス、いや ペンダント、かな? ここは俺が買ってあげるよ」

 

 

話の逸らせ方としては、やや強引な気がしなくもないが、問題なかったようで、リーゼの表情がパっ、と輝いた。

 

 

「えっ、良いの??」

「うん、良いよ良いよ。と言うか、こういうシチュエーションって男の方が女の子に買ってあげる、って感じじゃないの?」

「あ、いや、そうだけど、やっぱり値段が値段、だし?」

「気にしなーい気にしなーい。さぁさぁ、任せて任せて! 神様の腕? の見せどころだよ。値段気にせず、他にも欲しいのが有ったら言いなさいな」

 

 

どんっ、と胸を叩く和樹。

花開く様に笑顔を見せるリーゼ。

 

 

「うわー、どうしよっかなぁ。凄く悩む……って、あれ? お金って和樹持ってたの?」

「その辺は抜かり有りませんよ、お姫様。………ここに来て、【あ、お金ない……】なんて、トップ3に入る格好悪い事、しないよ」

「そりゃまぁ……」

 

 

奢る、と見栄を張って、いざその場面になるとお金が足りない――――なんて、正直格好悪い所の話じゃない気もする。極まってる感じもする。熱が冷めちゃう気もする。

 

 

和樹に対する想いで、リーゼに限ってそういう事は無いが、それでも格好悪い―――とは絶対に思う。

 

 

「ほらほら、クレアさんの所で色々と、ね? 俺も一良さんも今じゃちょっとしたお金持ちだよ。一良さんは、ひょっとしたらバレッタさんがこっちに来るかもだし? 手持ちが多い事に越した事ないよ~~って話したら、ちょっと気恥ずかしそうにしながら、ごっそり準備してたし、ね」

「へぇ………。ねぇ、度々バレッタ、って名前聞くけど、カズラのこいびと……なんだよね? カズキは関係ないんだよね? 横恋慕、とかしてないんだよね?」

「寝取り、寝取られ属性は有りません」

「? なにそれ」

「バレッタさんはカズラさんだよ。なんなら、俺バレッタさんに、カズラさんの事はしっかり見てます~って言ってるから。だから、申し訳ないけど、リーゼ、エイラさんとか他の皆さん、カズラさんの事は狙わないでくださいね~」

「私が狙ってるのはカズキだけだってば。エイラは……どうなんだろ?」

 

 

寝取られ~云々は置いといて……。

エイラと一良は、夜にお茶会を開いたりしている。たまにご相伴に肖る事があるので和樹もしっている。それくらいは……とバレッタには黙ってよう、と思ったり思わなかったり。

 

 

「それよりもホラ、ご覧あれ~~。手持ちで10000アル超えちゃってるよ。この辺りは俺じゃなくて一良さんの力だね。すげー」

「ええええ!! そんな大金っ!? いくらなんでも持ち歩きすぎだよ」

「大丈夫大丈夫。絶対盗られたりしないから。寧ろ、かかってこい! みたいな?」

「………確かに、カズキを狙っちゃったら、不運だよねぇ」

 

 

新米警備兵の初任給の10倍もの金額をひょいと見せて見せる和樹に驚愕するリーゼ。

でも、和樹にしてみれば決して多いとは思わない。

リーゼが欲しそうに見ていた金のネックレスは3500アル。あの花のネックレスは3000アル。考えナシにひょいひょい入れてたら、10000アルくらい一瞬でなくなるから。

 

 

それはそうと、リーゼは欲しいモノが決まった様だ。

選んだのは、金加工されたネックレス。

 

 

「おお……、凄いリッチでゴージャスって感じだ……。全部金? 金の鎖か……」

「うん、凄く綺麗だよね。革紐も艶が出てきて良い感じなんだけど、金の鎖も凄く綺麗なんだ。銀も勿論綺麗」

 

 

決まった所で、店主を呼び出して代金を払った。

財布の中から3500アルを数えて取り出すと……。

 

 

「ありがとうございますっ! 今後とも是非、御贔屓にっ!」

 

 

物凄く笑顔で頭を下げられた。

どうやら、滅多に売れないらしい。流石の貴族様でも、中々に手が出せないのだろうか、簡単に買ってしまって、更に先ほどの会話からお財布事情もまだまだ分厚い事を聞いて、売り込みにきそうな勢いだ。でも、今回はこれまででヨシ、となっている。

 

 

 

「わぁ、カズキありがとうっ! ね、ね? 着けて着けて!」

「うん? ここで直ぐ着けちゃうの? 家まで我慢できない?」

「もっちろんっ! それにカズキに着けてもらうのが良いの」

「?? じゃあ――――」

 

 

自分に着けてもらうのが良い……と言う部分がよく解らないが、取り合えずリーゼの首に手を回して、長い髪の下から鎖を回した。

仄かに漂う甘い香りが鼻腔を擽る……ただつけてあげてるだけなのに、顔が赤くなってる感じがする。

リーゼの香り……と意識して、こんなにも近づけば、やっぱり仕方がない。

メルエム様も男の子だから。

 

 

「おおっ……」

 

 

色々と格闘している間に、リーゼは感慨深そうに声を上げた。

赤くなってるであろう顔を見られなくて良かった、とほっと一息つくと同時に、しっかりと装着を終えて少し離れる。

 

 

「なるほど~……確かにかなりドキドキする。ドキドキしたっ」

「??? どゆこと?」

「えっとね。前にうちの屋敷でお茶会してた時に、友達の娘が言ってたの。【デート中にドキドキしたシチュエーションはこれだ!】って」

「あぁ~~……なるほど。……納得」

 

 

リーゼの言葉を聞いて、着けてと強請った理由と、自分自身の状態を鑑みて、納得した様に頷いた。

 

 

「でも、そういう話もするんだね。やっぱり女子会って」

「うん? お茶会……だよ? あっ、でも女子会って名前も良いね! ……って言っても大体そう言う事話すのは女の人しか回りにはいないけど。―――これ、時々呼ばれたり呼んだりってあるんだよ。こういう事って交流を持つ意味でも意味があるし、私も楽しかったりするし、凄く意味があると思う」

「確かに、ね。それは否定はしないよ」

 

 

普段の仕事の量を考えたら、ちょっとした息抜きだったり、同姓相手に好きな内容の話をしたり……休息と言う意味でも十分重要だし、リーゼが言う通りコミュニケーションは必要不可欠だ。

本当にしっかりしてる。

 

 

 

「夜のデートも素敵だけど、お昼時も良いよね。また、デートしようねっ」

「………やぁやぁ、リーゼさんや。枕詞に()って、こんな場で言わない方が良かったかもしれません事よ?」

 

 

 

まだ店内。

更に言うなら、目の前に店主が居る。

少ないが店内には他の客も居る。(皆女性)

リーゼは当然有名人、和樹は市政には当然無名人。

 

 

この後、店内がどうなったのか言うまでもない。

 

それはそれとして、リーゼはその後もデートを心行くまで堪能するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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